こっちはなんとか完走しましたけど……E-5、丁じゃなくて丙で良かったかも(´;ω;`)
相も変わらず艦娘たちとの激しい夜を過ごした音無だったが、翌朝目を覚ましたに時はもう気持ちを切り替えていた。
彼の傍らでは、盛大なボテ腹を晒した鳳翔、金剛、迅鯨の3人が薄い布団を被っているだけでスヤスヤと眠っている。その肌は見事なまでにツヤツヤしており、女性ホルモンダダ洩れであった。
彼女たちの頭を少し撫で、鳳翔と迅鯨から少しずつ『補給』を受けたことで、尽きかけていた気力がある程度だが戻る。
「よし」
迷わずバスローブだけ羽織り、そのまま外へ出て大浴場へ向かった。
「さぁて、今までのパターンだとここで誰かと出くわすんだが……おっ?」
果たして音無の予想通り、誰かが向こうから歩いてくる。
来たのはまだ日が浅いPennsylvaniaとPola、そして古参に類する由良の3人であった。
「あら提督。おはようございます」
「おぉ、おはよう。あれ、夜間哨戒じゃないよな?」
「えへへ~、おはようごじゃいまぁ~す」
「ユラに色々教えてもらっていたんです。ね?」
Polaは相変わらずの酔っぱらいぶりだが、姉のZara曰く、『これが通常運転』だそうだ。むしろ、酔っぱらっていないと禁断症状が出るという。
なんというアル中、いやアル重だろうか。
だがそもそも艦娘の中には『酔来戦隊』と呼ばれる面々がいて、千歳を始めとした『吞兵衛勢』とでも言うべき者たちが一定数存在するのだ。
那智、隼鷹などはいい例だろう。
この鎮守府の千歳は割と上品に酔うタイプだが、他の鎮守府では泥酔するまで飲むこともザラらしい。
その一方でPennsylvaniaは酒を飲むことは好きらしいがアメリ艦娘としては珍しく節度を守るタイプらしく、それほど飲まない。
そのためか、真面目に答えてくれた。
「はい。ペンシルバニアさんとポーラさんに設置型電探とソナー類の使用方法を教えていたんです。彼女たちにも使ってもらうことになるでしょうから」
由良が言う電探とソナーは基地周辺の捜索をするためのモノであり、艦娘が交代で運用している。
これで敵の接近を察知するのだが、実はこれまで2度の奇襲を許しているため、レーダーの数と運用要員を増設していたのだ。
そのための教導だったらしい。由良は夕張と共に技術にうるさいタイプであるためか、こういうこともお手の物のようだ。
Pennsylvaniaは本来アメリ艦娘……アメリカ合衆国と言えば電子機器類に強いはずだが、この鎮守府特有のシステムにはまだ慣れていない。
そのため、古参の由良から教導を受けていたのだ。
「ご苦労さん。3人はこれからどうするんだ?」
「はい。先程夜勤が終わりましたのでシャワーを浴びてから寝ようかと思ったんですけど……あぁ、そういうことですか」
由良は納得したらしくクスクス笑っていた。
「まぁ、そういうことだ。俺も大浴場でシャワー浴びようと思ったんだ」
するとPolaがニヤニヤ笑い出した。
「え~、じゃあ提督にポーラたち食べられちゃいますか~?でもでも~提督の体液がお酒に合うかどうか確かめたいですね~」
「もう、この子ってば本当にお酒のことばっかりなのね」
PennsylvaniaはTexasと比べるとかなり真面目というかしっかり者のようである。
金髪に碧眼、ボン・キュッ・ボンとステレオタイプの欧米人のイメージそのものの雰囲気の彼女だが、手堅く造られたと言ってもそこは女性。
音無の腰の辺りにチラチラと視線を向けているあたり、Pennsylvaniaも相当気になっているようだ。
すると、由良が『じゃあ』と手を叩いた。
「提督もお疲れでしょうから、3人1回ずつ、でどうかしら、ねっ?」
やはりそういうことになった。
だが音無とてある程度そうなることを想定して話しかけたのである。むしろ、艦娘の中には『夜間哨戒帰りに音無とイチャつける!……かもしれない』として結構人気だったりするのだが、それは別の話。
結局、シャワーを浴びながら3人のそれぞれ魅力溢れる体を貪るのだった。
しかし、Polaが二日酔いの中で激しい行為をした結果、気分が悪くなったことで音無の射精直後にボテ腹で圧迫されたのが良くなかったのか、思い切りマーライオンになってしまったの別の話。
「おええぇぇぇぇぇぇぇ……」
「言わんこっちゃない……」
もっとも、それで酔いを誤魔化すために『迎え酒~』と言って結局飲むのだった。
酔っぱらって音無たちと一緒に現れたPolaを見たZaraが『このおバカさんは~‼』と言って64式小銃を持って追い回すのだった。
「だめだこりゃ」
音無は赤城が作った(!)海鮮丼を頬張りつつ1人ごちるのだった。
そして食後、メンバーを集めて港湾棲姫の攻略について話し合っていた。
メンバーは瑞鶴、加賀、飛龍、Ark Royal、そして伊勢と日向である。
さらにシンガポール政府の協力で、後方から陸戦隊及び戦車隊を多数送り込む手筈になっている。
以前にも述べた通り、港湾棲姫の背後ががら空きと言っていいほどに無防備なのを考慮しての二段構えの作戦である。
「まさか敵の背後を突く作戦を考えるなんてね~。提督さんすごいわ~」
「普通だろ。相手の手の薄いところを突くのは兵法の常套手段だ」
瑞鶴が感心しているが、音無は引き締めた表情を崩さない。
「とりあえず航空隊で事前の空爆を徹底する。ただ、周辺には潜水艦を含めた多数の艦隊が航行しているらしいからな。周囲の索敵を怠らないようにな」
「そうね。日向さんの瑞雲がモノを言うってことだわ」
「ふふふ。時代はやはり航空火力艦だな」
日向には多数の瑞雲を搭載しているため、周辺の警戒はお手の物である。
また、伊勢の彗星二二型には新開発の三号弾を搭載しているため、急降下爆撃機でありながら対地攻撃にも高い能力を発揮する。
正規空母には『震電改』と『SkyRaider』が多数搭載されている。この攻撃力ならば、制空権を確保し、港湾棲姫に大打撃を与えてくれるだろう。
「よし。皆準備ができたら出港してくれ。あ、そうだ」
音無は伊勢、日向の増設スロットに三式弾改二を、瑞鶴には熟練艦載機整備員を、飛龍には熟練甲板要員を搭載させた。
また、Ark Royalの増設スロットには『Bofors40mm機関砲 集中配備』を装備しており、ある程度対空戦闘が可能だ。
「これがあれば航空攻撃で倒しきれなくても大きく打撃を与えられるだろう。まぁ……立体攻撃をかませればそれで倒せるとは思うけど……ボーキサイトは十分備蓄してあるから、多少使っても問題ないしな」
タウイタウイ島で産出するボーキサイトは十分備蓄できるだけの量が産出しているため、たまに大規模に使用する分には問題ない。
「じゃあ皆、頼んだぞ‼」
「了解‼」
――深海東洋艦隊根拠地近海
近海に到着した艦隊は素早く索敵機を飛ばし、周辺の捜索を行った。
その結果、南に潜水艦の艦隊と輸送ワ級3隻を先頭にした艦隊が航行していることを確認し、そこが手薄と判断した瑞鶴がそちらへ航行することを決定した。
「まずは潜水艦を叩きましょう。アウトレンジで……決めたいわねっ‼」
まずは加賀に搭載されていた震電改が飛び立ち、制空権を確保する……潜水艦が相手なので制空権争い用の航空機は搭載していなかったので、問題はなかったが。
「……攻撃隊より報告。『潜水艦隊全滅』ですって」
潜水艦を撃滅できたことにArk Royalと日向が揃って胸を張る。
「ふっ。SwordFishの力は偉大だな」
「いやいや、瑞雲こそ偉大だ」
「どっちもどっちだと思うけど……」
飛龍が冷や汗をかくと、音無から『戦果報告は後でな~』と冷ややかな声が聞こえてきた。
「て、提督……そ、そんなこと言わなくても……」
『無駄口叩くようならあとで鳳翔さんに頼んで特別メニューだからな』
『鳳翔の特別メニュー』、つまり独自の特訓は大変厳しく、二水戦の神通や鬼の山城と同等か、それ以上とも言われるヤバさなのだ。
好き好んでそんな訓練を受けたいとは思うまい。
「わ、分かった。分かったから……」
『ん、分かればよろしい』
そのまま進んでいると、輸送ワ級の艦隊が近付いてくる。
すると、加賀、伊勢、日向の顔が引き締まった。
「皆、攻撃隊は出せるよね?」
問われたArk Royalと飛龍はギョッとして後ろの3人を見る。
『輸送ワ級』の言葉を聞いた3人は強烈な敵意を燃やしているように見えた。やはり、かつて自分がおぞましい深海棲艦の一翼を担わされていたという忌まわしくも快楽に満ちた思いがあるからこその複雑な感情なのだろう。
「ねぇ日向。帰ったらまた提督にたっぷり犯してもらおうか?」
「いいなぁ。朝までしっぽりコースと行きたいものだ」
「それ、私もご一緒させてください」
加賀を含めた3人の会話に、他の2人は冷や汗を流すしかない。だが、Ark Royalが冷静に返した。
「いや、いくらなんでも鹵獲改装組3人を同時に相手したらAdmiralの体が持たないと思うんだが……」
「そうよねぇ……いくら提督さんでも3人同時はきついでしょ」
3人を同時に相手取ることが厄介なのではなく、性欲オバケの加賀たち3人というのが危険なのだ。
補給を続けることでいくらでも連戦できるにはできるのだが、逆に言うと『連戦できてしまう』ため、休みなくしてしまう。
結果、音無が疲労困憊になってしまう可能性が高いのだ。
流石にそれを言われると厳しいらしく、3人とも『う……』と詰まっていた。
なので、音無がフォローを入れてやることにする。
『伊勢たちはこの間してやったからな。次は加賀だ。他に誰が来るかは分からないけど……ま、あとはなるようになるさ』
「提督さんったら……すっかり達観しちゃって……」
「達観というか諦めの境地じゃないか?」
ほぼArk Royalの言うことが正しい。
「それより、敵艦隊を攻撃するべきだろう。私のSwordFishたちは準備完了だぞ」
Ark Royalだけはこだわりにこだわった結果、SwordFishMk.Ⅲ(超・熟練)を搭載している。
全てはPretoria Castleとの訓練の賜物である。
それはそれとして、そのようなことを言われると加賀たちも返す言葉がない。
「ではやるか。SwordFish、Shoot‼」
加賀の放った震電改に続いて攻撃隊が発艦するが、如何せんSwordFishは220kmと遅いため、完全に置いて行かれている。
「あれでいいのかしら……」
「なにを言う。SwordFishはあれでいいんだ‼」
瑞鶴が『えぇ~』と冷や汗をかく。
結局、ワ級の艦隊も呆気なく全滅した。
その後、港湾棲姫に近付いてから発艦させた震電改は圧倒的な空戦能力で敵の迎撃機隊を撃滅し、制空権を確保する。相手の基地航空隊はほぼ潰したようで、SkyRaiderに攻撃できる機体はほとんど残っていなかった。
そのため、SkyRaiderは落ち着いて対地攻撃が可能になっていた。SkyRaiderにも胴体下の大型爆弾に加えて翼下にも大量の三号弾を搭載しているため、港湾棲姫に圧倒的な打撃を与えることに成功した。
「敵損傷……確認!航空隊発艦不可能にまで追い込んだ模様‼」
「アメリカの機体ってすごいねー」
飛龍が呑気そうなことを言うが、実際に戻ってきた攻撃隊にほぼ損害がないこともその裏付けと言える。
「反復攻撃するのか、ズイカク?」
「そうね……倒せるならその方がいいかも。艦載機隊、戦闘機隊の具合はどうかしら?」
加賀が『損耗ほぼなし』と告げる。
「……わかったわ。倒せるならそのまま反復を……」
「偵察機より入電!戦艦タ級FlagShipを旗艦とする艦隊が接近している‼気付かれたぞ‼」
日向の声に瑞鶴が『チッ!』と舌打ちする。
「仕方ないわね。敵主力に接敵するわ‼そうすれば随伴以外の他の艦隊は手出しできないから‼」
「わかりました」
「よし!」
幸い一撃で浮遊要塞は全て潰すことができたため、接敵してすぐに攻撃できるだろう。
「伊勢さん、日向さん。立体攻撃いける?」
「任せて。艦載機も主砲も準備万端よ‼」
「まぁ、そうなるな」
2人の頼もしい言葉を受け、瑞鶴は接敵することを決定した。
「四交戦、出撃するぞ‼」
接敵直後、港湾棲姫の方で爆発が多数上がるのが見えた。
「あれは……ウチの戦車隊だよ‼」
事前に回り込ませていた『八九式中戦車』と『九七式中戦車』を中心とした別動隊が攻撃を開始していたらしく、港湾棲姫を負い込んでいた。
だが、随伴の空母ヲ級FlagShipを中心とした艦隊が行く手を阻む。
「仕方ないわね。こいつらを先に片付けましょう……皆!」
「よし。二航戦、攻撃隊発艦‼」
飛龍の合図と共に全員から航空隊が飛行し、隊列を組んで敵に襲い掛かる。
空母ヲ級は突然の攻撃に驚いたらしく、ロクな対応もできないままに攻撃を受けた。
三号弾の攻撃はすさまじく、敵空母の最大の強みである艦載機離発着能力をあっという間に奪ってしまった。
「よしっ」
さらに伊勢と日向が主砲を発射したことで、唯一残っていた戦艦タ級FlagShipも海の底に消えていった。
だが、そうこうしているうちに港湾棲姫が攻撃を仕掛けてきた。
大破状態と言える『損壊』状態だが、それでも15インチ砲の威力は侮れない。
そう思って回避運動を取った直後、Ark Royalに直撃弾が出た。
「アークさん‼」
「はうッ!?……く、このぉ‼」
当たり所が悪かったらしく、一撃で中破に追い込まれてしまう。やはり『姫』級は侮れないと思わされた瞬間だった。
その後伊勢と日向がもう一度砲撃するが、それでも中々体力を削り切れない。
そんな状態が少し続いたが、瑞鶴の整備員妖精が顔を出してサムズアップする。攻撃隊が発艦準備できたのだ。
さらに伊勢たちも主砲弾の装填が終わっている。
「2人とも、お願い!」
すると、伊勢の瞳がキラリと輝いたように瑞鶴には見えた。
「さあ行きましょうか!伊勢航空隊、発艦始めっ‼」
その言葉と共に彗星隊を先頭とした攻撃隊が勢いよく発艦し、さらに伊勢が主砲の狙いを定める。
「さぁ、行っちゃいますか‼」
放たれた主砲弾と航空隊の攻撃は港湾棲姫に直撃し、周辺諸共吹き飛ばす大打撃を与えることに成功した。
結果、港湾棲姫は炎の中に消えていった……だが、これをあと4回繰り返さなければならないのである。
しかも、厄介なことに3度目以降は港湾棲姫と浮遊要塞が強化されており、さらに厳しい戦いになると予測される。
「アークさん、大丈夫?」
「問題ない。帰投してしっかり修復すれば済むことだ。だが、帰るまでが出撃だ。Uボートにだけは気を付けないとな」
すると、周辺索敵をしていた瑞雲から『潜水艦発見』の報が入った。
「なに、敵か!?」
今艦載機隊を攻撃に使ったばかりなので、今の状態では攻撃できない。そう思っていたら、なんと潜水艦が浮上してきた。
「あ、あの……どこかの艦隊、ですか……?」
「そ、そうだけど……艦娘?」
「ご、ご一緒させてください……」
オドオドしたような雰囲気の子に違和感を覚えるものの、取り敢えず連れて帰ることにした。
帰投後、この日であった艦娘たちが挨拶する。
「ドイツ海軍、潜水艦のUー511です。ユーとお呼びください。少し遠出してきました。よろしくお願いします……」
「提督、お疲れ様です。水上機母艦、瑞穂。推参致しました。どうぞよろしくお願い申し上げます」
「My Name Is Helena.St.Louis class軽巡洋艦二番艦、USS CL Helena よろしくね!」
「あたし、桃。丁型のアイドル、いえ、違うわ。駆逐隊のアイドルが正解?……かな?あ、そう。松型の四番艦、テートク。よっろしくぅ」
そして残り2人は、またもデータにない艦娘だった。
しかし、片方の服装は見覚えがある。どう見ても川内たちにそっくりなのだ。
「初めまして、提督!私は川内型軽巡洋艦の四番艦、木津だよっ‼砲雷撃戦なら任せてよねっ‼」
オレンジ色の服を着て14cm単装砲を携えた彼女は、音無の想像通り川内型の『存在しない』ナンバーであった。
「お前も紀伊たちと同じ立場ってことか」
「あっ、紀伊さんたち来てるんだね。じゃあ……」
「あぁ、話は聞いてるから安心しろ。今はまだ、なにも言わなくていいよ」
「よかったぁ。そう言ってもらえると助かるよぉ」
ニコニコ笑うと川内によく似た顔立ちだが、意外に常識人なようだ。
「(3人ともキャラ濃いからな、川内型……それに比べると元気は元気だけど良識的というか穏やかそうな雰囲気だが……)」
音無の方も『お決まりの定型句』になってきているが、本来上官に隠し事をしてはいけないはずの彼女たちにとっては重要な話である。
性能に関しては姉たちの改装前とほとんど同じだが、やはり運が高く、そして対地攻撃能力に少し補正が掛かっている。
「(なんだろう……どこかで対地攻撃を敢行して大打撃を与えたことがあるってことなのかな……?それはそうとして、いったいこいつらにどんな『謂れ』があるのか……まぁ、これに関しちゃいずれ分かると思っておけばいいことだから追求しなくてもいいけど……)」
音無もここに来てジタバタしても仕方ないという考えに至っていた。
いずれ明らかになるだろうということも。
なので、今回はどちらかと言うともう1人の方に意識が向いた。
「えぇと……君はもしかして、イタリアのヴィットリオ・ヴェネト級戦艦かな?」
「はぁ?なにを言っている。私はヴェネツィア公国海軍所属戦艦、Litorio級戦艦の四番艦、Dorugeだ」
「ん?ヴェネツィア公国?リットリオ級戦艦?」
音無が後ろに目配せすると、すぐに千歳がチャーを呼んでくれた。
数分後、呼び出されたチャーが『ホイホイ』と執務室に入ってくる。
「どうしたどうした。今度はどんな奴が……ん?ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦か?」
「また同じことを言うのか。私はLitorio級戦艦だと言っているだろう。舐めているのか、貴様ら?」
堂々と胸を張る彼女に、チャーは『んん?』訝し気な視線を向けた。
「……音無、こいつの所属はどこの国だって言ってた?」
「えぇと……ヴェネツィア公国だって。でも、ヴェネツィアってイタリアの一都市だろ?水の都って呼ばれてる、あの」
「あぁ。そのはずだ……だが、Doruge。どっかで聞いたことあるような……」
「一都市とはなんだ‼ロマーニャ公国と兄弟国として栄えたヴェネツィア公国の『首都』を愚弄する気か‼」
「ロマーニャ?なんかそれもどっかで聞いたな……」
「ロマーニャってイタリアの地方の名前だったよな?」
すると、チャーがブツブツと呟き始める。
「待て、確か……」
すると、『どうかしましたか?』と高松が珍しくこちらに顔を出した。
「おぉ、高松。お前がここに来るのは珍しいな……」
「はい。皆さん忙しいので本日の各種資源の採取量の報告書を届けに来ました」
「悪いな、助かるよ」
高松が『いえいえ』と言いながら資料を渡す。当然ながらDorugeのことが目に入ったようだ。
「こちらの方は?」
「あぁ。ヴェネツィア公国のドージェって名前らしいんだけど……どうもイタリアっぽいのにイタリアの子じゃないらしいんだ」
「ヴェネツィア公国ですか……まるで、ストライクウィッチーズですね」
高松の言葉にチャーが目を見開き、『あー‼』と珍し過ぎる大声を上げた。
「チャーの叫び声なんて初めて聞いたぞ……」
「工廠長、あんな声出せるんですね……」
「まぁ、普段が渋すぎるだけの同年代ですし。ところでどうしたんですか?」
チャーはなにか資料を取り出すと、パラパラとページをめくった。
「あった!未知の敵『ネウロイ』から世界を守る魔法少女たち『ウィッチ』の奮闘を描いたアニメ『ストライクウィッチーズ』に登場する国家!ヴェネツィア公国とロマーニャ公国。俺たちで言うイタリアに位置する架空の国家なんだが……陸軍の大半をロマーニャ公国が担い、ヴェネツィア公国は海軍を担当している国家なんだ。海に面しているってことでな。Dorugeはそこに所属しているリットリオ級って戦艦なんだ」
「へぇ~……え、じゃあこの子ってもしかして……」
「あぁ。恐らくだが……空想の世界から来た艦娘だな」
一同は唖然としてしまった。Dorugeはアニメの世界から現れた存在だということらしい。
「そんなことがあるなんて……」
「なんというか……もはやなんでもありになってきましたね」
これまでのパラドックス艦娘は基本的に『艦これに実装されていない、しかし軍艦として実在する、或いは計画されていた艦娘』であった。しかし、このDorugeに関しては空想から生み出されたという意味でさらに特異と言うべきであった。
「そういえば、装備に妙なもんがあったんだ。なんだろ、これ?」
妖精さんの解説書を見ると、『試製対ネウロイ用装甲』と書かれていた。
「知らないのか?人類を滅亡の淵に追い込んできた未知の敵、ネウロイのビーム攻撃に対抗するために人類の英知を結集して開発した装甲だ」
「ネウロイ?さっきチャーも言ってたけど」
チャーに説明を求めると、チャーが簡単な絵を描く。
「簡単に言えば、正体不明の存在、だな。1939年にどこからともなく現れ、人類の文明を瞬く間に破壊した怪物。なんの目的があるのか、何故人類を襲うのかも理解されていないんだ。それに対抗しうる数少ない人間が、魔法力を持った少女・ウィッチなんだ。ウィッチは海上で戦うことも珍しくないから、海軍と共闘することが多いんだ。Dorugeもその一隻だよ」
「……そんなことがあるのかよ」
「こっちだって深海棲艦だとか神様のことだとか、訳の分からないことがいっぱいあるじゃねーか」
「まぁ、それはそうか」
「攻撃手段として、ネウロイは高出力の光線を放ってくる。作中の時間軸で1945年までは攻撃を防ぐことができなかったんだが……ドージェは試験的に光線を跳ね返す対ネウロイ用装甲を施されたんだ」
これによりDorugeは何度もネウロイの攻撃を受け流すことに成功していた。
「へぇ……じゃあ、これは相当な防御力だな」
「物理的な方もかなり強化されている。砲雷撃戦にも大きな力を発揮するだろうな」
数値は以下となる。
○ 装甲+20
○ 回避-1
「うぉお、増設バルジやプリエーゼ式増加装甲より数値が異常に高い……」
「とんでもない能力だと思うぜ。まぁ……増加装甲は回避力を下げちまうが、それを補って余りある防御力になるはずだ」
「ひえぇ……」
音無と千歳がドージェの方を見ると、『どうだ』と言わんばかりにその豊満なバストを見せつけていた。
ちなみに声帯の妖精さんは当然のことながらLitorioと同じ声の方で1つ。
その夜、音無は明日出撃させる面々の編成を考えていた。
「できるだけ装備は統一した方がいいよな……今回はアークたちにも出てもらったけど、明日はサラとホーネットに出てもらうか」
アメリ艦娘は基本的に搭載量が多いため、戦闘力も高いのだ。
すると、執務室の扉をノックする音が響く。
「どうぞ?」
扉を開けて入ってきたのは、まるで雪のような真っ白な肌が特徴のマラートだった。
「お疲れだな、同志提督よ」
「マラートじゃんか。どうした?」
マラートの手には、なんと日本酒の瓶が握られていた。
「ウォッカもいいが、ここに着任してからセイシュの美味しさに目覚めたんだ。どうだ、一杯?」
しかもご丁寧におつまみまで持ってきている。完全に呑む気だろう。千歳が恐らく彼女のために譲ってくれたに違いない。
「一杯だけだぞ」
音無も執務はこの辺でいいかと思い、せっかくなので付きあうことにした。
音無がマラートから酒を注いでもらい、ゆっくりと口に含む。
「んくっ……ぷはぁ……」
「おっ、いい飲みっぷりじゃないか」
「まぁな。鎮守府に来てから飲酒するようになったけど……だいぶ慣れたよ」
マラートもお猪口に手酌で注ぎ、少し口に含む。
「実は最初、ウォッカのつもりでグイッと飲んだらヒドイ酔い方をしてしまってな。チトセに飲み方を教えてもらったんだ」
「そういえば……日本酒って蒸留酒じゃない上にアルコール度数も高いから蒸留酒のつもりで飲むと悪酔いするんだっけ」
そう言いつつ裂きイカを口に含む。これは鎮守府の近海で取れたイカを隼鷹が加工してくれたものだ。
噛み締めると旨味が『じゅわり』と口の中に溢れ出る。
「なぁ、同志提督。つい先だってオオヨドから聞いたのだが……」
「ん、どうした?」
「今ガダルカナルの方に現れているという敵の輸送船団の護衛艦の中に、『北方水姫』という存在がいるという話は聞いているか?」
確かに大淀が持ってきた敵編成の資料の中に『北方水姫』という名前があった。その雰囲気は、どことなくだがマラートに似ていると音無は感じていたのだ。
「あぁ、聞いているよ。なにか謂れがあるのか?」
マラートはまた少し酒を口に含むと、白い肌を朱に染める。そして、いきなり服を脱ぎだしたのだ。
「頼む、同志提督。私をそこに出撃させて欲しい」
「え、えぇ!?」
いきなり脱ぎ出したことに音無は驚き、それ以上言えなくなってしまった。
マラートは旧式の弩級戦艦ながら練度の高い艦娘である。しかし、自分があまり能力の高い戦艦でないことを重々承知していたからか、これまで『ここに行かせてほしい』という要望は出してこなかったのだ。
「……せめて訳くらい聞かせてくれよ。話を聞かないと訳が分からねぇ」
それを言われるとマラートも弱いらしく、『わかった』と言って座り込んだ。
「ご存知かと思うが、北方水姫の正体は……同志姉上なんだ」
「姉上って……確か、ネームシップのガングートだったな」
確かに、音無の鎮守府にガングートは着任していない。ならば、もしかしたら北方水姫を倒せばガングートが着任するかもしれない。
「そうか。お姉ちゃんを深海棲艦から取り戻したいのか」
「っ……‼」
黙り込んでしまったマラートだが、その目尻に浮かぶ涙が彼女の心を物語っていた。
「虫のいい願いとはわかっている。だが、同志提督に私が渡せるのはこの身一つくらいだ……この身が取引材料になるかは分からない。だが、もし聞き届けてくれるのなら……」
すると、音無はマラートを優しく抱きしめた。
「ふえっ?ど、同志提督?」
「お前がお姉ちゃんを思う心、すごく伝わったよ。ただな、マラート」
音無は正面を向き、マラートの瞳をしっかりと見つめる。
「お前が俺のことを好いてくれているなら、俺もぜひ抱きたいと思う。でも……お姉ちゃんを助けるためだからって好きでもない相手に身を捧げようと思うのなら……それはやめて欲しい」
「ちっ、ちがっ……私は、私は同志提督のことを嫌ってなんて……」
マラートは先程述べた通り、自分が中途半端な能力の艦娘ということを重々理解している。だが、音無はそんな彼女を疎んじることもなく掃討・遠征など交代で出撃させられる場面に出してくれている。
もし音無が自分を抱いてくれた上で姉を救うために力を貸してくれるのであれば、これほど嬉しいことはないと思っていた。
だが、今のマラートの発言は、明らかに音無に誤解を植え付けてしまったとようやく理解したのだ。
だから、マラートは居住まいを正した。
「すまない、妙な誤解をさせてしまった。私は同志提督のことを嫌ってなどいない。むしろ好きだ。抱いて欲しいと思っている。だが、それと姉上を救うことは別だと思ったのだ……」
「そうか……お前、共産主義の出身なのに対価を支払うことで物事を成そうとか思うタイプなんだな」
「い、いや……私たちガングート級は帝政ロシア時代に建造された艦だ。だから、共産主義自体にそれほど思うところはない」
というか、艦これに実装されているソ連艦娘で純粋な『ソビエト連邦』出身の艦娘というのは、(これを書いた)2023年頃には実は存在しない。
ヴェールヌイは元々日本の特型駆逐艦・響で、嚮導駆逐艦として名高いタシュケントはイタリアで建造された艦である。
だからなのか、資本主義を嫌うようなことは特にないらしい。
『同志提督』と呼ぶのも、単純にソ連に長く身を置いていて呼び方がそれで慣れてしまっているから、というだけに過ぎない。
だから、音無はマラートに微笑みかけた。
「そうか。なら安心しろ、マラート。お前のお姉ちゃんは絶対に助け出す。ただ……港湾棲姫を倒すまでは待ってほしい」
音無が引き受けてくれたことをマラートはとても嬉しく思ったらしく、とてもいい笑顔を見せていた。
「ありがとう、同志提督‼」
そして音無は、『お姉ちゃんを助け出したらマラートも抱いてやらないとな』と思うのだった。
……はい、またもとんでもないパラドックス艦娘を登場させました。
ストパンから出したかったんですよ……ドージェ、カッコよかったし。
で、一応注釈してある通りで当時キーロフが実装されていなかったのでこのような書き方になりました。
それと、pixivに追いつくためここからはペースを上げます。
この30日が私の誕生日ということで3話分投下し、そこからは毎週2話ずつ投下します。
pixivの続編に追いついたら、そこからは同じペースにしようと思います。