同じとこ何度も書いても仕方ないかなーと思いまして……
港湾棲姫に連日猛攻を加え続けたタウイタウイ艦隊だったが、やはり姫級、それも体力の多い地上型を相手するのは骨が折れた。
2度目の戦いでは港湾棲姫を倒した直後に空母ヲ級の攻撃で加賀が大破に追い込まれてしまい、3度目では開幕直後にHornetが中破した。
4度目は伊勢が大破、日向、蒼龍が中破に追い込まれてしまうなど、一筋縄ではいかなかった。しかし、シンガポール政府が協力してくれたことにより、後方から仕掛けることができた戦車隊との連携もあって着実に追い込んでいた。
音無はこれまでの戦闘結果について、最初からずっと出撃してほぼ無傷だった瑞鶴から報告を受けていた。
余談だが彼女は本当にほぼ損傷がない。
付いたあだ名の『幸運の空母』の名は伊達ではないということを、音無はここに来て強く思い知った。
「それにしても驚いたな……港湾棲姫の攻撃は損壊状態になっても一撃で練度の高い艦娘を中大破させるほどの威力があるのか」
「そうね。私は今まで攻撃を受けたことがないから分からないけど……やっぱり、戦艦級の要塞砲と言ってもいい15インチ砲の威力は強烈よ。損壊状態になってもどっちかと言うと『使えない砲が増える』ことと、それによる『命中率が下がる』割合が強いからなのかもしれないけどね」
艦娘も深海棲艦も損傷することで装備が損傷し、攻撃力が下がると同時に命中率そのものが下がるのである。
そのため回避力が高い艦娘ほど、相手が損傷すればその分攻撃は当たらなくなるという寸法である。
「なるほどな……だが、この海域は航空母艦が必須である以上、資材の消耗を招いてもそれを押し通すしかないな」
「そうね。幸い、資源も高速修復材も、工廠長のお陰でいっぱいあるから今はこれでいいと思うけど……」
出撃制限がある海域の場合、その制限に記されている艦種を多めにすることが有利に運ぶことが多いのだ。
中にはキス島周辺のようにほぼ駆逐艦しか出撃できないような海域も存在するが、あれは特例中の特例とも言える。
「それでもやるしかないんだ。損傷を避けられるならそれに越したことは無いけど……敵と戦い始めたら、あとは皆に判断を任せるしかない。実を言うと、俺も現場に出られたらと思う反面、今こうして離れたところで指揮を執るからこそ見えるものもある……すごく複雑な気分だ」
艦娘のことを常に慮る音無の苦悩が分かる瑞鶴は、出撃前で胸当てを付けてないのをいいことに音無の頭を自分の胸に抱きよせた。
秘書艦の大井は『やれやれ』と肩を竦めるが、止めようとはしない。
ハリのある膨らみが音無の頭に押し付けられ、『むぎゅう』と潰れる。
「……瑞鶴、少し大きくなったんじゃないか?」
「えへへっ、翔鶴姉から毎日おっぱいもらってるし、提督さんがエッチな揉み方するんだもん。そりゃちょっとは大きくなるわよ。まぁ……お陰で龍驤さんからは随分睨まれるようになっちゃったけどね」
「あいつだって毎日……しかも結構な量を飲んでるはずなんだが……人の悩みはままならんもんだな……」
「こればかりはね……改装で排水量が増すタイプの人なんかは改装後に胸やお尻が大きくなるような人もいるみたいだけど……龍驤さんはほとんど変わらないから……」
「そりゃコンプレックスにもなるかぁ」
鹵獲改装組の乳房の張りを解消するために、毎日他の艦娘が多く母乳を吸っている。加賀は大半を赤城が、翔鶴は瑞鶴が吸っているが、Saratoga、伊勢、日向はほぼローテーションで手の空いている人が吸う、という感じなのである。
そんな瑞鶴が少し前に風呂に入った時、先に入っていた龍驤が瑞鶴の胸元を見て目が飛び出んばかりに見つめていたことから、瑞鶴も自分の胸が少し大きくなったことに気付いたのだ。
ついでに言うと、『仲間だと思ったのに……滅びればええのに……』という恨み言が聞こえたのも理由の1つだ。
「ふ~ん……そうなんだな~」
音無は頭を離すと、瑞鶴を後ろから抱き締めながら服の隙間に手を入れ、乳房をモミモミと揉み始めた。
「あんっ……♡」
触るとより分かるが、瑞鶴の乳房は着任したばかりの頃に比べると明らかに大きくなっていた。
更に、グニグニと揉みしだいて見れば分かる。引き締まった瑞鶴を象徴するようにハリがあり、先端がしっかりと尖っているのだ。
「もう~、提督さんったら~♡この後出撃するんだからダメなのに~♡」
一見すると文句を言っているように見えるが、お触りされている当の瑞鶴はとても嬉しそうな顔をしているのであった。
本来瑞鶴はどちらかと言うとツンデレ寄りの艦娘なのだが、この鎮守府の瑞鶴はとにかく音無にベタ惚れである。
更にキスする、ちょっと体を絡めるなどしばらく2人はイチャイチャしていたが、不意に誰かの視線を感じて扉の方を見る。
そこには、カメラを構えてニヤニヤしている青葉、さらに顔を真っ赤にしながらも目が離せないと言わんばかりの吹雪、さらに明らかに『ぐぬぬ~』という表情で2人のイチャイチャを見ている龍驤の3人がいた。
「あぁ、そのぉ……わ、悪いかよ‼仲いいんだからイチャイチャしても!」
「開き直りよったで、このエロ提督」
龍驤が恨みがましい目から呆れたジト目に変わる。
「で、でも、司令官さんの仰る通りですよ。仲がいいんだから、その……ちょ、ちょっとくらいは……」
「そうですねぇ~。お陰でいい画が撮れましたよ~」
決定的瞬間を押さえられた2人はもう汗だくである。
しかし、瑞鶴の方も負けてなかった。
「い、いいじゃないの!出撃前にちょっとくらいイチャイチャしたって‼私だってもっとやる気が出るんだから‼」
「そっちも開き直りおったかっ‼そういうことは部屋でやらんかいっ‼」
「部屋なら良いんですね……」
「あ、提督。この写真今度発行する鎮守府新聞に載せていいですかね~?」
「「アオバワレェ‼」」
結論。大事な人とイチャつく時は、絶対に人目を気にしましょう。
絶対に、絶対です。
なお、秘書艦の大井は音無のためか完全に空気に徹してくれていたのだった。
それはさておき。
相当・遠征を含めて出撃するメンバーが執務室に集まり、本日の秘書艦である大井が音無の隣に立っている。
また、遠征にはガダルカナル島近辺の通商破壊のためのメンバーもいる。
その中にはマラートの姿もあり、いつになく覇気を漂わせていた。
「(マラートの奴、俺がそっちに注力できるまでにできることをやるって言ってたけど……無茶しなけりゃいいんだけどな……)」
だが、元々多方面の作戦を遂行するにあたって、『多少の無茶』は計算のうちに入れなければいけないことを、音無も最近ようやく思い知るようになった。
なので、まずは彼女の頑張りを期待することにしたのである。
「これまで4回の出撃でも相応に損傷があったが、これがラストだ。皆、心してかかってくれ」
最後の編成は以下となる。
○ 瑞鶴改二
○ 翔鶴改二
○ Saratoga Mk.2 mod2
○ Hornet Mk.2
○ 伊勢改二
○ 日向改二
翔鶴に制空戦闘機をガン積みし、他の面々にSkyRaiderを搭載することで圧倒的な戦闘力を実現している。
さらに、Hornetに搭載している『Bー25』ミッチェルは元々陸軍の双発爆撃機ということもあって、高い搭載量と防御力、そして地上目標に対する攻撃力の高さを誇る。
事実、以前HornetにBー25を搭載して出撃させた際には強烈なダメージを叩きだしたものであった。
そして仮にだが航空攻撃で倒しきれないとなれば、やはり頼りになるのは伊勢型の立体攻撃である。
しかも伊勢たちの艦載機にも三号弾を搭載しているため、地上型に対しても十分な火力を得ることができる。
本来であれば対空カットイン要員や対潜要員などメンバーをバランスよくしたいところだが、それであれもこれもとやっていては器用貧乏に陥って決定打を与えられなくなってしまうと音無は考えていた。
幸い、潜水艦に関してはSkyRaiderも伊勢型姉妹も高い攻撃力を有しているため、これまで問題になったことは無かった。
なので、このまま突き進むしかない。
「港湾棲姫を打破すれば、このタウイタウイ周辺の敵は残り南部と中央部のみとなる。これを完全に攻略し、ハワイ諸島への道筋をつける。そのためにも、ここで詰めを誤るわけにはいかない」
だが、音無は再びここに来て 前回のカスガダマ沖海戦の時同様、なにかイレギュラーが発生するのではないのか、という嫌な予感がしていた。
できれば後詰の艦隊を繰り込みたいところだが、既に全員各方面に出撃しているため、送れるとしても精々特務艦くらいだろう。
さらに、艦娘の出撃は一部の特別海域を除くと基本的に6隻のみとなっている。これは、6隻以上出撃すると敵が異常に強力になる傾向があったから、とも言われているが、詳細な内容は明らかにされていない。
だから、現有戦力とできることの範疇で限りを尽くすしかないのだ。
「皆、頼むぞ‼」
「了解‼」
――東洋艦隊根拠地周辺
幸いと言うべきか、これまで通りの攻撃で道中の艦隊は簡単に撃滅できていた。
日向の瑞雲隊からも、『変化があった』という報告はない。
「考え過ぎだったのでしょうか……?」
「Sara、油断は禁物よ。見落としている『なにか』があるかもしれないじゃない」
「ホーネットの言う通りね。あとは港湾棲姫だけど……日向さん、どうかしら?」
「ちょっと待ってくれ、翔鶴……偵察機より入電。『港湾棲姫及ビ周辺浮遊要塞確認』とのことだ」
「えぇっ?本当かなぁ……」
後半に突入して以来、敵の体力こそ増えているものの、戦力自体に変化はないのかと拍子抜けしてしまう一同。
だが、そんな安心感は日向の引き締まった表情で全てかき消される。
「続報!『敵随伴艦隊発見。重巡棲姫1、空母ヲ級FlagShip1、軽巡ホ級FlagShip2、駆逐ハ級FlagShip2隻』だと!?」
「!」
やはりイレギュラーが発生した。音無の危惧は正しかったのだ。
「……どうする、日向?」
日向は少し考えていたが、『決めた』という表情で前を向いた。
「……旗艦瑞鶴に意見具申。港湾棲姫にだけ攻撃を与えて弱体化させた後に敵艦隊に接触したら、戦車隊に港湾棲姫を任せよう。今の陸戦隊の火力ならば、我々が手を出さなくとも港湾棲姫を倒せるはずだ」
「そうね……今回は自走砲も加えているから、かなりの戦力になっているはずだわ。私は正直、陸戦のことはよく分からないけど……」
だが、瑞鶴の言う通りであった。
今回の作戦にあたって、チャーに頼んでより大口径の砲を装備できる固定砲塔式の自走砲も作ってもらっていたのだ。
その結果、現在鎮守府に存在する陸戦隊が運用する砲では最大の15cm榴弾砲、それを短砲身化させたものを『Tー34』の車体に装備させた特殊自走砲を多数配備していた。
チャーに言わせれば『ソ連版ブルムベアだな』とのこと。
また、『Tー34』自体も大改良が施されており、主砲を76mm砲のタイプからドイツのFlak.8.8、通称『アハトアハト』こと88mm高射砲を流用した戦車砲に換装した新型に変更したことで、その攻撃力は76mm砲の時とは比較にならないほど上昇している。
これらを組み合わせれば、間違いなく陸上型に大打撃を与えられるだろう。
協力してくれたシンガポール政府にも感謝しかない。
なので、瑞鶴は日向の意見を採用しようと決めた。
瀕死の港湾棲姫よりも、無傷の随伴艦隊の方がはるかに恐ろしいと考えたのだ。
「分かったわ。じゃあ皆、艦載機飛ばすわよ‼」
「了解です。サラの子たち、よろしくね!」
全員から艦載機が飛び立っていく。
一拍遅れて、Hornetの『Bー25』も16機という大規模な数で飛び立っていった。なお、妖精さんの操るミニチュアのようなものだから回収できるが、実寸大になったらとてもではないが着艦は不可能なのは言ってはいけないお約束。
やがて、港湾棲姫のいる辺りから多数の爆発による炎と煙が上がり始める。
「……どうかしら?」
「まだだ。まだ瑞雲からの報告がない。少し待ってくれ」
やがて煙が風に流されて晴れると、瑞雲隊が報告を開始した。
「戦果報告。要塞全滅、港湾棲姫……損壊状態だ。もう虫の息らしい」
圧倒的すぎる。本来の『艦これ』ではあり得ない戦いであった。
「……日向さんの考えた通りになりそうね。じゃあ皆、次の航空攻撃の準備が整い次第接敵しましょう。残存敵艦隊の接近は?」
「今のところないな」
日向の言葉に瑞鶴は『よしっ』と頬を叩いて気合いを入れた。
「皆、頼むわよ。この戦い……絶対負けられないんだから‼」
やがて、Hornetの『熟練艦載機整備員』妖精とSaratogaの『熟練甲板要員』妖精が顔を出し、サムズアップする。
航空攻撃の準備が整ったのだ。
それを見た瑞鶴を先頭に艦隊は進み、港湾棲姫の射程内に入った。
「いきます!航空隊、発艦始め‼」
もうズタボロになった港湾棲姫から目標を変更し、敵随伴艦隊に視線を移す。
真っ白な躰と艤装が特徴の重巡棲姫は、それまでの重巡とは比較にならないオーラを放っている。
「いきます!直掩隊も、攻撃隊の援護に回って‼」
航空隊が飛び立つと、明らかに重巡棲姫は驚いていた。まさかいきなり航空攻撃を受けるとは思わなかったらしい。
というか、深海棲艦側で情報共有が為されていないのか、このような場合に対する対処がとにかく疎かなのだ。
そんなことを瑞鶴が考えている間に、攻撃隊が対空砲火を潜りながら突っ込んでいく。
瑞雲や彗星を含めた急降下爆撃は敵艦隊を損傷させる。高角砲や機銃が損傷すれば、当然ながら対空砲火が減衰し、明らかに密度が減る。
特に三号弾は大量の子弾をばら撒き、空母ヲ級の甲板も損傷させて航空機の発艦を阻止してくれる。
そこにSkyRaiderが接近し、大量の魚雷をばら撒いた。
まるで重雷装巡洋艦が一斉に魚雷をばら撒いたかのような勢いで魚雷……しかも、音無の命令でより性能の高い電池式魚雷に改良された航空魚雷が向かっていく。
敵艦隊が避けようとしたところで、急に周囲に水柱が上がった。
「!?」
狭叉されたことに気付き、思わず艦隊の動きが乱される。
当然、魚雷への回避運動は大きく遅れた。
「!」
回避することもできず、多数の魚雷が次々と命中する。
多数の爆炎と煙のあと、残っていたのは重巡棲姫のみであった。
「……流石に頑丈ですね。ですが、あれならばほとんど攻撃できないでしょう」
Saratogaの言葉に瑞鶴も頷く。
すると、後方を振り返った翔鶴が『あっ』と声を上げた。
「港湾棲姫が倒れました」
戦車隊と自走砲隊の攻撃を受け続けた港湾棲姫は、音無艦隊に一撃を与えることもなく炎の中に消えていった。
あまりにも圧倒的、あまりにも強すぎる。
ここまでくると、もはや哀れさすら感じてしまう。
残るは、重巡棲姫のみだ。
「敵も長射程ですから、いっそ懐に飛び込んでしまいましょう」
翔鶴の言葉と共に艦隊は増速し、重巡棲姫に副砲を撃ちこんでいく。
ただでさえダメージが蓄積している重巡棲姫はさらに損傷がひどくなり、主砲もほとんど撃てない状態になっていた。
重巡棲姫の発砲が遠弾になったことを確認した直後、伊勢の体が光り出した。
「さぁ、行っちゃいますか‼」
カットインが発動し、重巡棲姫にさらに砲弾が命中する。その直後、伊勢と日向が連続で主砲、高角砲、そして機銃を次々と撃ち込んだ結果、遂に重巡棲姫も海の底へ沈んでいったのだった。
「……ふぅ。なんとか手傷を負うことなく倒せましたか」
「負傷しなければその分、資材の消耗を防げるもんね」
「これまでの戦いで港湾棲姫の行動パターンを把握しておいたお陰だわ」
Saratogaと五航戦姉妹の正直な言葉に全員が苦笑していると、日向が顔を引き締めた。
「瑞雲より報告。艦娘らしい影を確認したそうだ」
近づいてきたのは、緑色の服が特徴的な空母らしい艦娘だった。
「鎮守府所属の艦隊かしら?」
「えぇ、そうよ。付いてきますか?」
元気溌剌という言葉が似合いそうなその少女は、『よしっ』と言って頷いた。
「お願いします‼」
こうして、艦隊は想像以上の大戦果と共に帰投した。
「雲龍型航空母艦、三番艦、葛城よ!え?水上防空砲台ですって?ち、違うわよ‼提督(あなた)、なに言ってんの!」
「初めまして。まるゆ、着任しました。え、聞いてない?そんなぁ~‼」
まるゆの余りの小ささには、さすがの音無も驚いていた。
「えぇと、まるゆって確か……陸軍が輸送のために作らせた潜水艦だったよな?」
まるゆ。
連合軍側の潜水艦や航空機の猛攻で全然成功しない輸送作戦と、海軍の貧弱過ぎる護衛体制に業を煮やした陸軍が『そんなら自分たちで輸送用の潜水艦造ったれ!』ということで、機関車や鉄橋などの工場に命じて作らせた戦時急造型の小型潜水艇である。
ハッキリ言ってしまうと潜水艇としては『駄作』と言わざるを得ない存在で、魚雷すら積んでいないのだ。
主武装は自衛用の37mm単装砲(九五式軽戦車の主砲の流用とも)のみで、乗員も『機械に慣れているから』という判断で貴重な戦車兵を引き抜く有様であった。
そもそも、運べる物資の量だって大した量ではない。
しかも最初は海軍にも内緒で作っていたのだが、後に海軍に存在がバレると海軍側も『しょうがない』ということで知恵を貸すようになり、ひとまず形になった存在である。
「なんというか……日本軍の面倒なしわ寄せを一挙に食ったような存在なんだな……」
「ホントよねー。あんた、ホントにちゃんと潜れるのかしら?」
「むぅ~!潜れます‼まるゆはちゃんと、潜れるもん!」
「……そのセリフ、変わらないわねぇ」
「え?大井はまるゆを知っているのか?」
大井は『まぁね』と苦笑した。
「実はね、この子と私が出くわしたことがあったのよ。その時私は『潜水可能なの?』って聞いてやったの。そうしたらこの子ね、『失礼しちゃうわ』って返してきたのよ。海のことはなーんにも知らない陸(おか)の子のクセに、ナマイキよねー」
大井はツンツンとつつくが、嫌みな感じではない。どちらかと言うと『手のかかる子でしょーがないわ』と言う感じだ。
「も、もう、大井さんったら!まるゆ、ちゃんと頑張れます‼頑張れるんだもんっ!」
「なら、ちゃーんとウチの提督のために頑張りなさいね?」
「うぅ……が、頑張るもんっ」
その健気さは色ボケと化している音無をして『天使じゃなかろうか』と思わせた。
ちなみにこのまるゆ、ある幸運を呼んだのではないかとされる逸話がある。
とあるまるゆに乗っていた陸軍兵が戦艦大和を目撃し、海軍式の敬礼を取ったところ、大和側も最大限の礼をまるゆ側に返したというのだ。
まるゆの乗員は大和の立てた大波でずぶ濡れになってしまったらしいが、世界最大の戦艦が、ちっぽけな潜水艇……しかも陸軍の潜水艇に敬礼してくれたという事実に、感激した艇長は海軍贔屓になってしまった。
当然、陸軍上層部からは煙たがられて別の地方へ左遷されてしまった。
しかし、その左遷で広島を離れたわずか数日後、広島にあの悪名高いB公から、『小さな少年』が落ちてきたのだ。
知られている通り、広島は完全に焼け野原となった。
これを見ると、『まるゆが幸運を運んできたのではないのか?』と思える話である。
閑話休題。
音無はまるゆのことをイムヤたちに任せると、次の艦娘の方を向いた。
しかし、残りの艦娘はデータにない艦娘ばかりだった。
「ボンジョルノ。わ、私、Zara級重巡洋艦の2番艦……Fiume、と言います。せ、戦艦とだけは、もうやり合いたくないです……」
「フィウメ……ザラの妹でポーラのお姉ちゃんか‼」
Fiume
Zara級重巡洋艦の2番艦で、マタパン岬沖海戦では姉妹館艦と共にイギリスのWarspiteと戦いを繰り広げたが、残念なことにZara、Polaと共にその戦いで撃沈されている。
それもあってか、Zaraたち同様にWarspiteのことがトラウマらしい。
「……あ、あの。もしかしてこの鎮守府……Warspiteさん、いますか?」
「あぁ、いるよ。確か、ウォースパイトを含めた英国艦隊と戦って沈んだんだったな」
「そ、そうです……」
姉妹たちと比べても、どこか自信が無さげに見える。
だが、音無からすれば『当然の話』である。
「そもそも、重巡が多少集まったところで戦艦、まして38cmの大口径砲を装備した戦艦に勝てるというのは相当な奇跡が起こらないと厳しいはずだ。悪いのはお前じゃない。お前をそんな戦いに投入することを決定した当時の指導者及び軍の連中だ」
まさか自分の存在意義をスパッと肯定されるとは思っていなかったらしく、Fiumeはポカンとしていた。
すると、彼女の後ろから『そうよ』と同じ声が響く。
Fiumeが振り返ると、姉のZaraと妹のPolaが立っていた。
「久しぶりね、Fiume」
「Fiume姉さま、お久しぶりです~」
「あっ、Zara姉さま!Polaも……相変わらずお酒ばっかりなのねぇ……」
どうやら、他の姉妹からしてもPolaの吞み助っぷりは有名だったようだ。やはりアル重の名は伊達ではないらしい。
「大丈夫ですよ~、姉様。この鎮守府は~、今まで敵同士だった艦娘も仲間になって一緒に深海棲艦と戦っているんですよ~」
「そ、そうなんですか?」
Fiumeが音無の方を向くと、音無も『あぁ』と肯定した。
「ほら、見てみな」
Fiumeが外を見ると、伊58(ゴーヤ)と談笑するIndianapolisや、Kormoranと輸送船団の護衛について話し合っているSidney、HoodとBismarck、そしてArk LoyalにPrince Of Walesと、因縁溢れる3人も仲良くティータイムと洒落込んでいた。
「こんな感じで、今は同じ目標に向かっていく仲間なんだ。船だった時には色々あったかもしれないけど、これからは頑張って欲しい」
「あ、ありがとう、ございますっ」
にこやかに微笑んだその笑顔は、ZaraともPolaともよく似ていた。
性能数値と声帯の妖精さんはPolaと同じで1つ。
次は、同じようにイタリア艦娘っぽい雰囲気だったが、駆逐艦のように見えた。ただし、胸部装甲はそれなりに……少なくとも、萩風たち『乳風組』並はあるように見える。
「初めまして~!私はソルダティ級駆逐艦の8番艦、カラビニニエーレだよ~!」
「ソルダティ級駆逐艦……第二次世界大戦時のイタリア最後の駆逐艦、だったな」
「そう!私は戦後まで生き延びて、装備試験艦にもなったんだよ~!」
ソルダティ級駆逐艦。
王立イタリア海軍最後の駆逐艦にして、もっとも成功したと評価されている駆逐艦である。
排水量は2400t前後と日本で言えば陽炎型・夕雲型に近い。
12cm連装砲は変わらないが、なぜか『12cm榴弾砲』を装備しており、対地攻撃が得意なのも特徴だ。
中でもカラビニニエーレは本人の言う通り戦後まで生き延びており、装備試験艦になっている。
「(明石や夕張あたりとは気が合いそうな子だな……)」
速力も38ノットと、日本で言えば特型駆逐艦並みの高速を発揮することが可能だったという。
マエストラーレ級に比べて200t以上排水量が大きいが、船のサイズはほぼ同じであるため、能力もそれに準じている。
数値は運が初期で40であること以外はマエストラーレ級と同等である。
だが、武装がマエストラーレ級より多かったことからか、スロットが初期の時点で3つあると共に、装備が異なる。
○ 120mm連装砲
○ 12cm榴弾砲(火力+1・装甲+1・命中+1・対地攻撃補正×1.25倍)
○ 533mm三連装魚雷発射管
改装しても3スロットだが、改二であるDueまで改装すると、装備試験艦という艦種に変更され、なんと4スロットになる。
その代わり、装備は無装備となるが。
「へぇ……こりゃ面白そうだ。せっかくなら、色々実験してみてくれよ。ウチにもそう言うの好きな子がいるからさ」
「はいっ!提督さんのお役に立てるよう、頑張りますっ♪」
ニコニコした笑顔に癒されたのか、思わず音無が頭を撫でる。
カラビニニエーレも嬉しいのか『えへへ~』とはにかんでいた。
なお、イラストレーターは当然イタリア艦娘担当の方で、声帯の妖精さんは親潮と同じ方で1つ。
続いては、上品な制服を着た少女だった。
なお、胸部装甲はカラビニニエーレ同様に中々立派である。
「Nice to Meet You。私はTrybal級駆逐艦の1隻、アサバスカンでございます」
「トライバル級駆逐艦……イギリスが建造した大型駆逐艦か。カラビニエーレたちと同じタイプか」
「えぇ。英国連邦であるカナダやオーストラリアのためにも建造された、世界各地に渡っていった船ですのよ」
Trybal級駆逐艦。
イギリスが日独の大型駆逐艦に対抗するために12cm連装砲を4基という重武装を備えた駆逐艦であった。
しかし、大戦中には対空防御力の強化のために3番砲を10.2cm連装高角砲に換装している。
対空兵装の射角を取るために後部マストと煙突を短縮しており、それが大きな特徴ともなっている。
大戦では多くの海戦に参加し、16隻中4隻しか生き延びなかった、と言えばその投じられた戦いの激しさがうかがえるだろう。
なお、カナダとオーストラリアのTrybal級駆逐艦は近代化改修を受けて朝鮮戦争に参加し、このアサバスカンは1966年まで現役にあったのだ。
「へぇ……じゃあ武勲艦なんだな」
「はい。申し付けていただければ、船団護衛から艦隊決戦まで、なんでもこなして見せますわ」
武勲にもかかわらずかなり上品な言葉遣いである。
数値はほぼ陽炎型と同じであるが、改装すると高角砲を持ってくる。
装備は以下となる。
○ 12.7cm連装砲
○ 53.3cm四連装魚雷発射管
改装すると大幅に対空値が伸びて、『10.2cm高角砲』と『12.7mm四連装機銃』、さらに『SGレーダー』を持参する。
「じゃあ、よろしく頼むよ。ウチは色々な艦娘に様々な仕事をやってもらっている。正直言って、かなり忙しくなると思うからよろしく頼むぞ」
「うふふ。駆逐艦はいわばWorkhorse……軍馬と言うべき存在ですわ。忙しい艦橋こそ望むところ、です」
「おっ、そりゃ頼もしいな」
ちなみにイラストレーターは英国艦娘担当の方で、声帯の妖精さんは恋愛をサーキュレーションする歌を歌う方、ドジな眼鏡ウィッチの声で1つ。
さらに続いて現れたのは、ThorやKormoranによく似た雰囲気の艦娘だった。
ただし、掲げている国旗はイギリスの国旗だった。
「Harrow。私は特設巡洋艦、Rawalpindiと申します。できれば……戦艦とはもう撃ち合いたくないですね」
Rawalpindi
元々はイギリスのP&Oライン社が建造した1万6千tの古典的な貨客船である。
他の貨客船同様に、第二次世界大戦勃発と同時に徴用されて特設巡洋艦として任務に就くことになった。
8門の15cm単装砲を配置し、20mm単装機関砲や探照灯、さらに測距儀なども設置されるなど本格的な改装を施された。
しかし、就役直後の1939年11月10日、北大西洋の哨戒のために出撃したRawalpindiは、その12日後に不運にもScharnhorstとGneisenauに出くわしたのだ。
速力17ノットの特設巡洋艦では、逃げることもできない。かと言って、片舷5門の15cm砲しか頼れる武装のない状態では勝ち目もない。
そのため、Rawalpindiはただ撃たれるだけの的に過ぎなかったのだ。
「じゃあ、シャルとゼナと撃ち合って撃沈したっていう船だったのか……いくら戦艦としては砲撃力が弱いって言ったって戦艦とやり合うってのはスゲーな……」
「まぁ、こちらはロクに打撃を与えることもできないまま袋叩きにされてしまいました……しかも私は沈む際、極寒の海に乗員たちの多くを投げ出してしまいました。結果……仲間のチトラルが助けるまでに生存していたのは10人だけだったそうですわ」
船の事件、戦いで生存者が少ない事例はいくつもある。Sidneyのように生存者皆無という悲惨な場合もある。
だが、このRawalpindiの場合は基本的に救命ボートも役に立たない北の荒海だった。
そう言った自然環境なども考慮すると、大西洋はとても厳しい海域である。太平洋で日本軍の損害がやたら増えていたのは、単純に日本軍の無策と愚策が原因である。
「特設巡洋艦なら、船団護衛や遠征に同行してもらって補助してもらえるな。うちはどんな奴でも働ける場がある。あと……ウチにはシャルとゼナの2人もいるけど、これからは仲間になるんだ。仲良くしてくれると嬉しい」
「ふふふ。日本の言葉にもありますものね。『昨日の敵は今日の友』と」
「よく知ってるな‼」
イラストレーターは英国艦娘の人で、声帯の妖精さんはアメリカ重巡や防空巡洋艦と同じ声の人で1つ。
こうして、また音無たちの元に新たな仲間が集った。
果たして、彼らはこの先どの道へ進むのか……
はい、またも特設巡洋艦の登場です。
戦力にならねー、とか言わないでね♪