※この作品はR-18です。

音無提督の艦娘救済道~ハーレム仕立て   作:笠三和大

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今週の投稿になります。
前回までで1-5を除き、鎮守府近辺は解放されたわけですが、果たして今後どうなるか……

そして今回、ある意味衝撃の事実が明かされます。
この物語の根幹にかかわる、かもしれませんね。


追撃戦と祝勝会

 出撃した6隻はゆっくりと大海原を進んでいく。

 偵察機が多数飛び回り、敵の姿を捜索する。

「艦載機より入電。『ワレ敵艦隊発見ス。空母ヲ級2隻、重巡リ級2隻、軽巡ヘ級、駆逐ニ級各1隻』とのこと!」

「蒼龍、行くわよ‼」

「対空見張りを厳として、よろしくねっ!」

 2人が艦載機を発艦させると、紫電改二が高速で飛行していく。敵艦隊を発見した彗星一二型甲は、勢いよく急降下を開始する。

『ヒャッハー!』

『オブツハショウドクダー‼』

 ちなみに妖精さんに過激な発言が多いのは、旧軍のパイロットの魂が宿っているから……という話もあるとかないとか。

 実際一部の機体には『江草』や『友永』、『村田』など、大戦で著名なパイロットの名前を冠する艦載機も存在するのだ。

 それを考えれば、あながち眉唾とも思えない話である。

 それはさておき、『紫電改二』の圧倒的な戦闘能力もあって、余裕を持ちながら制空権の確保に成功する。

 そして、急降下した彗星の爆撃を受け、あっという間に駆逐二級と軽巡ヘ級が轟沈、空母ヲ級も小破した。

 航空攻撃が成功して敵艦隊に接敵すると、戦艦と重巡から偵察機が飛び立った。この機体は敵艦隊上空で旋回し、弾着観測射撃を可能としてくれる。

 特にScharnhorstは昼戦火力が重巡に毛が生えたくらいなので、弾着観測射撃による追撃はありがたい。

「さぁ、戦いの始まりだ‼」

 Scharnhorstの威勢のいい声に鼓舞されるように、各艦は戦闘準備に入る。

 元々射程は戦艦としても長いScharnhorstは既に攻撃可能な範囲にあるが、より高い命中精度を期待するならば全艦の射程範囲に入らなければならない。

 一番短いのは熊野の中射程なのだが、そこは重巡リ級の射程内なので危険度はより高まる。まして、制空権を取ったとは言っても、空母ヲ級も中破するまでは航空攻撃を仕掛けてくるため、油断はできない。

 今回は低速の扶桑と陸奥がいるため、回避が難しくなりがちである。

 おまけに、開発に成功しているとはいえ敵機の軌道を察知する『対空電探』や、敵機を一度に撃墜できる『三式弾』を装備していないので、対空能力は割と低いのが現状だ。

 なので……

「戦艦、一斉射!」

 戦艦3人が一斉に主砲を斉射すると、それと同時にヲ級が頭の帽子部分(と言っていいのかどうかも不明だが)を開いて艦載機を発艦させようとしてきた。

「間に合え!」

 あわや艦載機が発艦するかどうかという瞬間、敵艦隊の近くに多数の砲弾が落下した。

 これにより侠叉弾となって敵艦隊を動揺させることに成功する。

「参りますわ!」

 熊野を筆頭に4隻が一気に副砲を斉射すると、敵艦隊は目に見えて隊列を乱した。

今回雷撃は雷装を積んでいるのは熊野とすの雷装値を持つScharnhorstだけなので、敵への牽制くらいにしか使えないため、今の時点では使わない。

 そんなオロオロした敵艦隊を尻目に、戦艦たちは主砲のリロードが完了する。

「空母は獲物!放てぇ‼」

 Scharnhorstの特性『敵空母発見』(要するにネルソンタッチなどと似たようなモノ)は、航空機運用能力を持つ深海棲艦(鬼・姫級含める)に対しての攻撃力が1.2倍になるというもので、空母との戦いではそのアウトレンジ砲撃能力も含めて大きな戦力となることは間違いない。

 これはScharnhorstが通商破壊を主眼に運用された存在であったものの、イギリスの輸送船団を攻撃するべく姉妹艦のGneisenauと共に赴いた『ノルウェー沖海戦』において、イギリスの航空母艦『Glowrias』を砲撃で撃沈したことから得られた特殊能力である。

 ちなみに、他に砲撃で沈められた空母は、アメリカの護衛空母『Gambia Bay』なのだが、これは一説によると金剛型戦艦を含めた日本水上艦隊の砲撃で撃沈されている。

 だが、Scharnhorstたちは間違いなく戦艦の砲撃『のみ』でGlowriasを撃沈していることから、空母に対する特攻特性が備わっているようだ。

 その砲撃は凄まじく、扶桑や陸奥の攻撃も加わって強烈であった。

 水しぶきが収まった頃に残っていたのは、小破した重巡リ級1隻、中破した旗艦の空母ヲ級、小破のヲ級1隻であった。

 つまり、敵はまだ航空攻撃を可能としていた。

「全速前進!敵機の攻撃を回避せよ‼」

 艦隊は急加速を試みるが、やはり速力の遅い陸奥と扶桑が出遅れる。

 そこに、ヲ級の放った艦載機が上空から急降下して攻撃を仕掛けてきた。

「ダメだ、避けきれない!」

 やはり、鈍足の扶桑に攻撃が集中……するかと思われたが、陸奥と2隻にバラけたのか、双方小破で済んだ。

「やだ、当てたのね!?」

「ああぁぁーーっ!?やだっ、火災発生!?」

 幸い火災は起きていないようだが、できる限り早く仕留める必要がある。

 ちょうど丁字有利状態に持ち込んだところで、再び副砲を斉射すると、ヲ級とリ級は攻撃動作を中断させられ、鬱陶しそうな顔を見せる。

 そして、そんな状態を逃す彼らではなかった。

「アウトレンジで……決めたいわねっ‼」

 瑞鶴と蒼龍から放たれた攻撃隊は寸分違わず2隻に航空雷撃を見舞い、リ級は轟沈、ヲ級も大破状態となったために浮かぶだけの鉄屑と化した。

 そして主砲を一斉射しようとした時、陸奥が光り出した。

「敵艦発見、全砲門、開け‼」

 色っぽいお姉さんといった風情の陸奥だが、戦いとなればキリリと引き締まった表情を見せる。そして、砲撃カットインによってヲ級は海の底へと沈んでいった。

「やりました‼」

「まさか私たちが空母を撃滅できるとは……やればできるものですね」

 榛名と扶桑が悦んでいると、熊野がなにかを見つけた。

「アレは……なんですの?」

 それは、真っ白な髪の毛の少女だった。

「どこかの鎮守府の艦隊かしら?」

「えぇ、あなたも来ますか?」

「そうね……行く当てもないし、せっかくだから付いていくわ」

 こうして、損害は軽微な状態で主力艦隊は帰投した。

 

 

「Admiral、今帰ったぜ~」

 Scharnhorstの陽気な声に、音無もつい顔がほころぶ。

「お疲れさん。えぇと、この子は……?」

 少女は敬礼すると、ハキハキと名乗りを上げた。

「長良型軽巡洋、4番艦の由良です。どうぞよろしくお願いいたしますっ」

「おぉ、長良の妹か」

 由良。本人が名乗っている通り、長良型軽巡洋艦の4番艦である。

「なんだか……姉妹っていう割には長良とはずいぶん雰囲気が違うな?」

「あ、それに関しては色々事情がありまして……」

 長良型は由良以降の鬼怒、阿武隈に関しては装備や構造物の一部が異なっていることから、容姿が上の姉妹とは異なるという一面があるのだ。

「戦闘、護衛もこなしますけど、こう見えて潜水艦とも戦えるんですよ?」

「……確かに。結構オールマイティな感じだな」

 数値を見ると、確かに『対潜』の初期値が他の軽巡や駆逐艦に比較すると高めであるため、ちょっと装備を整えてやればあっという間に対潜番長になってくれる(ただしアーケード的に、という注釈が付く)。

 特に改装すると装備が3つ搭載できるので、『三式爆雷投射機』と『三式水中探信儀』を1つずつでも装備して『ヴェールヌイ』や軽空母辺りと組ませようものならば、潜水艦マップ(1ー5)では無敵と言っていい戦闘能力を見せてくれる。

 さらに改二になれば対空能力も大幅に向上するため、多機能艦として高い活躍をしてくれることは間違いない。

「よし、早速だがこの近海に深海棲艦の偵察潜水艦隊がいるという情報が入っている。直井の元で対潜哨戒艦隊を組んで行動してほしい」

「はっ。了解しました……え?」

 音無は執務室にいるゆり、日向、直井のことを紹介した。

「ゆりは引き続き解放した海域の掃討・警備艦隊の指揮を、日向は製油所までの遠征艦隊の指揮を執ってくれている。直井にはまだ役目がなかったから、せっかくだし一番重要な鎮守府近海の対潜哨戒を頼みたい。お前が一番頭脳派だからな」

 音無としては、直井のやり過ぎとも言える所に辟易する部分もなくはないが、それでも自分を慕ってくれている可愛い舎弟で、同時に戦線メンバーとしては頭脳面で能力が高い。

 そこを買ったのだ。

「お任せください‼この直井文人がいる限り、鎮守府近海に潜水艦は1隻たりとも近寄らせません‼」

 直井はと言えば、音無に重要なポジションを任されたのがよほど嬉しかったのか、まるで犬がご主人様に尻尾を振るがごとく目を輝かせながら任を受けたのだった。

 由良はそんな直井を見てポカンとしているが、横から日向がつつく。

「ま、性格は破綻してるけど能力はピカイチだ。それは間違いねぇから安心しな」

「は、はぁ……」

「そうなると、由良と一緒に行動してもらう艦娘を考えないといけないか……」

 すると、ゆりが軽くウインクした。

「それならいい子がいるわよ。今日の掃討作戦で天龍たちが見つけてきた子がいるんだけど……入ってちょうだい」

 扉が開くと、駆逐艦が4人、軽巡が2人立っていた。

「6人!?また随分と頑張ったな……」

「ホントよ~。天龍たちには交代で何回も出撃してもらったから、後でちゃんと労ってあげてね」

「あ、あぁ……」

 そこには、小柄な少女が4人、そして由良と同じくらいの少女が2人立っていた。

「あんたが司令官ね。ま、精々頑張りなさい」

「あたし、文月っていうの。よろしくぅ~」

「木曾だ、お前に最高の勝利を与えてやる」

「五十鈴です。水雷戦隊の指揮ならお任せ。全力で提督を勝利に導くわ。よろしくね」

「暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね?」

「響だよ。その活躍から、不死鳥とも呼ばれてるんだ」

 どうやら、今回も多数の艦娘と出会うことができたようだ。しかも、全員練度を上げれば改二にまでなる艦娘たちである。

 最初に挨拶した叢雲、暁は特型駆逐艦として最前線へ、文月は大発動艇を搭載できるようになるので輸送任務に、木曾は雷巡になるため火力が大幅に上がり、五十鈴は由良と同じくオールマイティ軽巡となる。

 響は先ほど由良のところで説明したヴェールヌイになり、総合的に優れた駆逐艦となる。

「皆それぞれに面白そうなところがある子ばっかりだな」

「でしょ?天龍たちが、あちこち駆けずり回って見つけてくれたんだから。暁ちゃんなんて、軽巡ホ級3隻に追っかけられてたのを龍田が助けてあげたのよ」

 それは言われたくなかったのか、暁が顔を真っ赤にしながらゆりに詰め寄る。

「ちょ、ちょっと仲村副提督!余計なことは言わないで欲しいわ‼」

「ん?副提督?」

 音無は何気なくゆりと日向、そして直井に艦隊の一部を任せることを決めていたが、暁の発言を聞いて疑問符を浮かべた。

「え?ここの鎮守府の提督補佐の方でしょ?」

 驚く音無たちに、大淀が『言い忘れていましたが』と付け加えた。

「音無提督が主であるというのは間違いありませんが、この鎮守府は外部……特に本土からの支援が滞りやすくなるため、限定的ではありますが提督権限を持つ方として仲村ゆりさん、日向秀樹さん、直井文人さんと岩沢まさみさんの4名が任命されています……ご存じなかったのですか?」

「知らなかったよ‼そんな事情あるなら最初に話しておいてほしかった‼」

 音無が鋭くツッコミを入れたことで大淀が思わず委縮しながら『す、すみません……』と縮こまる。音無も少し語気が強かったかと反省し、咳払いをすると大淀に『悪い、言い過ぎた』と謝った。

「い、いいえ……最初から役割分担をされていたので、てっきりご存知だったのかと……」

「知らなかったよ……艦娘がこれからも増えるって、チャーから聞いていたから分担すれば効率よく守ることができるとは思っていたけど……まさか提督権限が複数あるのが珍しいことだったなんてな……」

 とはいえ、お陰でSSS鎮守府はいい形で運営ができているのも事実である。

「まぁ、そういうことだから、皆よろしくな」

「いいだろう。無能な指揮官ぶりを見せてくれるなよ?」

 木曾の強気な言葉に直井が『何様のつもりだこのアマ催眠術かけるぞ』と言わんばかりに睨みつけたが、音無がチョップ一発で黙らせた。

 文月や響も流石に苦笑している。

「え~……とりあえず本日は、完全に鎮守府正面海域を解放したことになる。せっかくだから祝勝会をやりたいと思う」

「へぇ。てっきりこのまま飯食って寝て終わりかと思ったぜ」

 Scharnhorstはビックリと言わんばかりに目を丸くした。

「いつもいつも『油断するな』、『気を引き締めろ』ばっかりじゃ皆張り詰め過ぎて持たないからな。弓も使わない時には弦を外すし、銃だって使わない時には弾を抜く。そう考えれば、今日くらいは羽目を外してもいいんじゃないか?」

 音無の寛容な言葉に、思わず艦娘たちが顔を輝かせたのは言うまでもない。

「提督‼ありがとうございます‼」

「私もご相伴にあずかってよろしいのかしら?」

「これで翔鶴姉がいれば言うことなしね!」

 主力艦隊の面々もかなり喜んでくれている。

 そんなはしゃぐ姿が、普通の女の子のように見えてしまったことで、音無は思わずクスリと笑っていた。

「さて、と。鳳翔さんや間宮には負担をかけることになりそうだけど……たまにはいいだろ」

 

 

 その夜、現在所属している艦娘とSSSメンバーを集めた音無は、広場に集まった面々に顔を見せた。

「まずは艦娘の皆。まだまだ若輩の提督だが、こんな俺に付いてきてくれて本当に感謝している。おかげで鎮守府の正面海域を開放することが完了した。だが、恐らく敵は今後もこの海域を取り戻そうと、断続的に部隊を送り込んでくるだろう」

 深海棲艦が再び侵攻してくる、という言葉に艦娘たちは表情を引き締めた。

「再び奪われないようにするために、なんとかローテーションを組んで皆で警戒して守っていければと思う。だが、今夜は特別だ。鳳翔さんや間宮がいっぱい料理を用意してくれた。一杯飲んで、食べて、楽しんでくれ‼」

 そして今度はSSSメンバーの方を向く。

「皆、一番新米だった俺がこんな形で指揮を執り、皆にはつらい肉体労働ばかりさせていること、本当にすまないと思う。だが、神様にケンカを売ろうとした俺たちだ。これくらいで音を上げていたら、あの世界で信じた俺たち自身に笑われるだろう。あの時の自分に笑われないよう、俺もやれる限りを尽くす。世界とか俺のためなんて言わない。皆が好きだった人、もしくは信じてきたゆりのためにでも、皆にも頑張って欲しい。だから、俺なりの感謝のつもりで、皆にも、今夜は楽しんでもらいたい。では改めて……乾杯‼」

 艦娘、そしてSSSメンバーが一斉に『カンパーイ‼』と声を上げ、ワイワイと騒ぎ始めるのだった。

 一部の艦娘はメンバーとも交流を始める。

 メンバーとしても戦線の女子以外と交流できる機会は貴重だからか、皆嬉しそうだ。

 音無もそんな面々を見つつある2人を探していた。

「おっ、いたいた。天龍、龍田」

 音無の声に気付いた2人が振り向くと、心なしか嬉しそうに見えた。

「今日は随分とあちこちを回ってくれたんだってな。暁に至っては追っかけ回されてたって」

「そうなのよ~。ホ級3隻だったから古鷹さんと私たちでボコボコにしちゃいました~」

 軽く言っているが、数は力。軽巡級が3隻で駆逐艦1隻を追い回していたという時点で、結構危険な状態であった。

「おかげで暁が俺たちの仲間になってくれた。いつも掃討艦隊に駆り出して大変だとは思うが、これからも頼むぞ」

「フンッ、任せとけってんだ」

「うふふ~。頑張りまぁす」

 2人から離れると、なにかが腕に絡みついてきた。

「うぉっ、如月!?」

「もおぅ。司令官ったら如月をほっぽって他の人のところに行くなんてぇ~」

「言い方!もうちょっと言い方‼」

 すると、寄ってきた妙高がそんな如月を嗜めた。

「如月さん。それは曲がりなりにも提督に対しての態度とは言えませんよ?」

「あぁら、妙高さんだって本当はこうしたいんじゃないのぉ?だって、この間の夜、執務室の机の側で……」

 なにかシていたらしい妙高は顔を真っ赤にして如月に詰め寄った。

「だ、誰も見ていないと思ったのに!?どこまで!?どこまで知っているんですかぁっ!?」

「うふふ~、しーらない~」

 対して如月は余裕の表情である。曲がりなりにも重巡のお姉さんを翻弄できる辺り、その小悪魔ぶりは流石というほかない。

 そんな2人からこっそり離れると、今度は蒼龍の前に出ていた。

「あっ、提督。お疲れ様です」

「蒼龍。今回の戦いはお前と瑞鶴がいなかったら厳しかったよ。ありがとな」

 蒼龍の頭を撫でてやると、猫のように『にゅふふ』と言いながらも嬉しそうに撫でられる。

「も、もう~……あまり揺らされると九九艦爆の整備に支障が出ちゃうよぉ~」

「?どういう意味だ?」

 すると、チャーが音無の肩に『ポン』と手を置いて『知らない方がいいこともあるぜ』と悟ったようなことを言った……後に九九艦爆が彼女のその豊満な胸のことを表していると知って、音無が真っ赤になるのは別の話。

 他方を見れば、鈴谷と熊野も楽しそうに食事している。

「これは……神戸牛ですの?」

「んなわけないじゃーん。たぶんオージービーフ。ここって本土よりオーストラリアの方が近いんだから、そっちだと思うよ~」

 意外にも鈴谷はちゃんとお姉さんしているらしく、贅沢な趣味の熊野を嗜めるような姿も見られる。

 皆がワイワイ騒いでいる中、音無は1人その喧騒から離れるように浜辺へ出た。

 1人になると、思わずかなでのことを思い出す。音無の心の中には未だにかなでへの想いがある。だが、それも仕方がない。

 あの死後の世界で通じ合い、想いあった相手である。

 しかも、自分の心臓が移植された相手という、生きていては実現しなかった縁でもあった。

「……かなで。俺は、これでいいのかな?」

 確かに音無はかなでのことが好きだ。だが、そんな彼の心の中に今、1人の女性のことが強く根付こうとしている。

 そんな彼を見ている影があった。ゆりである。

「……音無君」

「ゆり?」

 ゆりは隣に座ると、徐に話し始める。

「いい景色ね。日本じゃ沖縄まで行かないと考えられないくらいキレイだわ」

「そうだな。この世界は今、こんな海を見ることすら難しいんだよな……」

 わずかな沈黙が2人の間に流れる。すると、ゆりが音無の方を向いた。

「かなでちゃんのこと?」

「……あぁ。かなでのことが好きだった……はずなのに、別の女の子のことが頭から離れなくなっている……俺は、最低だ」

 すると、ゆりが音無を自分の胸に抱きよせた。

「違うわ。確かに1人の女性を思い続けるのは立派かもしれない。けど、同じ世界で出会えない人のことをいつまでも引きずり続けるのは、ただの『未練がましい』思いでしかないわ」

「……やっぱりそうだよな」

 音無もゆりたちのように感情で動くことが多いが、合理性や現実を踏まえて考えることも多い。だが、なんとなく心の隅で認めなくなかったのだ。

 ゆりもそんな音無の心が分からないわけではなかった。死後の世界で、弟妹のことをずっと引きずり続けていたのが、他ならぬゆりだったのだから。

「……今だから正直に話すわ。私たちはもう……かなでちゃんに会えない」

「ッ……!」

 薄々感じてはいた。だが、やはり認めたくなかった。

「かなでちゃんは音無君の心臓で生き永らえ、それを自分のものにした。死後の世界でならばともかく……転生し、生き返るとなればそうもいかない」

 音無は黙ったままだ。だが、ゆりは続ける。

「どう足掻いても、転生して新しい体を用意されても、『同じ臓器を持つ存在』は、ましてや心臓……脳と同じ魂の器を持つことは許されないんですって」

 腎臓のように2つ存在していて片方を取っても問題がないというのであればいいのだが、かなでと音無は心臓で繋がっていた。

 先ほども述べた通り、それは死後の世界だからこそ許されたことである。

「だからね、かなでちゃんから頼まれたの」

「かなでから?」

 ゆりは『うん』と頷いた。

「『結弦が私のことを思い出にして、ちゃんと先へ進んでくれるように導いてあげて』って……アタシだってそんな御大層な人間じゃないけど、かなでちゃんから『ゆりにしか頼めないから』なんて言われたら、断れるわけないじゃない……」

「かなで……」

 どうやら、自分はかなりかなでに対して心配をかけていたらしい、と気づいた音無だった。

 だが、無理もあるまい。

 死後の世界で別れる時も、かなでより音無の方が相手に対する未練が強かったのだ。

 恐らくかなでは、自分のことを強く想い続けていた音無のことが心配で仕方なかったのだろう。

 音無は思わず涙を流す。かなでにはもう会えないことと、そんな相手に対してずっと未練を抱き続けている自分の情けなさの、両方でだ。

「……わりぃ、カッコ悪いとこ見せた」

「いいわよ。ただ、そんな姿を艦娘の前でならともかく、メンバーの前では見せないでよね?」

「……普通逆じゃ?」

「艦娘と貴方はもう持ちつ持たれつの関係よ。あなたは普段艦娘から頼られる存在であり、時には彼女たちに甘えることも許されている……音無君、あなたはただの音無結弦じゃないの。このタウイタウイ島の鎮守府を預かる、提督なんだから」

 その言葉が、音無の中にあるなにかを動かした。

「さっきも言ったけど、かなでちゃんのことを忘れろなんて言いはしないわ。でも、それを思い出にして、先に進みなさい。それが、かなでちゃんの望みでもある」

「かなでとのことを……思い出に……」

「そう。ほら、彼女が待ってるわよ」

「え?」

 振り返ると、ヤシの木の木陰にコップを持った千歳が立っていた。

「千歳……」

「ほら、後はあなたがちゃんとしなさい、提督さん」

 そう言うと、ゆりは一瞬音無の頬にキスをして、音無が『は!?』と呆気に取られている間に去っていった。

 入れ替わるように、千歳が音無に近づいてくる。

「そ、その……すみません、提督。盗み聞きするつもりはなかったのですが……」

「……いや、別に構わないよ。隠していてもしょうがないことだからな」

 謝る千歳に対して、音無もなぜか自然体になることができていた。

「ガッカリしたか?」

「え?」

「お前たちが信頼する提督が……昔の女、それももう会えない女のことを忘れられない未練がましい男で」

 音無は思わず自嘲的に呟くが、千歳は頬を膨らませると、音無に抱き着いてきた。

「そんなことありませんっ‼提督は……提督はいつも私たちのことを考えてくれる、素晴らしい方です!戦線の皆さんも、提督のことをとても信頼しています!それは、提督が間違いなく築き上げてきたものなんです!」

「お、おい千歳、その、当たって……」

「提督!提督は間違いなく私たちのことを思って下さる、素晴らしい方なんです!例え、誰がなんと言おうとも、提督は……私たちの心の支えなんです!」

 音無はだんだんと、千歳の迫力(胸部装甲含める)に圧倒され始めていた。

「ですから……」

 その時、千歳は音無に唇を寄せてきた。

「えっ、ちょ……」

 そして、マンガのように止まってしまうこともなく、そのまま音無と唇を合わせた。

「かなでさんのこと、忘れなくてもいいです。でも……今は私のことだけを見てください。そして……」

 千歳は上着に手をかけると、ゆっくりと脱ぎ捨てた。すると、水上機母艦時代から豊満な胸部装甲がより強調された煽情的な姿となる。

「どうか私に、甘えてください」

 その時、音無の心の中で『なにか』が弾けた。

 音無は千歳の胸に顔を埋めると、嗚咽を漏らしながら泣き始めたのだった……。

 

 

 どれくらい泣いていただろうか。5分かもしれないし、10分かもしれない。

 だが、気づけば音無は落ち着いていた。

「悪かったな。急にこんなことして」

「いいえ。私に甘えて下さるのは、とても嬉しいことです」

 音無が胸からチラリと視線を上げると、微笑む千歳の顔があった。

「提督、あなたをお慕い申しております。私は……」

 千歳が続きを言おうとすると、音無が人差し指で千歳の口を押さえた。

「そこからは、俺に言わせてくれ。いや、もっと早く言うべきだった」

 その真剣な音無の眼差しを、千歳もじっと見つめた。

 

 

「お前が好きだ。お前を、絶対に失いたくない。俺の側にいてくれ」

 

 

 音無の告白は、今度は千歳の心を弾けさせ、彼女の目じりには涙が溜まる。

「はい。私も、あなたから離れたくありません」

笑顔で自分に抱き着いてきた千歳を、音無もギュッと抱きしめた。そして、気持ちが落ち着いてきたと思ったら、別の感情がムクムクと鎌首をもたげてきた。

 

 

そう、『夜戦の準備』である。

 

 

 そして、そんな音無の変化が分からない千歳ではなかった。

「あらあら……提督、今夜は……千歳がい~っぱい、甘やかしてあげます♡」

「……ちくしょう、逆らう気になれない自分が情けない……」

「うふふ、気持ちいい♪」

 どうやら、千歳は頑張る音無を甘やかしたくて仕方がなかったらしい。




いよいよ次回、夜戦です‼夜戦‼
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