【SO3】聖王国の紅刃が堕ちるとき~背徳の淫紋から始まる英雄救済譚~【IF】 作:ばんどう
「んっ、んっ、んっ、んっ、あっ、あっ……!」
断続的なクレアの喘ぎ声が聖歌隊の美しい旋律の合間に聞こえてくる。最低限にしか剝いていない
男は資料室の閲覧席に腰かけ、クレアを自分の股間にまたがせている。いわゆる対面座位である。処女司令官の秘唇はいまだ暴かれず、その肉口を剛直になぶられ続けている。ふたりの粘液でぬるぬるにぬめった粘膜同士のフレンチキス。どれくらいそうしていたのか。アレンはゆるく単調に突き上げるだけだが、自慰すらまともに経験のないクレアには十分すぎた。鍛え抜かれた男のたくましさを堪能するようにしなだれかかってきて、形の良いヒップを懸命に前後させては腰まで流れる練り絹の銀髪をふりみだす。
細い外見とは裏腹に、およそ不釣り合いに量感たっぷりな乳房をこれでもかと見せつけては腰をくねらせる。その動きがだんだん処女とは思えぬ妖しさをはらんでくる。快楽を追うたびに、女の本能が精をしぼりとる動きを覚えんとしているようだ。
甘い鼻息を洩らすクレアの表情は、いつしかとろけていた。
「あ……アレン、さっ、ん……。も、もう……わたし……」
クレアのマフラーは取り払われ、白いうなじが桜色に染まっている。何度かアクメを迎えているクレアが、もどかしげに眉を下げて見つめてくる。白い歯が垣間見える瑞々しい唇をこちらの鼻先にまでゆっくりと近づけてきて、物欲しそうに右に左に顎をふりながら何度もあえいでいる。
剥き出しの肩。深い谷間に押し込めた
神聖な朝の礼拝時間。大聖堂のすぐ隣の神学資料室に連れ込まれた処女司令官は恋人でもない男にみだらに腰をふり、媚を売っているのだ。これを彼女のファンクラブの者たちが見たらどう思うだろうか。
いまのクレアはそれほどまでに普段とかけ離れている。
肉笠で恥丘をねぶるたびに、クレアの桜色の唇から甘い吐息が洩れる。
時折ぬぷりと、笠のへりが肉孔にはまって少しだけ入口を押し広げる。温かく、蜜まみれの肉襞が焦れたようにきゅうきゅうと肉笠を締め付けてくる。そのたびにクレアは大げさなほど体を震わせ、まるで
「んっ、んっ、んっ、んっ、ぅああんっ……!」
クレアの嬌声が切羽詰まってくる。
アレンは素知らぬ顔で、ぬちゅりぬちゅりと肉笠でクレアの恥丘をなぶるだけだ。
「んっ! んく……っ! ん……っ!」
クレアは唇を嚙みしめて、なんとか快感を得ようと頭をふる。そのいじらしさに嗜虐心をそそられる。
(――……どうしてこんなことをしているんだろう……?)
自分の腰のうえで乱れるクレアを見上げながら、アレンはぼんやりと思った。夢のなかをただよっている心地だ。なにか目的を持っていた気がする。
それはなんだったか――……。
聖歌隊の声が聞こえる。――そう歌だ。歌が詠唱の引き金となって、自分とクレアは手首に紋章を――そこまで考えて、アレンはハッと我に返った。
直後に、クレアがもたらすクレバス一帯の、ねっとりと甘く潤んだ快美感に息が詰まる。見ればみずからの怒張をむき出しにし、処女司令官の大切な蜜口にこすりつけている。
「なんっ……っ、っっ!」
混乱のなか、気を抜くと気をやってしまいそうで、アレンは喉をそらして女司令官の腰をつかんだ両手に力を込めた。クレアが甘い声をあげる。
その際、肉傘のへりが蜜孔の入り口をぬぷりと少しだけ押し入った。
「ぐっ……!」
本能が、反射的に突き上げようとするのを唇をかみしめてこらえる。――だめだ。抑えきれない。
そう悟ったとき、激烈な怒りが全身を駆け抜けた。
(――俺が、なんのためにっ!)
アレンの目に、閲覧席のテーブルに置かれたクレアの短剣が映る。
あとは考えるまでもない。
◇
どっと鈍い音とともに、クレアは目を見開いた。血が、飛び散っている。神学資料室の閲覧席。朝の礼拝もせず神聖な城内で快楽に耽っていたころ。マボガニー製の広々としたテーブルに、アレンの左手首が突き刺さっている。クレアのすぐ目のまえ。腰をつかんでいた両手の感触が消えたと同時に、突然それは起きた。
鼻先で、アレンがテーブルに突っ伏すようにうつむき肩で息を切らしている。
「ぁ、……アレン、さん……?」
あまりに一瞬の出来事に、クレアの思考は数秒、空を切った。
太ももの付け根に押し付けられていた肉胴がゆっくりと離れていった。冷たい。肉竿の代わりに空気が触れてきて、思わず身震いする。
「さすがは女王の刃、クリムゾンブレイド。いい得物をお持ちですね……」
吐息混じりにアレンが言いながら、おのれの手首を突き刺した短剣を引き抜く。琥珀色にきらめくテーブルに、刺した衝撃の強さを物語る丸い血痕がついていった。
硝子が割れるような音を立てて、クレアの両手足を抑える
「あ……」とバランスを崩しかけたところで肩を支えられ、アレンが腰を引いて離れていく。
アレンは、クレアを慎重に立たせたあとで、テーブルに投げ出された剣帯にクレアの短剣を戻した。
「……申し訳ありません、クレアさん。その。ご無事ですか……?」
「……………………」
クレアはあまりの衝撃に唇を震わせる。視線が、風穴の空いた手首に貼りついている。
アレンの左手首からはいまも血がぼたぼたと流れ、その手首に刻まれている施文を覆っていく。だが本人は痛みを感じていないのか、涼しい顔だ。ただクレアの身を心配して固唾を呑むような表情で見つめてくる。
施文の支配を断ち切るために、躊躇なく自傷したのだ――。
「……アレン、さん、こそ……怪我を…………」
さんざん喘いで喉が枯れ、声はあまり出なかった。
アレンはもういつも通りだ。「ああ、こんなもの――」と自分の手首を見て、おそらく施術で癒そうとしたが発動できないと判じるや眉をひそめ、上着を脱いで左手首に袖をくくりつける。
「……そうですね。早速自室に戻って手当てします」
ため息混じりにつぶやく。
クレアはゆっくりと呼吸を整えた。アレンに乱された服を直していく。
それを無事ととらえたのか、アレンも服装を正すと一礼してもう一刻も早く立ち去ろうとしていた。
(――さっきまで、あんなに我を忘れて求めてきたくせに)
こんな礼拝の時間に。この神聖な城内で。じろりとアレンを見る。たしかに『早く終わって』と思ったりもした。だが、このよそよそしい態度は違う。
「その手当、私がやります」
アレンが目を丸くし、なにか言おうとしたがクレアの胸もとが濡れていることに気づき、その後に屹立したままの自分の股間も視界に入ったらしく、耳まで赤くするや横を向いた。
「い、いえ……。いまふたりきりは危険ですので」
「やります」
「いや……、……その」
「ここからなら私の部屋のほうが近いですから。さ、早く」
なおも言い訳するアレンの右手をつかんで歩き出そうとしたところで、脱がされたパンティが視界に入った。脳天を突き刺す衝撃がクレアに走る。声にもならない悲鳴をあげてつかみ上げ、逆の手でアレンの右腕に自分の腕を絡めて資料室をあとにする。
朝の礼拝は、もう終わっていた。