【SO3】聖王国の紅刃が堕ちるとき~背徳の淫紋から始まる英雄救済譚~【IF】 作:ばんどう
目が覚めると、天井が目のまえにあった。ひさしぶりのどこより安心できる自室の寝床。絹織物をふんだんに使った上質な上掛の感触が心地よい。
「…………んっ」
クレアは瞼をふたたび下ろそうとして、胸のこわばりに気づいて息を詰めた。そろりと豊かな双丘に指を這わせれば、つんと角だった突起が指先に引っかかってくる。
「ふぅっ……!」
――クレアさん。
熱っぽい声を、彼の視線を思い出すだけで、真っ赤に熟れた処女の秘芯はじわりと涙をこぼした。
王国の剣として不適切とわかっているのに、上掛のなかでこわばりをほぐすように、乳肉をもみしだく。洞窟で、アレンにさんざんいじられ吸われた乳首は普段以上に敏感になっており、白いナイトガウンの生地が少しかすれるだけでも甘い疼きを生んでしまう。
自分がひとりでいるとは思いたくなくてきゅっと目を閉じた。洞窟の帰りの記憶はない。ただ、お腹に温かいものがかかって、アレンが慌ててクレアを気遣ってくれたのは覚えている。あのなまぐさい香りは、洞窟のなかだったからか。
とても、興奮する匂いだった。
「んん…………」
せっかく助けてもらったのに、あさましくも自分の体をまさぐって快楽をむさぼっている。ナイトガウンの薄い布の上からではじれったくなって脱ぎ捨てると、まっ白なふっくらと張りのある乳房は上気してややピンク色に染まり、処女の乳首はあきらかにふだんより大きく、色濃くなっていた。自分のものながらいやらしい姿だ。そしてさんざん愛撫された乳鞠のあちこちに、キスマークがちりばめられた跡がある。
「……はっ」
胸全体に散らばる所有印を見ているとたまらなくなって、クレアは両の乳房をさらに乱暴にもみほぐし始めた。洞窟に行くまえは自慰に耽ることもなく禁欲的な生活を送っていたのに、自分の乳房をまさぐることが、こんなにも気持ちのいいことだとは知らなかった。あのときしてもらったように右手で右の乳首をつまみあげながら、左の乳首を口に含む。
「んっ、んんっっ」
案の定、乳首からは母乳がどぴゅどぴゅと沁み始める。アレンを真似て強く吸い上げ、舌で転がすとたちまち甘美な刺激がはしりぬけた。甘い、不思議な味。そのまま左手を下腹部へ伸ばすと、すでにそこは潤んでいて、軽く触れただけで水音がした。
「んっ……んんっ!」
恥じらいも忘れてクレアは腰を揺らす。自分の欲を発散しようと必死に、だが、それは明らかに自分の指ではないものを求めて、切なく腰がうねる。
アレンの指遣いを思い出してクレアは自分のバストをこねまわすが、あの快楽には到底及ばない。もっと大きくて力強い指に触れてほしくてたまらない。あの熱っぽい吐息を感じたい。だが、いま彼はいないのだ。
「アレンさっ……ああっ!」
ついに我慢できなくなって、声を洩らした。あのたくましい両腕に抱きしめられて、彼の香りを嗅ぎたい。それがかなわないのが悲しくて涙がこぼれた。
「あっ、あっ」
浅い絶頂をむかえて、クレアは枕に沈み込んだ。「はぁ……っ、はぁっ……」と乱れた呼吸をゆっくりと整え、少し冷静になってくると自分がやったことの恥ずかしさに顔を枕にうずめたまま、ぼすぼすと寝具を叩く。
ナイトガウンを脱ぎ捨てて下着姿になったクレアは、ベッドを這い出て、姿見の前に立った。
やはり最初に目につくのは、母乳が沁み出て光る、ツンと立った乳首だ。赤く腫れていて、よく見ればアレンの歯形もついている気がする。上気する頬を両手で押さえて冷まさせる。
そのとき、右手首についた青白い、ハートの半円を描いたような施文が視界に入って、洞窟の出来事が夢ではなかったと実感した。嬉しい反面、耳まで赤くなってその場にしゃがみこんでしまう。
(…………私、変なところなかったかな……? ……というか、調査はどうなったのかしら)
総司令官としてアレンに聞かねばならない。
だが、彼の顔を思い浮かべるだけで肚の奥がきゅんと鳴いて、乳首からはじわりと白い液がにじみ出る。
(…………会いたい。またあの声で、名前を呼んでくれたら、私はきっと……。でも、彼ひとりにこんなにも揺らされるなんて……ぜったいに許されない……。指揮官失格よ……。
こんなの、ネルにも知られたくない……)
アペリスの巫女としてもふさわしくない自分の体の反応に、どうしよう、とクレアは絶望する。
両腕両脚の施文も綺麗に消えていて、いまは初級施術を打つことも難しいかもしれない。
「炎よ――」
心が沈み込む前、すがるようにファイヤーボルトを詠唱してみるも、やはりなにも起きなかった。
アレンと、話さねばならない。
クリムゾンブレイドとしての矜持が、恥ずかしさをかき消す――ことはないが、そうしなければ、なにも解決しない。
ただそのとき――アレンがもし、自分を司令官ではなく、『女』として見ていたら。
鼓動が脈打つ。
自分の体は、あのとき彼に変えられた。
彼に触れられた場所が、いまもずっと疼いている。それがどうしようもなく、なぜか誇らしい。
会いたい。
女王の剣として、優先すべきは彼ではないのに、またあの声で、瞳で抱きしめられたらと願う自分がいる。
(……だめ。ちゃんと、司令官に戻らなくちゃ……)
胸が苦しい。
こんな弱い姿は、見られたくない。
そう思うのに、これから会う人間は、彼以外に考えたくはない。
あのときが、「信じて預けた唯一の瞬間」だと信じていたい。
震える指を握りしめる。
逃げても、さらに苦しくなるだけだ。
こんこんと湧き出る怖れと期待を胸にしまって、クレアは短く息を吐くと、出立の準備に取り掛かった。
扉を開ければ、クリムゾンブレイド、クレア・ラーズバードに戻る。
ほかのだれにも、この動揺を見せはしない。