※この作品はR-18です。

ドラゴンクエストー堕ちた光の戦士と女神の勇者ー   作:ルビス

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戦いのとき(後編)

 

 

 決着は着いた。それがこの場にいる全ての者の総意だった。それに抗うのは、今まさに敗者の角印を押されようとしている傷つき倒れるルビー一人。全身に裂傷と打撲痕を刻み、その身に纏う装備など最早ないに等しいほどズタボロの布のみ。対するマリアは外見に目立った傷が見られず、さらには大勢の魔物をその後ろに従えている。もしこの場所に第三者が居ても、勝敗の行方は明白であっただろう。

 

 それでも、ルビーは立ち上がっていた。受け身を辛うじて取ったとは言え、背中から地面に叩きつけられた衝撃は人間離れしているルビーにとっても無視出来ないほどの痛みを全身に与えていた。

 

「どう、やって……気を取り戻した、か……聞いても?」

 

 喋るだけで全身に鈍痛が走るのをルビーは感じた。その姿を見たマリアがあからさまに勝ち誇った笑みを向けてルビーの問いに応える。

 

「あら、また時間稼ぎですか? ふふふ、でも機嫌が良いので答えてあげましょう。簡単ですよ、気絶する瞬間にベホマを自身に放っただけ。脳への衝撃で混濁する意識をベホマで強制的に癒すことで気絶から目覚める時間を早めました」

 

「俺の、耳が……確かなら……呪文は、口にして、なかったはずだ」

 

「私を誰だと思っているんですか? ハーゴット様の忠実なる雌犬であり、旦那様を害する全ての敵を撃ち滅ぼす番犬なのです。本気になれば無詠唱だろうと、大魔法を放つことなど容易い事です」

 

 そのマリアの言葉は、全ての魔法使いどころか賢者でさえ瞠目し、衝撃を与えるに足る言葉だった。魔法は呪文を唱えて始めてその身に纏う魔力を現象として解き放つことが出来るのだ。呪文とは、言霊であり、本来形のない魔力に名前と言う『器』を世界に音と言う形で与える事で、その名前に込められた役割を全うできるのだ。

 

 それを用いない。頭で考えるだけで魔法と言う自然界の法則を超越した御業を現象させられると言うなら、その者は魔力によってありとあらゆる現象を自身の好きなように形作ることが可能なのだ。そんな存在、それこそ神か精霊、大魔王にしかなせない、正真正銘の奇跡であり人魔の領域さえ超越した者にしか成せない魔技なのだ。

 だからこそ――――

 

「嘘、ですね……」

 

 ルビーは断言した。ピクリとマリアの眉が揺れた。

 

「そんな事が可能なら……もっと早くやっているでしょう。あなたに無詠唱での魔法の使用は、出来ない。それがまだ、なのかは分かりませんが」

 

 ルビーの口が吊り上がる。今度はルビーが勝ち誇ったような笑みを浮かべた。呼吸はすでに正常なそれに戻ってきている。

 

「ですが、最高位回復呪文であるベホマを無詠唱で唱えたのは本当なのでしょう。一瞬とは言え神や精霊の領域に届いた。ですが、その回復量はホイミにも劣る微々たる物。それこそ気絶の回復を少し早めただけ。その結果、相当量の魔力を失った」

 

「――――っ!」

 

 マリアの瞳孔が僅かに拡大した。必死に動揺を押し殺そうとしたのだろうが、ルビーからして見ればその行動こそが自身の推測が事実である事を証明する最大の証拠だった。

 

「それを隠すため、無詠唱での魔法の行使が可能だと偽ったのでしょう? 俺に警戒させ、近距離に持ち込ませないよう。呪文を口にしようとせずにいても不自然ではないよう。あなたの魔力が、先の一撃でほぼ底を着いてしまった事がバレないように」

 

 それこそが、マリアが二度目の戦いを挑むために支払った代償。刹那とは言え神の領域に踏み込んだマリアは、まさしく神域の天才だ。だが、そこに至るには覚悟も、魂の格(レベル)も、まだ不十分であった。マリアが気絶から覚醒した時、彼女の魔力は万全の状態と比べて雀の涙ほどしか残っていなかったのだ。

 

 彼女が大火力のバギを持ってルビーを攻撃したのは、それを外したが最後、自身に攻撃魔法を放つ魔力が残らないからこそ絶対に葬る必要があったのだ。その攻撃が躱された時、マリアは余裕の体を装っていたがその実、内心は激しい動揺と一転して窮地に立たされた現状に深い焦りを感じていた。

 だからこそそれを隠すために何重にも仮面を被って演技をしたと言うのに、それが見破られた。

 

「やはりあなたは危険すぎる……! 全員、殺す気でかかりなさい! 捕まえるなど考えていれば死ぬのはあなたたちです!!」

 

 誤魔化しは効かないとマリアは即座に判断。どちらもが満身創痍である事が明らかになった今、お互いの勝率は五分五分。こちらの戦力は先ほどルビーに蹴散らされた魔物と同程度の強さの者のみだが、ルビーもまた手傷を負い全開の力を出す事は出来ない。それならばルビーに休息の時間を与える事がこちらにとっては不利にしかならない。故に後方の魔物たちに即座の攻撃を命じた。

 手加減など不要。本気でかからねば地に着けることさえ叶わない。

 

「グオオオオ!!」

 

 魔物たちが一斉にルビーに向かって飛び掛かる。空を飛ぶ【リザードフライ】や【ホークマン】が、【マージマタンゴ】や【バンパイア】と言ったヒャドを使えるがために東の火元に向かった魔物たちが雪崩のように襲い掛かる。

 

 それを前にルビーは無言、明鏡止水に達した達人のように静かに、その魔物の大行進を見つめていた。彼我の距離が十メートルを切った瞬間、ルビーが動いた。

 魔物を迎え撃つように前進――――ではなく左側の、かつて館があったはずの瓦礫の山へと走り出した。

 

「なっ……!? その怪我で逃げる気ですか!!?」

 

 魔物の群れから離れるような軌道、マリアはそれを遁走だと判断した。速やかに空を飛ぶ魔物たちに逃がさないように命令、それを受けて空中での最高速がホークマンより上のリザードフライ全てが空襲するようにルビーに向けて突撃する。

 

 負傷により目に見えて速度の落ちたルビーの体を捕えるのは容易く、何体もの緑の塊がルビーの頭上を捕えた。

 

「ぎゃ──」

 

 ブオンッと言う風を切るような音が響いた。そして気づいた時にはルビーに突撃したリザードフライの群れが一匹残らずその体を粉砕され、地に落ちていた。

 

「──────はっ?」

 

 平常の時では決して出さないような間抜けな声がマリアの口元からこぼれた。

 

 見つめる先にいる、黒い髪をたなびかせる欲情的な恰好になった女神の如き容姿のルビーの手には、その見た目に欠片も似合わないほど凶悪で無骨な巨大な鈍器が握られていた。それがモーニングスターであると、マリアはすぐに気づいた。そしてそれが、自身がその死体を消し飛ばしたムームンの武器である事もまた即座に見抜いた。

 それが理解できない。なぜ、あんな場所にムームンの持っていたモーニングスターがあるのか。

 

 それを知らないのは、ルビーとムームンの交戦の間気絶していたマリアには当然のことだ。ムームンがモーニングスターをルビーの攻撃であらぬ方向に手放していた瞬間を、彼女は見ていない。

 そんな単純で、そしてマリアにとって最悪の事実であった。

 

「さっきの言葉をそのまま返そう。詰みだよ、マリアさん」

 

 鋼の塊が縦横無尽に振るわれる。

 その動きは瓦礫の山になる前の館一階での戦闘の時と比べれば遥かに繊細さと速度を落としている。だがそれでも、魔物一人としてルビーの体に触れる事が叶わない。てつのおのと同等の力を内包するモーニングスターが、掠るだけで大した耐久力のない魔物たちの部位の大部分を削り取っているのだ。

 魔物の数はすでに半数を切り、その殲滅される速度が落ちる気配は欠片もなく、最早全滅は秒読みの段階。

 

 詰み。そのルビーが放った二文字が、マリアの心を打ち据える。ルビーが素手ならまだ勝ち目は十分にあった。だが武器を手にし、間合いと破壊力を得たルビーを倒すなど、館にいた魔物たちよりも質の劣る魔物が大多数を占める今の面子が勝ちを拾える確立など、いったい如何ほどか。

 

 残った魔物がやぶれかぶれに全員で特攻していく。取り囲むようにして突っ込んできた魔物たちを前にしてもルビーは冷静だ。その手に持つモーニングスターを構え、軽率な行動をした魔物全てを粉砕せんとその最初の一撃を振り上げる。数瞬後にはマリアの持つ戦力である魔物たちは一人残らずこの世から霧散し、彼女の敗北を確定させ────

 

 

 

 

 その一瞬の隙を待っていたと、マリアが嗤った。

 

 

 

「──────【ラリホー】」

 

 

 

 戦局を一変させる、悪魔の一手が放たれた。

 

「――!? な、に……」

 

 ルビーを取り囲む魔物たち、その十センチあるかどうかの間隙を桃色の魔力の波動が潜り抜けた。その存在を確認するや、即座に回避行動に移ろうとして、ルビーはマリアが用意した罠の存在に気づいた。

 回避できる場所が存在しない。上も左右も後ろもこちらに突撃してくる魔物で密集されており、たとえ無理やりこじ開けようとどこか一か所の魔物を撃破しようとも、そのワンアクションの間にあの対象を眠りに誘う魔法が自身の体を直撃する事をルビーの頭脳が導いていた。

 

 これこそが、マリアと言う稀代の魔法使いであり世界を救った勇者の血を引く戦士の導き出したたった一つの勝ち筋。

 攻撃魔法を使える魔力がないのは真実だ。だが、状態異常系の魔法なら、まだ一度だけ使えるだけの魔力は残っていた。あとは、それをどのタイミングで放つか。普通に使っても必ず躱される。だからこそ、絶対に躱せない状況が必要だった。

 その瞬間を、マリアは待った。魔物たちの位置、ルビーの位置、その全てを三次元的に観測、刹那のチャンスを彼女は狙い打ったのだ。

 

 ルビーが諦めたようにその場を動かず、その身にラリホーの光を受けたのをマリアは確認した。ルビーの足腰が力を失ったようにその膝を折り、その身を前に投げ出すように崩れ落ちる。

 

 勝敗が決した。

 

 ──手こずりましたが、ようやく終わりましたか。ムームン様は死んでしまいましたが、彼女の持つ情報と彼女の戦闘力が手に入ると思えばお釣りが来ますね。彼女の尋問は旦那様にお願いしましょう。もしかしたら新しい雌犬仲間が出来るかもしれませんね♡

 

 頭の中で、愛する主人であるハーゴットに首輪のリードを引かれて全裸で街中を歩き回る自分とルビーの姿を想像し、マリアの股間が興奮で濡れそぼる。

 地面に倒れ行くルビーの姿を愛おしむように見つめながら、マリアは魔物たちに静止の言葉を投げかけようと────

 

 ダンッ

 

 何かが地を踏みしめた様な音を、マリアの耳が捕えた。それは決して大きくない音のはずなのに、まるでその音だけが世界と隔絶した理を持ってマリアの元へ届いたかのようであった。

 そしてその音の誰何をマリアが確かめるよりも早く、倒れるルビーの周りを囲んでいた魔物たちが吹き飛んだ。

 

「…………な、にが?」

 

 理解不能。予測不可能。マリアが推察し、導き出せる全ての戦闘における未来予報を持ってしても、考えもつかなかった状況。

 間違いなく睡眠状態に陥った人間が、眠ったまま戦闘を続行する。そんな冗談のような出来事に対処するなど、マリアを持ってしても不可能であった。

 

 ボグッ

 

「あっ、かはっ……!!」

 

 そして戦場において致命的な、完全な意識の空白を生んでしまったマリアは、自身の鳩尾へと走った鈍痛に、今度こそその意識を完全に暗闇に落とす事になった。

 

 

 

 

 

 ギリギリであった。それが、ルビーの正直な今回の戦いの評価であった。ムームンのモーニングスターがバギに巻き込まれるずに残っていたこと、マリアのMPがほとんど尽きていたこと、そして何より彼女が最後に放ったのがラリホーという精神に作用する魔法であったことがこの辛勝をもぎ取ったと言える。

 ルビーの中で胎動する衝動は、彼をしても制御できないほどに凶悪だ。それは、意識のない状態でも自身に迫った悪意、害意を勝手に迎撃してしまうほどに。つまり、ルビーはこと戦闘において、一切の精神的妨害が通用しないのだ。

 自身のこの使命感が身に迫る危機に対して勝手に迎撃行動を取ることは、すでにこの町までの道中での野営で実証済みであった。その時は寝込みに襲い掛かって来たウェアウルフを二体、眠ったまま殺してから目を覚ますことになるというかなりショッキングな出来事であったが、図らずともそれによって睡眠中に襲われてもなすがままにやられる事はないというのがわかったのだ。

 

 だからこそ、最後にマリアが放った魔法がラリホーだと分かった時、あえて自分からそれを受けることで相手の意表を突く事にした。もっとも、自分の意識が落ちる事は変わらないことと、自分でもよく分かっていない呪いじみた使命感にその身を任せるという博打であったのは変わりない。

 さらに言えばあの瞬間マリアが放ったのがラリホー以外の精神系の魔法であったのならばどうなっていたか。それこそまだ攻撃系の魔法を使う余力があれば、その時点で自分の敗北は決定的だっただろう。

 

「だけど一応、大勝利……と言っても良い結果にはなったかな」

 

 魔物たちの奴隷にされていた女性たちの救出、魔物たち全員の討伐にマリアの保護。そしてこの戦いで怪我を負った村人はゼロと、ルビーにとっては万々歳の成果だ。

 もちろんルビー自身の被った傷の多さに目を瞑ればだ。

 

 今のルビーの状態は、端的に言って酷いものだ。

 イオナズンと最大火力のバギの二つを余波とは言え食らったのだ、全身に走る火傷と裂傷がその威力を物語り、またそれほどの重症を負った身で全力での戦闘を続けたのだ。かさぶたが出来上がるよりも早く広がっていく傷口に、無理をした事で筋肉の神経が断切。火傷は放置した事で真珠のように白かった肌を赤黒く変色させていた。

 

 だがそんな状態でも、ルビーの体力は彼が倒れることを許しはしなかった。それはルビー自身の強い意志もあるが、同時に彼の中で今もなお絶えずに存在を主張する呪いによるものが大きい。

 

 ────光の戦士を救い出せ

 

 マリアが気を失っても鳴りやまないその声は、まだ今やらなければならないことがあるとルビーに主張していた。

 

「くっ、少しも休ませてくれないとはね。こういうのを過剰労働って言うんだったか?」

 

 カザーブで出会った人たちから教えられた知識と今の自分の現状を照らし合わせて一人苦笑いをするルビーだが、頭の中で鳴り響く呪いは重体の身にはかなりの苦痛だ。

 光の戦士を助けろと言う内容も、どう助ければ良いかの提示が何もないのだ。

 

 もちろん、凌辱されその心まで下卑た欲望で塗りつぶされた被害者であるマリアを救うという事に一切の反論はない。むしろ魔物を殺せという暴力的なものよりも、誰かを救えと言う使命の方がルビーには心地よかった。

  だから呪いに反抗せずに、むしろ自分自身の意志でもって痛みを訴える体を無視して倒れる事を拒否したのだ。

 

「はぁ、とりあえず糸口が見つかるまでは申し訳ないが縛って近くの民家で寝ててもらうしかないか」

 

 ルビーは一先ずマリアをこのまま野ざらしにするわけにはいかないと結論付けた。

 こんなに可愛らしい少女を地べたに寝かせたままにするなどそれこそ悪党だろうと、ルビーはマリアを優しく抱き上げようとして──

 

 ドクンッ

 

 ──体に今まで感じたことがない熱が走り抜けた。

 

「――――!? はっ、えっ、なに……?」

 

 最初、ルビーはマリアが目を覚まして自分に攻撃を仕掛けたと思った。しかしその推測は今もなお目を瞑り、体を垂れ下げた状態でいるマリアの姿によって否定される。

 次に考えたのは新手の存在。即座に思考を戦闘用のそれに切り替えたルビーは全神経を研ぎ澄まし、羽が落ちる音さえ見逃さないつもりで自分たち以外の気配を探る。しかしどれだけ神経を切り詰めようと、周りから感じるのは崩壊した建物の枠組みが軋む微かな音のみであった。

 

 困惑に包まれるルビーの中で、急速にその熱は体全体へと伝播していく。

 呼吸が熱を持ち、芸術品のように整った白い頬が赤く染まっていく。なぜか下腹部に今まで感じたことのないような何かが集まっていく。神経が集中し、今まで意識した事がなかった自分の性器が大きさを増していく。

 

 ルビーは、欲情していた。

 

 その現象をルビーは知識として知っていた。知ってはいたが、今まで一度として他人に性的興味を抱いた事がない事と、こんな状態で自分が性的興奮を覚える意味が理解できない故に信じられなかった。

 

「何これ……なんで……んっ、こんな……俺の体が、変に……」

 

 自分の体に起きた異変に訳も分からず困惑の声を漏らすルビーの姿には、先ほどまでの一騎当千の活躍をしていた勇者の姿は微塵もない。それどころか、目を潤め、熱い吐息を漏らし、両手で体を抑えるように抱きしめる僅かな布切れだけを身に着けたその姿は、どんな春画や書物に語られる官能美よりも淫靡で、妖艶で、美しく。

 色欲と言う題目で画を描けと言われれば、世の全ての画家がこの光景をモデルにするだろう艶麗さがそこにはあった。八戒を誓った僧であろうと、その思考を即座に煩悩で埋め尽くしてしまうほどの妖艶さがそこにはあった。

 

 この場に人が居なかった事がルビーにとって幸運であった。もし意識があってこんな光景を見せられれば、耐えられる男も、女も居なかっただろう。

 

 ルビーの潤んだ瞳が、何かに導かれるように下へと流れる。その先にいるのは今も意識をなくして眠る艶やかな菫色の髪を持つマリアだ。だがルビーの視線が向かうのはその先、彼女が身に着けている欲情的な紫のドレス、その合間から覗く染み一つない綺麗な太股、そしてそれを辿っていく先にある今にも貪りたくなる鼠蹊部へ――――

 

「違うっ……!! こんなのおかしい! 俺は……俺はッ……!!」

 

 顔を両手で覆い、その先を見ないように、想像しないように抑制しようとする。だが昂った体は、それに反発するようにむしろその情欲を高めていく。下腹部にある物は最早痛みさえ伴うほどにその大きさを増し、身に着ける下着からの解放を願っている。

 

 ――――光の戦士たちを救い出せ

 ――――光の戦士たちを救い出せ

 ――――光の戦士たちを救い出せ

 

 救うって、まさか……!

 脳裏に過ぎったおぞましい推測にルビーは過去最大の使命感への抵抗を計った。意識のない相手にそういう行為をする事が、何よりもそんな方法で少女が救われるなどと宣うこの呪いが、ルビーには死んでも許せなかった。

 

「させない……いやだ……あ、あぁ……俺は……」

 

 そんなのあの魔物たちと何も変わら――――光の戦士たちを救い出せ――――俺はこんなやり方――――光の戦士たちを救い出せ――――これ以上彼女を苦しめ――――光の戦士たちを救い出せ――――待って止めてく――――光の戦士たちを救い出せ――――いやだ、い――――光の戦士たちを救い出せ――――――――――――お願い――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ごめんなさい、でももうこの手しか残っていないのです――――

 

 

 

 

 あっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルビーが自身の顔を覆っていた手がだらりと垂れ下がる。

 その下から現れた顔には、先ほどまでの悲壮な色は欠片もなく。

 ゆっくりと、その顔が、その瞳が、足元で眠るマリアへと向けられ。

 

「――――――――――あはぁ♡」

 

 嗤った。

 小悪魔のように無邪気に、淫魔のように妖艶に、ハーロットのように淫乱に、そして女神のように流麗に笑って見せた。

 そんなルビーの瞳に、以前のような誰をも安心させる温かな紅色は最早ない。ありとあらゆる色欲を取り込んだかのように、妖しげに、蠱惑的に、背徳的に輝く、真紅の瞳がそこにはあった。

 

 ルビーであったその影は、ゆっくりとマリアへとその手を伸ばし――――――――その身を覆う全ての衣服を破り捨てた。

 

 カザーブで起きた新たな勇者と堕ちた光の戦士の戦いは幕を下ろした。

 

 ここから始まるのは、どうしよもないほどに淫靡で俗物的な―――――――救済と言う名の、獣の交わりだ。

 

 

 

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