「被告人を懲役8ヶ月に処する。ただしこの判決を言い渡した日より3年間その刑の執行を猶予する」
東都裁判所。
厳格で重苦しい空気の中、裁判長より告げられる判決。
とはいえ、『酒を飲んだ酩酊状態で突発的なトラブルによる暴行』で打撲による軽傷なら実刑が付くことは稀で懲役と執行猶予も大体想定通りの結果。
初犯で初めての裁判に顔を青くしていた被告人もその判決に少し安心したかのように頭を下げる。
ここから裁判長が判決内容についての説明を読み上げて裁判は閉廷する。
「控訴はするのかしら?」
「分かり切ったことを聞くなんて時間の無駄よ」
裁判を終えて被告人が退廷、傍聴人と裁判官もいなくなり、残ったのは被告人の弁護士である妃英理と今回の事件の担当検事である九条玲子だ。
一般的に「検察のマドンナ」と呼ばれる彼女からしてみれば雑務にも等しい裁判だった。
「意外ね。担当検事は新任の人だと聞いていたのだけど」
「インフルエンザよ。それで偶然手が空いていた私にお鉢が回ってきただけです」
そうため息をつく玲子。とはいえ、ただの「酩酊状態による傷害事件」程度の裁判に顔を合わせるような組み合わせではないのは確かだ。
裁判についてもほぼ決まり切った内容を行うだけで文字通り新人研修として扱われるようなものだ。
「…ところで妃弁護士、今夜時間を作れるかしら?」
「え?ええ、今日はこの公判だけで、あとは書類整理程度だから後回しにはできるわよ」
表向きは法曹界きってのバチバチしたライバル同士。
ゴシップ記者なんかだと『【検察のマドンナ】、【法曹界のクイーン】に宣誓布告か!?』と面白おかしく書き立てるかもしれない。
「なら、いつもの店に付き合ってもらえないかしら」
「いいわ。少し事務所でやることがあるから、終わったらいつも通りの時間に行くわ」
しかしながら実をいうとこの二人――表向きほどバチバチした関係でもなかった。
プールバー【ブルーパロット】
「【ロングアイランド・アイスティー】です」
「ありがとう」
ビリヤード台が設置されているオシャレなバー。そこのカウンターに並ぶ英理と玲子。
今日はいないがオーナーである男性にも顔が覚えられるほどに常連の二人。
英理が【ジントニック】、玲子が【ロングアイランド・アイスティー】のグラスを持って軽く合わせて鳴らすとそれを煽る。
「で、今日はどっちの子の話かしら」
「千鶴の方よ」
このプールバーに玲子が「相談がある」と英理に話す内容はほぼ全部彼女の娘たちのことだった。
英理は周囲の助けを借りながらも長女である蘭を育てた実績もあるし、現在も玲子の娘と同い年の子供を育てている。
言うなれば『先輩ママ』であり、【検察のマドンナ】という肩書が邪魔して検察庁の同僚には遠慮が生まれてしまっているためにこうして相談することも多かった。
「千鶴ちゃんの方は珍しいわね。何かあったのかしら?」
「…綾乃は平気なのに、千鶴ったら絶対に人参食べないのよ…!」
まるで裁判の時のような真剣な表情で、子供の好き嫌いについての相談をする玲子。
これももう見慣れた光景で、むしろ裁判中の玲子の顔を見て思い出してギャップで笑いそうになるほどだった。
「ハンバーグに入れたり、オムライスに入れたりしたけどてんでダメで、どうしたものかと…」
「子供って一度苦手意識を持つとなかなか受け付けないわ。だから最初が肝心なのよ」
それならそのレシピを、と言いたいことろだが実のところ玲子は料理に自信があるわけではない。
どうしたものかと考えていると「あっ」と英理が何かを思いついたようだ。
「そういえば、今度知り合いのパティシエが親子向けのお菓子作りの体験会を開くそうよ。確か苦手克服を目的とした野菜を使ったケーキやクッキーを予定してるらしいからそこに行ったらどうかしら?」
「お菓子か…それなら確かに千鶴も食べるかも…」
お菓子に混ぜるというのもいいアイデアだし、イベントで一緒に作るなら苦手意識もある程度減るだろう。
その体験会の詳細が書かれてるというホームページを教えてもらい「お礼に」と酒を一杯おかわりする。
それからは他愛のない内容。
仕事の愚痴もあればお互いの子供の話。仕事柄最近判決の出た裁判の内容について討論など。
「あーっ、ほんとあのマスコミ、好き勝手書いて…!」
「ちょっと玲子さん、呑みすぎよ」
顔を赤くして悪態をつく。完全に悪酔いしているがそれでもクドクドクドクドとマスコミの記事に対しての文句が止まらない。
とはいえ、英理もそうだが玲子も【検察のマドンナ】と世間一般で知られる存在。
大きな事件を彼女が担当するのはマスコミにとっても大きなネタになる。
それを理解してはいるがやるせない玲子は、本日何杯目かわからないグラスを空にして「おかわりぃ」と呂律が回らずに注文するから飽きれた英理が「お水を」と遮る。
「ところで、子供はいいのかしら?」
「子供は昨日から私の実家でお泊り~、本当は明日から出張だったけど今日の裁判でズレたから今夜はフリー」
だからもっと飲む~という玲子だったが、出された水を飲んだらそのまま「きゅふ~…」と妙な声を上げてダウンした。
どうやら血中のアルコール度数が水で薄まって変動した波に耐え切れずに潰れたのだろう。
ヤレヤレ、と英理は会計をしながら携帯を取り出す。
「うぅ…頭が割れる…」
「飲みすぎなのよ、バカ」
玲子の住むマンションまでタクシーを出したが、歩くのもおぼつかない彼女を放置するわけにもいかず肩を貸してやっと部屋に辿り着いた。
もう何度目か、酒に強いわけでもないのに何かあって酒を飲んではこうなることを繰り返しているために英理もそこそこ慣れ始めていた。
「…で、本当は何があったのよ」
「……………」
そう、子供の好き嫌いに頭を悩ませていたことも事実だろう。
だがそれにしては酒のペースが速いと感じていた。それに酔い方もひどく自棄になってるようにしか見えなかった。
「…プロポーズされたの」
「それは…」
「もちろん、子供については何も知らない人。ただ単に――夫を殺されたバツイチ女としか思ってない」
それはある裁判の公判前整理手続きの時だった。
公判前整理手続きとは裁判の前にお互いに持ってる情報・証拠を整理して行ういわば事前演習のようなもの。
これによっては弁護側の主張や検察の求刑も変わる大事な場面でもある。
「ちょっと、大丈夫?」
「…裁判前に相手の心配とは、余裕なんですね」
当時まだ新人の栗山を勉強として連れて打ち合わせの会議室に入るとテーブルに突っ伏していた玲子が英理たちに気づいて起き上がった。
しかし、その表情はすぐれず疲弊しているようだった。
「相手味方以前にそんな状態の人がいれば誰でも心配するわ」
相手が当時【検察のエース】とされる九条玲子と聞いて意気込んできたのだが、当の本人の様子がおかしいのはすぐにわかった。
英理が思い当たるのは家族ぐるみの付き合いがある工藤家の主、工藤優作の締め切り前とかに見る追い詰められている人間の顔だった。
しかし、裁判長がやってきてしまいそこから先の会話はできなかった。
「では、これより公判前整理手続きを開始します。検察、弁護人、よろしいですね?」
「…はい」
「弁護側、問題は」
英理が問題なく始めれると言いかけたとき、携帯が鳴った。マナーモードだが静かな室内にはハッキリと聞こえ、それの発生源は玲子のポケットからだ。
少しバツが悪そうにして玲子が「……申し訳ありません、少し失礼します」と立ち上がって部屋の隅に移動した。
「はい、九条です。…はい…はい…えっ、39度…!?それは…えっと…」
「妃先生、あの電話って…」
小声で栗山が聞いてくる。内容的には保育園などから子供が熱を出して親に電話をかけるような雰囲気だった。
しかし、九条玲子に子供がいるなんて聞いたことがなかった。
「今は…その…」
だが、確実なのは今の余裕がない玲子に緊急事態が発生したというわけだ。
「裁判長、申し訳ありませんが弁護側、必要書類についての不備があります」
「は?」
「えっ?」
「えっ、せ、先生?」
突然の英理の発言に裁判長も玲子も呆気にとられ、栗山もなぜそんなことを言い出しのかわからない様子だった。
「急ぎ訂正が必要なため、今日のところは延期を申し出たいです。弁護側からの勝手な申し出で検察側には迷惑でしょうが…」
「…検察、いかがいたしましょう?公判前整理手続きが行えない不備と言うことなら今日は延期としますが」
同じように、英理の言わんとすることを察してか裁判長も延期の確認をした。
それに玲子はすこし、泣きそうになりながらもうなずいて電話に「すぐに向かいます」と言って切った。
「なぜ、私に貸しを作るような真似を?」
玲子が妃法律事務所を訪ねたのは2日後だった。
公判前整理手続きの時のような疲弊感は薄れて多少の余裕がある様子ではあるものの、いまだにどこか沈んだような様子だった。
少し高い和菓子を手土産に、あの時の英理の言動の真意を聞きに来た。
「あら、私はこちらの書類の不備を申し出ただけよ。貴方に貸しを作った覚えはないわ」
「…白々しい。でも…助かりました」
「……」
「聞きたいのなら、どうぞ」
礼を述べる玲子に、英理は少しためらうような様子を見せていた。
しかし、玲子自身これを英理に説明する義務があると感じていたため、それを改めて口にした。
「…子供がいるのね」
「…ええ、まだ4歳で女の子の双子」
そう言って携帯の写真を見せてた。二人そろって幼稚園の制服を着て幸せそうに玲子に抱き着く姿。
確かに顔つきが玲子に似ており、一目見て親子だとわかる。
「知らなかったわ、検察のエースに子供がいるって」
「知ってるのは検事正ぐらいよ。検察官の子供は逆恨みで狙われる可能性もある…あの人も、そうだったから」
「…4年前の、泥参会の報復事件ね」
日本で最大勢力とされる暴力団【泥参会】。その摘発を当時の東京地方検察庁特別捜査部に所属していた玲子も参加していた。
しかし、その報復とされる暴力団組員と思われる検察官への襲撃事件があった。
そして事件被害者の中には死亡した男性がいた。
「あの人が死んだのは、私の所為…」
愛する人を失う――それは相当に悩んで、苦しんだのだろう。
もしかしたら相手方の家族からも恨まれてるのかもしれない。
「療養として検察から離れてるときに二人を妊娠してることが分かった。でも…私の両親は出産に反対だった。片親、しかも双子を育てるなんて無理だって。……それでも、堕ろす選択肢なんて、取れるわけがない。取りたくもない。」
大切な人の遺したもの。それを捨てるなんてできるはずもなかった。
そこからは、親と距離を取って一人で子供を産んで東京地検に復帰――とはいえ、子持ちで特捜のままでいることができないために検察官に転身したというわけだ。
「だからと言って、このまま一人で育てるつもりなの?」
「事情を知って説教?あなたも私の両親みたいに一人だと無茶とでもいうのね」
「ええ、説教。ただし、アナタの身の心配じゃなく…子供の幸せを考えての説教よ」
「…え?」
両親や、出産を報告した検事正、一人で産婦人科に行ったときの担当医師、その他多くの人に「双子を独り身で育てるのは無謀だ」と言われていた。
英理もそう言うのだと思っていたが彼女が口にした理由は玲子の身体のことではなく子供の【幸福】だと。
今までに一度もそう言った人がおらず、玲子は面を食らったような表情になる。
「九条さん、私も子供を持つ親です。貴方と同じとは言わないけど二人目は離婚してから生んで、あの子は父親については全く知らない」
「妃さんも…?」
それは意外だった。【法曹界のクイーン】が子持ちというのはそこそこ有名で、シングルマザーでありながら子育ても両立しているという話を耳にしたことがる。
玲子は正直にそれに嫉妬していたこともあるが、詳しいことは初めて聞いた。
「離婚前でも旦那が警察官という職業で子供の面倒を見ることができず、私の親友や知り合いに預けることも少なくなかった。そこで必ず言われるんです、【寂しそうだった】って」
「…あっ…」
「友達がいても、玩具があっても、遊んでくれても、子供は親を求めてしまう。そんな子供に…無茶をしてボロボロになった顔を見せて、子供は喜ぶのかしら?」
それは確信的な言葉だった。親はただそこにいるだけでいいわけではない。親は子供を育てるだけでいいわけではない。
もっともっと、基本的で当たり前なことを玲子は見落としていた。
「まずは親と、次に他に頼れる人間を作りなさい。それが先輩ママとして、今のあなたのするべきことだと断言するわ」
それから玲子はまず、疎遠になっていた親を訪ねた。今まで意地を張っていたことを謝罪し、そして子供を育てることに協力してほしいと。
元々玲子の身を心配しての中絶だったのだが、そこまで意志が固いならと協力には前向きな返答を貰えた。
「あの、話 があるのだけど…」
そして、もっぱら育児の相談する相手は英理だった。
今まで間違っていた自分に向き合ってくれた人でもあり、また法曹界という同じ業界で子育てをしている人物。
更に偶然というべきか、有能な英理に対して重要な案件が回ってくる。同じくエリート検事である玲子がそれを担当する。
ともすれば、法廷で顔を合わせる。その時に相談をすることも多く、いつの間にか【ブルーパロット】の常連になるほど一緒に酒を飲むママ友でもあった。
「んじゅぅ❤ あなたが結婚するなら、私たちのこの関係もおしまいね♥」
「それは…ちょっと寂しいかも♥」
そして、今二人は全裸になってベッドの上でお互いに絡みついている。
始まりはもう二人とも覚えてない。
確かお互いにプライベートの時間では名前で呼ぶようなほどに親密になった頃。
当時家の場所を知らなかった英理が酔いつぶれた玲子をホテルまで運んだ夜。
英理もそこそこ酔っていて、玲子が何かを言ったような気もする。
その程度に朧気だが、そのまま女性二人でお互いの身体を慰め合ったのは確かだ。
そもそも夫を失って子育てと検察官として日々を過ごす玲子はご無沙汰であり、また英理もそう言った行為に興奮する【変態】だ。
「あひぃっ♥いいっ、英理さんのディルドチンポ♥子宮まで届くぅ❤」
「んぅ♥玲子さん❤とても卑猥で❤❤可愛いいいですよ♥」
そしていつの間にかこんな風に双頭ディルドを持ち寄って相手を犯し合う関係にまで至ってしまった。
ちなみにもっぱら持ってくるのは英理でそのディルドは彼女の愛する人のを型取りしたものだがそれは玲子は知らない。
「あぁっ♥やだ♥結婚しても❤❤英理さんと♥♥セフレやめたくない♥♥」
「じゃあ内緒❤❤女同士なら♥♥違法じゃない♥♥だから❤❤もっともっとレズ不倫しましょぉ❤❤」
双頭ディルドを起点として股を打ち付け合う。
お互いに相手を犯し、相手に犯され、快楽を得ていることに背徳を感じてよりいっそう深く乱れていく。
「ダメぇ♥♥こんなのバレたら……っ♥♥♥」
「じゃあ♥♥やめる?♥」
「やだぁ♥♥イクまでやめたくないっ♥♥♥」
「ふふっ❤❤夜はまだ長いわよ♥♥」
腰がガクガクと震え、愛液と汗で濡れた身体が滑ってお互いを抱きしめた。
何でこうなったんだろうか(ゲンドウポーズ)
本当は双子が生まれた経緯について説明するはずがいつの間にか九条玲子が妃英理と同性でありながら肉体関係を持っていた…なんで??
最初は双子の父親、つまりは玲子の旦那については存命してたりいろいろと考えてたけど最終設定は以下となります。
因みに今後出てくることはないとは思うので名前については特に決めてないです。
万が一出番が来たら名前を付ける、かも?
夫
享年28歳(7年前)
原作では鈴木財閥の児童施設で過ごし、その後は社会人となって背景の通行人A程度の人物だった。
しかし、阿笠の手によって鈴木朋子が性奴隷に堕ち、非合法乱交パーティ通称『夜会』を運営するようになってから男娼として業界の女性と性行為をするようになった。
そのまま成長すると、女性相手に積極性が増して九条玲子に猛烈なアタックをして入籍。
しかし当時の検察の特捜が暴力団の検挙を行った際に報復としてやってきた組員に襲われてしまい死亡。
施設育ちで身寄りがなく玲子との子供を望んでいたが本人はやがて子供が生まれることは最後まで気づかなかった。
なんかヘビーな設定になった…
ちなみに最初、死亡以外の設定が丸々こっちではなく玲子が背負う想定でした。
要するに【夜会】で性に対してオープンになって結婚して子供を産む、という感じでした。
ただ整合性が取れないと判断して没にしてこっちに回すことに。
あとは子供の存在と子供に対しての発言で原作以上に英理に対して心を開いています。
名も無き夫の影響もあって性経験がある分、ご無沙汰で溜まっていた時に英理との酒の席でいろいろとあって今ではレズセフレという関係に。
…これもしかしたらレズ夫婦枠を梓と栗山で設定していたけどこっちが先になってたかも。
ちなみに英理は阿笠に想いを寄せて、玲子は双子の将来を考えてあくまで関係をセフレとしています。
本当は性的要素をもっと入れたかったけど最後だけになった…どこかのタイミングでまたこの二人の話やりたいなぁ…
話は変わりますが前回のアンケート『蘭たちによる世良の呼ばれ方』なんですが、ビックリするぐらいに拮抗してる…
この話にも継続して設置してるの下にあると思いますが、パーセントで言えば本当に50:50ぐらいに分かれてる。
本当だったらこの後書きで「こっちが○割占めてるので~」と切るつもりだったんですが、ここまで差がないとなるとまだ締めるのが速いかなと。
そのため12月31日の23時59分まで募集をして、その時点で1票でも多い方に決定することにします。
さて、次回は12月25日にクリスマス回を行い、今年の投稿は最後にする予定です。
蘭たちによる世良の呼ばれ方
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原作通り(世良ちゃん)
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名前(真純ちゃん)