ハナコと愛のないセックスをする話 作:無名のハナコ好き
「あああぁぁぁ……」
絶望の色濃い涙声が、私の声帯から漏れ出る。
妊娠39週5日。臨月もほとんど過ぎ去って十月十日。
出産予定日のわずか2日前という理想的な日に、私の子宮へ陣痛が発来していた。
あの人に無理やりに犯されて、望まない子を授けられてしまった私の子宮。
呪わしいこの孕み腹は、今朝から「赤ちゃんを産みたい、この世に産み落としたい」と規則的に収縮して、繰り返し、繰り返し、堪え難い痛みを私に与え続けている。
「ぐすっ……。どうして、どうしてこんなことに……」
本来であればとっくの昔に救護騎士団に保護され、適当な施設で分娩を介助されていなければならないのに。
私はかつて補習授業部の活動が行われていた教室で一人、痛むお腹を抱えて座り込んでいた。
妊娠してしまった時と同じ。弱い私は、誰にも言えなかったから。
どうしてもそんな衆人環視の中では、「陣痛が来ました。今から赤ちゃんを出産します*1」という事実を明かせなかったのだ。
「はぁ、はぁ……」
少しずつ間隔が短くなっていく陣痛を、何とか呼吸を整えて受け流す。
苦しい、苦しい。こんなに強い痛みを経験するのは初めてだった。
それでも、まだまだ続くこの苦しみに堪えて。
私は誰にも祝福されることなく、一人で赤ちゃんを産まなければならないのだ。
絶望的な事実にぽろぽろと涙が零れてしまう。
今から母親にならなければいけないのに、哀れっぽく泣いてしまう、そんな自分の弱さが嫌だった。
「ひっ、ひぅっ、ひぐっ……」
どんなに姿勢を変えて体の力を抜こうとしても、感じる痛みの強さは変わらなかった。
それどころかどんどん強くなっているような気がする。
「あぁぁあぁぁぁ……いきみたい、いきみたいです……!
お願い、お願い、早く赤ちゃん出てきて……!!」
とうとう苦しみに堪えかねて、私の口は弱音を吐き出した。
右手に握っていたスマートフォンを確認する。
「まだ、まだ4分……ううぅ……」
陣痛の間隔がまだまだ短くなるのを待たなければ。
子宮口が完全に開ききるまで我慢しなければならない。
だって私は、誰にも助けてもらえないのだ。
産道を覗き込んで子宮口が全開大、10cmまで広がったことを確認してくれる人は、どこにもいないのだから。
「ひっ、ひっ、ふーっ! ひっ、ひっ、ふーっ!」
赤ちゃんの頭がかなり下がっているのを感じる。
お願い、お願い……まだ降りてこないで。
まだ危ないから。まだ出てこられないから。
今さっきまでいきみたい気持ちでいっぱいだったのに、今度は赤ちゃんが無事に出てこれるか不安になってしまう。
どうしよう。どうしよう。赤ちゃんが泣いてくれなかったら、どうしよう。
自分の軽率な判断がお腹の子を危険にさらしていることを今更になって実感してしまい、涙が次々に私の双眸から流れ落ちる。
「駄目っ! 駄目ぇっ! まだ出ちゃっ……」
座っていたら駄目だ。
苦痛から逃げようとして体の力を抜いていたら、反射的にいきんでしまいそうになる。
そのことに気が付いた私は、よろよろと立ち上がって机の上に手をついた。
「ハァー……、ハァー……!!」
足がガクガクと震えて、ともすれば床に倒れ込んでしまいそうになる。
言うまでもなく、この状態でそんなことになったら大惨事だ。
危ないと感じたらすぐに床へ座り込むようにと、そう何度も自分へ言い聞かせながら、
「大丈夫、大丈夫です。私は、大丈夫……」
お腹の子と、自分へ励ましの声をかける。
……あなたは、無事に生まれてこられます。私は、無事に産めます。
姿勢を立位に変えたのは正解だったかも知れない。
気がつけば、陣痛の間隔は2分30秒まで短縮していた。
「もうすぐ……もうすぐですからね……?
……あっ、ふ、んっ、ぅあっ、あぁーっ!」
「ぁぁぁぁ……」
破水した。破水しちゃったぁ……。
ほんの一瞬、油断しただけなのに。
私の子宮はその隙を見逃さずにぎゅうぎゅうと収縮して、羊膜を破ってしまった。
失敗した衝撃を受け止めきれず、私はへなへなと力なく座り込む。
「産まれるっ……! 産まれちゃうぅ……」
そんな状況でも容赦なく再び訪れた陣痛に、慌ててスマートフォンを見る。
陣痛の間隔は2分強、陣痛の持続時間は70秒ほどだった。
微妙なタイミングだ。
できるならもう少し我慢したほうがいい……でも、でもぉ……!
「も……もう我慢できません……いきみます、いきんじゃいたいです……」
「いっ、痛っ! ごめんなさい、ごめんなさいぃ……!!」
破水した直後の陣痛は何とか受け流せた。
けれど、2回目の陣痛は、これまでで最強のものだった。
破水したことで、赤ちゃんが「もう外に出たい!」と
我慢するのかいきむのか、曖昧なままだった私の意志は、そんな痛みにあっさりと打ち砕かれて。
「ぎっ、あぐっ……! あうぅ……うああぁぁぁ……!!」
赤ちゃんの頭が子宮口を押し開いて、私の骨盤を通過しようとしているのを感じる。
「ああぁぁぁ……! あああぁぁぁぁ……!!
痛いぃ! 痛いぃぃ……!!」
骨盤が砕かれそうに痛かった。内側から鈍器で殴られているかのような衝撃を感じる。
「ふん゛んぅぅ!!」
顔をくしゃくしゃに歪めて、鼻水をまき散らしながら、いきむ。
「ふぐぅうぅぅ!!」
私も苦しいけど、赤ちゃんも苦しいんだって、わかっているから。
「はぁぁっ、はぁぁぁぁっ……!
通った、通ったぁ……!!
一番狭いところ、赤ちゃんの頭、通りました……!!」
大丈夫、もう産める。
後は、陣痛に合わせていきむだけです。
「うう゛っ!
「や、やりました……! 頭が出ました……」
ここまでくれば後は短息呼吸で……。いきまないように、我慢して……。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……。
赤ちゃん、私の……ぐすっ……赤ちゃん……」
体を回転させながら少しずつ膣口から姿を現す私の子に、そっと手を添えて待つ。
14時間以上にも及ぶこれまでの苦しみがあっただけに、その感動は一入だった。
「やっと、会えましたね……」
とても怖かったけれど、すごく心配したけれど。この子は無事に生まれてきてくれました。
そのことがとても幸せで、嬉しい。
「ありがとう……」
もう初乳を飲むのでしょうかと、我が子を胸に抱き寄せながら、私は救護騎士団へ電話をかける。
──きっと、
ぼんやりと、そんなことを考えながら。
長らく筆が止まっていましたが、えっちなスレを見つけたことで続きが書けました。
短いのは素直にごめんなさいです。
(サイレントで加筆するかも?)
↓えっちなスレ
https://bbs.animanch.com/board/4998273/