…一話&二話の誤字報告有難うございます!!
ハジメと雫の2人が迷宮の底に落ちてから数日が経つ。
その間二人は魔物を食べて腹を満たしたり自己強化を計っていたが、強化されているのは雫位で、ハジメはその身に魔力を蓄積するのみだった。
二人の懸命な捜索も虚しく迷宮の出口は見つからず、変わりに下へと続く道のみで、やはり降っていくしか方法が無かった。
『…矢張り、下るしかないのか。こういう時は、"我等は地獄の門を潜る者也や"…とでも言うべきかな?……』
「…南雲君ってドラゴンにしてはロマンチストね…現実主義者だと思ってた。」
少しばかり決めポーズを取りながら詩人の様に言うハジメを見て、雫の中で緊張が解れた感じがした。
そうして、階層を降りたハジメ達が、最初に辿り着いたのは…真っ暗闇の階層だった。
念の為、迷宮の壁についてた緑光石を応用したランタンを雫に手渡し自分はこのまま進むと宣言。元々がリオレウスで在る為、遥か高度から獲物を見つけ出す視力と血の匂いを嗅ぎつける嗅覚のおかげか、暗闇の中でもスイスイと雫の手を繋ぎながら進む。
途端にハジメは何かがこちらに来る気配を感じたのか脚を止める。
『雫。何かが居る。俺が引き付けるから援護を頼む。』
「解ったわ。」
そう言うと、ハジメは匂いの先に進み、雫は腰のベルトにランタンを提げると、刀を抜刀し構えた。
すると、何かが光ながら此方に向かってきた。正体は、光り輝く眼を持つ2m近くの灰色の体色をした大蜥蜴。
大蜥蜴は、ハジメに向かってその眼の光を照射した。
『?何をしたチビ。』
然し、ハジメには通用せず大蜥蜴は驚愕していたが、その隙を狙って雫に首を切られた。
トカゲの皮を剥ぐと、ハジメが口から火の粉を吹き大蜥蜴を焼くと2人で分けて食べた。
皮肉にも、雫はこの日始めて自分達の世界で珍味とされる爬虫類を食べる事になった。
食べた後、雫の技能に石化耐性が追加された。
「石化って……此奴バジリスクだったのね。」
『バジリスク?確かそんな名前の幻獣が居たな。…まぁ格上に通用しない時点でなぁ。石化とは行かなくても逃走の手段として併用するやつが多かった…
ハジメの脳裏に過ったのは若年期に熾烈な諍いを繰り広げたかつての強敵達。
どいつもこいつも、そういう攻撃を工夫して使うとんでもない奴だから故に、柔軟な思考力を鍛えられる良い師匠枠の連中だった。
そう思いながら蜥蜴の骨をボリボリと食いながらも、雫と次の階層に降りていった。
かなり進んだ場所で、地面のあちらこちらがタール状の泥沼になっているエリアに踏み入れた。前に行商から買った[フラム鉱石]と同系統かと思い一掬いすると、同等のぬめりと臭いを持っていた為確信出来た。
『このタールは発火性…流石に生物の体温では燃えないだろうが、ブレスは使えんな。……良し、雫…俺に乗るか?』
そう言うとハジメは銀火竜リオレウスへと姿を変えると片翼を地面に附け背中に乗りやすくした。すると、雫が口を開いた。
「ハジメ君……最初は戸惑ってて何も言えなかったけど、ちょっとだけ言わせて…」
「その姿……凄くかっこいい!!」
雫は目を輝かせながらそう言った。何せ御伽噺のドラゴンだ。理不尽な[死の具現]を下した飛竜…
彼女は、ハジメの真の姿を一目見たその時から、見た目の美しさと相反する荒々しさを見ておきたいと思っていたのだから。
リオレウスは最初、瞳孔を広げ驚いていたが、親友が自分の嘘偽りない姿を受け容れてくれた事が嬉しかった。
雫が落ち着きを取り戻した後、首と背中の付け根に跨るのを確認したリオレウスは、タールを掻き分けながら歩き始めた。
馬に乗る機会は多々あれど、その馬より大型の……ましてやドラゴンに乗っていると言う近代史史上片手で数える者しか居ない破格の経験をしている事に興奮が冷めず、目を輝かせていた。
一体と1人が沼地を進んでいると突然、何もいないはずの沼地から鮫型の魔物が飛び出しリオレウスの尾に噛み付いた。
然し、鮫の牙はリオレウスの銀の装甲に傷を入れられず何度噛み付こうが下部の銀の竜皮すら貫けなかった。
最初は驚いた雫だったが、段々とこの無謀な挑戦者が可哀想になってきたらしく哀れんだ目をしていた。
ーグルルルル……
タールの層を抜けるまでは黙認していたが、流石に目障りに思ったのかリオレウスは鮫を見て吼えると尻尾を振るって、鮫を壁に叩き付ける。
鮫には物理攻撃を緩和する能力が備わっていたが、その程度で加速した質量攻撃をいなせる訳がなく、無事にミンチへと転向した。
魔物と地球の生物の構造は違う様で、地球の鮫の様なアンモニア臭はせず、変わりに白身魚の淡白な食感が味わえた。
ー
「分かる……帰ったら叔母の経営してる回らない鮨屋に行きたい。」
次の階層に、足を踏み入れたその瞬間、ハジメは何かを察したのか顔を顰めた。
『雫…この階層は毒霧が凄い。こっからでもかなり匂う。』
「嘘でしょ…どれだけ攻略させたくないのよこの迷宮。」
『雫…焼くか?』
「お願いします。」
ハジメは口元から火の粉をチラつかせて、この階層を焼却消毒するかと提案し、雫はそれを承諾。ハジメは雫が自分から後ろの大岩に隠れたのを確認すると…肺いっぱいに空気を吸い込み、火の粉を炎に増幅させ放射状に吐き出した。
ーフレイムブラスト!!
広がった炎の津波は、毒霧を焼き尽くしながら階層を前へ前へと飲み込む。
奇しくも、その毒霧の中には某怪獣に似た蛾と2mに近い隠れる気が全くない虹色のカエルが階層に足を踏み入れた愚か者を待ち構えていたが、両者は最後まで敵を見据える事も無く炎に呑み込まれた。
…暫くして…
毒霧と発生源が焼けたのを確認して、ハジメは雫を呼んだ。
『終わったぞ。出て来て良いからな?』
「…熱風が凄かっ…熱っ…て、うわぁ…」
辺りは毒が焼き尽くされた事を示す黒い粉…丸焼きにされた生き物の死骸…炎が舐めた天井や壁という戦時中だとしても中々見れない光景が広がっていた。
煤だらけの階層を進みつつ道中で黒焦げになっていた魔物を発見。カエルらしい魔物の中身はホカホカに焼けて香ばしい匂いを漂わせていた為雫は躊躇うことなくがぶりついた。虫の様な物体は成る可く、栄養価の高い腹の部位を残して食い切ったハジメが腹の部分を引き攣った顔の雫に差し出した。
曰く、普通の動物類よりは、昆虫の方が高タンパクで栄養価に優れていると……
ほんと〜に、恐る恐〜る一口食べてみるが、何故か、釈然としない顔を浮かべる雫。
「カエルより美味しい……しかも虫って中身トロトロなんだね…」
『…小さい癖に栄養価は抜群に高い。そいつらなりの生存戦略さ。』
そう言い残すと次に進む。
次の階層は亜熱帯かと思わせるくらい湿度と温度が高く、鬱蒼とした木々が覆い尽くす不思議な場所だった。
この迷宮に出る魔物は、巨大な百足…そして動き回る樹だった。
百足は樹上からいきなり降りて襲い来る襲撃者タイプの敵でしかも本体も節ごとに分離して襲って来る始末。
雫は、刀を使い向かって来た分離体を切り捨てることに専念。
ハジメは、[業火錬成]で一時的に作り上げた[シルバーソルグリーヴ]と呼ばれる足甲で百足を回し蹴りで溶断する・炎で焼きながら連続蹴りと云う足技主体の戦いで蹴散らしていた。そんな中目に付いた動き回る樹…仮称・トレントだが、地中に潜らせた根で突く、ツルをしならせて攻撃と…やたら姑息な戦い方をするが、極めつけは追い詰められた時、頭を振って赤い果実を落としてそれを囮に逃げると云う攻撃?をしてきた。決死こいてる割に攻撃力が無いなと思ったが、なんとこの果実……やたらと美味しかった。
「美味しい!!まるで西瓜の様!!」
『確かに甘いな。…成程な、奴等トカゲの尻尾切りの様にこの果実を囮にするらしい。甘くて美味しい果実に気を取られてる隙に、本体は遠くへ逃げるという寸法だ。』
弱者なりの生存戦略……この世界はこの世界なりによく出来てるなと感心した。が……
「…もっと取りましょ♪久々の甘味よ!!」
『逞しくなったな………塩味ばかりの冒険も中々飽きる……そうだな。取るか』
これ以上味覚が塩味ばかりで馬鹿にならない様にここいらで修正しておくかという案の元、ハジメは雫と共に果実の収穫に勤しみ、たっぷりと甘味を補給した。…酸味と甘みのある果実は、糖分とビタミンを摂るのに適している為、ここら辺で絶好のチャンスだった。…2人が去る頃にはトレント達の頭の果実は殆ど消え果てていた。
その様にワイワイとした雰囲気で進み続ける二人は、気付けば五十階層に到達していたが、まだまだ出口は見えず。迷宮全部ぶち抜いてやろうかというイライラも出てきたが、ソレは迷宮の作り主にでも存分にぶつけてやろうと頭の片隅に留めて置く事にした。ステータスは、ハジメに関しては余り変化が無いが雫のステータスはとんでもない変化を迎えていた。
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八重樫雫 17歳 女 レベル73
天職:剣士
筋力:880
体力:1300
耐性:980
敏揵:1600
魔力:840
魔耐:840
技能:天武の剣技・銀火竜の加護(ダメージ軽減+エネルギー吸収)
・魔力操作・空歩・言語理解・夜目・気配感知・魔力感知・気配遮断
・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・竜語理解
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「もう驚かないわ…」
白目になりながらも自分の強さに驚愕していた雫。
この階層は、すぐ近くに階下へ続く階段があったが、その近くには明らかに人の手が入り、高度な文明の痕跡が存在。
底には高さが10メートル近くの両開き式の重厚な石扉が存在していた。
その扉の両サイドには単眼の巨人像が夫々壁に埋まった状態で扉を挟むように立っていた。
『…確か、父の言っていた、ダンジョンエリアに時々点在するお宝部屋……所詮、ボーナスステージと言う奴だったな。』
「……どうするのよこの扉……見た所かなり頑丈だし、真ん中の窪みに填めるもの探さないといけないわよ?」
雫はハジメが、言っていた事を聞きながらも思案して分かった事を告げる。
何らかの条件を満たさなければ、扉は開かないし、周りに刻まれた古代の文字はかなり古く、触れてしまえばどんな事があるかすら分からなかった。
すると、ハジメが徐に扉に触れる。
『……押し通る……しかないだろ。』
「…ちょっ?!何があるか分からないのよ!」
『…いいや、これで合っているらしい。両端の巨人像に
するとハジメは何か文字を刻んだルーン石を雫に渡すと、部分竜化を使い、手を銀火竜としての翼に変貌させた。
雫に渡された石はハジメがリオレウスの吐息を1度だけ放てる様にした触媒の様だ。
ヴォォォォォォォォォ!!!!!!
扉の左右の巨人像の目に光が点り石化が段々と解けていく。
扉を開けようとした愚か者を成敗する為…番人たる自らを呼び起こした不届き者を仕留めようと目覚めの咆哮を上げた。
『来るぞ!!』
「えぇ!!」
[火竜のルーン石]
南雲ハジメが八重樫雫の為に彫り上げた石。
石に刻まれたルーンは太陽の陽を表し、1度限りだが、使用者の魔力に左右されない強大な竜の吐息を見舞う。
一度限りのため、使えば砕け散る。
…オスカー・オルクスに迫る危機……