※但し、お相手が主人公だとは言ってない
二体のサイクロプス像は、目覚めのときを待っていた。
自らが護る扉の先に居る姫を護るのが絶対的な使命…だからこそ扉を開けようとした不届き者に容赦はせぬと、その身の石化を解除して扉を開けた不届き者を見下ろそうとした矢先、目の前に男が跳躍。その男の左手側から焔が剣のように吹き上がり……男から凄まじい殺気が飛んできた次の瞬間……
サイクロプスの視界は2つに割れた。それは目の前の男がやったのだと、右上に振り抜かれた龍翼の様な手刀を見て、そう確信。それがサイクロプスの最後の景色となった。
雫は目の前で動き出したサイクロプスに対してあまり恐れていなかった。
道中の魔物もあるだろうが、1番はハジメの存在だろう。
雫は、こんな時でも叔母の言葉を思い出していた。
〜「どんな時でも、お天道様が見ているからね?雫」〜
どんな時でも太陽の神様がいつも温かく見守っている。其れは自分のすぐ近くに居た、皮肉な事に八重樫雫は
それ故に、ステータス欄に新たな技能が追加された。
ー恐怖を認め立つ者に黄金の魂をー
雫は、石を握りしめ魔力を込めた。
石から発せられた炎は、雫の左手を激しく包むが熱くは無く……寧ろ、温かい。
そして石をサイクロプスに向けるとたなびく炎をサイクロプスの顔へ合わせ唱えた。
「焼き尽くせ!!"神火"!!!」
ドパァン
周囲に小気味よい音を立てて放たれた其れはサイクロプスの頭を炭に変えた。
熱量の高さに組織が炭化したのだ。
同時に、雫の手の中にある石は砕けた。
頭を無くし地響きを立てて倒れたサイクロプスは二度とその身体を動かす事は無く、自らがこの手で仕留めたのだと実感。
「(…)…ふぅ…」
暫くすると、サイクロプスの死体は、石化。ヒビが入り、バラバラと崩れ落ちた。
残骸の中には紫に光る拳大の魔石が有り、恐らくこれを扉の窪みに嵌めれば、扉が開く…そう理解すると、魔石を手に取り扉の前に向かう。
同じタイミングでハジメも魔石を手に扉の前に来た。
二人は、魔石を窪みに填めると仕掛けが作動した音が聞こえた事を確認。そして扉が音を立てて開き始める。
扉の奥は光ひとつない真っ暗な闇だったが、足を踏み入れた瞬間、紫の灯りが灯り部屋の全貌が見えてきた。
中は、聖教会の大神殿よりも遥かに広い空間で、幾本かの柱が天井を支えておりハジメは戦闘になった時、飛ぶことは余り出来ずとも竜体化で戦う事は出来ると予感していた。
だが……真ん中には奇妙な立方体の石があり、異様な存在感を放ちながら浮遊していた。……雫1人ならトラップに警戒しただろうけど、ここにはどんなに強力な魔物だろうが粉砕出来る親友がいる為、注意しながら近寄る事にした。
「誰?」
「『!?』」
ハジメと雫は、異様な存在感を放つ立方体の前方から声がする事に驚愕。
その瞬間、ハジメは瞳孔を狭め、口元に炎を揺らめかせた。
雫も同様にギョっとしながらも刀を構える。
灯りが照らす先に居たのは、の少女だった。
齢は、12〜13歳程だろう…長い薄金の髪にその間から見えるハジメの蒼い瞳と対を成す赤い瞳。かなりやつれている様に見えるがそれでも美しいと分かる。
その少女は、頭を揺らして2人を見ると……掠れた小さな声で助けを乞う。
「お…ねがい。……たす…けて…」
その一言に雫はハッとさせられて直ぐに助ける為、駆け寄よろうとするが、ハジメに手を掴まれ制された。
『待て。此処は大迷宮の中。まだ誰も来た事の無い区画にたまたま人語を話せる人型生命が居るってのが馬鹿げてる。怪しさ満点じゃないか?』
「……それもそうよね。でも、私は私の意志であの子を助けたい…こう言い回すのはどう?」
『……そうか…そこまで言うなら仕方ないな。だが、何かあったら俺が仕留める。』
そう言うと雫は少女を助ける為に、1歩前へと赴き少女と向き合うと話しかけた。
ハジメは、雫を守る為に隣で身構える。
「……コホン…貴女は誰?どうしてここに封印されているの?」
「私は……先祖返りの吸血鬼。…凄い力を、持ってて……国の…皆の為に頑張った。……だけど、ある時、叔父と臣下たちが、私は要らないって……今から私が王だって……私はそれでも良かったけど……私の力は危険…殺すことも出来ないって…だから封印された。」
吸血鬼……雫は幼い頃に見た映画で、ハジメは地球圏でヴァンパイアという名の幻想種が居た事を思い出した。血を吸って生きる陰の者でこのトータスで人族や魔人族と同じ知的生命として確認。だが、それは300百年前に滅びたはずだと覚えている。
『その叔父達が恐れたお前の力は何なんだ。それを教えろ』
「……私……怪我しても直ぐに治る。……首が落ちても、切り刻まれてもいずれ治る。……それに、魔法を直接操作出来る。詠唱も陣も要らない。…」
この事実には二人も驚いた。
彼女の話が本当ならば、不死身であるという事実に付けて、魔力を行使する事のスピードに関してこのトータスで右に出る者は居ないと言われている。
だが、ハジメはその話を聞いて尚の事、警戒心を顕にした。
ここから逃れる為の嘘なのかも知れない……封印を解いた途端、
ハジメは不測の事態の予測をしながら、雫とどうしようかと相談を続ける。
此方を再度見つめる少女の目を見て雫の決意が固まったのか、彼女を封印する石に手を当てた。
『助けるのか?言ってる事が真実とも限らないんだぞ。』
「…わかってるわそんな事。でも、あの子の目は嘘をついてる様には見えないの。少なくとも教会の奴らよりは信用出来るわ。……それに此処で一人ぼっちにしたら可哀想よ。」
そういう雫は少女に己を重ねていた。
ソレは、誰かの意思では無く八重樫雫が決めた事。
だからこそ、周囲に裏切られて孤独になっている彼女を放っておく事は出来なかった。
そんな雫の決意の決まった瞳を見せられ、意外にもハジメは折れた。
『はぁぁ……お前がそこまで言うとはな、手伝うよ。』
「!ありがとう!!」
『だが、どう助ける?俺だと封印はいけるが、こいつごと焼いちまう…』
「……その焼く対象をこの封印装置だけに絞れないかしら?」
『…[魔力操作]か?……試してみる価値はありそうだ。』
雫は石に魔力を流し込む。ハジメは両手に火を灯し石の根源を焼く事に集中し始めた。
やがて、雫の魔力とハジメの魔力が合わさると金色の炎へと変貌し少女とモニュメントを包み込む。…少女がその魔力の奔流を注視していると、炎が石を焼き崩していき、石が炎に抗う様に再構成されていく。だが、再構成を繰り返す度に脆くなった部分が黒く変色し崩れ去っていき、やがて少女の枷を解いていく。
それなりに膨らんだ胸部から順に腰、両腕、両足と段々と解けていき解放された少女は、雫に抱き留められる。
少女は暫くして立ち上がろうとするが、力がまだ戻ってないのかペタリと地面にへたり込む。
雫は、初めての魔力放出の余韻で激しい倦怠感に襲われ、肩で息をしながら座り込むと同じく魔力を大量に放出したはずのハジメが何事も無かったかの様にスっと現れて神水を差し出す。
『大丈夫か?…聞いた俺が酷だったな。』
「…息の一つでも切らしたらどうなの……はぁ…ありがと」
軽口を叩き合いながら、神水を受け取った雫は自分の左手を少女が握ってる事に気付く。顔は無表情だが、其の紅い双眸は強い感情を持って雫を見つめる。
そして小さい声だが、しっかりとした言葉を紡ぐ。
「……あの……有難う……」
「!!…どういたしまして(*^^*)」
ハジメは、そんなふたりの様子を見ながら少女について考察する。
歴史の通りなら吸血鬼族は300年前に歴史の彼方に消えた種族。
滅んだ時期と比べても、彼女は300年近く、この場所に閉じ込められていたのだ。
話している時も表情は動かず、声の出し方はだんだん思い出しているが……それだけの長い間を暗い孤独の中で過ごし続けてきたのだ。良くも発狂しなかったと褒めてやりたいくらいだ。色々と話し込んでる2人を微笑ましく眺めているハジメだが、不意に上から殺気を感じ取る。
『ッッッッ!?不味い!』
ハジメの判断は早く咄嗟に飛び込むと2人を抱えて飛び退いた。
それと同時にハジメ達の居た方に殺気を振り撒いていたモノが轟音と衝撃と共に降ってきた。
その殺気の正体は蠍に酷似している魔物だが、体長は7〜8m…四つの長い腕には金属を容易く切れそうな鉸を持ち、鋭い毒針を先端に携えた尾が二又に生えていた。
その姿にハジメは可笑しいと感じる。本来、生物は気配を隠す術を持つ者が多いが、ゼロになる迄気配を薄くするなど……と思ってハッとなる。
扉の前に居たサイクロプス共も扉に触れる事で動き出した。並ばこのちんちくりんは、彼女が解放された時にここから逃がさない為の切り札なのだと再認識。
そしてこの生物の相手は自らが相応しいと雫と少女を見て即座に判断したからこそ雫に指示を出す。
「雫ゥ!!そいつを護っておけ!!俺はこいつを片付ける!!』
「なっ!ハジメ君!!」
ハジメの吐き出す吐息が灼熱を放ち煙で覆い隠されたその瞬間、蠍の眼前に膨大な熱を伴った火球が炸裂。
咄嗟に防いだ蠍だが、4つある鋏が前足諸共、焼き消えていた。
人間にしては、そこそこの魔法だと思った蠍の思考は眼前の光景に凍り付く事になる。
ハジメは、噛み砕いて飲み込んだ骨等を燃やし煙を作り吐き出して煙幕を作り出して、そこからブレスを放った。
そしてその身に炎を纏い、蠍より、質量も体長も2倍はある巨大な飛竜に変貌したのだ。
自らに降りかかる圧倒的な圧力に拱いている蠍は、生きるか死ぬかでの野生化で格好の獲物となる運命だ。
銀火竜リオレウスは、左の翼を振り上げると、翼爪で地面を抉る様にアンダースローで蠍めがけて振り抜く。蠍は飛んできた礫程度と思うが、その礫が蠍に当たった数瞬の後抉れた地点から蠍めがけて連鎖するように爆発が襲った。
ボボボボボボボォォンン!!
更に石ころも自然落下した軌跡を辿るように連鎖爆発を引き起こす。
爆発の衝撃はとても大きいが、自分を倒すには至らないと蠍は吠える。
すると爆煙の向こうから、飛竜が自らの身体を回転させながらハンマー状の尾をぶつけに来ていた。蠍はとっさに鋏で防御するが、自分の2倍のウェイトと遠心力が乗った凄まじく重い一撃を受け止めきれずに吹き飛ばされる。
2転3転してひっくり返った蠍はまだだとばかりに二又の尾から毒液と毒針を発射するが、そこに飛竜は居らず。
リオレウスは自らの脚力で跳ぶと、綺麗な捻りを加えて回転、先程の爆発でヒビが入った蠍の装甲へ遠心力とその分の質量が乗った自らの尾を叩き付けた。
ドゴォォォンンン!!!
凄まじい衝撃は、部屋全体を揺らす。外殻を構成する[シュタル鉱石]はこの世界で最高硬度を誇っていたが、連鎖爆発によりヒビが入り脆くなっていた為、蠍は哀れその頭蓋ごと圧殺され、落命した。
ゴアァァァァ!!!!
蠍の絶命を確認した銀火竜は、両翼を大きく広げ天に向かって勝利の咆哮を上げた。
不死身やそれに類する連中のウザさ
[前世で何度か相対した。イャンガルルガ・イビルジョー・ラージャンの事]
此方を捕食対象として襲って来る奴
[紛れも無くイビルジョーである]
不測の事態の予測
[ハジメが遠藤浩介の家でやったゲームの格言]