エロ系にあるまじき濡れ場の少なさですが何とか、多くの人の応援もありここまで続けられました。
満を持して本作主人公ヒロイン(一人目)の登場です。
……長期間またせました。
運命の出会い
魔法陣の光が満ち、視界が変わらずとも空気が変わる事をハジメ達は実感していた。奈落の底の澱んだ疎ましい空気とは違い、澄み切った新鮮な空気感にハジメと雫は頬を緩ませた。特に、ユエにとっては、数百年ぶりの外の景色である。やがて光が収まった三人の視線の先には、変わらない土色の岩に囲まれた洞窟が映っていた。
「……えぇ…」
『隠れ家の先が開けた場所…なんて粗末な事はしないよな…』
「ん…秘密の通路、隠して当たり前…」
どうやら、浮かれていたのは自分だけだと知って顔が赤くなった雫。ユエはそんな雫にゾクゾクしていたが、ハジメに窘められた。
「!!ッッッッ////……」
『…ユエ。機会は設けてやるから今はな?』
ハジメは、そう言うと自らの指先に火を灯しランタンに付けた。
ランタンの柔らかな光を頼りに進む一行。
クリアした者しか通ることを想定してないのか罠の類は見受けられず、かなり進んだところで壁に当たった。
その壁は、外界と隔てているのか隙間から太陽の光が漏れておりここが終点だとわかった。
試しに雫が先の醜態の挽回とばかりに石扉を押したり引いたりしてみたがうんともすんとも言わず、終いには痺れを切らしたのかハジメが蹴ろうとしたその瞬間、迷宮攻略の証の指輪が光り、その光に反応したのか石扉が開いた。
まるでこれ以上破壊されたくないとばかりに……
いきなり開いた石扉は外の風を迎え入れた。
洞窟内の澱んだ空気と違い清涼感のある新鮮な風が外だと示す匂いを吹き込ませて来る
のを感じ取った3人は風の来る方向に向かって歩く足を速める。
そして、ハジメと雫とユエは差し込む光へと飛び込み待望の地上へと飛び出した。
そこは地上に住む人間達にとって、或る意味地獄であり処刑場だ。
断崖の下では魔法は殆ど使えないが、それにも関わらず多数の強力な魔物達が生息している。深さの平均は1.2km、幅は900mから最大で8km、西の[グリューエン大砂漠]から東の[ハルツィナ樹海]まで大陸を南北に分断する大地の爪痕[ライセン大渓谷]である。
ハジメ達は、そのライセン大渓谷の谷底にある洞窟の入口に居た。
地の底とはいえ太陽の光がサンサンと照りつけ、時折、土の匂いを含んだ涼しい風が
吹き付ける。たとえどんな場所であろうと、地上である事に違いは無い。
呆然と天の太陽を眺めていた雫とユエの表情が次第に笑みを作る。無表情がデフォルトだったユエでさえ誰もがわかるほどの笑みを浮かべていた。
シルドは、自身に刻まれた太古の記憶で知ってはいたが生まれて初めて見る太陽の光に眼を輝かせながら、降り注ぐ光と温かさを堪能していた。
「……戻って来た…のね…」
「…んっ」
『そうらしいな。』
ークォォォォォォォ!!!!
二人は実感が湧いたのか、太陽から視線を逸らすとお互い見つめ合い、思いっきり喜びを表すかのように抱きしめ合った。
シルドは天に吠えて、主とその番の喜びを共有していた。
「やったぁぁぁぁ!!!!遂に出られたわぁぁぁ!!!!!」
「んーーーー!!!!」
雫とユエは、抱き合ったままクルクルと周り、しばらくの間、人にとっては地獄の様な場所に似つかわしくない笑い声が響いていた。
ハジメは、そんな2人を微笑ましく見ながら、現在地について学んだ地理を駆使しながら、考察していく。
『(…此処は…ライセン大渓谷だったか?確か……大迷宮が在ると聞いたが、それらしいものは無し。近くにはヘルシー帝国だったか?それと、別の大迷宮が在るハルツィナ樹海…)……先は永い…何処から行こうか。』
ハジメが思考に頭を巡らせていると、何かに気付いた雫がハジメの袖を引いて注意をこちらに向ける。
『?どうした?』
「……南雲君、その……暫く飛んで来ても良いよ?私達は待てるから」
「…ん、私達の我儘を聞き続けてくれたから、それ位は良いよ」
『………気を遣わせたな…しばらく飛んで来る。』
どうやら、自分に気を遣われた様だ。
……実の所、雫は銀火竜と成っていたハジメを見て空を飛べないと云うフラストレーションが溜まっているかも知れないと思っており、こうして外に出られた今ハジメは空を飛びたいのではと確信してこう言い出したのだ。
ユエは自分を連れ出してくれたハジメに恩義を感じており、恩を返すつもりで雫の提案に乗っかった。
ハジメは雫とユエに感謝の言葉を告げると、炎を纏わせながら駆け出し、その身を銀火竜へと変異させた。
完全に変化しきったハジメは、大きな翼を広げると力強い羽ばたきと轟く咆哮と共に飛翔。
ーゴァァァァァ!!!!!
一回の羽ばたきで空に舞い上がった銀火竜を見てユエは驚愕する。
改めて見ると飛び立つには助走が足りず、魔力も行使していない、体重の重軽も関係してくる……にも関わらずその事象をシカトして目の前の竜は飛び立つ。
加速し、崖際の接地面スレスレに目一杯翼を広げ沿うように飛んだかと思いきや、壁を一瞬だけ蹴り、離れると回転しながら反対の崖に向かい飛んだかと思えば、壁に背を向ける形で降下。翼を畳みくるりと体制を変えると、ユエ達目掛け飛んで来た。
目の前でユエ達を起点に一回転。雫の目には一瞬だけハジメが目を向けてチラ見したのを視認できた。
少し距離を取った所で翼を羽ばたかせて再度の飛翔。
今度は空中高く飛び上がり、200mの地点で宙返りをするとその場に滞空してホバリングを始めた。
雫は飛行性能の高さに少々引き攣った笑みを浮かべ、ユエはこんな超生物がそれなりに居るハジメの世界が非常に末恐ろしく感じた。
(実際その通りだから仕方ない)
しばらく飛んで満足したのか銀火竜は降下。雫達の前にフワリと降り立つ。
ー
「…そう?良かったわね。」
陽光を受けて煌めく銀色の竜鱗。
生命の息吹が脈動する体躯。重厚な銀の装甲には多数の傷跡があるが、それらを加味しても美しいのだ。シルドと名を持った地竜とリオレウスという名の飛竜種…異なる諸相をしながらも同じ竜種である事には変わりない。
……辺りを訝しげにキョロキョロと見回し、首を傾げる動作を何度も繰り返すリオレウスに雫は奇妙な顔をしながら問いかける。
ー
「どうしたの?南雲君?」
ー
「声?……聞こえないわね」
ー
翼を畳み逞しい後脚で大地を踏みしめて歩くリオレウス。
雫とユエはリオレウスの後ろを歩くが、同時に疑問を感じていた。
ココの魔物は凶暴性も高いが何より獲物の少なさに飢えている個体が多く生息している。そういった獣は恐ろしい存在だとメルド団長から聞いたのだが、獣のけの字も無い程に命がいない事に首を傾げた。
……実の所、先程上空に飛んだハジメは自らの存在を誇示する為、威圧の意味を込めた唸り声を発した。
それが功を奏したのか、聞き分けの良い魔物達はすぐ様、周辺から立ち去った。
歩みを進めて暫く……ハジメは謎の声の発生源が近い事を感じ取る。そして突き当りから顔を出して声の主を辿る。そして声の発生源を見つけたらしいのだが、ハジメが固まって居る事に雫は気付いて話しかけた。
「??南雲君、どうしたの?」
ー……
「見つけたは良いが?」
ー
「??何そのエキセントリックな状況…犬神家の一族でもそんな事ないわよ」
「雫、ハジメ、犬神家ってなぁに?」
リオレウスの目の前には角度がえげつない事になってる衣服?を着用した明らかに女性の様な誰かが埋まっていた。
足がバタついてる事から生きてはいると判るが、珍妙極まりない事柄だ。
兎にも角にもこのままでは窒息してしまうと判断したのか、リオレウスは炎に包まれながら、ハジメに戻ると雫とユエに手で合図をし、共に来いと告げた。
『そのままと言うのも悪いからな。助ける』
「…えーと、多分、上から落ちたのかな?」
雫が崖の上を見ると、崩れた崖と零れた土の跡……と言うよりよじ登ろうとして脚を滑らせて顔面から着地を決めてそのまま落ちて来た砂が被せられた形になるだろう。
ハジメは地面に埋没した女の片足を掴むと徐に引っ張りあげた。
土が柔らかかったのか、バコッと言う音と共に地上に引きずり出された少女の頭を見て驚愕した。何と、兎の耳の様なモノがぶら下がっていた。
『?!此奴は……』
「…ハジメ、躊躇いが無い…あっハウリア族だ。」
「…大丈夫この世界?ドラクエとかFFの設定が概念として捩じ込まれてない?…」
一行は初めて出会う人が他種族に対して驚嘆の眼差しを向ける。ハジメは、異なる形で進化した異種族に、ユエは躊躇うことなく助けたハジメのやり方に苦言を漏らしながら昔に知ったとある樹海に暮らす兎人族について思い出し、雫は、トータスはとあるRPG世界に既に侵食されてるのではと逆に心配してたり等とバラバラの反応だった。
そんな中……
3人の後ろから大型の魔物達が数匹、寄って来るのが目に付いたハジメは即座に竜化させて睨み合う。
ユエと雫は、発掘された兎人族を守る様に各々の武器を構えて対峙、雫のペットになったシルドも唸り声をあげて主人に近寄る危険な魔物と相対する。やって来た魔物達は、いきなり人が竜に変じた事に衝撃を受けたが、せっかくありつけた獲物を寄越せとリオレウスに吠える。
ーグルルルルル……
「ん……こいつらハジメが怖くないの?」
「…お腹空いて限界だからじゃないの?だからって渡すつもりも無いけど」
ー
ースゥゥゥゥ……グルゥアアォォォォ!!!
ハジメは雫とユエに耳を塞ぐように言うと、息を吸い……立ち去れと殺気混じりの咆哮を放った。
「っっっっっ!!!!!!」
「んんんんんんん!?!?!?」
『『『『……ギャァァァァァ!?!?』』』』
銀火竜リオレウスの咆哮は本能を直にぶん殴る凄まじいものである為、人族・獣人族にも効果がある。当然、そんな咆哮を食らって何もしない獣達では無い。
久々の獲物と思い込んでいた獣達は、突然、本能に氷を突っ込まれた凄まじい恐怖感に縮み上がり……逃げ出した。清々しいくらいの脇目も振らない全力逃走だった。
「…潔く逃げたわね…」
「…仕留めなくて良かったの?」
ー
「…ユエ、コレは警告だって。…次は殺すって言伝を素直に聞いてくれたみたいよあの魔物達」
立ち去る魔物がかなり遠くまで行ったのをハジメが確認して安全確保ができた一行は歩み続け洞穴を見つけると兎人族を運び込み、目が覚めるのを待ち続けた。
……続く!!
※アルバトリオンの破壊痕はまだまだ残ってます
お次は、オルクス大迷宮に再度挑戦した勇者一行の回。