下手くそな鼻歌交じりに、衣服を脱いでいく。特になんの防寒対策も施していない脱衣所だ。裸でいると、普通に身体が冷える。
温泉の素の入った袋を手に、ひとりお風呂場に入っていく。一緒に服を脱ぐのは嫌だったらしく、リンは後発組だった。服の脱がせ合いなんて、エッチなことをしている最中なら日常茶飯事なのに。温泉の素をお湯に注ぎながら、太陽はぼんやりと考えた。
そうした微妙な部分にある感受性が、鈍感なまま大人になった自分との違いなのだろうか。なにも、それが嫌なわけじゃない。リンはリンで、ボクはボクなんだ。別々であるはずの二人が、偶然の出会いを経て、今は人生を重ねている。
そこに生まれるグラデーションこそが、なにより尊い。
お風呂場の入り口の外で、物音がする。極力、聴かないように努力はしてみる。だけど、想像力ばかりはどうにもならなくて。
「あちゃあ……。なにもしてないのに、元気百倍だ」
「えっ。お兄さん、なにか言った?」
「なんでも。先に入ってるから、リンちゃんも早くきなよ。身体、冷えたらいけないから」
「うん、わかった。それじゃ、入るから」
無駄に大きくなったモノを隠蔽すべく、濁ったお湯に身体を浸す。温泉の素よ、ほんとうにありがとう。これなら、勃起が即座にバレることはないはずだ、たぶん。
ドアが遠慮がちに開く。腕。それから、特徴的なお団子ヘアーが視界に入った。恥ずかしいからといって、タオルを巻くようなことはしない。大事なところを隠そうとしている仕草に、いやらしさを感じてしまうのが男の性。深呼吸をして落ち着けようとしたが、無意味だった。
「あんまり、じろじろ見るな。お兄さんの、えっち」
「ふふん。ボクだって、これでも男だからね。好きな子の裸が目の前にあったら、興奮して当然だよ」
「うぐっ。そこで開き直るの、大人としてずるくないか。ん、入るからちょっと詰めて」
きれいなお尻と、背中のラインが眼前を通過していく。さながら、ボクは椅子代わりだった。着地したリンを背後から抱きしめ、お腹の前で腕を交差させる。このシートベルトがある限り、リンは自由に逃げられない。
「はあ……。温泉の匂いもいいけど、ボクにはやっぱりこっちだなあ」
「ちょっ……。んっ、はあっ、あっ、うあっ♡ へ、変なところ、嗅ぐなって。それに、おちんちんも」
「あ、バレた?」
「ひあっ、あっ♡ むしろ、これで隠せると思ってたことにびっくりなんだが。こんな、お尻の下敷きにされて、ひくひくって気持ちよさそうにして」
それもそうか、と太陽は苦笑した。
視界はどうにかなっても、より直接的な接触は遮れない。リンの椅子代わりになった時点で、自分は詰んでいた、というだけの話だ。
「うーん。にしても、すっごくいいお湯だねえ。リンちゃんも、そう思わない?」
「苦しいにも程があるんじゃないか、その逃げ方は。んえっ、あっ、そこっ、ん……♡」
「ここも、しっかりあたためてあげないと。ね、リンちゃん」
「あっ、いあっ♡ そんな、胸ばっか、ねちっこく、くふぅっ……」
シートベルトになっていた腕をほどき、今度は手のひらで胸をしっかりとカバーする。
お湯で体温が上がっているせいか、かわいらしい乳首はすでに隆起していて、簡単に転がせるくらいになっていた。リンが喘ぎを噛み殺す。お風呂場に反響する残滓が、気分をさらに盛り上げてくれるのだ。
「んあっ、んっ。も、もう、ダメだから。ほんとに、ふえっ、んーっ……♡」
気持ちよさそうな声が、段々と大きくなる。それならば、とペニスをリンの太ももの間に挿し入れた。
入り口の襞が擦れる。やわらかな肉に圧迫される感覚も、抜群に心地よい。
「ぜんぶ、あっつ……ぅ。触られてるとこ、ぜんぶ気持ちぃ……。お兄さん、あ……ひっ♡」
「イッていいんたよ、リンちゃん。ここには、ボクらしかいないんだから」
「そう、だね。うん、たしかにそう、かも……っ♡」
リンの首筋に鼻を埋めながら、愛撫を続ける。
お湯の中にいるのだから、愛液が飛び散ろうが当然わからない。だから、なにも恥ずかしがる必要なんてない。
一緒に、気持ちよくなろう。それだけの気持ちで、指を動かす。
「ほふっ、うっ……。ぜんしん、ぴりぴり。これが、お兄さんちの温泉の効能なんだぁ、あっ……♡」
だらしない声をリンが洩らす。
最高にリラックスできる環境で、最高の快楽を提供する。どこまでやれているのかなんて知らない。ただ、リンの反応を見てさえいれば、満足度調査は事足りる。
股に挟んだペニスをぐにゅりと押しつぶしながら、リンが全身をふるわせる。互いの快楽をリンクさせようと、指先で摘んだ乳首を少し強めに絞り上げた。
「んっ、おふっ、んっ……♡ これ、やば……ぁ♡ お兄さんの指、気持ちえぇ」
射精するまでには至らないが、それに近い快感が根本に生じている。じんわりと重くなったペニスを揺さぶりつつ、乳首への刺激を徐々に緩めた。
リンの呼吸。落ち着いてきたのを見計らって、唇を重ねた。啄む。そこから、長い吸いつきになった。
リンの手が、腫れた亀頭を包んでくる。優しい動き。射精を促すようなものではなかった。お兄さんは、どうしたいの。口づけをしながら、リンは様子を窺っているようだった。
これだけでも、気持ちは結構満たされている。どちらかというと、納得していないのはリンの方だ。
根本をきゅっと引き絞られる。頭の奥が熱くなって、リンの舌を強く吸った。吐き出した息。顔に当たる。ようやく離れると、上気した顔でリンが言った。
「その、なんだ……」
言葉が、すぐに出てこない。リンの指は、まだペニスの根本をいじくっている。
「お口で、してあげよっか」
甘美すぎる誘惑に、心が思い切り揺れ動いた。
△
浴槽の縁に腰掛けると、ちょうどいい高さになった。
口を使った、初めてのご奉仕。リンが緊張するのも、無理はない。シャワーで汗を流したペニスに、唇が近づく。匂いがあるとすれば、温泉の素に由来するものだ。
「それじゃ、いくから」
意を決したリンが、大きく口を開く。とにかく、包んでみればどうにかなるだろう。そうした雰囲気のまま、ペニスが飲み込まれていく。
「ほふっ、んっ、もごっ、んっ、んーっ……♡」
ペニスで息を詰まらせたリンが、上目遣いに見上げてくる。この景色だけでも、十二分に射精できてしまう。
額に浮かんだ汗を拭ってあげると、頷いたリンが頭を動かした。
「きもひぃ? おにいふぁ……、んっ、あんっ、れろれろ」
「お湯とは、違うあたたかさがあるのかも。もちろん、リンちゃんの中ともね」
「むぐっ!? は、恥ずかしいこというなよ、もう」
だって、実際そうなんだから仕方ないよ。その言葉は胸にしまっておき、リンの顔を撫でることにした。立派なお団子が鎮座しているから、頭のてっぺんにはそう簡単に触れられない。
「ちゅうぅ、んっ、はふっ、しょっぱぁ……。お兄さんの味、どんどん濃くなってる気がするんだけど、気のせいじゃないよね」
唾液でコーティングされたペニスを観察しながら、リンが感想を述べている。
先走りを飲んだのだろうが、嫌がる気配はない。それよりも、好奇心と興奮が勝っている。手で皮を根本まで引っ張り、主張の増した亀頭にリンが舌を這わせた。
「れろっ、れろっ。濃ゆい出汁、舐めても舐めても無限に湧いてくる。これ、続けたら精液出るのかな。さすがに、口から飲んでも妊娠しないとは思うが」
リンの口から、素朴な感想がぽつりぽつりと洩れる。
「嬉しいな。飲むつもりでいてくれてるの、リンちゃん」
「んっ……。だって、お兄さんすぐ顔に出るじゃん。私だって、一応そのくらい見てる」
そう言って、リンがペニスを中ほどまで咥えた。射精を促すような舌の動き。拙いものだが、それが却って気持ちを昂らせる。
いやらしすぎる光景だった。思わずのぼせそうになる頭を左右に振って、太陽はリンのくれる快楽だけに集中しようとする。
「じゅるる、ふあっ。味、どこまで濃くなるんだ。おちんちん舐めてるだけなのに、なんか私まで」
「もうすぐ、出そうだから。リンちゃん、少し強めにお願い」
「ん、わかった。ほら、射精しなよ。んぷっ、んっ……。お口の中、あふっ……。いっぱいにしてくれても、いいから」
ストローのように、先端を吸い上げられる。
上目遣いのリンの視線が、自分の顔を捉えて離さない。いく。射精してしまう。初めてのフェラチオに興じるリンの口に、欲望の塊を全部。
「いくよ、リン。しっかり、受け止めて」
「ふむっ、むっ、ちゅうぅうぅ……♡ こんなときばっか呼び捨てにするのずるっ♡ ほふっ、んっ、んーっ……♡」
射精が始まる。
ボクの腰を抱いて、リンは必死に喰らいついている。熱い。どろどろの熱を感じるのは、リンの唾液なんだろうか。快楽のふるえから、太陽が腰をわずかに突き出す。額に浮いた汗が、すっと流れ落ちた。
「ほふっ、ちゅっ、じゅずずっ。はあっ、はあっ、んっ……♡」
淫らに光るペニスが、口内からずるりと抜け出る。新鮮な精液を口いっぱいにためて、リンは恍惚にほほ笑んでいた。
一瞬間があって、リンの喉が動く。飲んでいる。初めての精液の味。善し悪しなんて、自分にもまるでわからない。それを、あのリンにさせている。
ペニスが、ひくりと脈打った。
「なるほど、お兄さんのはこういう味か。んっ、けほっ……。すごい粘り気だな。それに、直に飲んだからだろうけど、匂いもつよぉ……♡」
愛おしさが、無限に溢れてくる。
お湯の中にいるリンを引き上げ、強く抱きしめる。自分でも、このリアクションが正解なのかわからない。だけど、衝動を抑えられなかった。
「うわわっ、いきなりなんだ。私、そんなに偉いことでもした?」
「百点満点に、花丸まで追加してあげたい気分なのかも。ありがとう、リンちゃん」
「ええと、どういたしまして? ううむ、絶対変だと思うんだけど、これ。今って、エッチなことしてるん、だよね」
「いいの、なんでも。ボクが、褒めてあげたい気分なんだから」
「まいっか。私も、別に嫌じゃないし。いろいろと大変なことになったけど、買ってきてよかったな、お土産」
リンの呟いた言葉が、心地よく耳に届いた。