「平気だ、平気。あたしはセフレ枠だから」
「それはそれで問題だと思うわよ……」
「これっきりだって。なぁ、歩?」
「え? あ、ああ、うん」
はぁ、と雪菜はため息をついた。
「歩くんの返事、全然これっきりな感じないじゃない。いけない人なんだから……」
「ご、ごめんって。ちょ、ちょっと調子に乗っちゃったんだ……柚子も、魅力的な人だから……」
「もう、いいわよ。名前呼びになっているし……エッチ」
機嫌が悪くなった雪菜をそんな感じで、どうにかこうにしかして宥めた(?)翌日。一旦自宅へ戻った僕は、仕事へ出た後再び、お店へと足を運んだ。急に行かなくなるのも変だと思ったからだ。だけど店には雪菜の姿はなく、さらに柚子の姿もなかった。出勤予定ではあったのだが、急な用事で早退したのだという。店のママから直接聞いた話は、あまり良いものではなかった。
「はあ。雪菜の、前の旦那さんが……」
「そうなのよぉ。直接、ウチに来てねぇ。なーんか、偉そうな感じで、好きじゃないわぁ」
屈託のない物言いだが、結構トラブルに発展したらしいので、仕方のないことであった。
嫌がる雪菜を無理やり触ったり、席を離れようとすれば「俺の相手をしろって言っているだろ!?」と大声で喚いたり、挙句「寄りを戻してあげようとしてんだ、ありがたく思え」などと言っていたようだ。
見かねたママが間に入り、元旦那を店から追い出し、雪菜を早退させたようだ。ルームメイトの柚子はその付き添いである。
「雪菜ちゃん、すっかり怯えちゃってねぇ。気が弱い子だから、あんまり逆らえないみたい」
子って。ママさんいくつなんだろう。あんまり雪菜と変わらないように見えるが……。
「わかりました。今日のところは、僕も帰ります。雪菜目当てですし……」
なんてことを言ったら、ママさんは艶美な笑みを浮かべた。
「ふふふ。雪菜、ねぇ。可愛らしいわぁ♡」
名前呼びになっているところに、目ざとく気づかれたのであった。……僕と雪菜だと、年の差カップルってことになっちゃうのだろうか。ママさんは好意的なようだけど、こういうのって、冷たく見る人もいるというのは、聞いたことがある。僕がもっと年をとって、大人になっていれば、問題ないんだろうけど……。
★
店に出てから、雪菜に電話した。お店での出来事について聞くと「心配ないわよ。念のため帰っただけだから。平気よ」なんて、言っていた。あまり嬉しい反応じゃない。なんだか、頼りにされていないような……そんな気がしたのだ。
「今日、そっちへ行くからね」
「い、今から?」
「うん」
「えっと、歩くん、今日は――」
「行くから」
通話を切る。あまり声に元気がなく、少し早口なのも気になる。明らかになにかを隠していた。
「……嫌な予感がする」
僕は胸騒ぎを覚えつつ、雪菜のいるマンションへと向かう。エレベーターで上がり、通路に出ると部屋の扉の前には、見知らぬ人物が二人いた。
「――お母さんに付きまとわないでよね! アンタなんか、お父さんとして認めてないんだから!」
腰に両手を当てて、強気そうに眉を上げて、女の子が男へ向けて言い放っている。
……驚くほど、綺麗で可愛い女の子だ。まるでモデルのような華やかさもある。肩の辺りまで伸びた、艶やかな黒髪。オフショルダーの白いニットで、眩しいくらいに綺麗な白い肌が大胆にも露出している。白いニットを大きく盛り上げる膨らみは、深い谷間を作っていて、彼女が爆乳美女だということがわかる。ブラウン色のミニスカートからは長い足が伸びており、それを強調するかのような黒いハイヒールを履いていた。
なんかどこかで見たことのあるような……。有名人、とか?
そんな彼女と対峙するのは、背の高い中年の男であった。肩幅は広いが、体は引き締まっており、腕でまくりから見える前腕の太さは隆々としていてたくましい。クールビズ越しにも肉体の良さがわかった。
「お前は俺の娘だろう? 邪魔をするな。大体、娘は父親の言うことを聞くものだ。父親が家の主なんだからな」
「~~っ! もう、そういうところが昔から大っっっ嫌いなのよ!」
「大体。那奈、なんだその服装は。ハレンチだろう、品がない」
「アンタがスケベな目で見ているからそう見えるだけよ!」
「おっぱい丸出しじゃないか」
「丸出してないっての!? 大体、すっぽり隠れる服着たって、お母さん譲りの爆乳だから、大きすぎて逆にエッチだったりするんだから!」
「俺が言っているのは、肌を出すことがハレンチだということだが?」
「うっさい、うっさい。なんでもアンタの思った通りになんて、ならないの。それに昔と違って、もうお母さんに守られるだけのわたしじゃないんだから!」
「ほう?」
「キックボクシングに2年も通ったのよ。というわけで死ね! とりゃあ!」
那奈と呼ばれた少女が、不意打ちで右足の蹴りを放つ。が、男は軽々と後ろへ跳躍して回避。よほど勢いをつけたのか、蹴りは止まらず壁に激突し、綺麗な生足を思いっきり傷つけた。
「~~っ! いたい~!」
小指をぶつけた人みたいに、足を抱えてピョンピョンする那奈ちゃん。男はにやりと笑みを浮かべた。
「とんだ不良娘だ。おしおきの必要がありそうだな」
「――っ!」
男が近づく。……なんとなく、二人がどういう人なのかはわかる。状況もまあ、おおむね。僕は慌てて間に入った。
「待ってって。とりあえず、落ち着いて」
が、ここで男は僕を睨みつけた。
「雪菜をたぶらかした男か」
「……僕を知っているか?」
「調べてはいるさ。平凡な高卒会社員だろう? 役職持ちでもない。ははは、年収はせいぜい300万か? ゆとり世代の坊ちゃん」
「なにが言いたい」
「ちょうどいい。格の違いを見せてあげよう」
一瞬の出来事だった。
ずどん! と、男が右の拳を下から振り上げ、僕の腹を思いっきり殴り飛ばした。その膂力は強く、衝撃で僕は一瞬、体が浮いた。
そのまま柵に背中と後頭部を強かに打ち、けたたましい音と共に地面に倒れ込む。軽い脳震盪が起きて、視界が立ち眩みのように悪くなり、同時に激しい耳鳴りに襲われた。
「――二人とも! 大丈夫!?」
と、ここで部屋から雪菜が飛び出してきた。
騒ぎは浸透し、近隣住民も何人か扉から出てくる始末。
「あまり騒ぎになるのも不本意だ。今日のところは帰ってやろう。雪菜、また会おう」
男はそんなことを言い、にやりと笑みを浮かべた後、僕に顔を近づけた。
「これが俺とお前との差だ。クソガキ」
★
リビングにて僕達は休むことになる……が、那奈ちゃんが悔し気に声を上げた。
「きっー! あいつのキン○マつぶして、泣かせるつもりだったのに! よくも乙女の足に傷つけてくれたわね!」
……君の怪我に関しては自爆な気もするが、まあ突っ込まない。それにそれどころではない。
状況はかなり悪い。雪菜と柚子から話を聞く限り、あの男――やはりその正体は、雪菜の前の旦那ならしい――は、店へ行ったり部屋へ来たりして、雪菜に復縁を迫っているようだ。
そしてこの那奈ちゃん……雪菜の娘さんもその例外じゃないらしく、一緒に暮らそうと強引に部屋まで押しかけたりするらしい。
しかもあの男の強いナルシストな性格上、俺のところへ来て当然だろう、というスタイルなのだから性質が悪い。なんとかして追い返しても、また来るのだ。
「ごめんね、歩くん。大丈夫……? 病院いく?」
ソファの上でぎゅっと抱きしめられ、頭を撫でられる。恥ずかしい。
居留守で通すつもりだったらしいから、僕が来るのを電話では止めようか迷っていたらしい。まあでも、結果はこの通り。一人で居合わせていたって、殴られていただろう。
「だ、大丈夫だよ。殴られたところ、ちょっと痛むくらいで」
その光景を、那奈ちゃんは目を丸くして見ていた。
「……ところで、アンタ誰? もしかして……お母さんの男、ってこと?」
雪菜が顔を赤くして黙り込むので、柚子が代わりに答えた。
「そーだよ」
「ええ、マジ!? わたしと年変わらないくらいじゃないの? いくつ?」
渋々答えてみる。
「……27」
「あ、なんだ。思ったより年いってた。おっさんだ、おっさん」
「んなことないでしょ!? じゃあ、君はいくつなのさ?」
「わたし? 20だよ! 現役のモデル。結構有名なつもりなんだけど、知らない?」
「……いや。ちょっとそんな気はしていたよ」
モデルか。それでどっかで見たことあると思ったわけだ。そしてこのルックスならそれも納得……だけど、かなり胸がデカすぎないか? 雪菜とそんなに変わらない大きさだぞ?
「それにしても。あの人って何者なの? おそらく僕のことも知っていて、お店のことも、ここのことも、娘さんの住所も知っている」
柚子は肩をすくめた。
「ま、雪菜の元旦那は稼ぎいーからな」
「そうなの?」
「役員だよ。少なくとも雪菜と一緒にいた時は。な?」
雪菜はこくりと頷いた。年収煽りも納得がいくな……。騒ぎを嫌がるのも、今の立場への執念が深いからなのかもしれない。
「だから、探偵かなんか雇ったんじゃないのか? 金のあるストーカーって考えると、恐ろしいな」
柚子がなんか怖いことを言う。
雪菜は僕の手を取って立ち上がった。
「歩くん。怪我が心配だわ。見せて」
そのまま部屋へと連れて行かれたのであった。
★
殴られたところは少し痣になっていた。あの男、素人相手に容赦がなさすぎる。怪我の手当てをして、リビングに戻ろうとしたが、その前に僕は雪菜を奪うように、強く抱きしめた。
「歩くん……?」
「……色々と、悔しくて。あの人に勝てないところが多くて。それでも……雪菜を、僕の女にしたいんだ」
雪菜は僕の背中に腕を回した。
「いいのよ。好きにして……♡」
「雪菜!」
僕達はベッドの上へ、絡み合いながら横になった。
★
「あの二人、戻って来なくない?」
リビングにて、携帯をいじる那奈がそんなことを言う。柚子はテレビを見ながらああ、と生返事をした。
「おっ始めたんだろうよ」
「???」
「ちょっとテレビの音量上げるか」
那奈が首を傾げる。が、すぐに大きなため息をついた。
「あーあ。これからどうしよ。お父さん、またわたしのところにも来るのかな……」
「怖いか?」
「……うん。正直」
那奈が体を抱きしめるようにして、背中を丸める。男の前では気丈に振舞っていたが、心細いのだ。柚子は元気づけるように笑顔を浮かべる。
「しばらくここにいたらどうだ? みんないるしよ」
「本当? いいの?」
「まあけど、もうすぐ大人しくなると思うぞ? 一応、あたし達にだって作戦があるのさ」
「作戦? どんな?」
「ま、それはもうすぐわかる……って、ん?」
携帯電話が着信を知らせる。雪菜のものであった。嫌な予感がして、柚子が画面を見る。案の定、あの男からであった。
「たく、しつけーな。雪菜お取込み中だし、無視するか……いや、待てよ」
にやり、とあくどい笑みを浮かべた。
「散々暴れてくれたんだ。せっかくだし、嫌がらせぐらいはしてやってもいいだろ」
柚子はそう言って、携帯をビデオ通話のモードに切り替えた。
★
「なんのつもりだ? 売女の君には用がないのだが」
「へいへい。まあ、いいもの見られるから、ちょっと待てって」
柚子がビデオ通話になっている携帯を手に廊下を歩く。好奇心なのか、何故かその後ろを那奈がついて来るので、柚子は振り返った。
「……来るのか?」
「どーせお父さんがおかあさんに嫌なこと言うもん。放っておけないし」
「お前、デカ乳のわりにまだ子供っつーか、純粋だな……」
「ででで、デカ乳って言わないで! 子供でもない! というか、柚子さんだって大きいじゃん!」
「まあ、いいか。社会科見学ってことで」
二人は廊下を歩き、歩と雪菜のいる部屋の扉を少しだけ開ける。刹那――雪菜の大きな喘ぎ声が、聞こえた。
「「っ!?」」
那奈と男が息を飲むも、柚子は構わずカメラを歩と雪菜の二人へ向ける。
「オ゛オ゛ン♡ お゛っ、お゛お゛~~~~♡ ハッ♡ ンハッ♡ もっと中ぁ、グチョグチョにしてぇ♡♡♡」
ドチュ♡ ぐちゅ♡ ぐぽっ♡ ズプッ♡ ぐぽっ♡ ズポッ♡
ギシっ♡ ギシっ♡ ぱちゅん♡ ぱちゅん♡ ぱちゅん♡♡♡
部屋の中には、二人の獣がいた。ベッドの上で、雪菜が歩の上に乗っている。騎乗位の体制だが、歩が下から腰を振り、上へとペニスを突き上げている。突き上げられるたびに、雪菜の爆乳が大きく跳ね踊った。
「なななっ、あ、あの二人……! そ、そういうことだったの……て、ていうか、すごく激しくない……?」
那奈が顔を赤くして、恥じらいながらも、微妙に前のみりになって見ている。
「す……すごい。お母さん、気持ちよさそう……」
濡れ始めたのか、微妙に内股になってモジモジとしている。刺激が強いのかもしれない。
「や、やめろぉ! 今すぐ、止めさせるんだ! ふざけるなぁ、俺の雪菜だぞ! 俺以外の男に、股を開くなぁ!」
男がわかりやすく動揺する。柚子がため息をついた。
「誰がアンタのだって? 大体、もうアンタは詰んでいるんだよ」
「な、なに?」
「あたしらだって、そっちを調べているのさ。証拠は押さえているんだぞ?」
「ま、まさか……」
「金使って、好き放題しているだろ。未成年の女を複数人買っているのは、わかっているんだ。それ以外にも悪いことしているだろ? これ全部がバレたら、色々とどうなるか楽しみだな?」
「貴様……! 売女の分際で……!」
「その売女に爆弾握られんだよ。警察に捕まって、今の大好きなお仕事を失いたくなかったら、もう雪菜と那奈ちゃんに近づくな。それに雪菜はご覧の通り、アンタ意外の男に夢中だしな♪ 覗きこまれているのに、気づきもしない。しかも当たり前のように、生ハメセックスだなー」
タン♡ タン♡ パン♡ パァン♡
肌と肌がぶつかり合い、膣とペニスがぐちょぐちょする音がいやらしく部屋に響いている。雪菜が歩の両手を掴み、爆乳へ導いた。
「絞って♡ ミルク、たくさんしぼってぇ♡」
「しぼられるの、好きなんだね」
「すきぃ♡ しぼられるのも、吸われるのもだいすきぃ♡」
「じゃあ望み通りグチョグチョに絞ってあげるよ」
歩が爆乳をこねっ♡ こねっ♡ と揉み回すたびに、乳首から母乳がびゅううううっ♡ と溢れ出た。
「ふうっ♡ ンう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛♡ たくさんっ、出てるぅぅぅ♡♡♡ ミルク絞られちゃうぅ♡」
雪菜は下品に喘ぎ乱れ、体をガクガク♡ と震わせた。
男は顔色を青くする。
「ふざけるな、ふざけるなぁ! なんだよ、なんだよこれはぁ!」
柚子は驚いた。男は思った以上にダメージを負って、良い大人が泣き始めたのだ。
「ようやく、ようやく雪菜を手に入れられると思ったのに! 引き裂かれても、全部俺の物のはずなのにぃぃぃぃ!」
男が泣いている間にも、二人のセックスは燃え上がっていった。歩の腰の振りが早く、激しくなり、やがて二人はむぎゅううううっ♡ と抱き合った。
「キス、ほしいぃ♡」
雪菜が甘くねだってので、歩はそれに答えて二人はディープキスをかわす。唇を重ね合わせ、べったりと舌と舌を絡ませ合い、じゅるじゅる♡♡♡ といやらしい音を鳴らした。ぷはっ♡ と口を離した後、はあはあ♡ と荒い息を荒げながら、歩は再び雪菜のマンコを下から突き上げる。
「いく、イキそうだ、雪菜」
「このままっ、中に出して、私のマンコ、あなた専用にしてぇ♡ 濃いザーメン、全部ぶっこんでぇぇぇ♡」
「あああっ、イク、イクよ、イクよ!」
「オ゛オ゛、ン゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛~~~~♡♡♡」
グポポぽぽぽぽおっっっ……♡♡♡ と、二人はぎゅっと抱き合いながら、ラブラブ中出しセックスのフィニッシュを迎えた。ゾクゾクゾク♡ と全身を共に震わせながら、絶頂の快楽に浸っている。
「ああっ、あああっ、ああああぁぁぁぁぁ」
雪菜の元旦那は力なく声を上げる。……ベッドの上ではマグロな彼は、こんな情熱的なセックスをしたことがなく、もう色々な意味で打ちひしがれていた。
「……セックスって、こんなにすごいんだ」
柚子の後ろにいる那奈が、顔を真っ赤にしながら、そんなこと言った。右手をスカートの中に入れて、愛液でぐしょぐしょなのか、すっかり内股になっている。
「~~っ♡ って、わたしなにやっているの……!」
那奈は我に返って、たたた、と廊下を走った。柚子は扉を閉め、ビデオ通話を切る。
「よかったな、雪菜。これでアンタは幸せだ。だけど、あたしはこのままじゃ……」
★
雪菜の元旦那が会いに来ることはぱったり無くなったらしい。それにしても、ちゃんと弱みを握っていたなんて……雪菜も柚子も、強かな女性のようだ。僕はこの件に関してなにも出来なかったし、なんだか自分が情けなくなってしまう。
……でも、雪菜をこれから幸せにすることは、出来るはずだ。というか、そうしたいのだ。まだ年の差とか、あの男に見せつけられた差とか、気になることはあるけれど……それでも、僕が愛する人は変わらないのだから。
荷物は雪菜のマンションへいくつか運んでいた。これから一緒に暮らすことになる。大方の荷物は引っ越し業者に運んでもらったから、今はショルダーバッグ一つだ。休日の土曜日。僕は昼間、いつものエレベーターへと乗り込んだ。
「あ。おにーさんじゃん」
「よう」
偶然、エレベーターに那奈ちゃんが乗っている。あの男の件は解決……だが、彼女なりにかなりのトラウマになったらしく、結局雪菜のところへ住むことになったのだという。だとするなら僕が邪魔になるんじゃないかと思ったが、那奈ちゃん本人も雪菜も、遠慮する必要はないと言ってくれたので、言葉に甘えることになった。
……その、はずなんだけど。
一緒のエレベーター。那奈ちゃんはジト目で、隅の方へ逃げるように後ずさった。
「おにーさん、あんまり近寄らないで……」
「近寄ってないって。なに、怖いの?」
「ち、違くて。怖くないわよ。わたし、キックには自信あるんだから、アンタなんか一撃よ」
たしかに、一撃で沈めていたね。君自身を。
「じゃあ、なに」
「わたし、モデルなのよ。スーパー可愛い」
「まあ、そうだね」
あとその爆乳がエロいと思う。
「それなりに有名だし。アンタみたいなのと一緒にマンション入るところ見られたら、誤解されちゃうわよ」
「あー、はいはい。じゃあ、待っているから先に行っててくれ。めんどくさっ」
「あっ! めんどくさいとか言った! ひっどい! なによ、お母さんと柚子さんにだけデレデレ鼻伸ばして、優しくして! わたしには冷たいよね!」
「はい、ついたよ。早く降りて、早く行って。しっしっ」
「そうやって子供扱いして! 7つしか年違わないのに!」
「君だってオッサン発言していたでしょ」
「ふん! じゃあいいもん、先に行っているから! バカ!」
何故か怒りながら、那奈ちゃんが部屋へと向かう。
「見た目は結構似ているところあるけど。性格は活発的だから、内面は真逆なのかな」
そんな独り言を零しつつ、那奈ちゃんの後ろ姿を見送った。歩くたびに揺れるお尻とか、エロい体なのがそっくりだ。親子だなぁ、とぼんやりと思った。