現実時間の翌日、再びログインする。
ゲーム内時間は6倍加速になっているとかで、時間の進み具合が違う。
俺はベーシックインカムという社会福祉と、速達系ではないネット通販の仕事をしていて、かなり自由に時間を使える。
仕事時間も昼間であれば不定期でもよく、商品の単価が高いので、少ない仕事でかなりの儲けがあった。
ベーシックインカムでは無職の人も少なくないので、俺の社会的地位は上位の中間層ぐらいに位置していた。
ただそんな仕事なので出会いが今はない。
学生の頃に付き合った以来、彼女はいないままで、25歳になっていた。
まあ、リアルの事は別にいいや。
ログインすると、ログイン部屋に出現した。
目の前には、変な顔をしたミルルが突っ立っていた。
「ミルルどうした?」
「いえ、話には聞いていましたけどログアウトした後は、寝て起きて時間が経過したみたいな気分です」
「その通りだぞ。ログアウトしてから、この世界でいうと4日は経過してるな」
「そうなんですか。不思議ですね。異世界人というのは」
奴隷は異世界人のプレイヤーが主人になると、一緒にログアウトして消える。
不思議な感じはするだろうけど、奴隷だけ世界に残しても生活できないので、仕方がない。
奴隷プレイヤーは主人がプレイヤーだったとしてログアウトしても消えないけれど、活動ができないので、一緒にログアウトすることが多いらしい。
「今は朝ではないけど、トイレとか大丈夫か?」
「はい。出してなかったのに、なぜかお腹はすっきりしています。これなら問題ないです」
まあゲームだしな。
ログアウト中にウンコしたことにしよう。
でないとまたオマルを拝むことになる。
「んー。少し早いけど昼飯食べるかな」
「はい。お腹はすいてます」
そのまま宿屋で昼食といきたかったが、宿屋では朝と夜しか食事を提供していないそうだ。
宿から出て、ランチを探す。
ミルルのパンツは前回ログアウト前に水色に変えてあった。
3色買って正解だった。
女が大量にパンツを買うのが不思議だったが、見えなくても自分はパンツの色を知っているので、こうやって色を変えてお洒落を楽しむんだな。
たいへん勉強になった。
ファーストタウンの中を見て回る機会はあまりないので、どこを見ても新鮮だ。
この地区も初めて来た。
ガラスのない窓から見えるNPCの人が多い、人気がありそうな店を選んで入る。
ここは比較的小規模の店だか活気がありそうだった。
「いらっしゃいませっ。適当に空いてる席へどうぞっ」
店員の可愛めの女の子が挨拶してくれる。
年齢はうーんと17歳ぐらい。
彼女のスカートは短いには短いが普通の膝丈で、奴隷でないことを示していた。
彼女は黒髪のショートヘアで、活発で利発そうな顔をしている。
肌は白人と俺たち黄色人種の中間ぐらいの色だ。
ミルルよりは健康的な黄色い肌に見える。
どうやら喫茶店らしくて、飲み物とサンドイッチが数種類、後はラビットステーキがあるぐらいだ。
手を挙げてさっきの店員を呼ぶと注文をする。
「卵とジャムのサンドイッチ一つに奴隷食一つ。後コーヒーもらえる?」
「千2百シルバーになります」
俺はアイテムボックスから数値だけのシルバーを硬貨として取り出して、店員に渡す。
ここは先払いらしい。
「ありがとうございます。卵ジャムサン、ワン、奴隷食ワン、コーヒー、ワン」
大きな声の独特な店内用語で、注文を奥に伝える。
店内は俺たちが座ると空きはあと3テーブルで混んでいるほうだろう。
一人いや一匹、白い麻の奴隷服を着た一般奴隷の子が、主人の向かいに座って犬食いしているのが見えた。
主人の優男は気にした風もなく、それを眺めながら自分のサンドイッチを頬張っている。
プレイヤーではなく、AIの主人にAIの奴隷みたいだ。
テーブルの上で犬食いなので逆にとても目立っていた。
なるほど、習慣を冒すというのは、このように見えるのだな。
むしろテーブルの下にいたほうが見えないし目立たないのだろう。
俺も恥をさらすのはやめておこう。
勉強になった。
いままでは下に四つん這いにさせるのは可哀想だと正直思っていた。
しかしそのほうが合理的なようだ。
何事にもちゃんと理由はあったんだな。
「お待たせしましたっ。卵とジャム、それからコーヒーですっ」
元気がよく、素直な笑顔で挨拶をする美少女の店員。
とても好感が持てる。
笑顔も二級奴隷のものよりも、明るいいい表情に見える。
やはり自分の感情を出しているのと、しぶしぶで強制されているのとでは違うのだろう。
俺の前に商品が置かれる。
「お客さん異世界人だね。この店に来るのは意外と珍しいかも。奴隷ちゃんも可愛い服着せてもらえて大切にしてるんだね」
「ああ、服くらいは、いいの着せてあげたいからな」