店員は一度引っ込んで今度は奴隷食を持ってくる。
今ミルルはテーブルの隅の俺の魔力でないと外れない魔法フックにリードにつながれて立っている。
ミルルはよその奴隷を見て、自分はどうすればいいのか目線で訴えてくる。
「ミルルは下で食べるよな?」
ミルルは黙って頷いた。
俺も頷き返す。
そのまま地面に俺にお尻を向けて四つん這いになり、餌皿を待った。
「あなたはちゃんと下で食べるのね。偉いわ」
店員がミルルをほめて皿を置いた。
この皿は普通のと違って、犬の餌皿みたいな見た目ではっきり区別されていた。
「ミルル、食べていいぞ」
「牝奴隷に餌を与えてくださり、ありがとうございます。ご主人様。頂きます」
「挨拶もちゃんとして、異世界人なのにしっかり躾けてるじゃない。挨拶をないがしろにする主人も中にはいるのよ」
「ミルルは自分でしっかりしてますから。奴隷の常識にも詳しくてね。手間がかからなくていいよ」
「ごゆっくりどうぞっ、お客様っ」
頭を下げると可愛くウィンクして去っていった。
俺に気があるのだろうか。
まさか奴隷志願ではあるまいな。
考えすぎか。
ちょっとしたサービス精神なだけだよな。
旨いサンドイッチを食べながらそんなことを考えた。
それにしても、ただのサンドイッチと侮れない。
かなり旨い。
毎日通おうかな。
リアルでは飯は一人暮らしで冷凍食品とカップ麺ばかり食べている。
ゲームの中のほうが食事が豪華とか、まあ、奴隷を買えるだけでも十分豪華な生活ではあるんだが。
貯えはあるので、リアルも少しましな生活をしたほうがいいかもしれない。
コーヒーを飲んで一息つく。
ミルクと砂糖もちゃんと存在した。よかった。
異世界風をこじらせて、ミルクや砂糖が高価で、一般流通していないとかいう、誰得ゲームでなくて助かる。
まずい食い物のゲームというのも世の中には実在して、寂しい食生活から脱出して初めて一人前のゲーマーみたいなものもあるのだ。
この前までやっていたゲームは普通にそうだった。リアル志向中世ファンタジー風世界だ。
このゲームは最初から女というか牝奴隷を文字通り買えるし、風俗ではないので維持費は月額利用料だけだ。
VR風俗というのも中にはあって、安いAI風俗と、実際に若い女の子の中身入りのVR風俗だと1回ごとに結構な利用料を取られるので、このゲームなんかと比べたら高すぎるぐらいだ。
ゲーム内では性転換薬や若返りの薬などが存在していて、これらには一部例外として課金の活性剤というのを投入しないと効果がない程度だ。
ああ、あと媚薬も課金で売っている。
戦闘が有利とか、課金のすごい回復アイテムとかもない。
課金アイテムはどれも俺はいま必要としていない。
ミルルはピアスと元からの素質で媚薬は不要だ。
先ほどテーブルの上で食べていた奴隷の子は、食べるのが下手なのか、口の周りを汚してテーブルの上も汚かった。
主人が拭いて世話をしていた。
ミルルはテーブルの下で食べても、特に汚したりしないで食べるようだ。
何が違うのだろう。
技術的なものなのだろうか。
卵サンドの素朴な味は5年以上食べていなかった。
塩胡椒にマヨネーズであとはバジルかなにかの匂いがする。
しっかりと味が付いていた。
ジャムサンドは、何のジャムか分からない。
しかしフルーツ系だろう。
とりあえず文句はなく、美味しい。
こういう謎の食べ物もファンタジーの常識であり醍醐味なので大切にしたい。
二人とも食べ終わると席を立つ。
先ほどのウエイトレスの店員の子が待っていてくれた。
どうやら接客は彼女一人しかいないみたいだ。
「ありがとうございましたっ、またお越しくださいっ」
「ああ、美味しかったよ。たぶんまた来るよ。君に会いにね」
「ふうぇ? 私ですか? あ、はいっ。お待ちしていますねっ」
恥ずかしそうに照れて、頬を掻きながら頭を下げて見送ってくれた。
もしかして、自分が魅力的であるのに気がついていないパターンだろうか。
自意識過剰女よりは百倍ましではあるけど、一切無自覚なのも罪なものだよな。男にとっては。
俺はいい出会いだったと思って、店を出た。