「指輪がいっぱいある! きっとここに若さの指輪も混じってるよね!? それに刀もあった! タケミ、楽しみでしょ!?」
リンは大喜びだ。
死んでただの宝箱になったミミックから、中に収められていた宝物を取り出した。
中に入っていたのは……金塊が少しと、指輪が3つ。そして刀が1振り。あとは鎧。
……俺が断然興味あるのは刀だ。
このために、この迷宮に潜っているって言っても言い過ぎでは無いから。
でも、この刀が何であるのかは、鑑定して貰わないと分からない。
で、指輪だけど……多分、1つは若さの指輪が混じってるな。
勘だけどね。
若さの指輪は、上級貴族の御婦人方が1万や2万、平気で払って購入するんだよね。
単に指輪の力を解放すると、年齢をおおよそ1年若返らせるってだけの魔法効果があるだけのアイテムなのに。
……女性にとってはそれだけでも重要か。
で。
「今ので、俺の魔力魔法第2位階の使用回数がゼロになった」
大事な事だから言っておかないと。
それを聞いて、リンは店仕舞いだとばかりに
「ディルマ マハル バディ リビルド」
……俺に対して回復魔法を掛けてきた。
法力魔法の第1位階の魔法だけど。
……彼女、転職してるから、第1位階の魔法の使用回数たった5回しか無いんだよな。
本職なら普通に9回使えるのに。
だから貴重なのよ。
彼女の魔法を受けて、俺の身体は柔らかく発光し。
受けた細かい傷が全て治っていく。
……この魔法は、身体欠損や骨折以外のダメージは全て治す魔法なのよね。
非常にありがたい。
「さあ、稼ぐだけ稼げたから帰りましょうか」
そう言って、一杯になった背負い袋を背負いつつ、彼女は立ち上がる。
「そうだな。早く帰ろう。今日も疲れた」
……ここから歩きなんだよなぁ。
昔は転移の魔力魔法が使用できたアイツが仲間にいたからさ。
そんなことを、つい考えてしまう。
昔のことを振り返っても仕方ないのに。
そして。
……今回手に入れた刀……多分アレじゃないんだろうけど。
期待してしまうよな。
地上に出た。
迷宮の出入り口の傍に、毒消し効果のある泉が湧いている。
王国の側のサービスだ。
地上に出れば、毒で死ぬことは無い。
安心して毒攻撃を受けろとまでは言わないけど、せめてのもの希望。
……この魔界の穴が開いた当初は、中で毒を受け、地上に逃げて来たものの、街に戻るまでに毒が回って死ぬ事例が多発したそうで。
王国側が、魔術儀式を行って、出入り口に毒消し効果のある泉を湧かせたらしい。
水は自由に飲んでいい。
ただし。
毒消し効果は、ここで飲まないと発動しない。
これはそういう魔術の水なんだ。
ちなみに味は良くない。
多分、砂が混じってる。
毒は消えるかもしれないが……腹は下すかもしれん。
「じゃあ、これお願いね」
言って、リンが背負い袋を俺に渡す。
ここまで運ぶのは彼女の役目。
そしてこれを鑑定して換金するのは俺の役目。
……俺がその作業をしている間、彼女は着替えてくる。
そのまんまの姿だと、白と黒が交流持ってると思われて、あまり良く思われないんだよな。
……神様同士は別に対立してないんだけど。
人間の白属性と黒属性は、あまり仲が良いとは言えない。
白属性の人間は、黒属性を「平気でルールを破る、信用置けない奴ら」って思ってるし。
黒属性の人間は、白属性の人間を多分「ルール順守を唱えるばかりで、必要なときに臨機応変に動けない癖に煩い奴ら」って思ってるんだろうな。
まあ、だから。
そんな二者がそうと分かる形で一緒にいると、どっちかが属性を反転させたのかと思われ、注目を浴びて自分の属性集団の評判が下がる。
これは良くない。
……そう。
属性って、意識改革の結果、反転する場合があるんよな。
こういうのって、何故か白と黒の間でしか起きないんだけど。
白でも黒でもない灰色では、何故かほぼ起きないのに。
そんなことをつらつらと考えながら、先に帰っていく彼女を見送って。
遅れる形で俺は城壁の門を目指して歩き出す。
俺たちが生活する街……アシハラ王国の城下町に帰るため。
巨大な城壁だ。歴史を感じる重厚さ。
多分、1000年経っても、これはここにそのままあるんじゃないだろうか。
冒険者の店に来た。
数多くの冒険者が、各々のテーブルで飲んで騒いでいる。
ここで、俺の昔の仲間が毎日朝から晩まで思想書を読みふけっているんだ。
そいつが鑑定できるので、頼むんだけど。
……身だしなみを気にしておかないと。
あいつも白属性で、礼儀には厳しいからな。
多分、俺より白い。
なので
俺は姿見で自分の姿をチェックした。
まあ、あまり櫛を入れてないけど、長めの黒髪。
ちょっとボサついているのが気になるが、迷宮帰りだし、良いだろう。
それを後ろで括ってひとまとめにしてるんだけど、別に変じゃ無いよな?
目は少し細い。ガキの時分は寝てるのかと揶揄われたこともある。
髭は……伸ばしてないんだけど、ちょっと無精ひげを発見した。
剃った方が良いんだろうか?
で、赤色の侍甲冑。
お気に入りの逸品だ。
動きやすい上、急所をしっかりガードしてくれる。
兜はつけてない。
視界が狭まるからな。
……よし。
冒険者としてはみっともない姿ではない。
行くか。
酒場のテーブルを見回す。
すると、すぐ見つかった。
本を5冊くらい積み上げて、果汁を飲みながら読みふけってるブルーの法衣を着たヒュームの美形がいる。
筋肉質では無い、線の細い美形……いや、美少年。
柔らかい髪質の金髪で、やや巻き毛。それを適当な長さで整えてる。
年齢は16才なんだけど……こいつ、この年齢で司祭で、しかも魔力法力、全ての位階の魔法を習得してんだよね。
まあ、司祭という職業の完成形だわ。
名前はエリオス。
俺の昔のパーティで、魔法のエキスパートで、かつ鑑定役として大活躍していた男。
「やあ、エリオス。ちょっと良いか?」
「あ、タケミさん。今日も仕事して来たんですか?」
パタン、と本をしおりを挟んで閉じると。
「見せてください。鑑定します」
にこやかにそう言ってくれる。
「えーと、こんな感じですね」
テキパキと鑑定してくれた。
いつも思うが見事な手並み。
……彼さえ潰れなければ、あのパーティ、まだいけてたんかなぁ……?
そんなことを、彼の仕事を見守りながら考えた。
「若さの指輪が2つ、器用さの指輪が3つ、大典太、焔丸、そして魔力強化第3段階のロングソードとブレストアーマーね……」
今回も、あの刀は無かったな。
それを少し残念に思いつつ。
ありがとう。
礼を言って、鑑定のお礼として魔晶石を10個渡す。
……これはまあ、リンとは話し合ってるから、別に問題ない。
決して渡し過ぎでは無いんだ。
グレーターデーモンはかなり倒したからな。
まだあるのよ。魔晶石は。
「ありがとうございます。これでまた1か月はこの生活を続けられますよ」
ニッコリと、エリオス。
俺は
「……まだこの生活を続けるつもりなのか」
そう、思わず言ってしまう。
一瞬、失言してしまったと思ったけど。
彼は遠い目をしながら
「ええ……今は300年前の危機的状況と違いますしね。魔界の穴に潜る冒険者の立ち位置は」
そう言って、彼は語り出した……自分の思うところを。