階層間を繋ぐ階段はかなり長い。
まあ、迷宮は天井の高さが8メートルはあるからな。
8メートルの天井の上に、次の階層まで続く分厚い石の塊があるんだから。
その分厚さはおそらく5メートルは軽くある。
俺たちはそんな長い階段を降りて、地下5階に到達した。
「久々に来たな。最近ずっと地下4階から最下層のコースやったし」
エンジュがそう、懐かしそうに言う。
「ここは不定形の魔物の巣窟だったけど、今もそうなのかな?」
タマミがあたりを見回しながら。
……ここは厄介だったな。
金属製武器を破壊する、酸の体液を持ってる「アシッドスライム」とか。
人間形態から突如液状化する獣人の「ワースライム」とか。
丸のみし、犠牲者の金属装備をダメにする竹輪みたいな筒状モンスターの「ローグイーター」とか。
あと……ローパーとか。
とにかく、倒しにくいのが多いんだよ。
「ここはローパー様の巣窟でしたわよね」
先行するミナがそんなことを言う。
最近お会いしてないのが残念です。
と。
……んん?
なんか変な発言を訊いた気がしたので、ミナの方を振り向いたら
「まあ!」
なんだか、嬉しそうな顔。
リンは怯えた顔をしていたが。
そこには
うじゅるうじゅると。
いつぞやの、地下4階で目撃するに至った触手の怪物ローパーたちが、徒党を組んで襲ってきていた。
ローパー。
ゴブリンと並ぶ、女性の敵だそうだけど。
エンジュが言うには、妊娠出産という種族にとっての難題を、別の種族の雌を利用することで解決した、ある意味進んだ生命体なんだそうだ。
普通の雌雄がある生命体は、雌が妊娠中、著しくその生物としての強度が低下する。
だから雄が狩りを代行するなどして守る必要があるわけだけど。
特に高等生物になるほどその傾向が強いよな。
だけどこいつらは雌を自前で用意しないので、妊娠中にその雌が命を落としたとしても、種族としては痛手では無いんだよな。
だからメチャクチャするんだよ。
こいつらに犯されて妊娠すると、3時間くらいで出産まで行くそうだ。
で、多くの場合5巡目くらいで母体になった女性が死亡するらしい。
……ただし、苦痛は感じていないらしいんだけどね。
こいつらの粘液、滑らせることで斬撃を防ぐだけでなく、人間の体内に入ると強烈な媚薬になるらしく。
快楽の中、獣のように嗤いながら狂い死ぬんだと。
だからまあ……
おなかを押さえて後退ってる、リンとかエンジュとかタマミの反応は正しいんだよな。
目を輝かせているミナが変なんだ。
「……エンジュさんに聞きました。ローパー様は女の卵子に、受精の瞬間その核を破壊する攻撃をするそうですね。そして自分の精子から核を出して卵子そのものを乗っ取る。こういうのを古代王国時代ではクローンって呼んだそうですけど」
なんでそんなに嬉しそうに、女の地獄の状況を語ってるんだ君は?
こいつは何を言っているんだ?
「……生殖器付きの触手が計5本……繊毛付き吸引触手が計3本……ああ、素晴らしいですわ」
……何が?
俺はとりあえず、阿修羅を炎の相にして。
迫って来るローパーたちに、片っ端から斬り掛かった。
「ああっ!」
ミナが悲鳴に似た声をあげたが、そんなもんは無視だ。
こんな危ないやつ放っておけるか!
そして
俺が全ローパーを斬り捨ててしまうと。
ミナは悲しそうに手を合わせていた。
「生殖器が5本あり、口の役割を果たす繊毛付き吸引触手が計3本……これが人間の男性の理想の姿のはずなのに」
「んなわけあるか!」
他3人の女性陣の声がハモったのが、唯一の救いだと思った。