その日は、特に変わりなかった。自宅での仕事を終えた俺は、新たに手に入れたデッキを調整していた。窓の外では風が木々を揺らし、秋の訪れを感じさせる。
室内には静けさが漂い、時折時計の秒針の音が耳に入る。そんな穏やかな時間が流れている時、インターホンが突然鳴り響いた。
「はーい」
その音に反応したフェルンは素早く立ち上がり、インターホンに向かう。画面に映る姿を確認し、驚いた声が響いた。
「どうしたんだ?」
フェルンの驚きに俺も興味を持ち、玄関へと向かった。扉を開けると、そこには長身の男性が立っていた。彼は長いマフラーを巻いており、眼鏡越しに鋭い眼光が俺を捉えていた。
「失礼しました、突然の来訪で申し訳ありません」
そう言って礼儀正しく頭を下げる男性。しかし、その眼差しには何か特別な意図が見え隠れしていた。
「どちらさまでしょうか」
俺の問いかけにフェルンが焦る表情を見せる。
「えっ、ちょっ」
しかし、その男性は冷静に自己紹介を始めた。
「自己紹介が遅れました。私は赤馬 零児。あなたに少しお話があり来ました」
「赤馬 零児」
俺にとって覚えのない名前だったため、少し首を傾げた。するとフェルンがすぐさま説明した。
「あのLDSの社長ですよ」
「えっ、それってもしかしてこの前の騒ぎの苦情ですか?悪いけど、あの時は向こうが面倒なことをしたからやっただけだぞ」
まさかLDSの社長直々に苦情を言いに来たのかと思った俺は即座に反論した。しかし、赤馬零児は首を横に振った。
「いえ、確かにあの一件は関係がありますが、苦情ではありません」
「へぇ、その理由は」
「あなたをスカウトしに来ました」
「俺を?」
その言葉に俺はさらに首を傾げた。
「えぇ、これまで誰も見たことのないリンク召喚。それは今を騒がすペンデュラム召喚とも違う未知の召喚方法。それを私達LDSでも実施してみたい」
「ふむ」
その話を聞いて俺は少し考え込み腕を組んだ。そして答えを口にした。
「悪いが、俺はここにずっといるとは限らない。もしかしたら一ヶ月後にも旅に出るかもしれない奴だ。そんな奴があんたらの会社にいたら迷惑だろ」
「ちょっ、ホエルさん」
俺の言葉に対してフェルンは止めようとするが、俺は続けた。
「だけど、デュエルだったら受けるぜ」
「ほぅ」
俺の返答に赤馬零児は眼鏡をかけ直した。その表情には満足そうな笑みが浮かんでいた。
「リンクだろうと、ペンデュラムだろうと、実際に体験した方がどういう召喚方法かわかる。何よりもあんた」
俺はそのまま赤馬零児を見つめる。
「デュエルと言った瞬間、笑っただろ」
それは俺と同じく強者とのデュエルを楽しむ決闘者の顔だった。
「そう言っていただけると話が早い。確かにその方が良いかもしれない」
「社長、ですが」
「元々こちらから頼む立場だ。それに彼自身の実力も知りたい」
そうして赤馬零児は歩き出した。
「こちらに。良かったら相応しいデュエル場を用意しています」
その言葉に釣られて、俺もまた歩き出した。