※この作品はR-18です。

「Rencontre fortuite(偶然の再会)」   作:木桜 春雨

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8 水樹、襲撃される

  「見られている。」

 そう感じたのは最近のことだ、気のせいだろうか、だが、それにしては違和感を感じていた。

 コンビニ、本屋、街の外、人の多いところに出ると視線を感じるのだ。

 

 「気づいていないのか、いや、どちらにしても脅す必要がありそうだな。」

 報告を受けた佐田は少し苛立った表情だ。

 だが、父親の表情とは反対に、娘の瑛子は少し不安そうだ、無理もない、数日前の山城の食事で自分は失敗した。

 明らかに山城の機嫌を損ねてしまった。

 だからといって諦めることはできない。

 山城自身もだが、彼の財産は、それほどに魅力的なのだ。

 「大丈夫、お父様。」

 「ああ、安心しろ、慣れている連中だ、うまくやるだろう。」

 瑛子は笑った、これであの邪魔な水樹という女は山城から離れるだろうと。

 そうなったら自分は何の障害もなく山城と一緒になれる、結婚に障害はない方が良い。

 そう思っていた、心から。

 

 その日、エリックは朝からの打ち合わせが長引き、出版社のビルを出たのは昼を過ぎていた。

 打ち合わせ内容によってはメールでもすむことだろうと思ったが、以前、それで失敗したことがあった。

 今回は担当編集も気にしていたらしく、訪れたエリックに対して、わざわざすみませんと平謝りだった。

 「先生、良かったら食事てもどうですか。」

 「いや、帰ってゆっくりと休みたい。」

 「そうですか。」

 建物を出て、駅に向かう、その時エリックの目が、視線が止まった。

 白いシャツ、黒いズボン、だが、それだけなら珍しくはない、女性は白い百合の花束を抱えていたのだ。

 サイン会で、いつも届けられる花束を思い出した。

 足が自然と動く、声をかけるべきかと迷うが、このとき女性の後ろ、その存在に気づいた。

 小柄な男が、距離を詰めながら歩いているのだ。

 だが、女性は気づいていない。

 (おかしい。)

 明らかに変だ、そう思ったとき、女性が崩れ落ちた。次の瞬間、床に広がる赤——。

 悲鳴が飛び交う。だが、誰もすぐには動けなかった。

 それはあまりにも唐突すぎたからだ。

 

 スマホの着信音に山城は番号を確認する、水樹からだ、珍しいと思いながら出ると「山城さんですか。」知らない女の声だ。

 ◯◯病院ですという言葉に驚いた、急いで病院に駆けつけた。

 

 受付でスマホを渡された山城だが、そこで意外な人物に出会った、顔の左半分をマスクで隠しているのだ、誰だ?。

 (誰だ?)知り合いではない。

 水樹の知り合い、関係者なのかと思ったが、話を聞いて驚いた。

 「……偶然、彼女が襲われるところを目撃し、救急隊員に付き添いを頼まれました。」

 山城は驚いた。

 話を利いて、礼を言おうとしたときだ。

 「すみません、お話を伺いたいのですが。」

 山城が振り向くと、制服姿の警察官が立っていた。

 「目撃されたんですよね。」

 エリックが頷く。

 警察官は手帳を取り出し、スマホで簡単に記録を取っていく。

 「事件の詳細については、後ほど署でも伺うことになりますが、今のところ話せる範囲でお願いします。」 

 

 「怪我の具合はどうなんです。」

 山城は看護婦に尋ねた。

 「背中を刺されていますが、傷は、それほど深くはないです。」

 山城はホッとした、それにしても、どうしてと思ってしまう。

 

 しばらくして警察官から話を聞くと最初は酔っぱらいと思われたが。

 薬物の常習者だという。。

 「最近は昼間でも売人がうろついています、場所に関係なく、事件が、いつ起きても不思議はないんですよ、運が悪かったという以外ないです。」

 

 数日は入院することになります、背中は神経や臓器が多く、軽傷でも肺や腎臓に近い部位なら内部にダメージがないか確認する為に検査が必要なんです。

 医者の説明を聞いて山城は驚いた、最初、傷は深くはないという説明に安堵していたのだ。

 時間が許す限り見舞いに行こうと思った。

 六郷の見舞いに行ったときを思い出した。

 

 後日、病院に行くと、前回と同じようにマスクをつけた男性が病室にいた。

 簡単な挨拶を交わしたあと、山城は改めて彼をじっと観察した。

 

 「……小説家だったとはな。」

 後から知った事実に、正直驚いた。

 水樹はこの男とどういう関係なのか——そう思ったが、余計な詮索はしないほうがいいと自分を戒めた。

 実際、こうして第三者がいたことで、自分も彼女も会話のぎこちなさを感じずに済んでいる。

 そう考えると、内心ほっとしている自分がいた。

 

 ——やはり、自分は水樹との距離を測りかねているのだろうか。

 

 六郷の娘とはいえ、血の繋がりがあるわけではない。

 親として接するべきか、それとも単なる後見人としての距離感を保つべきなのか——未だに答えは出ないままだった。

 

 彼女のことを、もっと知るべきだとは思う。

 けれど、それをすれば、踏み込んではいけない領域に足を踏み入れることになるのではないか——そんな気もしていた。

 

 ふと、視線がテーブルに向かう。

 そこには洋書が置かれていた。

 (……意外だな)

 彼女がこういう本を読むとは思わなかった。

 どこかで、自分は水樹のことを「ただの若い娘」として見ていたのかもしれない。

 彼女が何を考えているのか、どんな人生を歩もうとしているのか、知らなければならないのではないか。

 そんなことを考えていると、ふと彼女が何かを言いかけた。

 

 

 

 




 試行錯誤です。
 でも書いていて楽しい。
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