【クズモブ転生】健全ゲームで『エロ同人』能力獲得したからクズ主人公から全ヒロイン奪うことにした 作:かくろう
◇主人公怒る◇
さて、
会場は色々あって
「……チッ」
(舌打ちしたいのはこっちだっての。なんでコイツが……いや、まあ幼馴染みだし当然か。どっちかって言うとこれは向こうのセリフだろうな)
地獄絵図である。
「なあお前」
「なんだ?」
話しかけてきやがった。俺は気にしないが、一応学年が一つ上で先輩の筈だ。お前呼ばわりされる覚えはない。
この男の無礼千万はゲーム内ではギャグとして処理されていたが、面と向かって当事者になると痛々しくて見ていられなかった。
「なんでここにいるんだよ」
「なんでって。
当然の如くであるが、エロ同人という名前が示す通り、俺のスキルは女の子とのあれこれをするための力になっている。
当然男には効果がないのである。こいつに至ってはむしろ敵意全開だ。個人的な事情なんだろうがな。
「あんたの存在は不穏なんだ。頼むから俺達の周りに近づかないでくれ」
「そんな事いわれてもな」
失礼にもほどがあるが、自分が反対の立場なら同じ事を思うだけに、あまり責める気にもなれない。
「ちょっとラクトッ! 先輩に対して失礼でしょっ」
「
「そうじゃないっ! ラクトが礼儀を欠いてるからよっ」
好感度のバフが掛かっていなくてもこうなっているだろうな。
今の主人公は相当に色々とアレな感じだ。呆れもするだろう。
「ちっ」
ゲームの中じゃこんなに子供じみた
しかし、俺が彼を好きになれない理由も、この余裕のなさにある。
いや、百歩譲ってそれはいい。
そういう人間もいるし、物語の主人公としては、この4月の時点ではこういう要素を含んだキャラとして描かれている。ここまで露骨ではないけど。
一年間のストーリーでヒロイン達と関わっていく中で、徐々に人間的にも多少の成長はする。
だから正確に言えば、物語開始時点である今において俺みたいな人物と会ってしまったら、こういう態度に出るのも想定の範囲内ということだ。
俺が問題にしたいのは、そういうことではなく……。
「なあアンタ。頼むから俺達の領域に入ってこないでくれ。自分のやってきた事を反省してるならさ、俺が不安に思う気持ちも分かるだろ?」
これだ。
心配しているのは自分の幼馴染みハーレムが他人に侵略されることであり、彼女達がどうなるかではないのだ。
俺が決定的に彼を好きになれなかったのは、根本的なところで彼が利己的な人間であるところだ。
バッドエンドになった時がそうだ。いなくなったヒロインのことを多少気にかけるが、それは一瞬のことだ。
いなくなったことを嘆くでもなく、心配するのでもなく、心地良い空間がなくなったことに憤っているのだ。
そこにヒロインに対する気遣いや思いやりはない。探しに行こうってな描写も一切ない。
人間なんて利己的な生き物であることは分かっているし、言ってしまえば人間らしいといえばそうだ。
根本のところで徹底した利己主義……いや、ここまでいくと自己性愛者と表現しても良いレベルだ。
だからやはり彼を人として好きにはまったくなれそうもなかった。
ああ、ダメだ。やっぱりコイツにヒロイン達を任せてはおけない。
俺とて
例えチートを持っていなかったとしても、俺はきっと今と同じ事をしただろう。
四六時中自分のことしか考えていない奴に、俺の大好きなヒロイン達を任せるなんてできっこない。
見る角度によっては、俺とてヒロイン達を自分のものにするという欲望の為に動いているので人のことは言えないが。
「気持ちは確かに分かる。だけどさ、そうやって幼馴染み達の交友関係にまで口を挟んでばかりじゃ愛想を尽かされるんじゃないか」
「な、なんだとっ! お前に俺達の何が分かるんだっ!」
正直誰か一人とでもハッピーエンドに向かっていそうなら邪魔をするつもりはなかった。
だけどゲーム開始直後の4月時点じゃまだ分からないし、こんな姿を見せられちゃその気も失せてくる。
ゲーム画面から感じていた主人公に対する不快感が、ここにきて決定的に現実のものになってしまった。
「ねえラクト。正直、私はいまラクトの味方できないよ。先輩の言うことももっともだと思う」
「くっ。お前達こいつに騙されてるんだッ! 人間がそう簡単に更生するわけないだろ」
「ラクトッ! なんか変だよこの間から」
確かにな。いくらなんでも余裕がなさ過ぎやしないか?
主人公が俺に敵意全開だったので食事会の空気は最悪になり、
「ふーむ、どうやら俺はアウェイみたいだな。ごめん
「亮君っ! 亮君が帰ることないよっ。悪いのは突っかかった少年の方だよっ!」
「そ、そうです。らく君の言ってることはめちゃくちゃだよっ! 亮二さんが帰ることはありませんっ」
「なっ……。
「そりゃしたくもなりますよっ。らっ君がバカみたいに
「なんだよっ、
「だからそうじゃないって、さっきから皆言ってるじゃないですかっ!」
「そ、そうだよぉ。らく君が悪いと思う」
「まあまあ落ち着けって皆。確かに皆の輪の中に急に割って入ったのは俺の方だ。人間誰しも急激な変化には恐怖心がでるものだからさ」
「なっ、俺が何を怖がってるっていうんだっ」
「すまん、今のは言葉の綾だ。悪かった。とりあえず今日は帰るよ。俺は君と喧嘩をしたいとは思ってないから」
埒があかないので一度退散することにしよう。
しかし今の空気では主人公の邪魔を食い止められそうもない。
火に油を注ぐようなもんだろう。
「亮君」
「
「うん、分かった。任せて。少年はどうする?」
「何もしなくていい。多分何をしてもやぶ蛇だからな」
「そうだね。気を付けてね。少年、ちょっと思い詰めてる感じがする」
「ああ。気を付けるよ」
心配そうに眉をしかめる
やっぱり彼女も心優しい性格をしているな。惚れ直したぜ。
しかし主人公には困ったもんだ。夜道で襲われたりしたらたまらんからな。気を付けるとしよう。
◇◇◇
亮二の立ち去った後の
イライラの収まらない主人公に呆れ顔の
怒り心頭の
例え亮二に想いを上書きされたとしても、初恋の思い出はなくならないし、友人としての情は失っていなかった。
彼女達の全員が主人公を嫌いになった訳ではなかった筈だった。
しかし今の態度を見て何も思わないほど盲目的ではない。
これまでにもこういうことは何度もあった。
今までは仲の良い幼馴染みだからこそ、その態度も苦笑しつつも流すことができた。
盲目的だったのは今までであり、既に目の覚めた2人には彼の姿が単なる痛々しい
そしてここにもう2人、目を覚ましつつある女がいた。
「お兄ちゃん……」
「
「ラクト……お願い、これ以上失望させないで」
「……」
「なんだよ……なんだよっ! 皆して俺のこと責めやがってっ。今まで上手くいってたじゃないかっ。アイツが俺達の輪の中に入ってきたんだっ!」
「それはきっかけに過ぎないよ。今まで上手く行ってるように見えたのは、それがなかっただけ」
「
「ごめんラクト。正直、今はラクトに優しくできない」
「少年……いや、もういいや。
「
「わ、私も……。君が反省するまで、幼馴染みをやめるね」
「クソッ! クソがッ! なんなんだよ皆っ!
「ひっ……ッ!」
「
「やめてラクトッ。
「こ、
「なんだよ、ハッキリ言えよ」
「ラクト、いい加減にしてッ! はぁ、もういいっ。悪いけど、ラクトとはしばらく距離を置きたい」
「なんだと?」
「
「
「お兄ちゃん……
「……ちっ。分かったよ……」
全員の冷たい視線に耐え切れなくなった主人公はその場を飛び出し、後に残された少女達の気まずい沈黙が流れる。
「えっと、なんか、ごめんなさい。私が」
「
「そ、そうだね。亮二さんが
「え? どういうこと?」
「先輩……が?」
まずは信頼関係構築のために食事会を提案し、
「そうだったんだ。私がラクト……好摩君に声かけちゃったのがマズかったかな」
「ううん。事前に事情を相談しなかった私が悪いから」
「
「ううん、
「ふう……とりあえず
「
「う、うん……実は……」