黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
「まあ、大したことではないよ。
キミが貰ったというラブレターの件だ」
すっかり忘れていた。
オレがついたくだらない嘘が今回の事態を引き起こした原因だった。
良い方向に転がって結果的にオレとコイツは収まるべきところに収まったが、空恐ろしいことをしたものだ。
「断るのは当然としても、きちんと返事をすべきだね。
…キミのカノジョになった余裕から言うわけでは決してないよ。
ああ、そうだ。
キミのカノジョであるこのボクが代筆してあげようじゃないか。
なに、大した手間じゃないさ。
なんせボクは断りの手紙は書き慣れているからね。
さて、まずはキミ宛の手紙を見せてくれ。
このボクの…ボクのカレシであるキミに恋文など出した愚か者が誰なのか教えてもらおうか」
ヤバい!
王子様の目の奥が曇り始めている。立ち上る気配はドス黒く、先程までの明るい気配は一瞬で消え去った。
まずい、まずい!
背中に冷たい汗が流れ、額にはこれまた脂汗がダラダラと流れた。
恋人繋ぎされた手がみしみしと悲鳴を上げる。
どうする?
誤魔化すのは無理だ。そもそもあの手紙はコイツ宛の物だ。
この状況下でよい考えなど浮かぶわけもなく、散り散りになった思考は宙を舞い、まとまることなく泡のように消えていく。
その短い思考時間の間にも、王子様の鬼気迫る気配は増大していく。
「あー、その、なんだ…」
ええい、ままよ!
「あの手紙はオレ宛の物だと言ったな。アレはウソだ」
オレは当初考えていたアイディアをそのまま実行した。
実際は数秒だと思うが、無限に近い時間に感じさせる瞬間を、オレは王子様に見つめられながら過ごした。
「…は?」
気の抜けた声が王子様の口から漏れた。
「だから、アレだ…その、アレはオマエ宛のラブレターであって、オレ宛の物じゃない」
「なぜそんな嘘を?」
王子様は顔を伏せ、表情は見えない。声色は普通だが、これが嵐の前の静けさなのか、それとも呆れているだけなのか判別できない。
「で、出来心です」
「…」
王子様は無言。またもや永遠とも感じられる時間が流れ、オレは蜘蛛の糸を握られた盗人のような心境で王子様の返事を待った。
いい加減手が痺れ始め、さらに指先だけでなく手が紫色になりかけたころ、不意に王子様の手から力が抜けた。
握りつぶさんばかりに締め付けられていたオレの手が、当初の優しげな触れ合いに戻る。
「……はぁ~」
王子様が巨大なため息をついた。
「まったくキミというヤツは…」
王子様がようやく顔を上げ、オレを見やる。
ちょっと涙目になっていた。
「う…」
コイツを泣かしてしまったことに罪悪感が一気に湧いてくる。
「キミが恋文など貰ったと聞いて、ボクがどれだけ不安になったかわかるかい?」
「す、すまん」
「キミがボク以外の誰かのモノになってしまうかもしれないと思ったときの、ボクの心境をどうすれば理解してくれるかな?」
「悪かったって」
「キミが学園の女子達から好かれないように、徹底的に好感度を制御していたのに失敗したのかと思ったじゃないか」
「……申し訳ございませんでした」
ありもしない風評被害を受けたことには抗議したいんだが、ここは我慢だ。まずは王子様のご機嫌を取らなくては!
「ふふ、まぁ、こうして結ばれたわけだしね。
水に流してあげてもいいんだが、
「最近駅前のアーケードにオープンしました甘味処であんみつをご馳走させていただく準備がございます」
「ほほう、それはいいね。
でもちょっと足りないかな?」
くっ! 足元を見られているが、致し方ない。
「では、ぜんざいもお付けいたします」
「量の問題ではないね?」
「ではいかがすれば?
どうかこの愚か者にお教えいただけないでしょうか?」
「ふふ、ボクの恋人は愚者ではないよ」
「…降参だ。大抵のことは聞くから許してくれ」
早々に白旗を上げたオレに、王子様はにんまりと笑顔を浮かべた。
「ふむ、キミのおごりは確定として…
そうだね。
キミとボクであんみつとぜんざいを食べさせあいっこしようか。
なるべく親密な雰囲気をだして、ね!
最早余人の立ち入る隙間などないというくらい、アツアツの恋人同士であることを周囲へアピールしよう。
時間も指定しようかな?
なるべく人の多い時間帯がいい。たまたま学園の人間がいれば、なお良いね。
クラスメートなどに目撃されれば最高だ。
その甘味処をクラスで話題にしてみようかな。
きっと休みの日には見知った顔が溢れることだろう。
ふふ、何人に目撃されるかな?
そうすれば、あっという間に噂は広がって、キミとボクは公認の恋人同士であることが周知されるはずさ」
王子様としてはオレに対して、なかなかハードルが高いことを要求したつもりだろう。
その証拠ににやりと口の端を上げて、王子様はオレが妥協点を提案するのを待っている。
たしかに今朝までの、いや、コイツと結ばれる前までのオレだったら恥ずかしさで悶絶していただろうさ。
そして今までのオレだったら妥協点として「せめて一口ずつで勘弁してくれ」とでも言っていたはずだ。
だが、もう違うぞ!
「お、おおう、そんなことで良いんだったらお安い御用だ。
なんだったら、その場で甘いキス(物理)だってしてもいいくらいなんだが?」
少しどもってしまったが、言ってやったぞ。
「…え?」
王子様は不意を突かれたようにぽかんとしてから、ゆっくりと頬を染めていった。
「い、いいんだね?
ボクは妥協しないぞ。
甘いキスなんて言われてしまったら、すごいことをしてしまうぞ。
それはもう濃厚なキスになってしまう。
べろちゅーだ!
公の秩序や善良の風俗なんてどこ吹く風だ。
初めてできた恋人に舞い上がって四六時中ひっついているバカップルも裸足で逃げ出すようないちゃつき方をすることになるから覚悟をしておくといい!」
いや、甘いキスってのはあんみつを食ったから味覚的に甘くなるんであって、人目のあるとこでベロチューってことではなく……もういいか。
「あぁ、いいさ。
まったくもって構わない」
それでオマエがオレのモノだと、周囲に示すことができるならオレは一向に構わない。
「なんてことだ。
今までのキミだったら、慌てるなり照れ隠しで叫ぶなりしていただろうに。
早くもボクのカレシの自覚がでてきたってことでいいかい?」
「何度も言わせるな。
オレとオマエはもう恋人同士だ」
「はぅっ!」
「ど、どうした?」
「何度言われても…いいね。
しばらくは慣れそうもない。
おなかの下あたりがきゅんってなる!」
「この辺か?」
「ちょ、あ、ふぁん!」
官能的でオレを魅了する王子様の嬌声だ。
「…エロい声だな」
「き、キミが出させてるんじゃないかぁ」
「そうだな」
王子様の下腹を人差し指と中指の第二関節でぐりぐりと押す。面白いくらい王子様が甘い痙攣を繰り返すが、容赦はしない。
「あ、ダメ!
またえっちな声…でちゃう」
「聞かせてくれよ、何度でもさ」
コイツはどれだけ感度が良いんだ。オレの腹に密着しているコイツの股からは、止めどなく潤滑油が溢れてきている。これならすぐにでも入れられそうだ。
「は、恥ずかしいけど、キミになら…ふああああぁ!」
学園の王子様なんて呼ばれてはいるし、女子からの人気は学園でも随一だが、その実コイツはしっかり女の子だ。
物語からそのまま飛び出してきたような美形で、態度も仕草も女の理想を体現して王子様然としていても、オレの前でだけは女の子として振る舞うのだ。
「なんで? こんな…おなか触られてるだけなのにぃ!
ボク知らない! こんなのしらないぃっ!!」
「イキそうか?」
「うん! ボク、イク、また…いっくぅぅ!」
抵抗すらできずオレの稚拙な愛撫で簡単に達してしまう王子様の様子を見て、オレは安心感を覚えるのだ。
これはオレの浅ましい独占欲だ。
コイツのこんな姿はオレしか知らない。オレしか見たことがないオレだけの
大きく息を乱して王子様は、力なくオレに身体を預けてきた。
「まったく、キミときたら…
さっきまでボクは処女だったんだ。
もう少し手心を加えてくれてもいいんじゃないかい」
「すまんな。オマエが魅力的すぎてつい加減を忘れて暴走してしまうんだ」
「そんな雑な褒め方でも、嬉しくなってしまう自分が恨めしいね。
でだ、その…」
なぜか言い出しにくそうに口ごもる王子様。
なんだ?
「キミの…さっきよりも元気になってる様子なんだが」
「あぁ、何度も言うが萎える気配がない。
ちょっと不安になってきた」
いや、マジでなんだろうね、コレ?
心当たりは当然、眼の前のコイツだ。今も賢者タイムが始まる気配もなく、すぐにでも押し倒したいくらいだ。
「だったら…も、もう一回したい。
ダメかい?」
王子様の方から切り出してきた。無意識なんだろうが、期待に尻がくねくね動いている。恥じらいながらおねだりする姿は、最早暴力だ。
こちらとしては願ったり叶ったりだが。
「オマエが大丈夫なら、こっちからお願いしたいくらいだ。
…大丈夫なのか?」
「正直身体は疲れてるけど、でも、キミが欲しくてたまらないんだ。
だから…」
王子様はオレのイチモツに手を添えると、自分の秘所に誘導する。
先端が触れると、しっかりと濡れた感触が伝わってきた。
「今度はボクが動くよ!」