黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
柔らかな日差しと涼やかな風。とてもさわやかな朝だけど、今日は月曜日だ。
気分が上がらない人も多いんだろうけど、ボクの気持ちは上々だ。
なんせ今向かっている教室にはカレがいるのだ。
本当は一緒に登校したいんだけどね。家も隣同士なんだし。登校時間の15分程度とはいえ、カレと離れ離れになるなんて身を裂かれんばかりの苦痛だよ。
だけど今はまだ、一緒に登校するわけにはいかない。カレへの好意を周囲に悟られるわけにはいかないのだ。
ボクはこの15分で、のちの学園生活を買う!
しかし周りはともかく、カレには気がついてほしいんだけどね、なかなか上手くいかない。
まぁ、今はいい。
ボクは校門を抜け校舎に入り、その道中も顔見知りの女生徒達に挨拶しながら、ようやく教室に辿り着いた。
あぁ、なんて長い道のりだったのだろう。
あと数秒教室に到着するのが遅れていたら、ボクは寂しくて心が壊れてしまっていたかもしれない。
半分は冗談だけど、カレが隣にいないストレスで動機や息切れが始まるところだった。
さぁ、さっさと教室に入ろう。
ドアを開けると、途端に黄色い歓声が上がった。
ボクは一番近くにいた女生徒1に声を掛けた。彼女はボクのコミュニティの一員だね。
「おはよう、お姫様。
少し髪の毛を切ったのかい。前の髪型も素敵だったけど、今日の髪型はとてもチャーミングだ」
記憶力には自信がある。昨日と違っていた点が見受けられたので、適当に褒めておく。
続いて、メイクが濃い女生徒1(白)にも明るく声をかけ挨拶をする。
「おっと、月曜からおつかれ!
ん? チークを変えたのかい。目元のグラデも盛り盛りだね!」
かなり微妙な変化だが、ボクの記憶力なら判別可能だ。
その女生徒1(白)のキャラクタ性に合わせた口調に変えて、適当に褒めておいた。彼女もボクのコミュニティ要員だ。
彼女たちならボクの『敵』にはなり得ないので、コミュニティを形成するための要員として仲良くしておきたい。悪い人たちでもないしね。
そんなふうにクラスメートの女子達へ挨拶をしながら、ちらりと教室の一番奥、窓際の席を見やる。
いた!
ボクよりも先に登校しているのだから教室にいるのは当然だけど、見つけた途端、嬉しさが込み上げてきた。
朝が弱い上に今日は日直だったからね。常よりもぼんやりしながら朝食を食べている。
今日はブロック型の携帯食か。
まったく、そんな味気ない物を朝食にして……
栄養価を考えていることは良いとしても、食事には温かみが必要だろうに。
くっ! ボクがカレの食事を管理することさえできればっ!
常に愛情(意味深)たっぷりの食事を食べさせてあげるのに。
まぁ、いい。今はそれよりも早くカレの元へ行きたい。
ボクがカレの方へ移動すると、自然と道が開く。女生徒達へは先ほどと同じように軽く挨拶し、男子はなぜか問答無用で道を開けてくれる。煩わしくなくて大変よろしい。
「やぁ、おはよう。今日もよい天気だね」
携帯食を片手にボクを見上げるカレ。
「月曜日なんて憂鬱なものだけど、朝からキミに出会えたことで、そんな鬱蒼とした気分なんて吹き飛んでしまったよ!
ふふ、嬉しいね。
ただ登校しただけで、キミを見ることができるんだ。
学園がソシャゲだとしたら、破格のログインボーナスだね」
眠たげな目がとても可愛らしい。食べてしまいたいくらいだ。
ボクはぺろりと心の中で舌舐めずりをして、襲いかかりたくなる衝動をぐっと堪える。
あぁ、そんな蕩けた顔でボクを見ないでくれよ。誘っているのと同義じゃないか。まったく、そんなえっちな顔をしていたら、いつボクに食べられてしまっても文句はいえないぞ。
「⋯⋯石もチケットもでないけどな」
ボクの軽い冗談に、同じく軽く返してくるカレ。昨日もずっと一緒にいたけど、ボクとしては全然足りないんだ。そろそろ一人寝が寂しいよ?
「じゃあ、代わりにこれを貰っておくよ」
カレの手から食べかけの携帯食を取り上げて、ボクは一口で平らげた。
あぁ、ああ! なんて美味しいんだっ!
なんの変哲もない、味気もない、そこら辺のコンビニでも手に入る携帯食が、カレ成分が添加されるだけでそれは、ボクにとって同じ大きさの黄金と変わらない。
天上の楽園に
ボクの身体の中が一気に活力で満ち溢れてくる。
気分も気持ちも体温も一気に盛り上がって、誰彼構わず挨拶を返したり機嫌よく手を降ったり、この喜びを思わず自慢したくなってしまった。さすがに言葉にまではしなかったが、クラスメートにも愛想を振りまくことができて一石二鳥だね。
ついでにカレが口を着けたパック牛乳も飲んでしまった。
あぁ、カレの物を奪ってあまつさえどきどきしながらストローに口をつけるだなんて、ボクはなんていけない娘なんだ。
「どうしたんだい?
1時限目は君の好きな数学だろう。
……あぁ、今日はキミが日直だったね。
早起きが苦手なキミのことだ、今朝はさぞかし辛かったことだろうね」
ボクは背徳的な気持ちを誤魔化すように、カレに話しかけながら前の席に腰を下ろした。
カレの朝食を奪ってしまった罪悪感と、こっそりとカレの味を楽しんでしまった背徳感。その打ち震える気持ちを伝えたくて、机の前に投げ出されていたカレの指先に触れた。
カレ成分がまったく足りていないので、食べ物だけではなく、物理的接触でも補給するのだ。
「……っ!」
カレが一瞬緊張したのが伝わってきた。さすがに長い付き合いなのでほんの一瞬だったが、よい反応だ!
そんななんでもないスキンシップもボクの心を震わせるんだよ。
カレも罪深い。そんなに隙だらけではいつかボクにさらわれてしまうぞ?
そんなカレとボクの心の通じ合いに、ボクは自然と笑顔になってしまった。
カレのために鏡の前で練習している会心の笑顔だ! 否が応でも意識せざるをえないだろう。これもよい反応だね!
クラスメートの女子達からの圧力のある視線がカレへと注がれてしまい、カレも若干鬱陶しそうにしていたが、ささいなことだ。このあたりは後でボクが敵意をもった女生徒へフォローを入れておけば問題ないだろう。
「さあ、授業が始まるよ。
課題はやってきたかい?
キミのことだからぬかりはないと思うけど、今日はこの列が当てられる番だ」
「……昨日お前と一緒にやっただろうが」
「うん、そうだね」
昨夜のことを思い出して、思わずうっとりしてしまった。そのせいでカレへの圧がより強くなってしまいカレが顔をしかめているが、まぁ、今からサービスするので許して欲しい。
そのタイミングで予鈴が鳴った。
カレへの敵意も一旦霧散し、思い思いに過ごしていたクラスメートも席につき始める。
「さあ、1時限目の授業だ。
スマホはマナーモードにしたかい?
授業中に鳴ったりしたら、面倒だよ」
「そうな。
理系らしく融通きかんしな、あの先生。
英語担当よりマシだが…」
ボクの揚々とした声に、カレは素直に授業の準備を始めた。
うんうん、素直なキミも素敵だよ。さぁ、今から今日のログインボーナスをあげようかな。
ボクは周りから見つからないようにスマホを取り出し、メッセージアプリに素早くカレへのメッセージを入力した。
カレの訝しんだ顔が視界の隅で見えたけど、ふふ、カレの驚いた顔を想像するだけで胸が踊るね。
よし、そろそろかな?
次の瞬間ボクの予想通り、がらっと入口のドアを開けて一限目の数学教師が教室に入ってきた。
このタイミングだ!
教室内の全ての生徒の視線が入口の教師に集まる。
その時だ。
その刹那の時間。
面倒臭い教師の入室の瞬間、クラスメートの視線が一箇所に集中する間隙をついて!
「……っ!?」
ボクは後ろの席のカレにだけ見えるように、スカートを捲り上げた。
ふわりと、スカートの端が宙を泳ぎ、冷たい空気がボクのお尻を撫でる。
カレの熱い視線をしっかりとお尻に感じるよ。
一秒にも満たない時間だったけど、カレの脳裏にしっかり焼き付けることができたはずだ。
ボクのパンツをね!
さて、あとはメッセージを送れば……
ボクはスマホの液晶に表示しっぱなしにしていたメッセージアプリの画面の送信ボタンをタップした。
『元気は出たかい?
今のはボクからキミへのログインボーナスだよ。
今日の下着はキミの好みにあっていたかな?』
こんなメッセージだ。
今日のログインボーナスはカレの好みにどんぴしゃのはずだ。
Tバックと迷ったんだけど、やはり薄青のストライプで正解だったかな?
ちらりと確認したカレはボクのメッセージを読んであっけに取られつつも、首まで真っ赤だった。
ふふ、いい反応だね、ぞくぞくするよ!
ボクは腰のあたりに甘い視線を感じながら、とてもよい気分で一限目の数学の授業を受けた。
今日は良い一日になりそうだ!