黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
あぁ、朝からなんて気分がいいんだ。
カレの悶々とした気配を感じながら受ける授業が、こんなに甘美だなんて。
癖になってしまいそうだ。
しかし、カレの集中力を削いでしまうのはあまりよろしくないね。
これは自重すべきか……正直、迷う!
あとでじっくり考えてみることにしよう。
差し当たっては、今日はカレの集中力を散らしてしまったからね。きちんとフォローしておかなくては。
ボクはカレの授業の理解度を確認すべく、後ろの席へ振り返った。
「今の授業で理解できなかった所や疑問に思ったことはないかい?
あれば答えるよ。
今日の範囲はなかなかに重要だ。
テストにも出やすい。
こことここは特に復習をおすすめするよ」
「あぁ、堅物な教師だが、丁寧で分かりやすい授業だからな、大丈夫だ」
カレの瞳をじっと見つめる。
ふむ、嘘は言っていないね。
カレの得意な数学の授業だし、昨日、課題も一緒にこなしたし、多少集中力が散漫になったところで問題なかったか。
よかった。
まぁ、問題ないとは思うけど、今日の夕食後にでも一緒に課題をやりながら理解度を探っておこうか。
ボクがカレとの放課後に思いを馳せていると、カレがなんとも言えない、もやもやとした表情をしていた。
「ん? どうしたんだい?」
「なんでもねぇよ。
それよりも……」
そうだった。勉強のフォローも大事だけど、クラス内のカレへのヘイト管理もきっちりやっておかないといけないね。
ボクはカレへと敵意を放つ女生徒に当たりをつけた。まったく煩わしい。カレとの時間を邪魔する輩など業火に焼かれて消し炭になればよい。
「おっと、お姫様達が何やらこちらを見ているね」
面倒くさいが、これも回り回ってカレのためにもなることだし、対処しておくか。
「キミへのヘイトがピークにならないうちに何事か聞いてこようか」
カレと離れるのが寂しかったのと、カレとの仲良し加減をアピールしておきたかったので、そっと耳打ちした。
カレは慌てていたが、きっちりフォローするから大丈夫だよ。
ボクは女子達が好みそうな笑顔を作り、彼女達が作る輪に入っていった。
「どうしたんだい、お姫様?
そんなに眉間にシワを寄せていたら、可愛い顔が台無しだよ?」
心にも無い言葉を並べながら、ボクは彼女達のご機嫌を伺った。ボクが会話の輪に入った時点で、だいたい解決している。あとはちょっとだけカレへの好感度をコントロールしておけば完了だ。
ボクは適当に話を合わせながら、脳のリソースの大半を使ってカレのことを考えていた。
容姿は普通。
ボクにとってはこの上もなく好みなんだけど、世間一般からの評価としては普通になってしまうだろう。もう少し正確な評価をするなら磨けば光るといったところか。
学生なんて玉石混交なのだ。数日後には玉にも石にもなりえる。
しかし、カレの場合は違うぞ!
ボクがカレを敢えて石のままにしているのだっ!
なぜなら今この段階で玉になってしまったら、不埒な輩がカレにちょっかいをかけてくるかもしれない。そんなことは絶対許さないぞっ!!
カレを磨き抜いて玉にするのはボクの役目だ。そして、それは今ではない。
ボクがカレを手に入れてからじっくり、ゆっくり、丁寧に磨き上げるんだ。
ふふ、今から楽しみだね。
素行は良い。
遅刻もしないし、日直なども真面目にこなす。授業態度もそれなりに真面目。教師に聞いたとしても問題なしとの回答をもらえることだろう。
女子からの風当たりは強いが、これはボクのせいが大半なので問題ないのだ。
勉強は中の上といったところかな。
やればできるのは知っているが、興味のないことには徹底して手を抜くので、ボクがしっかりと管理せねば。特に語学が苦手なので、ボクが平均点程度は維持できるようにしっかり指導している。
理数系はまったく問題なく、数学、情報に至ってはボク以上かもしれない。
このボクに勝てる可能性がある教科があるだけで驚異的だ。
文武両道……とはいかないね。
運動は至って普通。運動部にも所属していないので、体育での評価になってしまうが、特に目立ったところはない。
よく筋力トレーニングをしているところを見かけるが、目的を訊いてみたところ、「まぁ、運動不足解消だ」とまったくもって平凡な答えが返ってきた。
たまに、ボクも付き合う。もちろん汗ばんだカレを堪能したいからだ。躍動する筋肉がセクシーだね!
あと、スポーティーな格好のボクで悩殺できないかとも思ったのだ。首尾は上々で明らかに意識させることができたので、今後も筋トレに付き合うこともあるだろう。
そんなふうにカレのことを考えていたら、あっという間に休み時間が終わってしまった。女子達と何を話したかよく覚えていないが、まぁ、女子の会話なんてそんなものだ。あっさりと解散して各々席へ戻っていった。
ボクもカレの元へ戻るとしよう。
「いつものようにフォローしておいたよ」
「ちょっ!? だから、そういうのをやめろって!」
さっきと同じように耳打ちしたら、慌てるカレが、もう可愛らしくて仕方ない。
「なんだい、ボクの労力に対する感謝くらいしてもいいじゃないか」
カレへの敵意が再び膨らんでしまったが、ボクが笑顔で手をふったらあっさりと霧散した。
カレはほっとしていたが、それよりも気になることがある。
さっきも気になっていたんだが、カレからカレのものじゃない匂いがする……
ボクは改めてカレの首元へ顔を近づけて、カレの匂いを確認した。
「なんだよ?」
「入浴後、10時間と言ったところかな?
それよりも…」
カレのとてもいい匂いに混ざって、嫌な匂いを嗅ぎ取った。
くそっ! 誰だこの匂い!
ボクは思わず額に手を当てて記憶を検索する。
該当なし。
ボクの知らないやつだ。カレは今日、日直だった。その時だな。
誰かがカレに近づいた!
「……今朝、日直の時に誰かと会ったかい?
キミから知らない
カレは一瞬たじろいだが、今はそんなことよりも確認が先だ。
「他のクラスの日直と先生から頼まれて荷物運びをした」
「女子かい?」
胸が悪くなるほど不快だが、我慢するしかないか。
「……そうだな」
「ふむ、それならまあ仕方がないか」
「……いいから離れ、うひぃ!」
我慢はするけど、ちょっとだけカレに八つ当たりをしてしまった。
カレからの離れ際に、耳に息を吹きかけてカレの反応を楽しんだ。
ふふ、ホントは耳を甘噛みしたかったけど、これくらいで勘弁してあげよう。
カレが恨めしそうに睨んでくるが、ボクの可愛いいたずらくらい許して欲しいね。
お詫びと言ってはなんだけど、ボクはブレザーを脱いでから席に座った。
下も見せたのだから、上も見せておかないといけないよね。
今度は肩甲骨のあたりに熱い視線を感じることができた。
これはもう癖になってしまうのも仕方がないね。
なに、カレの勉学はボクが面倒をみればよいのだ。
家庭教師のボクと生徒のカレなんてシチュエーションもいいんじゃないかな。