黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
後半邪魔された昼休みも終わってしまい、カレとは別々になってしまう退屈な午後の授業が始まった。
体育の授業は男子は外コートでバスケ、女子は体育館でバレーと別れてしまった。せっかくカレの躍動する肉体を舐めるように見ていようと思っていたのに、これではまるで見ることができないじゃないか。
腹立たしい!
やる気など一気になくなってしまったよ。
ボクと同じチームになりたい連中のせいで一悶着あったが、結局じゃんけんで決まりローテーションで試合を行う形式で授業がスタートした。
ボクに声援を送ってくれる娘達には悪いが、そもボクは運動にはまるで興味がないのだ。
部活の助っ人などやることはあっても、それはカレを包囲するためのコミュニティ形成が目的であって、活躍したいとか有名になりたいとか、そんなことは一欠片も思わない。
助っ人にボクを呼ぶ側も、客寄せパンダとして利用して、少しでも部員を獲得したいだけだろう。
それ自体はボクの目的にも合致するから構わない。ただ、そのスポーツに真面目に取り組んでいる者に失礼だとも思うので、ほどほどにして欲しい。
どこかのタイミングから断ることも視野に入れた方がいいかな。
あぁでも、カレとの夜の運動会なら興味津々だね!
大歓迎だ!
そんなことを考えていると、ボクが所属するチームが試合をする番がやってきた。
適当に流してお茶を濁すか。
あとチームメイトの君等もきゃーきゃー言ってないで動け! この愚物共がっ!
……くっ、カレの近くに居られないせいか、精神がささくれ立ってしまっているね。
これはいけない。
授業が終わってカレのそばに戻ったときに、一寸たりとも影響があってはならない。
万が一にも刺々しい心持ちが顔に出てしまい、それをカレに見られてしまったらと思うと身震いするね。
カレの前では常に可愛いボクでいなければならない。
よし、せめて表情だけでも笑顔で愛想を振りまいていよう。
ボクは黄色い声で叫んでいる女子たちに向かって片手をあげてガッツポーズをする。
それだけでも声のトーンが一段階上がり、余計にやかましい。
平常心、平常心。
カレのために穏やかで朗らかであることを心がけよう。
でも、選択科目もカレとは別々なんだよな。
あと二時間以上カレがそばにいないなんて……
そんなこんなでカレがそばに居ない、退屈極まりない午後の授業がようやく終了した。
カレも寂しかったことだろう。
放課後なのだから、さっさと帰宅してカレと二人きりになりたいんだけど、まだやることが残っている。
面倒くさいが、これからボクに告白したいとかいう、脳みそお花畑の連中に付き合わなければならない。
なんで女子からの告白なんてされなきゃならないんだ!
いや、理解はしている。
学園の王子様なんて呼ばれているんだ、夢見がちな阿呆は告白くらいしてくるだろうさ。ラブレターもよく貰うし。
カレを包囲するコミュニティを維持するためには仕方ないんだけど、あまりにもカレとの時間を侵食してくるようになるんだったら、規模縮小も視野にいれよう。
これが男子なら無視するんだけど、不思議と男子からの告白はないんだ。
自慢にもならないが、ボクはそこらの男子よりもかっこいいからね。
まぁ、彼らも無駄なことをしなくて大変よろしい。
どちらかと言うと、ボクとしてはかっこいいよりもカレのために可愛くありたいんだ。
ボクにとって男と呼べるのは
というか、地球上の生物を分類するとしたら、カレとボクとそれ以外って感じかな。
究極的にはカレとボクの二人だけでもかまわないんだ。
まぁ、今後の目標だ。
いずれ達成してやろう。
そのためにもまずは小目標達成のために、眼の前の雑事を片付けねば。
ボクは化粧の濃い女子二人(黒と茶)からの誘いを軽やかにいなす。彼女達の不興をを買わないようにしつつ誘いを断るには、適当に褒めてジョークの一つも言っておけば十分だ。
ボクのコミュニティの一員だし邪険にするものでもない。
さて、面倒くさいが告白を断りに行ってくるか。
「じゃあ行ってくるよ。また後で」
あぁ、せっかくカレに再会できたというのに、また離れ離れになってしまう。
ボクがカレと離れて生活できるのはせいぜい三分が限界だというのに!
しかもカレには今からボク宛のラブレターを回収するなんていう、愚にもつかない仕事をさせてしまうんだ。
いつの間にか、ボク宛のラブレターをカレに渡すと確実にボクの手元に届くという話が広がってしまい、カレに面倒事を押し付けてしまっているのだ。
カレには報酬を払ったほうがいいとまで思ってしまう。
……ボクの処女をあげればいいかな?
流石にそれはもっと劇的に舞台を仕上げてカレにもらって欲しいので、別の報酬を考えておこう。
もっとマイルドに……授乳手コキとかどうだろうか?
カレはボクのおっぱいが大好きだし、悪くなさそうだが、そこまで出来るならいっそ押し倒して欲しいというものだ!
ままならないね。
あぁ、しかしいらいらする。
カレに女が近づくだけでも
唯一の安心材料はラブレターがボク宛であって、カレが相対する雌猿はカレに興味がない女子であるということだ。
それでもカレを一人にするのは不安で仕方がない。
おそらく、カレのほうが早く教室に戻ることになるだろう。
「……くそっ!」
なんだ? 今日は何かに急かされているような気持ちになる。
カレがボク以外の女に手を出されるような心配は、ほぼない。
そう言ったウワサはボクのところに届くよう、わざわざボクを中心とした女子達のコミュニティを作ったんだ。
それでも、わずかに残った可能性がボクの焦燥を駆り立てる。
早く、なるべく早くカレのところに戻ろう。
ボクは早足で目的の場所まで急いだ。
雑にはならないように告白はきっぱり断った。
相手の女子も本気ではなく、ボクへの告白自体が目的で、イベントというか……自分で言うのもなんだが、女子の理想のような王子様に告白して素敵にフラレたというネタが欲しいだけなのだ。
ボクのコミュニティで使えそうな相手は、そのまま顔と名前を覚えるようにしているが、今日の三人はいらないね。
まったくの時間の無駄だった。
ボクは行きよりも早足になって教室に向かう。もはや速度的には小走りに近い。
ボクはスマホを取り出し、アプリを起動した。
今日のように、カレと女子が二人になるケースが頻発するようになってから、カレのスマホには位置情報を監視するアプリを仕掛けたんだ。
カレの位置情報を確認すると、もう教室に戻っていることが判る。
次に、移動ログを確認する。
屋上、体育館裏、部室棟、一年校舎、2年校舎の都合五箇所を回っているね。
ちなみに今朝の登校時にもカレの動向は確認していて、カレは日直の他にも2通のラブレターを貰っているはずだ。
各場所の滞在時間には不審な点はない。どこも同じような滞在時間だ。
過去ボク宛のラブレターを回収したときの平均時間と比較しても大きな誤差はない。
一箇所で二人同時とか特殊なことが起こっていない限り、今日のラブレターは7通。
そして、位置情報の滞在時間からすればイレギュラーはほぼない。
おそらく、何事も起こっていない!
安心材料を得て、少しだけ気持ちが軽くなったが、ボクの足が遅くなることはなかった。
階段を駆け上がり、教室はもう目の前だ。
ようやくボクはカレの待つ教室まで辿り着いた。
教室へ入る前に息を整える。
余裕のないボクなんてカレに見せたくないからね。
二度、三度深呼吸して……よし、整った。
ボクは教室のドアを開けた。
ポツリと、教室にはカレ一人。
教室奥の一番後ろ。カレの席で課題をしているようだ。
うん、遠目に見ても雰囲気に変わりなし。何事もなかったようだね。
……よかった。
ボクは揚々とした気分でカレの席へと向かった。
「やあ、ただいま」
しかも課題がちょうど終わったところじゃないか。急いで戻ってきてよかった。無駄にカレを待たせてしまうところだった。
「今日は三人だったよ。いつもより少ないね」
ボクはようやく肩の力を抜くことができた。自分の席に腰を下ろして大きく息を吐き出す。
カレはぼんやりとボクの方を見ていたが、おもむろにノートや教科書を片付け始めた。
ふふ、なんだい? そんなにボクと早く帰りたいのかな?
でも、ボクに労いの言葉くらいくれてもいいんじゃないかな?
まぁ、いいや。
代わりにこれをもらっておこう。
ボクは机の隅に置いてあった、カレの飲みかけのペットボトルを手に取った。
静止される前にしれっと口をつける。
甘露、甘露!
単なる水なのに天上の雫のようじゃないか。
「おい」
「はー、美味しい水だね。ひと心地ついたよ」
お礼にサービスするね!
ちょうど教室にはカレとボクの二人きりだし。
ボクはブラウスのボタンを一つ外して、カレの大好きな胸の谷間をあらわにした。
いかにも暑そうな感じを出して、ぱたぱたと煽ぐ。
ちらちらとボクの胸元に視線が来ているのを感じる。
ふふ、遠慮なんかしなくてもっと凝視してくれて構わないのに。
くっ、こんなに熱い視線を向けてくれるんだったらノーブラになっておけばよかった!
おっと、ペットボトルを返すのを忘れていたよ。
さらに胸元を強調しながら、カレにペットボトルを渡す。
夕日に照らされているせいで、顔色は判りにくかったけど、カレがきちんとボクを意識していることは感じることができたよ。
少しぼんやりしているようだけど、大丈夫かな?
なんて思っていたら、カレが次に取った行動にボクは金縛りにあったように硬直してしまった。
なんとカレが、ボクが口をつけたばかりのペットボトルを、そのままあおったのだっ!
大きく心臓が跳ね上がった。
昼食のおかずにこっそりと仕込み、半ば不意打ちのようにカレの体内へとボクの一部を取り込ませたこととは根本的に違う。
カレが自発的に行ったボクとの間接キスだ。
ボクは我知らず自然と笑顔になってしまった。
「ふふ、美味しいかい?」
カレはなんでもないことのようにペットボトルの蓋を閉めて机に置いたが、ボクのツッコミに対して動揺を隠しきれていないぞ。
「なんだ?」
夕日の光が邪魔をするが、カレの心境は一目瞭然だ。
「なんでもないよ。あぁ、なんでもないとも。
君が自分の水を飲む。
なんてことない日常の一コマだ。でもね、これはボクにとっては青天の霹靂だ。驚天動地の一大事だよ!
まったく、キミって奴はまったく!!
朝から今までボクを喜ばせることしかしないね!」
ボクのテンションは爆上がりだ。
「まるで心当たりがねーよ!」
「ふふふ、まあいいよ。そういうことにしておこうじゃないか」
カレはつっけんどんに言い放つが、ボクの気持ちは極めて上がったよ。
有頂天だ!
踊り出したい気分ってのはこんな感じのことをいうんじゃなかろうか。
そうだ!
今日はカレの両親が不在なんだ。夕餉に誘ってしまおう。久々にボクの家に来てもらうんだ。
当初はカレの家に乗り込む予定だったけど。
最近のカレは遠慮というか、思春期特有の照れなのか知らないが、全然ボクの家に遊びに来てくれなくなってしまった。
今日は一歩前進させるぞっ!
メニューには精のつく物をたくさん食べてもらってあわよくば……
なんてね! なんてねっ!
「それじゃあ帰路に着こうじゃないか。ちょうどいい、今夜はウチに来ないか?
あのランチのメニューではキミの健康が若干不安でね。今日は両親が不在なんだろう?
ウチの親は相変わらず家に帰ってくることが少ないからね、お互い一人の夕餉というのも味気ないじゃないか?
さぁ、行こう。すぐ、行こう」
カレはボクのテンションの高さに訝しんでいたけど、そんなものは勢いで誤魔化してしまえばいい。
もしくは強引に連れ込んでしまおう!
しかし、カレは極々自然に何の警戒心もなく、あっさりとボクの意見に同意した。
「たまにはいいか。
オマエの家は広すぎて相変わらず萎縮しちまうんだが」
よし! 良い流れだ。これを機会に今後はボクの家にも頻繁に誘うようにしよう。
理由なんていくらでも付けられる。
勉強でもゲームでも理由なんてなんでも良いんだ。
重要なのは、二人きりの空間で一緒にいる時間を増やすことだ。
カレの家ではカレの両親がいるときに行くことが多いから、なかなか難しいけど。
ボクの家なら基本的に、ボク以外誰も居ない!
ふふ……ふふふふ、これは……これはカレとボクの誕生日なんて待つこともなくゴールできるんじゃないか!?
「子供の頃はよく来たじゃないか。
最近すっかりご無沙汰なことには遺憾の意を表するよ」
さぁ、カレの気が変わらないうちに……気が変わってしまっても強引に連れて行くけど……早く帰宅しよう。
15分程度の帰り道だけど、なるべく親密な雰囲気を作りたいね。
できれば、今夜への伏線(意味深)を張れると良い。
カレにボクを意識させるにはどうすればいいだろうか?
腕を組む、胸を押し付けるってのは基本だとして、もっと刺激的なことがあった方がいいな。
あ、逆にボクがカレのお尻を触るとかどうだろうか!?
……あ、アソコを触るのはいきなりすぎるかな?
まぁ、いい。出たとこ勝負だ。
おっと、忘れていた。
カレに労力を掛けてもらっているからね。カレに受け取ってもらった手紙を回収してしまおう。面倒くさいことこの上ないが、返事を書かなければならない。
「さて、さっきは急かしてしまったが帰る前にもらっておこうか?」
ボク宛とはいえ、ボク以外の女が触れたモノをカレの手元に残したままにしておくのは汚らわ……忍びないからね。
カレはおもむろに机の中から手紙を取り出し、ボクに手渡してきた。
「ほらよ」
念の為、枚数を確認する。
……6通?
一通足りないぞ。朝に2通、放課後に5通のはずだ。
ははは、おっちょこちょいだな。きっと机の中に一枚残っているんだろう。
カレもうっかり屋さんだね。
別にいらないんだが、ラブレターの返事なんてまとめて処理しないのも面倒だ。
指摘しておこう。
「ん? 一通足りないな。キミが貰ったのは七通のはずだが?」
カレはなぜか言葉を詰まらせ、身体を硬直させた。
なんだろう? 変なこと言ったかな?
まぁ、いいか。
さっさと残りを受け取って、一緒に帰ろう!
しかしボクのわくわくした思いとは裏腹に、次にカレが放った言葉はボクを奈落の底に突き落とした。
「あぁ、それはオレ宛だ。中身を読んできちんと返事を出さないとな」
カレの言葉を、脳が理解することを拒む。
カレは何を受け取ったって?
手紙だね。
誰宛の?
カレが言うにはカレ宛のものだ。
手紙の内容は?
――レターだ。
ダメだ上手く言葉にできない。
カレはなんと言った?
『中身を読んできちんと返事を出さないとな』
カレがボク以外の女からの手紙に返事をする?
なぜそんなことをする必要がある?
無駄じゃないかっ!
だってカレはボクの……
――ピシっ!
亀裂が走る。
ボクの中の
今日までひっそりと15年間育て上げてきた
ずっと……ずっと我慢してきた。
子供のカレではまだ早い。――快楽が理解できない。
思春期に入り性への興味がでてきてようやく準備が整った。――カレの精通とボクの初潮。
あとはぱくりと食べるだけ。――カレの身も心も手に入れるんだ。
理性の殻でずっと閉じ込めてきたんだ。
カレの気持ちを無視して事を運んでもダメだ。
身体だけなら快楽漬けにしても良いけど、カレのキモチも虜にしたい。
ボクはカレの全部が欲しいんだ。
カレをボクで満たしたい。
さっきのカレの言葉でボクの外殻に罅が入った。
亀裂は裂けて中身が覗く。
ずっとずっと抑え続けてきたボクの
「ほう?」
自分でも驚くほど冷たい声だ。
おおよそカレに向けるべきではない声音だ。
だけど、最早一刻の猶予もない。
「それはそれは。
キミのようなヤツに恋文を送る気が触れた女子がこの学園にいるなんてね。
あぁ、相手は空気の読めない輩なんだろうが、返事は真摯にするべきだね。
なんならアドバイスしようじゃないか」
絶対にカレを渡すわけにはいかない。
どこのどいつかなんて知らないが、ボクからカレを奪おうとするのなら、例えそれが神でも悪魔でもボクはそいつをこの世から消す。
痕跡すら残さない。
カレの記憶からも消去する。
どんな手を使ってでも、だ。
ボクの全てを使ってカレを手に入れる。
余人の介在する隙間などない。
ボクが生まれ、カレが生まれ、カレとボクが出会った瞬間決まったんだ。
カレはボクの全てだ。
だが、解せない。
せっかく作り上げたコミュニティが機能していなかったのか?
こんなに事前情報がまったくない状態でカレへと魔の手が伸びる状況などありえるのか?
ありえるかありえないかで言えば、当然ありえる。
ボクのコミュニティも完璧ではない。
例えば、まったく誰ともコミュニケーションを取らない、誰とも関わらない女子がいたとしたらありえるだろう。
しかし、そんな女子生徒がたまたまカレに好意を持つ?
学校ではほぼボクと一緒にいるし、帰宅後は見張ってるし、休みの日なんて確実に一緒にいるぞ!
ボクならそんな
カレの学校の成績は普通。
運動も並。
女子からの好感度に至ってはボクの制御下で、むしろ下の方だ!
そんなカレにラブレターを渡す?
そんな極小の可能性なんて……
いや、今は考えている時ではない。
今、この瞬間に大事なのは一刻の猶予もないことをボクが自覚することだ。
「……」
覚悟はもうできている。
あとはきっかけだけ。
そうだ!
今このときこそがきっかけだ!
ボクはカレへと笑いかけた。
強すぎる感情を抱くと、逆に精神は落ち着くようだ。
決意したボクの心持ちは、静かな湖面のように穏やかだ。
さっきはカレに向けて強い言葉を使ってしまったからね。申し訳ない。せめてもの思いで、笑顔で取り繕ったんだけど、カレの顔は引き攣っていた。
「お、おう…」
「さぁ、さっさと帰ろうじゃないか、ボクの家にね。
夕食は何にしようか?
それとも入浴を先にするかい?
当然今夜は泊まっていくだろう?
か弱い乙女であるボクを放って帰ったりしないだろうね?
最近は物騒だからね。キミはボクの最も身近な男としてボクを守る義務があると思わないかい?」
ボクは優しくカレの腕を取って、抱きしめた。
カレがいつもちらちらと見てくるボクの胸に掻き抱いて、カレを意識させるんだ。
制服の上からだけど、大きくて柔らかいだろ?
これは全部キミのモノだ。
今日これからキミのモノになるんだ。
「ちょ、痛っ!」
ちょっとだけ気持ちが入りすぎて、少しだけカレの腕を抱きしめるときに力が入ってしまったかもしれないけど、しょうがないよね?
「ふふ、なんだい? 急いで帰らないと日が暮れてしまうよ。
なんたって夜はこれからだからね。
さぁ、さぁ! さぁっ!」
「わかったから、わかったって! いっ、痛い!?」
ダメだ。
気持ちが急いてしまって、ついつい力が入ってしまうよ。
そうだ。
帰る前にカレにちょっかいをかけた輩を確認しておかないと。
「あぁ、忘れていたよ」
ボクはカレの首元にそっと顔を寄せて、カレの匂いを確認した。
いつもよりほんの少しだけ、本当に少しだけ乱暴になってしまったかもしれないけど、これもカレへの想いゆえだ。
許して欲しい。
「ふん、五人か。
朝方回収したのが二通、放課後に五通。数は合っているか。
五人のうちの一人が件の輩って訳だね。
反吐が出る!
せっかくのキミの匂いが台無しだっ!」
カレのいい匂いに混ざって、5人分の異臭がする。
ボクの記憶に該当なし。
完全に見知らぬ
吐き気を催すほど不愉快だが、これはボクの落ち度だ。
今後は絶対にカレを配達人の代わりなんかにしてはならない。
今後は絶対にラブレターはボクが直接受け取らなければならない。
今後は絶対にカレに雌豚一匹近づけさせない。
ごめんね。
今後は絶対にキミを一人になんかしないよ。
おっと、こんな気持ちでいたらカレに申し訳ないね。
今日を境に、カレとボクはより深い関係になるんだ。
あぁ、そうだ。
もう、今までの関係ではいられない。
カレをそういられないようにする!
今からの下校はそれの前借りみたいなものさ。
周囲に人間の目なんて気にならないくらい、アツアツな雰囲気を醸し出して帰宅しようじゃないか。
思わずカレと組んだ腕にも力が入ってしまうというものだ。
カレも嬉しさに震えているね。
ボクも嬉しくなってしまって、カレの肩へ頭を預ける。
はぁ、体育の後だからカレの匂いがすごく濃い。
異臭のことは脳内でシャットアウトしてボクはカレの匂いを堪能した。
もうすぐ、もうすぐだ。
僕の家にさえ連れていけばもう逃さない。
――今日、ボクは、カレと、一線を超える。