黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
眠ってしまったカレの顔を眺める。
なんとも、なんとも健やかに寝ているじゃないか。
カレの頭の重さは心地よく、ずっと膝枕をしていたい。
寝顔も可愛らしくて、思わずほっぺたを突付いてしまった。
このまま襲いかかってしまいたいくらいだけど、それではここまで整えた準備が無駄になってしまう。
今日、今からカレとボクは結ばれるんだ。
きちんとカレの記憶にも残るものにしないといけないよね。
さて、時間も勿体ないのでさっさと準備しよう。
正直な所、もう我慢ができないんだ。
カレをボクのモノにしたくて仕方がないんだ。
ボクはカレの頭を慎重に支えて、ソファーの上に横たえる。カレの腕を取って、身体を持ち上げようとしたが、
「……重い」
しまったな。
せめて2階に連れて行ってから眠ってもらえばよかった。
まぁ、こんなこともあろうかとファイヤーマンズキャリーで荷物を運ぶ練習はしていたんだ。
女の子の細腕でも、身体の使い方次第で人間の一人くらいならなんとかなる。
ボクはカレを担ぎ上げると……思っていたよりもかなりきついぞこれ。
よたよたしながらボクの部屋へ――秘密の部屋の方へと向かった。
途中、何度かカレの頭を壁や柱の角に擦ったりぶつけたりしてしまったが、些細なことだろう。
起きる様子もない。
「よっこいしょ」
部屋に着いたボクは、カレをベッドへと横たえた。
放り投げるような感じになってしまったが、カレはすやすやと気持ち良さそうに寝こけている。
全くもって無防備だ。
一瞬ボクの脳裏に、睡眠姦という単語がよぎったけど、その手のアクロバティックなことはこの先いくらでもする機会はある。
ボクはぶんぶんと頭を振って余計な思考を追い出した。
今日はカレと一緒に、物語の1ページのように素敵な体験にするのだ!
さて、ボクの方の準備を始めようかな。
ぴかぴかにボク自身を磨き上げて、カレに食べてもらうのだ。
ふふ、ボクも存分にカレをいただくけどね。
貪食せよ!
まだしばらくは起きそうもないし、丁寧に支度を整えよう。
ボクはカレの頬へとキスして、階下の浴室へむかった。
……唇へは我慢したのだ。
ゆるゆると湯船につかる。
いつの間にかぐしょ濡れになっていた下着に軽く衝撃を受けながらも、洗髪、洗体を済ませた。
いつ濡れたんだ?とも思ったが、カレとの濃厚な接触もあったし、そもそも食事の時からボクにとって官能的な出来事の連続だったんだ。
膝枕なんてトドメだ。
我知らず興奮してたってことだね。
湯船の中で軽く伸びをする。
一日の汚れも落とした。
カレがどんなふうにボクへ触れてくれるかわからない以上、あらゆることを想定して準備せねばなるまい。
だからカレが触ってきそうな場所は徹底的にキレイにしたよ。
耳とか腋とか足の指の一本一本まで!
ボクのアソコなんて絶対触ったりしてくるだろうし、あとはその……後ろの方も中まで……
適温の湯で血行を良くして見栄えをよくすればいい感じなんじゃないかな。
肌の白さには自信あるけど、不健康そうではカレも興醒めだろうからね。
カレの覚醒まではまだ時間がかかるだろう。
さぁ、どうやってカレとの初めてを飾ろうか。
今まで何度も、何度も……それこそ毎日のように、さらには夢の中でまでシミュレーション(意味深)してきたことを思い浮かべる。
ふふ、ダメだね。
いざ本番を前にすると、全てが陳腐でまるで意味がない。
あと、カレが動けない事を想定していなかった。
カレが他の女にちょっかいをかけられた場合の事は予想して、その後の強硬手段までは考えていたんだけどね。
正確には、睡……恋の秘薬を使用した後のプラン立てを怠っていた。
「どちらかというと、カレに襲われたときの想定ばかりだったなぁ」
カレの部屋で、放課後の教室で、体育倉庫で、保健室で、図書館で、カレと遊びに行った先で……
ボクの部屋(通常)ってのももちろんアリだ。
カレの部屋かボクの部屋ってのが可能性として一番高かったから、シミュレーション(意味深)の回数も多かった。
想定シチュエーションもいくつも考えた。
ボクの色仕掛けにカレが耐えきれなくなって襲いかかってくる場合。
カレとボクがお互いに望み合った場合。
ボクが耐えきれずにカレを押し倒してしまった場合。
普通に遊んでいたら良い雰囲気になってそのまま……
などなど。
細かい分岐を上げたらキリがない。
ちなみに一番好きなシチュエーションは、カレの部屋のベッドでお互いに緊張しつつもらぶらぶな雰囲気で初めてを奪われる感じだ!
カレがちょっと意地悪だとなお良い!!
詳細かつ綿密にシミュレーションをしてきたつもりだったけど、ボクの想定は甘かったみたいだ。
「でも、ここまできたらあとは流れに身を任せるしか……」
いや、時間ぎりぎりまで予測だけでも立てておこう。
カレがこうきたらボクはこうする。カレがこんなことをしてきたらボクはこんなふうに受ける。
カレが雄々しく獣のように押し倒してきたら、ボクは弱々しく捕食されることを観念した草食動物のように全てを受け入れる!
カレが問答無用で乱暴にベッドへ押さえつけてきたら、ボクは目を丸くしつつも全てを受け入れ瞼を閉じ、そっと唇を差し出す!
カレが王子様のようにボクを優しく抱きしめ、そっとベッドへ横たえてきたら、夢見る乙女のようにこの身を捧げる!
カレが童貞丸出しで、はぁはぁ言いながらボクに襲いかかってきたら、ボクは幼馴染の気安さで「いいよ……」って言ってあげるんだ!
あ、いけない! そんなことしたらボク、ダメになってしまう! でもキミになら……
ボクは無意識のうちに自分の下半身へと手を伸ばしていた。
「はっ!?」
いかんいかん。妄想……もといシミュレーションが捗ってしまって、思わず一人遊びしてしまうところだった。
さすがに事ここに至って、そんな勿体ないことはできない。
テーブル一面に広がるご馳走を前にしてカップ麺で腹を満たすような行為だ。
しかし、どのシチュエーションでもそれぞれ良いところがあってどれもこれも捨てがたいね!
「うぅ!
もう辛抱たまらないぞっ!」
一人でいるとどうしても変な方向に暴走してしまうね。
よし、もう入浴は十分だ。
カレの寝顔を眺めながら、目覚めを待つとしようじゃないか。
ボクは逸る気持ちを抑えつつ、浴槽から立ち上がり、風呂場を後にした。