黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
とうとうこの日が来てしまった。
「ふふ、楽しみだね?」
満面の笑みをオレへと向ける王子様。
オレの腕をがっしりと掴み、肩に顔まで乗せてくる。
二の腕に当たる柔らかな感触にどきまぎしてしまった。
一分の隙もなく本当に嬉しそうだ。
全身から喜びのオーラを発して、熱さすら感じる。
王子様の背後の景色が揺らいで見えるくらいだ。
「ああ、そうだ。
約束ではぜんざいとあんみつだったけど、メニューはなんでもいいよ?
ただし……」
「わかってるって。
きちんとオマエに食べさせてやる!
オマエも恥ずかしがらずにオレに食べさせてくれよ?」
「はっはっはっ!
そのセリフはそっくりそのまま返すよ。
ボクが恥ずかしがる?
そんなわけないだろう?
むしろキミとのらぶらぶな関係を周囲に見せつけたいのに?
なんなら口移しで食べさせてもあげてもいいくらいだよ?
そもそもキミは箸も匙も使う必要はないよね?
だってボクがキミに食べさせてあげるんだから!」
「……それだとオレがオマエに食べさせられないだろうが」
「それもそうだね。
ははははっ!」
王子様の気合いの入り方が尋常じゃない。
テンションもかつてない高さだ。
まぁ、気持ちは判らないでもない。
なんせ今日は、オレと王子様が付き合い始めて初のデートだからなっ!
オレと王子様が付き合い始めて、初の休日を前にした日のことだ。
付き合う前と同じように、王子様と二人で昼飯を食べていると、饒舌に話していた王子様が急に黙り、神妙な顔でオレを見つめてきた。
「な、なんだ?」
何かしでかしたか?
今日も王子様からはおかずを分けてもらったんだが、きちんと褒めたぞ。
事実、美味かったし、心にもないお世辞を言ったつもりもない。
王子様もいつも通りトロリと笑っていたし、変なことはしていないはずだ。
一瞬不安になるが、王子様の雰囲気は深刻ではない。
どちらかというと、かしこまった感じというか、珍しく物怖じした様子でもじもじしていた。
うっすらとほっぺたが桜色に染まっている。
「その、次の休みなんだけど……」
ああ、なるほど。
「そうだな」
王子様の言わんとしていることくらい判るぞ。
「約束したからな。
行くか、デート」
「うん!」
王子様が力強く頷いた。
せっかく晴れて恋人同士になったのだから、オレも行きたい。
週末はだいたい一緒にいるが、カレシカノジョとして遊びにいくのだ。
感慨も一押しだろう。
「アーケードの甘味処はね、行ってみたかったんだ。
付き合ってなかったとしても、キミと一緒にいくつもりだったけどね。
ふふ、それが恋人として一緒に行けるんだ。
なんとも嬉しいじゃないか。
しかも……しかもだ!
あんみつとぜんざいを食べさせあいっこしてくれるんだろう?
いかにも恋人らしくてテレてしまうね!
周囲に見せびらかすし、見せつけるし、ひけらかしてしまうぞ!」
そうだった。
いや、忘れていたわけではないけど、こんなに早く行くことになるとは。
オレと王子様の関係が変わったことは、もっと穏便に周知する予定だったんだがコイツの暴走の所為というか、お陰というか、あっという間に学校中に広まってしまった。
今更見せつける必要もないはずなんだが、王子様はノリノリだ。
これで否定などしようものなら、またどろどろとした湿った感情を溢れさせた王子様にクスリでも盛られかねない。
まぁ、オレも王子様とは遊びに行きたいので構わないのだ。
ただ、王子様の行動が予想できない。
甘味処で食事をするだけで本当に終わるのか?
王子様ご所望の甘味を食べさせあうのはもちろん構わない。
ら、ラブラブでいいじゃないか! オレだっての、ののの……望むところだっ!
王子様からのスキンシップは普段から過剰気味だったのだ。
それが恋人同士になったことで、さらに学園というある意味顔見知りしかいないような空間から開放されて、王子様がどれほど過激なことをしてくるのか……
漆塗りの弁当箱を片付けている王子様を、オレはまじまじと見つめてしまった。
「ん? どうしたんだい?
あぁ、今から休みの日のことを考えているんだろう?
ボクも楽しみだよ!」
屈託なく笑いかけられてしまった。
ちょっと後ろめたい気持ちが湧いてくる。
王子様の言う通りだ。オレもただただ楽しみにすればいいのだ。
「ふふ、もちろん、キミへのご褒美も忘れてないよ?
食べ終わったら、さっさとキミの部屋かボクの部屋へ行ってしまおう!
調べたらわかったんだけど、ラブホ……シティホテルの学生だけでの利用は不可なんだ。
よくよく考えてみれば宿泊施設の利用だって保護者の同意書が必要なんだから当たり前だよね。
これは盲点だったよ。
まぁ、逢引に利用できる場所が一箇所減ってしまっただけだから基本的に問題ないよね?
ボクの部屋だったらいつでも大丈夫だし!」
……そう、楽しみにすればいいのだ!
~つづく~