黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
そんな感じで休日が来た。
カラッとよく晴れたデートをするにはもってこいの陽気だ。
オレは駅前にある噴水の前で王子様がやってくるのを待っていた。
王子様がどうしても待ち合わせがしたいと、強硬に主張したのでオレは素直に従ったのだ。
いつもならお互いの家の前で落ち合うか、早く準備ができた方が呼びに行くといった感じなんだけど。
おそらくデートっぽくしたかったのだろう。
紛れもなくデートではあるのだが、付き合う前と同じように家の前で落ち合って目的地に向かう……なんてことをしたら情緒がなさすぎだ。
この程度の可愛いワガママならいくらでも付き合ってやるさ。
で、ここからはオレの主張だが、オレよりも絶対に後から待ち合わせ場所に来るようにお願いした。
それはもう強く強くお願いした。
もはや厳命だ。
王子様は不思議がっていたが、オレ同様素直に頷いた。
そして、オレは王子様に促した通り、先に待ち合わせ場所に来て待っているのだ。
王子様とうかつに待ち合わせなんてしようものなら、王子様のことだ……
平気で数時間前に待ち合わせ場所に来て待っていそうじゃないか?
それは避けたい。
アイツが年上の女から逆ナン(?)されるのを何度も目撃しているのだ。
なんとしても避けたい!
あとは、その……あれだ。王子様と付き合い始めたのだから、カノジョがナンパされるのは嫌だ。
とにかく嫌だ!
これは王子様に悟られると、調子に乗られそうなので気づかれないようにしないと……
そんなことを考えていると、あと数分で待ち合わせの時間だ。
来る方向は分かっている。そちらの方を向くと、王子様が歩いて来るのが見えた。
「う、お、おぉ……」
思わず変な声がでてしまった。
遠目でも感じ取れる存在感。道行く人達が王子様へと振り返る。
オレは言葉を忘れてしまったように何も言えず、王子様がそばに来るまで固まっていた。
「おまたせ。
キミの要望通り後から来たよ。
道すがら考えていたんだけど、もしかして……ボクと待ち合わせすると何時間も前から待っているんじゃないかとか考えていたのかい?
そして、その間にナンパされたりするのが嫌だったのかな?
ふふ、だとしたらこれからは時間通りぴったりに来るか、家から一緒に出かけることにしようか?
デートならやっぱり待ち合わせしたいって思っていたけど、キミを心配させるなんてのはボクの本意ではないからね」
きっちりとオレの真意を読み取られてしまったが、それどころではなかった。
「お、お、お……」
涼しげな白のワンピース。スカートが軽やかに風に揺れる。午後の日差しを反射して羽のようにひらめいた。胸の下にあるリボンがワンポイントだ。
大きめのボタンが可愛い薄いベージュのカーディガンを羽織り、肩を隠している。王子様の細い肩が隠れていなかったら気が気でなかったかもしれない。
足元を飾る黒のサンダルは厚底で、アンクルストラップがきゅっと王子様の足首に巻かれて、足の細さを際立たせている。黒革と王子様の白い肌のコントラストがオレの性癖を見事に抉ってきた。
普段と違う王子様の可憐な出立ちに言葉を失う。
シンプルな格好だが、王子様によく似合っていた。
鳩尾の辺りにあるリボンでただでさえ大きい胸が強調されてしまっている。
腰の位置が高い。
スラリと伸びた足が美しい。
こ、これでは王子様なんて呼べないぞ。
どこからどう見ても女の子だ。
いつものパンツスタイルはどうした!?
完全に油断していた。一気に心拍数が跳ね上がる。
バカみたいにあんぐり口を開けて固まってしまったオレへ、ニヤリと笑いかける王子様。
「ふふ、可憐なボクを見て緊張してしまったのかな?
さぁ、これがキミの待ち侘びていたカノジョだよ?
何か言うことはないかい?」
そんな仕草は王子様らしくて、ちょっとだけ安心してしまった。
「あ、あぁ……」
ようやく石化状態から脱して、オレは王子様へ言葉を返した。
きちんと褒めるぞ。
今日は王子様がどんな格好で来ようとも褒めると決めていたのだ!
「か、かか、可愛くてなにも言えなくなってた。
あー、その、なんだ……可愛い!」
誤謬力なさすぎ!
まだ緊張しているのか、言葉がうまく出てこない。
「ふふ、ありがとう
キミも素敵だよ」
しかしそんなオレに対して、心から嬉しそうに王子様がはにかんだ。
オレも今日は精一杯オシャレしてきたのだ。
コイツも緊張してたのかな。
普段ならもっと大袈裟に芝居がかった仕草で、喜びを表現しただろう。
そんな王子様を見てオレもようやくリラックスできた。
「ああ、女子っぽくてびっくりした」
いつものように軽口も出てくる。
「む、なんだよ、女子っぽいって!
正真正銘、ボクは女の子だ!」
ギュッとオレへと飛びついてきて、耳元で囁かれた。
柔らかな胸が当たって、不覚にもドキッとする。
「……知ってるくせに」
思わせぶりな流し目を送りつつ、王子様はすぐにオレから離れた。
オレの手を取りしっかりと繋ぐ。
「さぁ、行こうか!
今日はキミの奢りだからいっぱい食べてしまおうかな?」
「約束だから構わんが……太るぞ」
意趣返しのつもりはないんだが、とりあえずつっこんでおいた。
コイツは胸以外の肉はホントに薄い。多少体重が増加したところで、スタイルにはまるで影響ないだろう。
王子様は頬を膨らませ、オレへとしがみついてくる。
「む、だったら食べ終わったら運動しないといけないね?
付き合ってくれるかい?」
王子様から、なんとも意味深な言葉を送られる。
強調された胸の谷間に、オレはゴクリと生唾を飲み込んだ。
「ふふ、何を想像したのかな?」
「あ、う……」
もちろんエロいことだ!
昨夜も王子様とはいろいろ致してしまっているし。
脳裏に、白く健康的な王子様の肢体が浮かんでしまう。
「まったく、キミには困ったものだよ?」
またもや王子様はオレの耳元へ口を寄せてきた。
「キスマーク、隠すの大変だったんだからね」
よくよく見てみれば首筋に絆創膏が貼られていた。
これはこれで露骨なのでは……?
王子様は、クスクスと笑ってオレと手を繋ぎ直した。
指同士が絡み合って、王子様のしっとりとした手のひらにドキドキしてしまう。
あまつさえ、さっきよりも強く腕が組まれて、王子様はオレへとしなだれかかる。
肘関節が若干極まっているような……
「ちょっ!?
……今日のオマエ攻めすぎだって!」
「ふふん!
それくらい嬉しんだよ?
ボクが何年待ったと思っているんだい?」
「……そうだな」
オレも嬉しい。
「甘味処まですぐだけど、ゆっくり歩こうか?
その間、ボクはキミのカノジョとしての立場を満喫させてもらうよ?」
「お、おう」
さっきからまともな返事ができていないが、オレと王子様はそんなべったりとした距離感で甘味処へ向かった。
これ……側から見たら相当なバカップルなのでは?
~つづく~