黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
「夏だな」
「夏だね」
昼休み。
灼熱の日光を木陰で避けながら、王子様お手製の弁当を広げて、オレと王子様は同時につぶやいた。
気温こそ高めだが、今日は湿度が低い。
時折、風が吹いてきて日陰にいる分にはそこそこ心地よい。
弁当もあらかた片付けて、王子様が水筒から冷えたお茶を注いでくれた。
「はい、どうぞ」
「さんきゅ」
王子様は自分の分もお茶を入れて、美味しそうに口をつける。
なんというか、お茶一つ飲むだけなんだが仕草が上品だ。育ちの良さがうかがえるな。
オレとは大違いだ。
「どうしたんだい?」
「いや、なんでもない」
まぁ、つっこむほどのことでもない。オレは王子様から受け取った茶を一口飲んだ。
よく冷えていてほのかな甘味と渋み、香気が鼻に抜けて大変よいお手前だ。
ペットボトルのお茶だって十分に美味いんだけどね。
お手軽だし。
しかし、わざわざ水筒に用意するあたり実に王子様らしい。
オレの体内に入るものは全て、自分で管理しないと気が済まないという意気込みを感じる。
もうちょっとこう……手心をくわえてもらってもいいんだけども。
「うん? 咥えるのはアレだけで十分だろう?」
「な、何も言ってないぞ!」
「ふふふ、キミの考えていることは大体わかってしまうんだ」
茶を飲んでいただけなんだが……何をどうしたら察せられるのか!?
「それで?」
「ん?」
「夏だよ?」
「あぁ……」
さっきのつぶやきか。
日差しの強烈さに思わず漏れてしまっただけなんだが。
「夏といえば?」
「あー、えっと、スイカ?」
「キミの好物なのは知っているけど、食べ物からは離れよう?」
「んじゃ、花火とか?」
「悪くないね。
ボクの浴衣姿を見たいってことだろう?」
「見たくないと言えば嘘になる」
「ふふ、素直に見たいって言ってくれよ?
浴衣姿のボクに口に出すのも憚られるようなことをしたいんだろ?」
「そんなこと思ってねぇよ!」
「じゃあ……しない?」
「……む」
しない、と言い切れないのが辛い所だ。
というか、王子様の浴衣姿は毎年見ているけど、今年はその……関係性が変わったから……
「さぁ、想像してみてくれ!
下駄の歯が鳴らす、カランカランという音にキミは振り向く。
そこにいるのは、普段とは違うしっとりとした雰囲気をまとわせたボクだ。
今年の浴衣は白地に金魚の模様をあしらった少し艶やかな意匠だよ。
キミはボクから目を離せず、その目が追う先にはボクの輪郭をなぞるように布が落ち、身体の線はより際立つ。
腰のくびれは帯に隠れてしまっているけど、否が応でも想像させられる。
なんせキミはよくよく目にしているからね。
そこから下半身へと流れる曲線は浴衣の白さで強調されてしまうんだ。
昨夜も散々小突き回してくれたお尻の形に、キミの下半身はあっという間に熱くなって……」
「わ、判ったからっ!
すごく想像できたから!!」
学園内で硬くしているところを目撃されてしまったら、ただでさえ微妙なオレの評判が大変なことになってしまう!?
「花火はちょっと先だけど、楽しみにしていてくれ」
「わかったわかった」
オレをやりこめて満足したのか、王子様は上機嫌だった。
……楽しみにはなった。
「他にはあるかい?」
「そうだな……」
夏。
思いつくものはいっぱいある。
だがまぁ、やはりはずせないのは……
「海……かな?」
「うんうん!
やっぱり夏といえば海だよね」
王子様は嬉しそうに頷くと、スマホの画面を見せてきた。
「これは会社の福利厚生の一つだね。
保養施設……というには豪華だけど。
リゾートホテルの宿泊権だよ。しかも食事付き!
キミのご両親も使えるはずだ」
オレの親と王子様の両親は同じグループ企業に務めているのだ。
ちなみにオレの親はグループ末端の子会社で、王子様のとこはグループトップの親会社だ。
「あぁ、なんか言ってた。
でもこれって抽選だろ?
オマエんとこの親は当たったってことか?」
「うん。
キミと二人で使って良いとのことだ。
めったにないチャンスだからありがたく貰っといたよ」
たしかこのリゾートホテルってとてもじゃないが学生が行けるような所じゃなかったはずなんだが。
分不相応じゃないのか?
王子様なら違和感ないかもしれないが、一般庶民丸出しのオレが行ったら……
「大丈夫!
リゾートホテルなんだし、純粋に楽しめばいいんだよ。
それにボクがついているじゃないか!」
「だから、オレの心を読むなと!」
まぁ、いい。正直な所こんなチャンスがなければめったに行けないし、行ってみたいし、何より王子様と旅行というのは胸が踊るものがあるぞ。
「というわけで、水着を買いに行かないかい?」
「む!?」
そう繋げたかったわけか。
去年は受験勉強でプールにも行けなかったしな。
今年は是非行きたい!
カノジョと海に行くなんてサイコーじゃないか!!
「ふふ、鼻の下が伸びてるよ?
何を想像しているんだい?」
「そりゃオマエ……」
ビーチではしゃぐ王子様。
真っ白な肌は日光で輝き、その肢体は弾けるように綺麗なのだ。波しぶきが跳ねて、きらきらと水滴が舞い王子様を濡らす。水に濡れことすらも楽しく、無邪気な笑顔をオレへと向けてくる。
「……はっ!?」
危うくトリップしてしまうところだった。
王子様を見るとオレの考えていたことを見抜いたんだろう、ニヤニヤと笑っていた。
「キミの好みの水着を着たいんだ。
選んでくれよ?」
「いいぞ!」
ど、どんな水着を着てもらおうか!?
ワンピース。
ビキニ。
スポーティなのも似合うだろう。
「決まりだね。
早速放課後、買いに行こうか?」
「……行く!」
~つづく~