黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
そして、やって来たのはショッピングモール!
駅からバスに乗って10分程度の場所にある。
たまに王子様と映画を観に来たりする、学生定番の暇つぶしスポットだ。
施設全体はかなり広めで、典型的な商業施設である。
水着専門店の前までやってきたが、トロピカルで色とりどりの水着に目が眩みそう。
しかも夏らしくセール中で安い!
お客さんはまばらだが、女性客しかいない。男一人でいたら白い目で見られそうだが、隣に王子様がいるからその点は安心していい。
「さて、じゃあ早速選んでもらおうかな?
絆創膏のみとかはやめてくれよ?」
「それは最早水着ではねぇよ!」
……それはそれで見てみたくはあるけども。
叫んでしまったオレへ、王子様が肩を寄せてきた。
「二人きりのときに見せてあげるよ?」
「っ!?」
耳元で囁かれて、あっさりと反応してしまう若さが恨めしい。
王子様は悪戯っぽく笑い、すぐにオレから離れると、さっさと売場へ行ってしまった。
一人にされるとキツすぎるので、オレも慌てて王子様の後を追った。
「ふむ……」
さっきは色使いばかりに気を取られていたが、よく見てみればデザインも多種多様だ。
ビキニと一言でいってもいろいろありすぎる!
フリル付きが可愛い! 肩を露出しているが胸全体をヒダの大きいフリルで覆っている。ハイウエストのショーツは左側に大きな結び目があって左右非対称のデザインだ。
ただでさえ足の長い王子様の足がより長く見えそうだ。
ワンショルダーのビキニだとなんかかっこいいぞ! 健康的なデザインが王子様によく似合いそうだ。
シンプルにトライアングルビキニも素晴らしい。王子様の派手なスタイルには余計な装飾など不要! 布面積が小さめの単色ビキニ(黒)が映えるぞ!!
ぐぬぬ、どれもこれも王子様に着てもらいたい。
「こ、これは……」
オレは思わず震えながらハンガーにかかっていた一品を手に取ってしまった。
その物だけを見れば、Vの字だ。単体では水着には見えない。
スリングショットと呼ばれている水着。
仮にコレを王子様が着たとする。
正面の大事な部分こそ隠しているが、そのシルエットは全裸にしか見えないぞ。
後ろ姿はもっとえげつない。背中も腰も丸見えになってしまうじゃないか!
前面のV字の布をちょっと左右に引っ張っただけで、王子様の……
「……キミ、ちょっと目が血走りすぎだと思う」
「はっ!?」
王子様の呆れた声に我を取り戻した。
これじゃほぼ変質者じゃないか。
「んん! おほん!」
オレはわざとらしく咳払いして、その水着を元に戻した。
……くっ!
王子様がオレの様子をにまにまと見ているのはしゃくだが、事実として言葉にしてしまったら発禁されかねない妄想をしてしまったので、何も言い返せない。
「ふふ、随分真剣に悩んでいたみたいだけど、選ぶことはできたかい?」
「こ、これだ」
オレは悩んだ末に選んだ水着を王子様に手渡した。
ガン見していたのは、王子様が着てみたところを想像してしまった上に、想定以上に捗ってしまったが故だ。
「じゃあ、試着してくるよ。
試着するだけなら無料だし、他にはないのかい?」
「……」
一瞬よりも長い時間、先ほどのスリングショットが脳裏をよぎって居残り、オレの脳細胞をピンク色に染め上げる。
フリーズしてしまったオレを見て、王子様はにっこりと笑いスリングショットを手に取った。
「ほら、試着室まで一緒に来てくれよ」
「お、おい」
水着を何着も持ちつつ、王子様はオレを試着室まで引っ張ってきた。
試着室は全部で5部屋。ごく普通の試着室だ。たまたまなのか全部空いている。
「ほら、着てくるから前で待っててくれ。
……一緒に入るかい?」
「入れるかっ!」
お店には他のお客さんも大勢いるし、店員さんだっているんだぞ!
「今なら誰もいないよ?」
「……だ、ダメだ」
「そうだね?
家に帰れば好きなだけ見れるものね?」
「いいから!
さっさと着替えてこい!!」
「ふふ、なんだい?
そんなに早くボクの水着姿を見たいのかい?
しょうがないなぁ?
では待っていてくれ」
王子様はオレの内心を見透かしたように目を細めてから、試着室のカーテンを閉めた。
「……ふぅ」
カーテンの向こうから衣擦れの音が聞こえる。
王子様が夏服を脱いでいる音だろう。
む、これはおそらくブラウスのボタンを外す音だな。
トサっとスカートが床に落ちる音。
さらに立ったまま靴下を脱ぐ気配。
プチッと音がした。この音は間違いなくホックを外した音だ。しかもフロントホック。
そして最後に……
「今、パンツを脱いだよ」
「報告しなくていいからっ!」
カーテン越しに報告してきた王子様へ思わず叫んでしまった。
さらに今度はゴソゴソと水着を身につける音が聞こえてくる。
うっすら頬を染めた王子様が、カーテンから顔だけ出してきた。
「着替えたよ」
「お、おう」
なぜかちょっと緊張してしまう。
「最初は何だと思う?」
「……ビキニ?」
「正解だ。
じゃーん、どうかな?」
カーテンを開けて、王子様が惜しげもなくその奇麗な肢体をオレへと見せつけてきた。
「う、おぉ……」
淡いピンク色の可愛らしいデザインのビキニだった。
トップスの胸元には控えめなフリルがあしらわれていて、十代少女が着用するのに相応しい控えめな装飾なんだが、大きな胸がはち切れんばかりに水着を押し上げていて、可愛いのにエロいという最早暴力だ!(混乱)
ボトムスにも同様のフリルが飾られていて、腰回りが華やかだ。露出度を抑えつつも可愛らしく演出されている。
引き締まった腹筋とくびれたウエスト。胸は大きいのに肋骨は浮き出ている。
あ、昨日つけてしまった痕が……
「さぁ、感想を言ってくれよ?」
「……可愛い。
その、なんだ、えっと、すげー可愛い!」
なんだこの語彙の無さは!
しどろもどろに答えるオレに、王子様は不満を持つどころか満足そうだ。
「ふふ、語彙を失うほど胸に来たってところかな?
十分にキミの心情は伝わったよ?」
「あ、あぁ……」
これはヤバいな。
オレの心理状態を王子様にきっちりと読み解かれてしまっているが、恥ずかしさを感じることすらできない。
正直な所、一発目からかなりヤラれてしまった。
「よし!
じゃあ、次だ。
少々待っていてくれ」
再びカーテンが閉ざされて、水着を着替える音が聞こえてくる。
「ふふふ、これはなかなか刺激的だね。
これを見せてしまったら、ボクはキミに襲いかかられても文句は言えないかもしれないよ?」
カーテン越しに話しかけてくる王子様にオレはごくりと生唾を飲み込んでしまった。
そ、そんなに……?
こんな場所で襲いかかるようなことはしないが、いったいどんな水着を着てるんだ。
「うん、こんなところかな?
カーテン開けるよ―?」
「わ、わかった!」
シャッとカーテンが勢いよく開いた。
「ぉお、おおおお!」
試着室の中に居る王子様から目が離せなくなってしまった。
極めてミニマルなデザイン。股か……フロント中央からストラップが左右の肩へ伸びて、背中へと続いている。
かろうじて大事な部分は隠されているが、ちょっと動いただけでいろいろまろび出てしまいそうだ!
オレがさっき見ていたスリングショットなど比べ物にならないほど布面積が少ない。
ほとんど紐じゃないかっ!!
背後の鏡に映る王子様の背中が白く艶めかしい。
オレの内心に答えるように王子様がその場でくるりと回転した。
「ちょわ、わーっ!」
慌てて周りを確認するが、さっきから誰も居ない。
よかった。
ほとんど丸出しで、白桃のような王子様の尻がさらされてしまっている。
「ふふ、さすがにこれは恥ずかしいね?」
血走った目で見ているであろうオレの視線を焦らすように、王子様は豊かな胸と、その……下の方を隠してしまった。
オレは無言でカーテンを閉めた。
誰か来たら困ってしまう、オレが!
バクッバクっとやかましい心臓を落ち着けるようにため息を吐いた。
「それ、海に着ていくのはやめろよ?」
「わかってるよ。
さすがにこれはね……
見せるのはキミだけにしておくよ。
でも、目的地のリゾート施設には貸切プールがあるんだよね?」
……それなら、王子様と二人きりだしアリか?
「ふふ、迷っているね?
キミの性癖ど真ん中だろう?」
「ぐっ……」
正直に言えば、太陽の元、陽光で輝くスリングショットを着た王子様を見てみたい!
夜でもいい! ナイトプールのきらびやかにライトアップされた照明に照らされた王子様も魅力的だろう。
悶々と脳内映像を再生させていると、カーテンの向こうから王子様が告げた。
「じゃあ、次で最後だ。
最後は大人しめだよ?
これ以上露出が増えると、ホントに絆創膏だけみたいになってしまうからね?」
「い、いいから!
オマエが着れば大概のモノは可愛いから!!」
「ふふふ、その言葉は嬉しいよ?」
思わず本音が漏れてしまったが、たった二着でお腹いっぱいだ。
スリングショットは脱ぎやすいのか、衣擦れの音はほとんど聞こえてこない。
つまり今カーテンの向こうにいる王子様はあっさりと全裸だ。
そして、今度は水着を着込む音が聞こえてくるが、なぜか王子様の逡巡する声が……?
「む、これは……ちょっと」
「どうした?」
「いや、なんでも……ない」
言葉に詰まりつつ、苦しそうだが大丈夫か?
カーテンを開けるわけにもいかず、オレがやきもきしていると、またもや王子様がカーテンから顔だけをだしてきた。
「その、えっと……」
なぜかバツの悪そうな表情で顔が赤い。
「だ、大丈夫か?」
「あ、うん。
大丈夫なんだけど大丈夫じゃないというか。
あの、その……」
心配そうなオレに、王子様がおずおずとカーテンを開いた。
今度はワンピースタイプの水着だった。
決して大人しいデザインではないぞ。へその所は菱形に空いているし、脇から背中にかけて大胆に肌を晒している。
しかし問題はそこではないっ!
「ちょ、おまっ!?」
「ぜ、全部入らないんだ」
王子様のはち切れんばかりの胸部が水着の中に収まりきっていない。
というか、大事な部分がはみ出て、溢れて、零れ出てるじゃないかーっ!
「お、わーっ!」
思わず、見えないように王子様の”それ”を鷲掴みにしてしまった。
「あん!」
王子様の悩ましい声を聞きつつ、オレは慌てて王子様を試着室の中に押し込んだ。
勢いでオレまで中へと入ってしまう。
そのタイミングで女性客の黄色い声が聞こえてきた。
――まずいっ!――
更に慌ててカーテンを閉める。
王子様と抱き合う形になってしまった。せまい試着室の中。お互いの鼓動が聞こえてくる。
オレの心臓は焦りとこの状況のせいで、全力疾走した後のように荒ぶっていた。
折り悪く外の女性客も複数人のようだ。水着をとっかえひっかえ試着しあっているのか盛り上がっている。
「(お、オマエ、もっとサイズ大きいのなかったのかよ?)」
オレは小声で王子様へ訪ねた。
「(ん、はぁ……
えっと、これ以上大きいと……ふぁ!
む、胸以外がぶかぶかになってしまって……)」
王子様も小声で返してくる。
しかし、なんか様子がおかしい。
お互いの息がかかるような距離だ。当然オレと王子様は密着している。
水着に収まりきらない王子様の大きな胸は、オレの方へと押し付けられ柔らかく潰されていた。
心なしか王子様も息が荒いぞ。
「(あぁ、そんなにぎゅってされたらボク……)」
緊張からか王子様を全力で抱きしめてしまっていた。
王子様の潤んだ瞳がオレを見つめる。
オレの背中に回された王子様の手に力がこもる。オレのワイシャツをぎゅっと掴んで離さない。
「(こんなの、こんなの……)」
王子様の艷やかな唇が小さく動く。
「(ボクの大好きなシチュエーションじゃないかぁ!)」
蕩けるように甘い声で言うが、声量は小さい。
オレのシャツへ顔を押し付けて、思いっきり深呼吸する王子様。
「(あぁ、ボク、もう我慢できない。
き、キミも悪いんだよ?
こんなところで急に……ぎゅってするから!)」
「(ちょ、さすがにまずいって!)」
確かに王子様の好みそうな状況だ。
極小の空間に二人で密着。半裸の王子様を抱きしめるオレ。外には人。バレたらやばいシチュエーション。
バレてヤバいのは、主に男のオレだし!
「(よし、帰ってからな?
せっかくだし、家でも水着を着て見せてくれよ、な?)」
なんとか王子様をなだめなければ!
王子様の暴走具合は、ここでは行っちゃいけない方向に突っ走っている。
今もオレの首筋に鼻をつけて、汗ばんだ肌をすんすんしているし!
そんなオレの動揺を無視して王子様ははっちゃけ続ける。
「(ちょっとだけ、ちょっとだけだから!
全部ボクがしてあげるから!
大丈夫、ほんの数分だ。
その間だけ声を我慢してくれ)」
「(そんなに早くねぇ……んぅ!?)」
問答無用で王子様に唇を奪われた。
水着もズレて、いつの間にか全部
「(お願い)」
「あ、ぅ……」
あぁ、蕩けた顔の王子様に判断力が根こそぎ奪われていく。
ねっとりと絡みついてくる王子様自身に、ダメだとは判っていても抗えない。
「(い、一回だけだからな)」
「(うん……)」
王子様の声を押し殺す表情と、危険なシチュエーションとで、確かにいつもよりも早かった。
水着は全部購入する羽目になってしまった。
店員さんは澄ました態度を取っていたけど、気付かれていたような気がしてならない。
き、気のせいだと思いたいが……
ちなみにフリルの付いたビキニは王子様、ワンピースタイプは折半、スリングショットはオレが出した。
布地が一番少ないスリングショットが一番高いのはなぜだろうか?
まぁ、いい。
「オマエ、さすがに今回のはやばかったぞ」
「ふふふ、すまない。
キミが、密室に半裸のボクを押し込んだ上に突然抱きしめてきたものだから」
まるでオレのほうが悪いかのようなんだが、嘘が一つもない!?
つやつやとした王子様は終始ご機嫌だ。
下腹部に手を当てて、満足そうなのもげせん!
反面オレはげっそりだ。さすがに心臓に悪すぎる。
あとなんか疲れたし!
「突かれたのはボクのほうだけどね?」
「だから心を読むんじゃねぇよ」
「しかし、素晴らしい体験だった!
そう思わないかい?」
「知らんわ」
「キミだってノリノリだったじゃないか、最後の方は」
「……そ、そんなことないぞ」
大興奮でした。
「うん、でもあんまりキミに迷惑かけるのもね?
店員の方にも申し訳ないし。
なるべく今後は気をつけるようにしようか?」
「なるべく、だと困るんだが……」
王子様はかっこよく髪を掻き上げて、さらにかっこよく笑顔を浮かべた。
「さて、帰って夕餉にしようか?」
無視すんじゃねぇよ!
「あ、ちなみにキミの分はボクが選んでおいたからね?
さっきの約束通り家で着てみようか」
「え? オレの分?」
「うん。
当然だろう?
あぁ、サイズは把握しているから心配いらないよ?
ボクの分はキミが選ぶ。
キミの分はボクが選ぶ。
すごくいいね? ふふふ……」
「オマエ、どんなの選んだの?」
褌とかじゃないだろうな?
「それは帰ってからのお楽しみにしようじゃないか?」
なんとも含みのある言い方だ。にんまりと笑う王子様が不吉すぎる。
いったいどんなの選んだんだよ。
「あ、それと実はキミの好きそうなセクシーなビキニがあったから念の為買っておいたよ。
すごく安くてお得感があった。
これも後で見せてあげよう。
ちなみに白だ」
「ほほう!」
あ、そうだ。これは言っておかねば。
「海、行ったらさ」
「うん?」
「オマエ、パーカー着てくれ。
あと下はホットパンツかショートパンツで」
「ふふ、理由を教えてくれるかな?」
王子様は全部判っているくせに、理由をオレから言わせたいのだ。
「あー、えっと、日焼けが心配だから?」
「じゃあ、サンオイルを塗ってくれよ。
これはこれで垂涎のシチュエーションだろ?」
くっ、まったく否定できないし、できれば塗りたい、たっぷりと!
「さぁ、理由がなくなってしまったね?」
「あー、その、なんだ……」
「うんうん!」
「わかったよ、言う!
オマエの肌を他の人間に見せたくない!!」
王子様は満面の笑顔だ。
「承知したよ。
あぁ、キミの独占欲のなんと心地良いことか!
これは帰ったらご褒美をあげないといけないね?」
……お?
「絆創膏とか……どうだい?」
「是非お願いしますっ!!」
王子様は鷹揚に頷いて、オレの腕に抱きついてきた。
「ふふ、キミの水着姿を見るのも楽しみだね?
ボク好みのカッコいい水着を選ばせてもらったよ?」
男の水着姿に需要などないと思う。
ちなみに、王子様が選んだ水着はけっこうエグ目のブーメランパンツだった!
こ、コレを着て海に行くことになるのか……
~おしまい~