黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
「はー、スッキリした」
昼休み、王子様お手製の弁当を食べ終えて、オレがトイレから戻ってくると教室の一角に人だかりが出来ていた。
人だかりを作っているのが全員女子ってことは、王子様が関わっていそうだな。
背伸びをして覗いてみる。
壁に背中を預けているモブ女子2。その前に立つ静かに立つ王子様。
モブ女子2の名前はあんまり覚えていないが、たしか王子様のファンの一人だったはずだ。
王子様が軽く髪を掻き上げる。
それだけの動作で周りと取り囲む女子たちがざわつくのが見えた。
スラリと伸びた女子にしては高い身長。足は長く、腰は細く、胸は大きい。
それでも王子様と呼ばれる所以は、その所作にある。
まるで物語から飛び出してきたかのような涼やかな容姿と女子が好みそうな立ち居振る舞い。
「さぁ、心の準備はできたかい?
これ以上キミの時間をボクのためなんかに使わないでくれるかな?」
セリフ選びまで完璧……ではないな? モブ女子2には笑いかけているけど、なんか怒ってる?
まぁ、後でわかるだろ。
モブ女子2が頷くと、王子様が一歩踏み出した。
王子様の右手が伸びてモブ女子2の顔の横に、勢いよく王子様の手が伸ばされた。
「キミ、ボクのこと好きだろ?」
切れ長の目を細めて薄く笑いながらセリフを吐く王子様は、俳優も立派に務まりそうなほどキマっている。
なるほど、アレが壁ドンってやつか。
王子様は身長が高めだからな。クラスの女子相手だと壁際に追い詰めている感がすげー出る。
イケメン具合も相まってか、壁ドンされている女子は真っ赤で言葉もでない。
代わりに周りを取り囲んでいる女子から黄色い悲鳴が上がっていた。
「……っ、次は誰だい?
昼休みももうすぐ終わってしまうからね。
あと一人か二人くらいかな?」
取り巻き女子たちへさわやかに笑顔を返しているように見えるが、内心では結構しんどそうだ。
オレ以外は気づかないだろうけど、王子様けっこう苛ついてるぞ。
しかしそこは慣れたものなのか、王子様は内心のイラつきなどおくびにも出さない。
王子様のイケメンムーブは久々に見たが、やはりカッコいいね。
仕草の一つ一つが計算されつくしたように、女子の理想の動きだ。
表情の作り方もこれまた完璧で、女子達を惹き付けてやまない。
実際は嫌々――とまでは言わないが、あんまり乗り気ではなさそうだ。しかしそれでもここまで女子ウケすることをやってしまうあたり長年のイケメンムーブがまだまだ抜けきっていないのかもしれない。
こんなことなら、気を使っておやつ(きんつば)など買ってくるんではなかったなぁ。
まぁ、昼休みも後数分だ。授業が始まれば否応なしに、あの変なイベントごっこも終わりだろう。
オレが戻ってきたことにすぐさま気づいた王子様が、ちらりとこちらへ視線を向けてきた。
アイコンタクトってやつだ。
オレが買ってきたおやつにも気がついたのか、ちょっと申し訳なさそうだ。女子たちからの頼みを断りきれなかったんだろうな。
別に気に病む必要はないし、きんつばは逃げない。
「ふむ……」
よし、後から王子様を労ってやろう。
そんなことを考えていたら、チャイムが鳴った。
昼休みの終了だ。
短い時間だったはずだが、開放された王子様の表情からストレスの度合いが見て取れる。
王子様はその端正な顔立ちに、うっすらとした微笑を湛えてはいるが、笑顔が張り付いたように動かない。
オレの方へと歩いてくる間も、ピクリともその表情から動かない。
まったくもって動かない。
うぉ……これはかなりストレス溜めたな。
オレが席を外した時間なんて十五分もないはずなんだが。
王子様は固まった笑顔のまま、オレの前の席に腰を下ろした。
「おつかれさん」
「放課後、ちょっと付き合ってくれ」
「ん? 了解だ……って!?」
教師が教室に入ってきた瞬間、王子様がひらりとスカートを捲り上げた。
……白のレースか。
「じゃなくて!」
一瞬の出来事ではあるし、周りにバレるようなヘマをする王子様ではないが……
これはあれか?
一種のストレス解消なのか?
~つづく~