黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
「はー、スッキリした」
「そりゃよかったな」
ほっぺたをツヤツヤさせながら洋々と宣う王子様に、オレは釈然としないものを感じながら返事をした。
昼休みに溜めに溜めた王子様の不満は解消されたようで何よりだが、腑に落ちない。
屋上で過ごした時間はなんだかんだ長くなってしまい、すっかり日は落ちて夕暮れと言うよりももう夜に近い時間だ。
王子様と盛り上がってしまった結果、学園が閉鎖されるぎりぎりの時間になっていたのだ。
やばいやばいと、王子様と身だしなみを取り繕って、慌てて学園から出た頃にはとっぷりと陽も暮れていた。
男のオレの準備はあっさり完了したが、王子様なんかリボンタイを結ぶことすらできなかったからな。
リボンがないと王子様の緩い首元が気になってしょうがない!
王子様は片手に持ったリボンタイをくるくる回しながら、のんびり歩く。
そんな帰り道。
「オマエ、絶対なんかしたろ?」
自分で言うのもなんだが、屋上でのオレは何かおかしかった。
なんと言ったらいいか、心が覚束ないというか何かに憑依されたような?
操られた……とまでは言わないが。
「ふふ、さっきから言ってるだろう?
ボクは何もしてないよ?
アレはあくまでキミの意思であり、希望だったんだよ?
そう!
キミは学園内でボクを徹底的に蹂躙したかったんだ!!
怯えるウサギさんを丸呑みにしようとするオオカミさんのようにねっ!」
「くっ、にわかには信じがたいんだが……」
王子様を美味しくいただいてしまったのは動かしようのない事実だ。
あのときのオレは、なんか頭にモヤがかかったように精確な思考を行えずに、ただただ本能というか欲望というか、とにかく目の前の手折られることを待ち望む王子様を我慢できなかったのだ。
あと、なんでさん付けなんだ!?
「まぁまぁ、いいじゃないか。
ボクはキミから迫られて、嬉しかったし、楽しかったし……気持ちよかったよ?
キミはどうだい?」
「……誠に遺憾ながら楽しかった」
あと当然気持ちよかった!
校舎の屋上ってのがこれまた燃えるシチュエーションで……
遠くから聞こえる部活動の声。
夕方の太陽は紅く、王子様を照らす。
その表情が赤いのは太陽のせいなのかそれとも……
「……はっ!?」
「ふふ、何を考えているんだい?
まぁ、重畳だね。
ボクも嬉しい誤算だったよ?」
「……ん?」
誤算?
「キミがけっこう役割にハマってしまうタイプだったのは新しい発見だよ?
まったくこれだけ長い付き合いなのに、まだまだキミのことで知らないことがあるんだね?
ボクとしては嬉しい限りだ!」
役割にハマる?
「うん、特定の人格とか役柄とかを演じているうちに、その役の特徴が本来の思考とか感情とかに影響してしまうってヤツだね。
キミは意外と役からの影響を受けやすいのかもしれない。
これは今後の
なんか聞いたことあるな。与えられた役割に没入しすぎてしまうって話。
あと
「……スタンフォード監獄実験?」
「そう、そんな感じ!」
看守役と囚人役に別れた人間達が、たった数日で役に没入してしまって、看守役は看守に、囚人役は囚人になりきってしまったとかいう実験だったはずだ。
今回で言うなら、オレは壁ドンしただけなんだが、壁ドンしそうなキャラクターになってしまった?
「俳優でもあるらしいよ。
演じていた役に没入してしまって、思考、態度、感情など私生活にも影響してしまうとか」
オレが持っている壁ドンしそうなキャラクター観といえば、やはり格好良く、何事にも自信があり、他者を引っ張っていくような……まんま王子様じゃないか。
「ボクがなにかしたとしたら、キミに壁ドンをお願いしただけ……かな?」
確かに思い当たるフシはある。
何度か壁ドンでセリフを繰り返すうちに、なるべくそれっぽく振る舞うようにがんばってしまった。
壁ドンしたらそのまま流れで……って感じは何かの漫画(エロ)で見たことがあるかもしれない。
「……ってことはオマエにその……襲いかかっちゃったのは、オレ自身が役を演じきったせい?」
「まぁ、そうなるね?
キミの中に
それに関してはまったく否定できない。
王子様が壁ドンのシチュエーションを何度もおねだりしてきたのって、オレを役に没入させるためとかないだろうな?
「もしくはキミの新たな一面が発露してしまったのかもしれないね?
今後は学園でもキミから求められてしまうことを想定しなくては……」
王子様が嬉しそうに何やらシミュレーションし始めた。
「そんな心配いらないから!」
「常在戦場。
心は常に勝負下着だ!」
「意味判らん!」
「む……
じゃあ、実際に勝負下着を毎日身につけるようにするよ?」
「ひ、必要ないから!」
「本当に?」
「……た、たぶん」
正直、自信がないです。
「
「し、知らんから!」
「路地裏とかでも応用できるね!」
「知らんからっ!」
「あ、でも立ったまま前からする場合は、ボクがしっかりとキミに抱きついて、キミが支えてくれれば大丈夫かも?
うん、より密着できるし、選択肢の一つだよね?」
「わ、わかったから!
オマエの言う通りだから!」
「今夜試してみようか?」
「……それはかまわない」
「ふふ、かまわないんだ?」
意味ありげに口元を上げ目を細めて、王子様は柔らかくオレの肩にぶつかってきた。
「そうとなったら、善は急げだ。
夕餉は手早く済まそうかな?
ソーメンを茹でて、作りおきの鶏ハムに香味ソースをかけてPFCバランスを考えて……」
「課題もちゃんとやってからな」
「そうだね。
最近のキミは課題をこなすスピードも以前の倍以上早くなってるからね。
順調に成績も伸びているようでボクとしても一安心だ」
眼の前に最上級で極上の餌がぶら下がっていれば、どんな駄馬だって全力で走るだろうさ。
「全部オマエのおかげだよ」
いろんな意味でな!
「はっはっは!
礼にはおよばないよ。
「
「あ、
ボクにキミの
キミが期待するえっちなことだけじゃなくて。
あ、もちろんえっちなことは大歓迎だ!
でもほら?
えっちなことだとキミとボクの場合等価交換になってしまうだろう?
だからボクへの報酬って意味ではキミの
具体的にはまず、キミの摂取する栄養素はボクがきっちり計算するよ!
もちろんがちがちに管理するなんてことはしないから安心してくれ。
キミの体内に入っていく物をボクが把握できれば問題ないから。
ジャンクフードを食べたってオッケーだよ?
ボクが見ている所ならね?
あとは睡眠時間かな?
まぁでも最近は寝る時間も一緒になることが多いよね?
だって、お互いに力尽きてそのまま寝ちゃうって感じだし!
成長には食事、睡眠、運動、どれも大事だ!
食事はボクが面倒見るし、睡眠時間は一緒だし、運動は……ね?」
「あ、はい……」
重っ!!!!!?
「なんだよー!
ホントは嬉しいくせにちょっと冷たいんじゃないかい?」
「嬉しいけど! すごく大切にされてる感じはするけどっ!
その、なんだ。
ちょっと手心とかあっても……」
「ふふふ、そんなモノはないよ?
キミに対しては、ボクはいつだって全力だ!」
それは痛いほど知っている。
「差し当たっては、今日はがんばってくれたからね?
今度はボクが壁ドンしてあげよう」
さっき壁ドンはされる方が好きって言ってたのに。
「キミにだったら壁ドンしたい!」
「まぁ、いいけど」
「でも、壁ドンなんてまだるっこしいことしないでも、そのままベッドにドンしてもいいだろうか?
ベッドンだね?」
「それは単に押し倒してるだけなんじゃ……」
「よし、帰ったらさっそく試そう!
今日は試すことがいっぱいだ。
こうなったら食事も作っている暇はないね?
店屋物でも取ろうか?」
さっきオレの食事はオマエが管理するって言ったばかりなのに。
「ボクがキミの体内に入る食べ物を確認しているから問題ないよ!」
「さいですか」
~おしまい~