黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
よく晴れた日の土曜日だった。
午前中に王子様と課題を済ませ、昼飯を食べた後、二人で何をするでもなく一緒に過ごす。
麦茶の注がれたグラスには水滴が張り付き、氷が溶けてカランと涼やかな音がした。
オレは漫画を読んでいて、王子様はタブレット端末を熱心に眺めている。
まあ、恋人同士になる前もこんなふうに一緒にいることもあった。
同じ場所にいるだけ。
関係性が変わってとしても変わらないこともあるってことだな。
コミックスを読み終わり、グラスを取りつつ、オレはチラリと王子様を盗み見た。
上は黒のオフショルダー、下はデニムのショーツと、近所のコンビニくらいなら行ける程度のラフな格好だ。
真剣にタブレットを見つめる横顔が、相変わらず凛々しい。
オレと相対する時の王子様はだいたい笑顔なんで、キリッと引き締まった真剣な顔ってのは貴重だったりする。
何をそこまで熱心に見ているかわからないが、眼福だ。
「なぁ、キミのカレシとしての意見を聞きたいんだけど……?」
む、カレシとしてか。
だったら腹を括って答えねば。
……一瞬、盗み見ていたことがバレたのかと思ってドキッとしたが、どうやら違うみたいだな。
「なんだ?」
なんとなく後ろめたい気がして、気持ちを誤魔化すように麦茶に口をつける。
「食ザーっていいよね?」
オレは麦茶を吹き出した。
「げほっ、げほっ!」
「はい、ハンカチ」
むせ返りながら、王子様から渡されたハンカチで顔を拭いた。
「お、オマエ何を言って……」
オレの聞き間違いかもしれない。
ハンカチを返しながら、王子様に聞き返す。
「ふふ、ボクにえっちな言葉を何度も言わせたいんだね?」
聞き間違いではないみたいだな。
王子様はオレの顔を拭いたハンカチを大事そうにしまいつつ、笑顔を浮かべた。
「だから食ザーだよ。
キミ、好きだろ?」
「好きじゃねぇよ!」
王子様が不思議そうに首をかしげた。
その仕草は可愛いんだけど、言った単語がエグい。
「そんなことないだろう?
キミの所持していたコンテンツにいくつかあったと思うんだけど……」
【食ザー】
ザー……は男の出す
「いやいやいや!
そりゃ、コレクションの中にはあったかもしれんが、それだけでオレが好きとは限らんぞ!」
「むぅ、でもキミ……ボクが
「……」
何も言い返せなかった。
「だったら、食ザーも好きなんだと思ったんだけど、違ったかな?」
「あ、う……
そこはほら、ちょっと違うんだ!
食べ物ってのは生産者の方々が心を込めて作ったり育てたりした物であってだな!
それを遊び半分みたいな使い方をするのは間違っていると思うんだ!!
だから食事はきちんと食べないといけないし、粗末にしてはいけないんだっ!
食べ始めるときは、いただきます!
食べ終わったら、ごちそうさま!」
「キミの言いたいことはよくわかるよ?
確かに生産者の人達が一生懸命作ったものを粗末にするのは間違っているね?
でも、ボクにとってはキミが
ふふ、だから食べ物とキミの
ほら、牛乳だって牛の分泌した乳汁でミルクっていうだろう?
キミの精え……出したミルクも特濃ミルクじゃないか!」
「最後の意味わからんわっ!?」
「うーん、キミの所持コンテンツをリスト化した物の中から、キミの好みそうなモノをピックアップしつつ、ボクのツボに突き刺さったことをしたいなぁ……なんて思ったものだから」
タブレット端末で何を見ているのかと思ったが、コイツはあんなに格好いい凛々しい表情でなんてことを考えていたんだ!?
オレのときめきを返してくれっ!
「……ツボ?」
「うん、ツボ!」
まぁ、王子様の日頃の行いからすると納得できないわけでもないが……
「あ、えっと、なんだ、その……なんかいまいちノれない」
「うーん、キミが興奮できないなら意味はないからやめてもいいんだけど。
ボクとしては直接
「あ、はい……」
王子様から『飲ませるのが好き』と言われてしまえば、なんら否定できるところがない。
眼の前のコイツに……王子様にオレのモノを飲ませたときに感じる後ろ暗い悦び。
それだけじゃなくて、顔、胸、腹、尻、もちろん
王子様をオレの汚穢で染め上げたときに満たされる征服感が、たまらなく安心できるのだ。
「どうしたんだい?」
少しばかり考え込んでしまったオレの顔を、王子様が不思議そうに覗き込んできた。
「ふむ」
納得顔の王子様が一つ頷く。
な、なんだ? すごく嬉しそうなんだが!?
「なるほど。
ボクをキミの
15年間、溜まりに溜まったマグマのように熱く滾った情欲をぶつけて、ボクをとことんまで自分のモノにしたいんだろう?
ふふ、大歓迎さ!
15年間溜まっているのはお互い様だろう?
というか、キミのは汚くないよ?
ボクにとってはご褒美だね!
さぁ、周到に容赦なく無慈悲に!
ボクをキミの色に染め上げてくれっ!
成分は水分とタンパク質と若干の果糖とミネラルなんだ。
飲んでも健康に良いかも知れないし、肌に塗っても美肌効果があるかもしれない。
さらにキミの健康状態の判断材料にもなる!
よし、キミの支配欲はボクが受け止めるよ!
綿密に細部にわたり骨の髄まで、ボクの全身余す所なくキミの征服汁を塗りたくってくれっ!!」
征服汁ってなんだよっ!?
「わ、わかったから!
その通りだから、そろそろ勘弁してくれ」
オレの心の内を言語化されてしまい、王子様にいつものように主導権を握られる。
さらに王子様自身も満更ではない……どころか望んでいるのだ。
「ふふ、まったく。
キミは相変わらず遠慮しがちだね?
まぁ、一度火が着いてしまえば、何度もボクを求めてくれるし、ボクが想像もつかなかったことをしてくれるから良いんだけど?」
「あ、いや、う……」
またもや何も言えなくなってしまった。
「そう!
しつこくねっとりと、ボクが泣きながら許してと懇願してもやめてくれず、それどころかむしろ火種に燃料を投下するかのごとく激しく燃え盛ってしまう始末!
やはり雌の見せた弱みなんてのは雄にとって、ぺろりと平らげてしまうためのスパイスにしかならないんだね!」
「そんなに獣じみてねぇよっ!」
「そうかい?
昨夜だって恥ずかしがるボクに、卑猥なポーズをさせたじゃないか?
あんなことをされてしまったらボクのテンションも留まるところを知らないよ?」
「あ、それはその……」
どうしても王子様との夜の運動会は盛り上がってしまうのだ。
こうして後から軽い反撃に合うのもわかってはいるんだが、やはりその時の流れというか興奮というかライブ感というか……そういったものには抗いがたい。
そもそも王子様も理解っていて、オレを誘った上で受け身に周るのだから、我慢できるわけないのだ。
「具体的にはボクをベッドの上でカエル座りさせて、背後からローアングルで見上げて視線で舐り倒すという……
なかなかにマニアックな感じだね!
視線だけでボクはもうめろめろだ!」
「いちいち説明しなくていいから!」
「でも、実際キミに見られただけでボクはすごく熱くなってしまって大変だったよ?
あ!
見られただけってのは語弊があるね!
キミにかけられた言葉でも、なかなか恥ずかしい思いをさせられてあっつあつになってしまった!
ふふ、キミはホントに大好きだね、ボクのおし……」
「いや、もうホント勘弁してください!」
懇願するオレに、王子様もやっと満足したのか腕を組んで、得意げに鼻から息を吐き出した。
大きな胸が強調されて目のやり場に困る。
「さて、それじゃどんなことをしようか?」
「は?
どんなって……」
王子様は改めてタブレット端末を見つつ、画面をスワイプしている。
「うん!
食べ物系がキミの好みではないのは理解したけど、キミの所持していたコンテンツは多彩なプレイでいっぱいだ!
まったく、廃棄したとはいえ、これだけボク以外の女を見ていたと思うと腹立たしい!」
今度は憤懣やるかたないといった感じで、鼻から息を吐き出す。
いったいオレにどうしろと?
さっきまでの、恋人同士の穏やかな午後って感じの雰囲気はどこにいってしまったんだ?
「キミの記憶にある数々のえっちなプレイはすべてボクで上書きさせてもらうよ?」
「それは……」
今までオレが閲覧してきた数々のエロコンテンツの内容を全て行うってことでは?
「ふっふっふ、ボクはキミの多彩すぎる性癖にすべて対応できるんだろうか?
退かないけど、媚びるし省みるよ!」
「意味わからんっ!?」
しかし、コイツの作り上げたオレの性癖リスト……いったんチェックしておかないとまずい!
なんか見せてくれないんだよな。
コレクションを押さえられた上に、中身を詳細に確認されてリスト化までされてしまっているのは痛恨の極みなんだが。
おそらく王子様の作成したリストは、オレの所持していたコンテンツを網羅こそしているものの、それがオレの性癖に直結してるかというと若干間違っているような……
「しかし、この人格排泄ゼリーとか箱化とか……どうやって再現したものか?
恥ずかしさもさることながら、現実的に無理な物は無理だよね?」
「そ、それはオレの性癖じゃないからっ!」
「でも、ボクに恥ずかしいことさせるの大好きだろう?」
「う、ぐ……」
て、テンションが上りきってしまったときには、我ながら暴走しているのは自覚しているんだが……
王子様はオレへとにじり寄ってきて、隣りに座った。
オレの肩へと身体を預けて体重を乗せてくる。
耳の後ろ辺りに顔を近づけて、くんくんと鼻を鳴らすが、ちょっと不満そうだ。
「シャワー浴びたね?」
「べ、別にいいだろ。
寝汗をかいて気持ち悪かったんだよ」
「む、少しくらい我慢してくれよ。
ボクがキミの匂いを堪能できないじゃないか」
毎日王子様と一緒に寝ているわけではない。昨日は両親もいたしな。
……することはしてしまっているけど。
「判ってると思うが2次元作品のネタだからな?」
「ふふ、まぁ、さすがに、ね?」
王子様も冗談だったのか、さっきからずっと、すんすんと顔を寄せて離れようとしない。
まず……くはないが、急に王子様がしっとりしてきたぞ。
「そうだね。
キミの好きそうなシチュエーションをリストから考察すると……」
オレへとくっついたまま王子様が提案してきた。
「夜の学園に忍び込んで夜のデートなんてどうかな?」
「ん?」
なんだ?
王子様のしっとり具合からはかけ離れた提案がでてきたぞ?
わりと健全じゃないか?
~つづく~