黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
王子様が湿り気を帯びたような気がしたんだけど、気のせいだったのか?
提案してきたことは至極真っ当なモノだった。
「夏らしく夜遊びだよ!
この言い方だとちょっと不健全かな?
まぁ、夜のデートってところだね」
夏だし、繁華街に行くわけでもないし、学生らしいといえば学生らしい。
想像してみる。
深夜の学園。
当然人影なんてまるでなく、ただただ静かな空間。
廊下は長く暗く、先まで見通せない。
毎日通っているはずなのに、まるで異空間だ。
誰もいないはずなのに、なんとなく気配を感じてしまうのは、昼間の生徒達のなごりなのか、はたまた学園にはやはり目に見えない何かが潜んでいるのか?
恋人の二人が夜の学園にこっそり遊びに行くなんて、青春の1ページにふさわしいイベントではなかろうか!
「どうかな?」
オレの表情を読み取ったのか、王子様が我が意を得たりって感じに胸を張った。
さらに想像する。
オレ達の教室までの廊下を、二人で歩く。
言い出しっぺのくせに夜の校舎の雰囲気に気圧されたのか、王子様は身体を縮こまらせてオレの腕にしがみついてくるのだ。
普段は自分から押し付けてオレの反応を楽しんでいるのに、そんな余裕もない王子様。
家鳴りの、ぴしっ!という音にすら身体をビクつかせて涙目だ。
オレはオレで王子様の新鮮な反応と腕に当たる柔らかな感触に、どぎまぎしてしまって怖さを感じる暇もなく。
夜の校舎など怖くないと、少しでも男らしいところをみせようと肩肘張って王子様を先導するのだ!
「……悪くないな」
「ふふ、そうだろう?」
提案してきたのは王子様だから当たり前なんだが、王子様もノリノリだ。
「今夜、さっそくどうだい?」
「構わんが、というか行きたいが……うちの学園はセキュリティしっかりしてるから無理だろう?」
「そこはそれ!
蛇の道は蛇!
ボクにかかれば侵入は容易い」
まぁ、王子様の言うことだ。方法はあるんだろうな……
「そうと決まればさっそく準備をしよう!」
「準備って……」
身一つで行けばいいんじゃないか?
LEDライトくらいは持って行くつもりだが。
「キミの好みを聞いておきたいんだ。
黒、赤、あとはピンクがあるんだけど、どれがいいかな?」
ん? なんの話だ? 王子様がものすごく嬉しそうに尋ねてくるけど、LEDライトの色じゃないよな? 白しかないぞ。
しかも、なんか王子様の瞳がちょっと黒くなってきてるんだが……
やっぱりさっきの湿り具合は気のせいではなかった?
「やっぱり黒かな?
ボクの黒髪と合わせるならだけど」
「な、なんの話をしているんだ?」
「ふふ、夜の校舎にキミとボクが行くんだよ?
決まっているじゃないか?」
上気した頬、艶めいた唇、オレを見据える瞳はどこまでも深く、王子様が蕩けた表情でオレへと迫ってきた。
「ボクに嵌める首輪だよ?」
「なんで首輪の話になるんだよっ!?」
「え?」
「えっ!?」
王子様は「何言ってるの?」みたいな顔になって小首を傾げた。
「なんで……って、もちろん夜の校舎でデートするんだよ?」
「そ、そのつもりだが、首輪はいらないだろ?」
「そんなことはない。
夜の学園。
恋人同士。
やることなんて一つしかないじゃないか!」
な、なにか話が噛み合っていないような?
「肝試し?」
「ペットプレイ!」
「アホかっ!?」
「ん?
キミの性癖に合致してる思うんだけど?
所持コンテンツの中にもあったし……」
ペットプレイ!?
それで首輪が必要ってことか!
「なんだよー!
いいじゃないか!
夜の学園で首輪としっぽを身に着けたボクに、言葉にするのも憚られるようなことをしてくれよぉ!」
「そ、そんなのダメに決まってるだろ!」
「ちょっと待って欲しい!
少しだけで良い、想像してみてくれ」
もう想像しちゃってるよっ!
首輪を嵌めた王子様。しかもしっぽまで付けて……
「場所はいつもの教室だ。時間は深夜」
王子様が嬉しげに語る。
「そこにはキミ一人。
窓からは薄く月明かりが差し込み、いつも訪れる場所なのに時間が夜というだけで、雰囲気は全く違う。
普段は喧騒に包まれた室内なのに、耳が痛くなるほど静かだ。
その時だ、キミのスマホにメッセージが届く!」
王子様の語り口が耳に心地よく、思わず聞き入ってしまった。
「もちろんボクからのメッセージだよ?
内容は一文。
『ロッカー』と。
その瞬間、教室の隅にあるロッカーから、がたりと物音が……」
なぜか王子様の頬が赤くなって、目が潤んでいた。
「キミは無言のままロッカーの前まで来る。
そして、恐る恐るロッカーのドアを開けると……」
「開けると?」
少し間を溜めて、王子様が元気よく言い放った。
「全裸のボクがこんばんは!」
「アホかっ!?」
二回も言ってしまった。
「いやいや、最後まで聞いてくれないか?
全裸と言っても、キミの選んでくれた首輪をきちんと嵌めているよ!」
それは全裸と変わらん!
「で、続きなんだけど。
首輪付きのボクとご主人様のキミと学園内の深夜徘徊と洒落込むって感じだよ!
もちろん首輪にはリードが結ばれていて、キミに持ってもらうよ?
そして、キミに取って超重要な
「べ、別に重要じゃないから!」
し、しっぽはどうするの?
「ふふ、
どっちがいい?」
「っ!?」
どっちも捨てがたいぞ!
装着済みだとしたら王子様が自ら……
オレが装着させてやるとしたら王子様に腰を突き出させて……
しかも場所は教室。
夜半、窓からは王子様を青白く照らす月の光。
王子様の白い肌はオレの眼前に全て晒されて、情欲に濡れる王子様の瞳は何かを求めるようにオレへと注がれる。
恥ずかしげに胸元を隠そうとする王子様を、オレは決して許すことなく両方の手首を捕まえて離さない。
生白い首元には黒い革ベルト。
それは眼の前に居る女がオレのモノだという証だ。
このまま食い散らかしてしまってもいいし、さんざん焦らした挙げ句に指先から少しずつしゃぶり尽くしたって良いのだ。
だってそれは王子様も望んでいて、今か今かと熱く蕩けてまっているのだから……
「……はっ!?」
気がついたら王子様をじっと見つめて妄想に浸りきってしまった!
いかん、いかんっ!
オレの内面を見透かしているのか、王子様は楽しげに口元ににやりと笑みを貼り付けて、オレの反応を吟味していた。
「さぁ、今想像したとおりのことをしてみないかい?」
挑発的な眼差しでオレを見る王子様。
「だ、ダメだ!」
「む、どうしてだい?
けっこういい感じに反応してると思ったんだけど?」
王子様の視線がオレの下半身へと注がれる。
確認しないでほしいんだけど!?
「ふ、普通に考えたら学園で全裸になっちゃ……だ、ダメだろ?」
思いっきり動揺がでてしまった。
王子様が人差し指を顎に当てて思案する。
「うん?
……あぁ、なるほど」
オレの内心を察したのか、王子様はしたり顔だ。
「学園の中にはキミとボクしか居ないんだから、万が一にもボクの身体を他人に見られることはないんだけどね?
まぁ、不本意ではあるけど、今回は自重することにしようかな?」
「そうしてくれ」
顔が熱くなっているのは自覚している。まともに王子様の顔を見れない。
「ふふ、キミのその独占欲はボクにとってすごく心地良いことなんだ。
今後もっと発揮してほしいかな?」
「あ、う……」
まともに返事することもできないし、相変わらず密着してくる王子様の体温が気持ちよく、離れることもできない。
「耳まで真っ赤だね?」
「うるさいわい!」
「はは、じゃあ、夜のデートだけでも行こうか?」
「……デートだけだぞ?」
王子様は返事の代わりに、オレの赤くなっているらしい耳を摘む。
オレはただ限界まで首を捻って、王子様から顔色を見られないようにするのがやっとだった。
~つづく~