※この作品はR-18です。

黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い!   作:クリームパイ太郎

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王子様と癖(へき)の話③

 王子様と一悶着あってから、その後はなんとなくそわそわした時間を過ごした。

 

 漫画の続きを読んでもいまいち集中できず、せめてルーチンワークでもこなそうと、予習を済ませる。

 

 落ち着かないオレとは違い、端から見た限りでは王子様の雰囲気は変わらず、タブレットとにらめっこしながらときおり、「なるほど」などと呟いていた。

 

 一体なにが「なるほど」なのかツッコミたくもあったが、やぶ蛇になりそうだったので自重する。

 

 そして、王子様が作った夕餉をいただいて、夜の帳もすっかり降りた頃だ。

 

「さて、そろそろ行こうか?」

 

「あぁ、なんか楽しくなってきた」

 

 念の為というか、言い訳になるかわからないが一応学園指定の体操服とジャージに着替える。

 

 ちなみに王子様の下はハーフパンツだ。

 

 そこまで遅い時間でもないし、見つかっても部活帰りとか、ぎりぎり言い訳になるかもしれない。

 

 王子様と一緒に家を出て、毎日通っている通学路を歩く。

 

 時間帯が夜というだけで、通い慣れた道も雰囲気が違っていて、それだけでも楽しい。

 

「ふふ、これは普段の通学路ではできないね!」

 

「オマエも楽しそうだな」

 

「うん!

 夜に出歩くってだけでも楽しくないかい?」

 

「そうだな」

 

 隣にいる王子様からぎゅっと腕を組まれる。肩に頭が乗ってきて、王子様の髪の良い匂いに少しだけ、ほんの少しだけムラっとしてしまった。

 

「まぁ、いいけど……」

 

 人影もないし、ましてや学園の人間に会っても暗いからわかりにくいだろう。

 

 せっかくのデートなんだし王子様の好きなようにすればいい。

 

 ……オレもいちゃいちゃするのに否やはないし!

 

 学園までは15分程度の道のりだ。

 

 王子様と駄弁っているうちに、何事もなく到着した。

 

「おお……」

 

 夜の正門ってだけでも雰囲気あるな。

 

 その背後にそびえ立つ校舎も、昼間に見るのと違ってなかなか迫力がある。

 

「で、どうやって入るんだ?」

 

「あぁ、こっちだよ」

 

 なんのことはない。従業員用の入口だ。

 

「オマエこれ、指紋認証じゃないか」

 

「そうだよ?」

 

 と、王子様はセンサー部分に指を当てる。

 

 ガチャリと音を立てて、あっさりと扉が開いた。

 

「こんなこともあろうかと、たまたま管理人室が無人だったときにこっそりと忍び込んでボクの指紋を登録しておいたんだ。

 集中管理型でなくて助かったよ」

 

 こともなげに言うが、それはいいのか?

 

「まぁ、悪用するつもりはないしね。

 ちょっとした悪戯みたいなものさ。

 こうしてキミとのデートに使えるんだから、ボクにとっては些細なことだ」

 

 うーん、管理人さんに迷惑をかけるのはいただけないが、黙っていればわからんか?

 

 王子様が悪用するとも思えないし。

 

「さぁ、中に入ろう」

 

「あ、あぁ」

 

 王子様に続いて学園の敷地内に入っていく。

 

 昼間だったら生徒が大勢いるから、夜とはいえ誰も居ない校庭は新鮮だ。

 

「こう見るとやっぱり広いなこの学園。

 校舎も多いし」

 

 オレ達の教室に向かいながら、改めて広大な敷地を実感する。

 

 人が多いとわからないもんだな。

 

「そうだね。

 これなら校庭の片隅でキミとボクがいちゃついていたところで、目立たなそうだ。

 ほら、あの木陰とかどうかな? ちょうど人の意識外になりそうな死角だね。

 立ち(かなえ)ならバレないと思うよ?」

 

「ダメに決まってるだろっ!」

 

「むぅ……

 じゃあ、雁が首で!」

 

「オマエ、四十八手で言えば良いってわけじゃないからな?」

 

「まぁまぁ!

 あんまり調査してなかったけど、学園内は死角も多いし、めったに人がこない場所もありそうだ。

 今度チェックしておくね?」

 

「調べなくていいから!」

 

「ん?

 あぁ、キミが調べてくれるってことかな?

 だったら、一緒に調査して良さそうな場所を見つけたら、そのまま確かめてしまうってのはどうかな?

 より正確な情報を取得できて一石二鳥だ!」

 

「が、学園ではダメだって!」

 

「学園の見取り図はボクが用意するから。

 使えそうな場所は実際に使()()()みて、ハートマークのシールを貼っていこう!」

 

「オレの話を聞け!」

 

「まずは屋上にシールが貼れるね?」

 

「……」

 

 すでに学園内で王子様と致してしまっているので、オレが何を言っても説得力がなかった。

 

「いいじゃないか?

 ボクの望んだことでもあるんだしね?

 それにボクには目標があるんだ!」

 

「な、なんだ?」

 

「ふっふっふ、この目標にはキミの協力が不可欠だ!」

 

 協力!? なんかろくでもないことのような……

 

「うん。

 保健室、図書室、体育倉庫、校舎の屋上……はもう達成済みだけど。

 場所の候補はいろいろ思いつくけど、学生のうちにしか入れない場所でキミと……ふふ、することだよ!」

 

「照れくさそうに言うことじゃない!」

 

 頬を赤く染めて恥ずかしげに告白するさまは可愛らしいけど、言ってる内容が不健全すぎる!

 

「校舎の屋上でキミとセッ……えっと……後櫓(うしろやぐら)したときに思いついたんだ!」

 

「四十八手で言ってもお茶を濁したことになんないから!」

 

「えっと……

 じゃあ、()()()()で!」

 

 言い方を可愛くしてもダメだからっ!

 

「よし!

 ハートのシールを貼り付けた見取り図を『なかよしマップ』と名付けよう!

 ついでに日付も記入すれば、キミとの()()()()履歴が一目で判るね?

 素晴らしいっ!

 マップを完成させて一緒に目標を達成しよう!!」

 

「危なすぎるわ!」

 

 言ってることがヤバすぎる。

 

 バレることへのカウントダウンみたいなもんじゃないか!?

 

 どうも王子様はバレても構わないと思ってる節がある!

 

 それどころか積極的に……

 

「あ、日付だけでなく、なかよしの()()も記載しておこう!

 マップを埋め尽くしたら、今度はなかよしの()()もコンプリートを目指さないとねっ!」

 

「オマエはいったいオレに何回させるつもりなんだ!?」

 

「えー?

 どちらかというと、キミより先にボクの方がへばってしまうことが多いから、申し訳なく思っていたんだけど?」

 

「あ、う……」

 

 我ながらおかしいとは思うんだが、王子様と致すときは、その、なんだ……まったく萎えないというか、一人でしてたときは一回で満足していたんだが、なんでだろうか?

 

「ふふ、キミに求められているってことだから、ボクとしては嬉しい悲鳴なんだけどね?」

 

 そんなふうに王子様ペースの会話をしながら二人、教室までの廊下を歩く。

 

 月明かりのおかげで思ったよりも暗くはない。

 

 一人だったら不気味に感じていたかもしれないし、実際暗がりはちょっと気味悪いが、王子様と一緒だと楽しく感じてしまう。

 

 む、オレの予定では、夜の雰囲気にびくびくして王子様がしがみついてくる筈だったんだが……

 

 オレの片腕こそ王子様の抱きつかれて、がっしりと柔らかな胸に挟まれているけど、王子様は恐れるどころか、雰囲気の違う学園に終始ニコニコとしていて楽しそうだ。

 

「さぁ、教室についたよ」

 

 普通に教室まで到着してしまった。

 

 まぁ、当たり前か。

 

 ドアを開けて教室に入る。当然、誰も居ない。夜空が晴れ渡っているせいか教室はほんのりと明るく、整然と並んだ机と相まってなんとも不思議な雰囲気だった。

 

「いつもは喧しい教室に、夜ってだけでここまで変化を感じるとは思わなかったよ」

 

 王子様も珍しそうに教室を眺めているけど、学園までの道中も敷地内に入ってからも、オレの腕を抱きしめて離れようとしない。

 

 デートっぽく腕を組んで歩きたいのかも、と思ったんだがどうにもそんな感じはない。

 

「オマエ、怖いのか?」

 

「え?」

 

 素の反応だ。オレの言葉の意味が伝わっていない。

 

 王子様は一瞬考えてから、しまった!という顔をした。

 

「そう!

 うん、そうなんだ。

 学園の雰囲気に呑まれてしまってね。

 夜の校舎がこんなに不気味だなんて思わなかったよ?

 あー、怖くて足が震えてしまう。

 キミがちゃんとボクを支えててくれないと、ボクは立っていることもままならないよ?

 できれば腰のあたりに手を回したり、肩を抱きしめてくれたり、胸を鷲掴みにしてくれたりすると、この恐怖も紛れるかも知れない!」

 

「ふむ、全然怖がってないな」

 

 あと、最後の鷲掴みが余計だ。

 

 王子様は本気で悔しそうに、唇を噛んだ。

 

「しまったなぁ。

 確かにここは初々しいカノジョとして、可愛らしく怖がって、あどけなくカレシに抱きついて、清らかにカレシを欲情させないといけなかった。

 痛恨の極みだ」

 

 ……ホントに怖くなかったんだな。

 

 オレ、夜の校舎の雰囲気には、ちょっとビビってたんだが。

 

「くっ!

 どうして思いつかなかったんだ!

 定番じゃないか。言い出した方のボクが学園に着いた途端にちょっと顔を青ざめさせて、恐怖に慄くんだけど、無理をしてカレを先導して校舎に入る。

 その後は曲がり角の暗がりとか、ちょっとした物音とか。

 いちいちびくっとして、か弱いカノジョを演じるんだ。

 そして、カレシの保護欲を刺激しつつ、ボクの身体の柔らかいところを押し付けてあげれば話しは早かったじゃないかっ!!」

 

「もう手遅れだけどな」

 

「うぅ、そんなことないよ?

 今まで隠していたけど、ホントは怖かったんだ。

 キミに夜のデートを提案した手前、引くに引けなかっただけなんだ。

 さぁ、キミのカノジョが弱々しく助けを求めているんだから。

 ここは男らしく恋人の恐怖を和らげるために、ぎゅっと抱きしめてくれ」

 

 言葉の通り弱々しく、目の端に涙まで溜めてオレへと縋り付いてくる王子様。

 

 相変わらず凄まじい演技力だ。

 

 まぁ、抱きしめることくらい、いくらでもしてやるんだが。

 

「ほれ」

 

「あ……」

 

 演技で目をうるうるさせていた王子様を、不意打ち気味に抱きしめる。

 

 学校指定のジャージ越しに、王子様の柔らかさが伝わってきた。

 

「ふふ、素直に抱きしめてくれたね?」

 

「まぁ、デートだしな」

 

 誰も居ないし。

 

 王子様もオレの背中に手を回して優しくしがみついてきた。

 

「普段、教室には余計な人間がいるからね。

 こうして堂々といちゃいちゃできるのはすごくいい!」

 

「クラスメートを余計な者扱いするなよ」

 

「じゃあ、日中もクラスの連中にキミとボクの親密さをアピールしたいんだけど、付き合ってくれるかい?」

 

「……常識の範囲内なら」

 

 手作り弁当渡されてるだけでも、十分アピールになってると思うんだが。

 

「そのお弁当に()()()をかけてくれればもっとアピールになると思うんだ!」

 

「その話まだひっぱるのかよっ!?」

 

 にっこりと王子様から笑顔を返されてしまった。

 

「言っただろ?

 キミの記憶にあるえっちなことは全部ボクで上書きするって」

 

 もうほぼほぼ上書きされているようなもんなんだが。

 

「ホントならキミの視界にボク以外の女を入れたくないくらいなんだ。

 まぁ、それが無理なことは百も承知だけどね」

 

 オレの背中に触れる王子様の手に力が籠もる。

 

「あぁ、キミの記憶の中にある、ボク以外の()を全て消してしまいたいよ?」

 

 ちょっと怖い!

 

 あと王子様の黒目が深くなってきてる。

 

 どろりとした雰囲気が王子様から漏れ出してきた。

 

「そ、それって……?」

 

「教室なんかではどうしても、キミの視界にボク以外の女子生徒が入ってしまうだろう?」

 

 まばたきすらせず、王子様が目を見開いてオレを見つめてくる。

 

「だからさ。

 キミが教室でボクとの強烈な()()をしてしまったら、他の女なんてキミの記憶から消せるんじゃないかって思いついたんだ」

 

「そ、そんなことしなくても……」

 

「ふふ、わかってるよ?

 ボクとの思い出以外いらないって言いたいんだろう?」

 

「そうだ」

 

「ちがうんだ!

 キミの視界に余計なモノが映り込んでしまったら、どうしたって記憶には残ってしまうだろう?

 ボクはそれが我慢ならない!」

 

 オレが、クラスの女子の名前と顔が一致してないのは王子様も知っているだろうに。

 

 それでも足りないってところかな?

 

「キミの性癖にぐっさりと刺さって抜けなくなるような体験を教室でしてしまったとする!」

 

「……は?」

 

 何を言い出すんだ、突然!?

 

「そうすると!

 毎朝登校して教室に入った瞬間にそのえっちな体験を思い出してしまうと思うんだ!」

 

 王子様は深い目のまま嬉しげに語る。

 

「いろんな場所で、そんな記憶に残る体験を()()()すれば、おのずと余計な女《コト》は思い出すことはないんじゃないかって」

 

 その仕草だけみれば夢見る乙女のようなんだが、物語る内容が乙女とはかけ離れていた。

 

「そうだね、じゃあさっきのお弁当の話だ。

 お昼ごはんのときにボクのお弁当にキミのアレをかけてもらったとするだろう?」

 

「例えの時点でおかしいわっ!」

 

 やっぱ王子様は食……をやりたいんじゃないかっ!

 

「いやいや、安心してくれ。

 ちゃんと口か手でボクがお世話するから!」

 

「そういう意味じゃない!」

 

「まぁまぁ、聞いてくれよ?」

 

 なぜか自信ありげに、オレをなだめる王子様。

 

「ホントならキミと二人きりで昼食といきたいところなんだけど、そこはあえてボクの取り巻きたちと食べるんだ!

 めずらしくボクがクラスメートの昼ご飯の輪の中にいる。

 当然取り巻きたちは盛り上がる!

 そこでボクはおもむろにお弁当箱を開けるんだ。

 しょうがないからその日のお弁当は女子らしく小さめのお弁当箱にするよ。

 卵焼き、唐揚げ、プチトマト、ブロッコリー、俵型おにぎりにごま塩。

 見本のようなお弁当だね」

 

 王子様は嬉しそうだ。

 

「そしてそのお弁当の全体にはキミ特製の()()()()()()がどばーっと!」

 

「台無しだ!」

 

「そんなことない!

 最高の調味料だ!

 蓋を開けたら当然少しばかり不思議な匂いがしてしまうかもしれないね?

 でも、ボクは落ち着き払って食べ始めるよ!

 内心ではキミのドレッシングの香りにくらくらしつつ、蕩けるような想いでお弁当を食べ進めるんだ。

 次第に頬は染まり、目は虚ろに、呼吸も少しずつ乱れていって……周りにいる取り巻き達から怪訝な目で見られてしまうかも知れないけど、そんな状況もまたボクを熱くしてしまう一つの要因だ!

 ボク我慢できるかな?」

 

「知らんわっ!」

 

 ば、バレたらやばいだろう!?

 

「ふふふ、大丈夫だよ?

 取り巻き達からお弁当を分けてって言われても丁寧に断るからね?」

 

「あ、当たり前だ!」

 

「うんうん、当たり前だよね?

 キミの大事な特製ドレッシングを他の女どもに分けてやるなんてとんでもない!

 キミの全てはボクのモノだっ!」

 

 オレは戦慄しつつ、なんとか王子様を宥められないものかと思案した。

 

「キミはお弁当を食べて恍惚としてるボクを遠くから眺めて、にやりと笑っていてくれよ?

 こう……目元が前髪で隠れる感じで!」

 

「オレってそんなキャラ!?」

 

 さっきは食ザーはしないって言ってたのに!

 

「……と、ここまでは昼間の話さ!」

 

「昼間!?」

 

「そしてここからは夜の話だよ。

 今のこの状況のことだね?」

 

 まさか……

 

「キミの大好きなペットプレイ!」

 

「大好きにされている!?」

 

「好きなくせに……」

 

「……」

 

 嫌いではないので何も言い返せない。でも、それはあくまでコンテンツを見るからであって実際やるとなると……

 

「今のこの状況。

 ここまで持ってこれたら、ボクの勝ちだ!」

 

「どういう意味だ?」

 

「ふふ、そろそろ気がついてもいいんじゃないかな?」

 

 と、王子様が意味ありげな視線を送ってくる。

 

 なんだ?

 

 オレが疑問を浮かべると、王子様が更に強く胸を押し付けてきた。

 

 王子様の柔らかな感触と体温を感じるが、なんか違和感がある……ような?

 

「オマエ、まさか!?」

 

「やっと気がついたのかい?

 ジャージの下は……ね?」

 

 オレは体操着しか着ていない。

 

 王子様の大きな胸。

 

 昂った王子様の()()を、布地越しに感じられた。

 

「ちょ!

 なにやってんだ!?」

 

「うん。

 学園までの道のりもキミにしがみついていたから心細くなかったね?」

 

 そ、そういうことだったのか!

 

 てっきりデート感を出したかったんだとばかり。

 

 いや、そういった意味もあったのかもしれんが、あそこまで密着してきたのは、さすがの王子様も化学繊維製ジャージ一枚では心もとなく落ち着かなかったからだろう。

 

「あ、ちなみにジャージしか着ていないわけじゃないよ?

 思ったよりも擦れてしまうことが判ったから、絆創膏を貼ってある!」

 

「それはジャージのみとまったく変わらねぇよ!」

 

 王子様はいたずらっぽく笑ってオレから離れた。

 

「さぁ、これからが本番だね」

 

 ジャージのジッパーを全部下ろして、豊かな胸の谷間と楚々としたヘソが(あらわ)になる。

 

 王子様の淀みない動作に、オレは動くことができなかった。

 

 真っ白な肌と谷間に見惚れていたともいう。

 

「まだ終わりじゃないよ?」

 

 そう言うと、王子様はポケットからごそごそと何かを取り出した。

 

「はい、どうぞ」

 

「オマ……これって!?」

 

 月明かりに照らされて、黒光りする革製のベルト。

 

「うん、首輪だ。

 使い方は……言わなくてもわかるよね?」

 

 オレを見る王子様の目にゾクリとした。

 

「キミの好みは聞きそびれてしまったけど。

 黒だろ?」

 

 当たりだよ。

 

「オマエ、最初からこのつもりだったんだな?」

 

「うん。

 昼間にも言ったけど、キミはスイッチが入るまでは奥ゆかしいからね?

 やりたいこともボクに遠慮してしまって、なかなか言ってくれないし」

 

 そんなことはないはずなんだが。

 

「まぁ、ボクはキミに対して、したいことやりたいことはどんどん言っているつもりなんだ。

 だからキミも……ね?」

 

「あんまりオマエに言われてるような気がしないんだが……」

 

「だとしたら、キミは無意識のうちにボクの要望に全部応えてくれてるってことさ」

 

 そう言いながら、王子様は自ら革製のベルトを首に巻く。

 

 真っ白な首筋に黒い革製のベルト。

 

 銀のバックルがきらりと光る。

 

 見た目のインパクトに、オレは一気に加熱してしまった。

 

「キミが締めてくれ」

 

 王子様は首輪を巻いただけ。

 

 ベルトの剣先はバックルに通しておらず、オレに締めさせるつもりだ。

 

「……わかったよ」

 

 王子様の言っていたオレのスイッチというものを、オレ自身がようやく理解した。

 

 簡単にオンになるし、もう王子様を責めたくて仕方がない。

 

 オレは剣先をバックルに通す。

 

 キツくなりすぎないようにベルトの子穴にピンを指して、定革にもベルトを通した。

 

「ぁ……」

 

 王子様が小さく喘いだが、苦しいわけではなさそうだ。

 

 最後に遊革にもベルトを通す。

 

 そうして、オレが、王子様へ、首輪を嵌めた。

 

「あぁ……」

 

 王子様が首輪に触れて、ふるふると身体を震わせる。

 

「なんかすごい。

 思ったよりもすごく……」

 

 オレの性癖とは違うと思っていたんだが……

 

 王子様の今の姿を見て、グサリと刺さった。

 

 蕩けた表情でオレを待つ王子様を抱き寄せる。

 

 折れてしまいそうな細い腰に腕を回すと、抵抗もなくすっぽりと収まった。

 

「スイッチとやらを押したのはオマエだからな?」

 

「ふふ、ずいぶんと簡単に入るスイッチだね?

 まったく、常時オンでもいいだろうに」

 

「万年発情していろと?」

 

「十代男子なんてそんなものだろう?

 それにキミならボクは大歓迎だし、一向に構わない!」

 

「……むぅ」

 

 一言も言い返せないほどその通りだった。

 

 王子様のワキがちらっと見えただけで、ムラっときてしまうくらいには軽いスイッチなのだ。

 

「ほら、さっさと始めようか?

 まさか、ここまでしたんだから、今更やめるなんていわないだろ?」

 

「そんなの無理に決まってるだろ」

 

「うんうん。

 意地っ張りなキミも可愛いけど、素直なキミも素敵だよ。

 わ、なにを……ん」

 

 ちょっとイラッときたので、無理やり王子様の唇を塞いでやった。

 

 この行為すらも王子様の望み通りのような気がしてならないが、今更だろう。

 

「……ぷはぁ!」

 

 結構長めに王子様を貪ってしまった。

 

 濡れた唇を半開きにして、とろんとした目をオレに向け、王子様の身体から力が抜ける。

 

 オレが支えていないと立っていられなそうだ。

 

 無意識に王子様はペロリと唇を舐めてから、ようやく目の焦点を取り戻した。

 

「ふふ、さぁ、このまま続けてくれないか?

 ボクのスイッチも入ってしまったよ?」

 

「そのつもりだ」

 

 ストンとジャージが教室の床に落ちる。

 

 ハーフパンツも同様だ。

 

 首輪だけになった王子様が、いつもの教室に立っている。

 

 日常と非日常が混ざった光景にオレは、居ても立ってもいられず、王子様に襲いかかった。

 

「あぁ、次に登校する日が楽しみだよ?」

 

 王子様が何か意味深なことを言っていたが、まるで頭に入らない。

 

 青白い月の光に照らされた抜き身の王子様は、それくらい綺麗だった。

 

 

 

 

 

 

 

~つづく~

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