黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
「やぁ、今日もいい朝だね!
朝からキミの顔を見られるなんて、ボクのテンションはうなぎのぼりだ!」
「……さっきまで一緒にいただろうが」
シャワーと着替えのために一旦帰宅し、離れていたのはせいぜい30分程度だろうに。
月曜日。
全人類の敵とも言える日だが、王子様と一緒に登校するようになってからは、まぁ、それほど憂鬱でもない。
土曜日の夜はちょっと盛り上がりすぎてしまったというか、王子様の軽い策略にはめられて、若気の至りにも程がある痴態を晒してしまった。
冷静になって考えてみると、危ないことをしたものだ。
オレと王子様以外誰も居ないのは判っていたとはいえ、致してしまったのは完全にアウトだ。
痕跡は残さなかったはずだから大丈夫だとは思うが、今から登校するのがちょっと不安だな。
仮に
若干の不安を抱えながら、オレと王子様は夜のデートでも歩いた道を使って学園へと向かった。
普通に普段使ってる通学路だけどね。
「なんかやたら機嫌良いけどなんかあった?」
「うん?
日曜日も夜のデートの興奮冷めやらぬキミに、お仕置きと称していろいろされてしまったからね!
ボクの機嫌が良さそうに見えるんだったら、すべてキミの行いの賜物さ。
土曜日には、言葉にするのも憚られるようなことを、キミとしてしまった上に!
日曜日には、言葉にする前に頬が火照ってしまうようなことを、キミにされてしまうだなんて思わなかったよ」
「お、オレのせいってのはわかったから!
機嫌よく! 今週の学園生活を送ろうじゃないか!」
だから、学園ではおくびにも出さないでくれ、頼むから!
「具体的にはお風呂場で……」
「こ、ここは外だから!」
しかも通学路で同じ学園の学生もちらほらいるんだぞ!
「大丈夫!
キミとボクの睦言なんだ。
お天道様の元、胸を張って、宣言してしまってもいいと思うんだ!」
「まてまて!
まじでやめろよ?
宣言とかされたら社会的にオレが……」
「たしかに!
言の葉に乗せるには惜しいほど、ボクにとっては刺激的な体験だったんだ。
具体的にはおしり……」
「ちょ、おまーっ!」
オレは慌てて王子様のセリフを遮った。
惜しいなら、言おうとするなよ!
「まぁ、キミがそこまで隠したいというなら、キミとボクだけの大切な思い出にしようか?」
「そ、そうだ!
オレとオマエだけの思い出なんだ!
誰かにべらべらしゃべってしまったら、ほらあれだ?
えっと……思い出ってのは大切にしまっておくものだ!」
「ふふ、それはなかなか悪くないね?」
思い出っていうには、あまりにも不純なことをしてしまっているが、思い出なのは間違いない!
「もっといっぱい作ってくれるんだろう、思い出なんだからね?」
「……ふ、普通の思い出なら」
「普通かぁ。
でもキミの普通はなかなかマニアックだからなぁ。
……ボク、楽しみだよ?」
「そ、そろそろ校門が見えてきたから……な?」
「楽しみ、楽しみ!」と笑いながら、足取りも軽く校門を通り過ぎる王子様。
オレはその後を歩きながら、夜のデートのときに確認した木陰が、王子様の言った通り死角になっていることに気がついた。
確かに人の意識外というか、言われなければ気が付かない場所だ。
なんで王子様は気がつくんだ?
「それはね。
学園内でキミといちゃつける場所をピックアップしたいからさ」
「オレの心を読むな」
「ははは、キミがあまりにわかりやすい視線を向けていたものだから。
さぁ、さっさと教室に向かおう」
「ぐぬぬ……」
なんとなく悔しい。
そんな会話をしながら上履きに履き替える。
教室までの廊下を歩きながら思うのは、土曜日の夜のことだ。
薄明かりの中、夜の廊下を歩く王子様の姿。
ジャージ1枚だったんだよな……
「どうしたんだい?」
「え? あ! な、なんでもないぞ」
背後から声をかけられたが、王子様の方を向かずに曖昧な返事をした。
表情を王子様に見られたら、絶対にオレの内心がバレる!
いかんいかん。ここは学園なんだし、変な記憶に浸っていたら身体の一部が大変なことになってしまう!
王子様にバレないようにこっそりと深く息を吸って、大きく吐き出した。
うむ、大丈夫だ。
オレがこれだけ落ち着かないのだから、王子様はどんな状態かと見れば、鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌だ。
「やっぱ変だ。
なんでそんなに嬉しそうなんだ?」
「え?
あぁ、そりゃキミと一緒に登校してるんだ。
嬉しくもなるさ」
ここ最近はいつも一緒だろうに。
やはり王子様の機嫌が良すぎる。
王子様は何食わぬ顔をしているが、雰囲気で判るぞ。
絶対何か企んでいる!
「それはもうすぐわかるよ?」
「む?」
教室に着いた。
王子様はドアを開けて、いつものように格好良く挨拶をキメながら教室に入っていく。
ほんの少しだけ控えめになった黄色い声が響き渡るが、これも普段通りだ。
王子様に続いて、オレも教室に入る。
その瞬間のことだ!
「……っ!?」
フラッシュバックする夜の光景。
するりと落ちるジャージ。
青白い月の光に照らされたシルエット。
首輪だけの王子様。
甘く期待に満ちた表情。
「こ、これか……」
王子様の企てが……秘められた真実が解き放たれる。
夜のデート。
それ自体はいい。カップルがこっそりと夜に遊ぶなんてのは微笑ましいじゃないか。
まぁ、オレ達の場合はちょっとばかり過激になってしまったけど。
嬉しいやら恥ずかしいやらの思い出の1ページ……でもいいはず!
普段通り、教卓の前を通る。
あの夜、この教卓に両手を置いて、肩越しにオレへと流し目を送り、挑発する王子様。
教卓から目を逸らしたら、ロッカーが視界に入る。
物音がして、慌てて二人で中に隠れた。もちろん王子様は剥き身だ。物音は風に揺れた窓の音だった。
王子様の席がある。
この机の上に座らせて、弱い光の中で王子様をじっくりと観察してから……
オレの席に着席した。
あの夜もオレの席に座り、オレの前にしゃがんだ王子様が……
王子様の言葉が思い出された。
『そうすると!
毎朝登校して教室に入った瞬間にそのえっちな体験を思い出してしまうと思うんだ!』
こ、これか~~~っ!!
これが王子様の真の目的だったんだ!
自分の席に座り、半ば無意識に授業の準備をする。
机に視線を落とし、王子様の企みがオレへと炸裂したことを自覚した。
「これがしばらく続くのか……」
さっき教室に入った瞬間、強烈に思いだされた夜のデートの記憶。
あんな衝撃的な体験をしてしまったからには、何かの拍子に思い出さずにはいられない。
それが、体験した場所に来てしまったら、鮮烈に蘇ってもおかしくない。
その時の感触も、匂いも、息遣いすら感じるようだ。
オレは机に視線を落として、大きく息を吐いた。
ま、まずは落ち着かなければ。
さっきから精神面の乱高下が激しすぎる!
「ふふふ、どうかな?」
顔を上げると、眩しいくらいの笑顔で王子様が立っていた。
欺瞞の殻は剥がれ落ち、偽りの仮面は取り払われ、してやったりの表情で、オレを見下ろす王子様。
「だました……とは言えないが、これを狙ってたのか?」
「うん!
これでキミが登校する度に、
一応伏せ字にするくらいの配慮はしてくれたようだ。
「ボクのことを思い出してくれているのが、手に取るように判るね?
しかも内容まで明確に判明している。
なぜならキミの体験したことはボクも体験しているからね!」
そりゃ、そうだろうよ。
「ちなみに、
なんせ、これからどんどん増やしていくつもりだからね?」
そう言いながらスマホを操作して、王子様は画面をオレに見せてきた。
『なかよしマップ♡』
そう名付けられたアプリが起動していた。
「ほら、見てくれ。
学園のマップが表示されているだろう?
もちろんアプリは自作だ!
で、このマップをタップするとハートマークが付くんだ。
これでキミとの
い、いつのまに!?
「じゃあ、早速記録するね?」
オレが唖然としていると、王子様がオレに画面を見せつけながら、マップ上のオレ達の教室をタップする。
可愛らしい効果音とともにアニメーションして、ピンクのハートマークが表示された。
細やかな演出から、なかなか気合の入ったアプリだと判る。
「日付は土曜日の日付っと。
内容は、ペットプ……」
「わー、わーっ!」
慌てて王子様の言葉を遮った。
そんな不穏なことを教室で言うんじゃない!
「このアプリで明確に記録を残していこうじゃないか。
キミの記憶はどんどん上書きしていくし、所持していたコンテンツの内容も
王子様の言った通り、これで学園での思い出はどんどん王子様だけで染まっていってしまうだろう。
「マップのコンプリート、一緒にがんばろうね?」
「ぜ、善処します」
自然とコンプできそうだと思ってしまった。
「ちなみにハート10個でチケット進呈だ!
ボクにえっちなことできるチケット!」
「10個でチケット!?」
チケットの意味なくない?
「あ、多かったかな?
じゃあ、ハート3個にしておくよ?」
「簡単に減ったっ!?」
王子様は得意満面の顔で、大きな胸を持ち上げるように腕を組んだ。
「三日以内には市内全域でハートマークを付けられるようにアップデートしておくよ!
キミの所持コンテンツからすると、とても学園マップだけじゃ足りないからね?」
「そ、そんなのばっか持ってたわけじゃないから!?」
「うん、もちろん。
ハートマークはキミの部屋かボクの家が一番多くなるだろうね!」
「あ、う、そ、そうだけど……」
「さて、一つしてほしいことがあるんだけど?」
「な、なんだ?」
「うん、ちょっと
「こ、断るっ!」
王子様はにんまりと笑顔を浮かべて、嬉しそうに目を細めた。
「ふふ、
そうなのだ。
教室に入って夜のデートを思い出してしまったせいで、大きくなってしまったのだ。
登校してくる度に、こんなふうになってしまうのは大問題だ!
毎朝登校時にアレを大きくしながら教室に入っていたら、いずれバレてよろしくない噂が流れてしまうかも知れない!?
「それもボクにとってはプラス材料だね?
キミにちょっかいを出そうとする、よからぬ輩が減る!」
「そんな奴いないから!」
「でも、キミを視界に入れる
オレが目の端に引っ掛かっただけで敵扱いするな!
「おっと、屋上にも付けておかないとね?
日付と……内容は壁ドン、と」
「もう、好きにしてください」
「そうだ。
ついでだから昼ご飯にも付き合ってくれるかな?」
「ついで?
そりゃ構わんが……
いつも一緒に食ってるじゃないか?」
「あぁ、そうではなくてね?
言ったじゃないか?
ボクのお弁当にキミの
場所は土曜日に見つけた木陰で!」
「付き合うってそっちかよっ!?
や、やらないぞ!」
「む、だったらデザート代わりに飲ませてくれよ?」
「まぁ、それくらいなら……って!
学園じゃダメに決まってるだろうが!」
「じゃあ、家なら良いのかい?」
「いい……
いいわけ……
いいかもしれ……
………………夜なら」
「キミの葛藤がうかがえるよ?
ふふ、今日の夜でさっそくハートマーク3個達成だね!」
「あ、はい……」
「まぁ、キミが学園内で我慢できなかったらもっと早く達成できてしまうけどね?」
「が、我慢するわい!」
「ふふ、我慢しなきゃいけないんだ?」
「あ、う、その……」
「よし!
いつもは控えめにしてたけど、今日は本気で誘惑してみるよ」
え!?
ひ、控えめって……いつもの過激な行動は本気じゃなかった、と!?
「鼻の下が伸びているよ?」
思わず、どんなことをされるのかと想像してしまった。
刹那の思考時間で、所持していたコンテンツの数々のシチュエーションが脳裏をよぎる。
「そ、そんなことないぞ!」
だって、王子様がオレの記憶を上書きするって言ったから。
「ふふふ、楽しみにしてくれ!」
不敵に笑う王子様は自信満々だ。
オレはごくりと生唾を飲み込んだ。
「ほ、ほどほどにな?」
その日、オレは帰宅するまでに3枚のチケットを獲得し、王子様の家でも2枚獲得した。
~おしまい~
ルギエル様
ネタの提供ありがとうございました。
無事消化できて一安心です。