黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
よし、月の前半は予定が立ったね!
「あとは後半かな?」
「後半?
10月の後半……
ハロウィン?」
「察しが良いね。
せっかくだし今年はハロウィンも楽しみたいと思ったんだ」
昨今ではコスプレイベントと化しているみたいだけど、それはそれでありだ!
カレと二人でコスプレパーティーとか、これまた胸が沸き立つような思いが溢れてくるね。
「トリックオアトリートってやつだな。
毎年コスプレした人達が大勢集まって騒ぎになる、ってくらいの認識だったけど。
あと、コンビニにハロウィンに便乗した商品が並ぶってことくらい?」
「そうだね。
ボクもあんまり興味がなかった」
でも、今年は違うぞ!
なんせカレとボクの関係性が、ぐぐっと進展してしまっているからね。
ふふふ、今ならコスプレして浮かれていた連中の気持ちも少しは判るかな?
普段と違う格好をしたボクを、カレに見せることができる良い口実だ。
それにトリックオアトリートなんだ。
カレに悪戯する口実まであるのだから、気持ちも昂るというものだよ。
あ、カレが悪戯する方でもオッケーだね!
喜び勇んでこの身を捧げようじゃないか。
ど、どんな悪戯されちゃうのかな?
眠ってるボクにこっそりと忍び寄って敏感なところを……とか!
学園の
あ! ボクの所持している下着という下着を隠されてしまって、下着を付けさせてもらえないとかもありだね!!
すべてカレの行う可愛らしい悪戯だと思うと……楽しみだっ!
そんなことを考えていると、カレはカレで呑気な感じでハロウィンの当日に、どんなことをするのか想像しているみたいだね。
「お菓子を用意するけど、デザート的なやつでいい?
秋だしモンブランとか」
む、悪戯は?
「うん。
キミがくれる物ならなんでもいいんだけど。
ちょっと違うかな?」
「ん?
ハロウィンってお菓子をくれないと悪戯するぞってやつだろ?」
一般的にはその通りだね。
だけど、ボクはキミのことが絡んでしまったら欲張りなんだ!
どっちか一つで満足なんてできないよ。
「そんなの誰が決めたんだい?
ボクはそんなケチなことは言わないさ!
トリック
「トリックアンドトリート!?」
「うん!
お菓子も貰うし悪戯もしちゃうぞっ!」
そしてボクにも悪戯してくれよ?
「悪戯ってオマエ……」
カレが頬を染めながら言葉を濁す。
ふふ、可愛いね?
いったい何を想像しているのかな?
「ふふ、ボクが用意するお菓子、そんなに楽しみなのかい?
もちろん手作りだよ?」
「あ、あぁ。
そうだ!
オマエが準備するお菓子なんだ、きっと美味いだろうし」
取り繕うようにカレは言うけど、誤魔化すのが下手だ。
「い・た・ず・ら……しちゃうからね?」
まずはカレのスマホのホーム画面をボクのキス顔にして。
次に通学用のカバンにボクの下着を忍ばせて。
最後に目立つところにがっつりキスマークをつけちゃおうかな。
そして夜の悪戯は……むふふ。
「お、おお……?」
ごくりと、カレの喉仏が上下するのが見えた。
男らしくてすごいセクシー!
「それとも、ボクに
再び喉仏が上下して、カレがますます赤くなる。
ボクはなるべく蠱惑的な表情で、カレへと笑いかけた。
ふふふ、ボクの顔芸は多彩だぞ。
なんせカレを誘惑するために、鏡の前で毎日練習しているからね!
「あとはコスプレかな?」
「コスプレ!?」
「ハロウィンなんだからコスプレするだろ?
何が良い?」
「こ、コスプレもするのか」
「キミもするんだよ?」
「え、オレも?
あー、まぁ、ハロウィンだし付き合うけど……」
カレが汗もかいていないのに、顎を拭う。
汗が出そうなんだったら、ボクが吸……拭いてあげるぞ。
それにしてもコスプレか。
コスチュームでプレイする!
プレイね……んふ。
ハロウィンでコスプレするならやっぱりホラー系かな?
うーん、ホラー映画からキャラクターを拝借してコスプレしようか?
ヴァンパイアとか?
格闘ゲームでもそんなキャラクターがいたような?
某所に集まる人達はコスプレならなんでも良い感じになってしまっているみたいだけど、せっかくならハロウィンにちなんだモノがいいのだろうか?
「さぁ、キミの好みの格好をするから、リクエストしてくれ!」
「え? あ、お、おう!
そうだな……」
カレが深く、それはもう深く悩み始めた。
そ、そんなに迷うことなのかな?
まぁ、カレの好みの格好をするのは、まったくもって抵抗はないから、どんなリクエストがきても応えてさせてもらおうじゃないか!
情報収集した限りだと、カレを誘惑できそうなコスプレも多数あったね。
個人的にはゾンビナースとか良いかなぁ? ゲームが元ネタなのかな? でもアレは顔がなかったような?
ゴシックロリータでヴァンパイアもボク的には好みだった。
でもゴスロリ衣装は露出度が少ないのが、ねぇ?
あ、でもあえてごてごての衣装を身につけたボクを、ローアングルでカレから覗いてもらうとかいいね! マニアックでボクのテンションも上がってしまうかもしれない!
装飾過多のスカートを恥ずかしげに捲って、中身をカレに見せたらきっとすごく喜んでくれるだろう!
ただ、牙はカレとちゅーするときに邪魔な気がする。
これは大きなマイナスだ。
他にもミイラとかいいよね!
包帯
そのまま包帯を使って拘束されちゃうとか、有りよりの有りよりの有りよりの有りだっ!
赤ずきん、魔法使い、カボチャ頭、あぁ、動物の耳のカチューシャなんてお手軽でいいかもしれないね。
簡単に済ませる方法もあったほうがいいかな?
……使い古したシーツに穴を開けて、カレに被ってもらう。
これでゴーストのコスプレの完成だ。
そしてボクがお菓子をあげるのを拒否して、カレに悪戯してもらえばオッケーだね!
カレ「お菓子をくれないといたずらするぞー!」
ボク「はい、お菓子だよ」
カレ「お菓子を貰ってもいたずらするぞー!!」
ボク「うわー、ボク、いたずらされてしまうー」
うん、やっぱりお菓子もあげたいし、悪戯もされたいね。
あとは……ハロウィンに関係ないコスプレをするとかになるのかな?
アニメキャラはカレもあんまり興味がないみたいだし、ネタに走りすぎてカレを萎えさせるのもよくない。
ホラー要素は薄くなってしまうし。
あ、良いことを思いついたぞ!
オオカミのコスプレをしたカレ。
赤ずきんのコスプレをしたボク。
ふふふ、お膳立てはもう済んだようなものだよね?
後はオオカミさんにぺろりと食べられちゃう赤ずきんちゃんごっこだ!
ボク「おばあさんの股間はどうしてそんなに大きいの?」
カレ「それは……オマエをぺろりと食べるためだーーー!!」
ボク「うわー、ボク、食べられてしまうー」
童話もこんな感じだったはずだから問題ないね!
赤ずきんとオオカミならぎりぎりハロウィンっぽい気もするし。
よし、これはボクがやってみたいから、当日までに用意しておこう。
と、ボクの中ではコスプレ候補が決まってきたけど、カレは未だにうんうんと唸っていた。
「メイドは外せないよな。
ヴィクトリアンメイドなら王子様にピッタリだ。
でも、ミニスカメイドも捨てがたくないか?
可愛いのも絶対に似合うし。
そもそも何でも似合うだろうし……
あとは
猫耳と尻尾も外せないぞ。
まてよ?
ブルマと猫耳としっぽを合わせたらどうだ?
穴を開けたブルマにしっぽを……」
……まぁ、いいけどね?
「決まったかい?」
「はっ!?」
声をかけると、カレが我に返った。
何かに熱中するカレを眺めているのは、ボクの好むところでもあるから、もうちょっと眺めていてもよかったかもしれない。
「なんだその……
もうちょっと考えさせてもらってもいい?」
「構わないよ?
準備があるからなるべく早くね?」
「おう!
コスチュームはオレも用意するぞ!」
さて、どんな破廉恥な衣装を用意してくるのかな?
今から楽しみだね?
「さて、コスプレはおいおい決めていくとして、パーティー自体はどうしようか?」
「ん?
どっか出掛けてもいいけど。
確か商店街の方でライトアップしてるはずだ。
レストランとか予約してもいいな。
当日までにちょっとバイトすれば……」
ちらりとボクの方を伺ってくるけど、うーん、カレがバイトすること自体は社会経験としてはありなんだけど……
今となってはどうしても、カレとの時間が減ってしまうことが引っかかる。
せめてボクの目の届く範囲で働いてくれるなら許容もできるんだけど。
ううん、これはちょっと後々考えないといけないな。
カレなら何を仕事にしても器用にこなしてくれるだろうし。
選択肢はある。
まぁ、今は置いておこう。
「当日はきっとどこも混んでいるよ?
それよりも二人きりでパーティーをしたいかな?」
「あ、そうだな。
あんまり混んでるところにオマエを連れて行きたくないし……」
カレには申し訳ないけど、ボクがこう言えば折れてくれると思ったよ。
でも、カレと二人だけで過ごしたいってのは本音なんだ。
できれば、ずっと二人きりでいたいくらいなんだから。
「うん。
ハロウィンパーティー用の料理か。
となるとやっぱりかぼちゃを使った料理かな?
煮物、天ぷら、コロッケ……どれも美味しいけど少し地味だね。
他になにかあるかい?」
「パンプキンパイを食べてみたい」
「ふむ。炭水化物ばかりだ。
あとパーティーっぽい料理だから派手さも欲しいね。
かぼちゃづくしも悪くないけど、別にこだわる必要もないか。
メインを肉か魚にして、まわりをかぼちゃ料理で固めよう」
「オレも手伝うぞ」
「キミ、毎回それを言うね」
「別に社交辞令じゃないぞ」
それは判っているよ?
カレにはボクが料理するのを待っていてもらいたいんだよね。
できればキッチンに立つボクを眺めて、欲情して欲しい!
料理中のボクを背後から優しく抱きしめて、そのまま……ってのをやってみたいんだ!
「〜〜♪」
機嫌良くハミングなんかしながら、カレの胃袋を満たすために、甲斐甲斐しく料理するボク。
そんなボクを見ていたら、カレはもよおしてしまって、静かに背後から忍び寄ってくるんだ!
ボクがカレの気配に気がついた時にはもう遅くて、背中から優しく拘束されてしまう。
「わ!?
びっくりした。
どうしたんだい?」
「……」
無言のままのカレ。呼吸は熱く、カレの拘束は強くなる。
「あ……
料理してるから、危ないよ?」
ボクはそう言いながらカレのしたいことを察して、包丁を置いてコンロの火を止めるんだ。
一応というか……料理を続ける体裁を整えながら、カレからの行為を待つ。
「待ちきれなくなってしまったのかな?
もうすぐできるから、あと少しだけ待っていて……ふぁ」
カレの手はボクの柔らかな場所に伸びて、焦らすように触れてきた。
「あぁ、待ち切れない」
浅ましくもカレの手技にあっさりと反応してしまったボクの身体は、あっという間に蕩けてしまうんだ。
「ふぁん!
あ、あっ!
ごはん、すぐできるからぁ!」
「わかってるだろ?
オレのこと焦らさないでくれよ」
「あ、そんなぁ……」
カレの言葉とは裏腹に、焦らされているのはボクの方で、ボクの準備はすっかり整って、あとはカレの許可を待つばかり。
「ほら、そこに手を置いて。
このまま……いいか?」
「……うん」
ふはっ!
いいね!
素晴らしいね!
早く来てくれよっ!
こっちの準備は万端なんだよっ!!
まったく、ボクの家で夕餉を摂るときは毎回誘ってるつもりなんだぞ!
カレときたら、むらっときてる癖に最後の一歩を踏み出してくれないんだよね。
まぁ、そのぶん後から激しくはなるんだけど、帳消しにはならないからな!
くそっ!
やはりお尻の振り方に魅力が足りてないのか!?
もっとこう……カレの脳髄にぐさっと刺さるような魅惑の腰使いができてないってことだろう。
ボクもまだまだ甘い。
日々是精進だ。
いつか、カレがむしゃぶりつきたくなるような仕草を身につけて悩殺してやるんだからな!
「なんか食べ物の話してたら腹が減ってきたな」
と、ボクが決意も新たにカレから襲われることを誓っていると、呑気に空腹を訴えてきた。
むむむッ!
度し難いほど危機感がない!
そんなことでキッチンに立つボクを手籠めにできると思っているのか!?
いや、もう手籠めにはされちゃっているんだけど、キミのために手料理を作っているカノジョに襲いかかる気概を見せなくちゃダメだろう!?
ボクが一生懸命誘っているのは判っているくせに!
何を無駄に自制心を働かせているんだよっ!
決めたぞ。
今、決めたっ!
やはり甘かったのはボクだ。
今、この時、ボクはカレを魅了するために進化するぞっ!
ボクは一秒ごとに成長するカノジョなのだ。
キミの自制心など簡単に崩してやる。
「そうだね。
夕餉にはちょっと早いけど、準備をしようか。
なにか食べたいものはあるかい?」
「そうだな。
かぼちゃの話をしてたら食べたくなった」
「ハロウィンは月末だしね。
プレハロウィンだ。
シチューかグラタンなんてどうだい?」
「いいな、それ
食べたい!」
「了解したよ。
キミは待っていてくれ」
「オレも手つ……わ、判った」
ただならぬ気配を感じ取ったのか、カレは言葉に詰まりたじろいだ。
そうだ。
キミはただボクの肢体を舐めるように眺めて、熱く滾らせていればいいのだ!
ボクはカレに近づいて、首筋に顔を寄せる。
カレの匂いを確認して、ちゅっと唇を押し付ける。
ついでにカレの頭をぎゅっと胸に抱いて、すぐに離した。
とどめにカレのズボンの上からさらりと撫でて、確認すると?
よし!
ちゃんと反応しているね。
がちがちだ!
「え?
え!?
今のやる必要あった?」
カレは呆気に取られつつも、顔が真っ赤だ。
「もちろんだ!」
だってそうしないと奥ゆかしいキミのスイッチが入らないだろう?
プレハロウィンなんだ!
かぼちゃ料理の後は、簡易版にはなってしまうけど、コスチュームでプレイだぞ。
さっきカレがぶつぶつと呟いていた、ミニスカメイドなら持っている!
カレの好みは把握しているからね。
こんなこともあろうかと用意だけはしておいたんだ。
ふむ、ちょうど良い。
ミニスカとはいえメイド服を着るのだ。
ボクの本気のご奉仕を見せてやろうじゃないか!
本番のハロウィンでは『えっちなオオカミさんと赤ずきんちゃんごっこ』をする予定だけど、今日これからするのは『いじわるなご主人様と健気なメイドさんごっこ』だ!
「ちょっと着替えてくるから待っていてくれ。
……いや、待っていてください、ご主人様っ!」
「え? は?
ご、ご主人様?」
そうだ!
今からキミは、健気に働くご奉仕大好きなメイドさんに、えっちでいじわるな命令ばかりするご主人様だ!
戸惑うカレを置いて、ボクは衣装部屋へ向かった。
……よくよく考えてみたら、このシチュエーションってすごくボク好みなのでは?
カレがご主人様だぞ!
ボクに命令とかしちゃっても、良い立場なんだ。
しかもえっちな命令とかも、ご主人様なら当たり前だよね!
勢いよく部屋のドアを開いてクローゼットへ向かう。
そして、奥にあったメイド服を引っ張り出した。
一度、袖を通してからは仕舞いっぱなしになっていたけど、とうとうカレの前で披露する日が来たのだ。
ボクは素早く着替えて、鏡の前で己の姿を確認した。
ふむ、なかなか良いんではないか?
鏡の前でくるりとターン。
本格的なヴィクトリアンメイドではなくて、可愛い系のメイド服だけど、これはこれでアリだ!
「よ、よし!」
鏡の中のボクは、カレが思わず飛びかかってしまいそうなほど、従順なメイドに見えるぞ。
今からボクはご主人様に絶対服従の健気な働き者のメイドさんだ!
これなら……!!
時間にして数分だけど、これ以上ご主人様を待たせるわけにはいかないぞ。
ボクはカレの待つリビングへ
滑るように階段を下りて、ドアの前で急停止。
ヘッドドレスの位置を直して、深呼吸。
ボクはリビングのドアを押した。
「おまたせしたね!
……じゃなかった。
お待たせいたしました、ご主人様」
今のボクはご主人様にかしづくメイドなのだから、あくまで静かに。
ご主人様の意を汲み、あらゆることに先回りし、
ご主人様に永遠に仕える狂気の誓約者だ。
雨露に打たれる草花のように、ご主人様の命令には従っちゃうぞ!
もちろん、えっちなことだって!!
むしろそれが主だった任務だね?
メイドはご主人様の
身体中の穴という穴を使ってご奉仕しなければならないのだっ!!
「これよりお食事の支度に取り掛かります。
ご主人様のお口に合うよう心を尽くして料理いたします。
どうか、今少しだけお待ちくださいませ」
ボクはセリフを言い終えると、献身的なメイドらしく従順な感じを醸し出しつつ頭を下げた。
そして顔を上げて、目の前のご主人様へと微笑みかける。
「お……」
ボクの変わり身に呆気にとられていたカレ――じゃなかった、ご主人様がようやく口を開いた。
「おお、おおお、おおおおお!」
どうみても興奮してるね。それも尋常じゃないほどに!
うん、カレがメイド好きなのは所持していたコンテンツの傾向から知っていたけど、予想以上の反応だ。
これなら想定以上に簡単にカレの理性を飛ばせそうだ。
あとは、料理中に襲ってくるようにしむければミッションコンプリートだ!
「それでは、行ってまいり……って、うわーっ!?」
ボクが魅惑の腰つきでカレ……じゃなくってご主人様を悩殺しつつキッチンへ向かおうとしたら、強引に手首を掴まれて、ソファーに押し倒された。
「オマエ、オマエっ!」
しまったなぁ。
ちょっとやりすぎたかな?
顔の筋肉が緩んでしまうよ。
明らかに冷静さを失ったカレ……もういいか、カレが力加減も出来ずにボクに迫る!
ちょっと痛いけど、良い! すごく、良いっ!
血走った目がかっこいいよ!
メイドさんキャラが崩れて、顔がにやけそうになってしまう。
目論見としては、キッチンに立つメイド姿のボクに我慢がしきれなくなったカレが、理性の糸をぷつんと切らして襲いかかるって感じの予定だったんだけど。
いきなり、ここまでヒートアップするとは思わなかった。
「あぁ、ご主人様、いけません。
こんなに日の高いうちからこのようなご無体は。
今夜、夜伽に参りますので、どうか今はお許し……んっ」
セリフの途中でカレに口を塞がれた。
演技力とシチュエーション作りには自信があったんだけど、裏目に出てしまったというか、効果てきめんというか。
願ったり叶ったりだね?
ボクは口内を蹂躙されながらほくそ笑んだ。
「ぷはっ!
ご主人様、ご無体はお許しください。
御夕食の支度を……」
しおらしく身体を小さくして、小動物のように怯えて見せる。
「オマエはメイドのくせに主人に逆らうのか?」
おお!
一気に役に入ってきたね!
横暴なご主人様になりきったカレが、ボクの捕食を始めたよ。
柔らかで美味しそうな場所を食んで、敏感で恥ずかしい所を噛まれる。
「あぁ、ダメぇ。
お食事の支度をぉ……」
カレに合わせて、ボクも盛り上がってきてしまった。
あぁ、もうダメだ。このままじゃ、ご主人様には逆らえない従順なメイドになりきってしまう。
……なにも問題はないね?
「メイドの仕事は食事を作ることだけか?」
「あぁ、違います。
ご主人様にご健やかに過ごしていただくのがお仕事です」
「だったら、今のオマエの態度は違うよな?」
「……はい」
狩り獲られた草食動物が、肉食動物に屈服する。
哀れなメイドは諦めたように顔を逸らし、ご主人様の為すがまま。
「くっくっく、急に素直になったな?」
ご主人様に相応しく口の端を歪めて、ボクを見下ろしてきた。
うわっ! ぞくぞくするよ。
「はい、どうぞご自由になさってください。
ボクはご主人様の……所有物です」
自分の口にしたセリフに、ボクの脳はどろどろに蕩けてしまった。
カレも、はっとしたように動きを止めてボクを見つめる。
ボク、今、いったいどんな表情をしているんだろう?
カレの雰囲気から察するに、とんでもなく……
「……オマエ、さすがにもう止まれないからな?」
「うん」
役作りってのは形から入ることが重要なんだと、よくよく理解できた。
カレもノリノリだし。
ボクもウハウハだし。
ここはもう一押し。カレにとどめを刺さなきゃ。
ボクはぼんやりと熱に浮かされた頭でも、どうにかカレを誘惑する術を考えた。
「ご主人様に逆らう、いけないメイドにお仕置き……」
複雑なことはできなかったけど、せめてボクの
「……して?」
「――っ!?」
カレが声にならない悲鳴を上げて、ボクに襲いかかってきた。
計算通りっ!
って感じにほくそ笑む余裕もなく、いじわるなご主人様となったカレに、従順なメイドのボクは、もうありえないほど翻弄され続けた。
メイドのコスプレを強行した甲斐があったというものだね!
……ちょっと癖になりそうだ。
~つづく~