黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
「オマエ、ホント気をつけろよ?
オレが役にハマりやすいってのは前に聞いたけど、自覚がないんだって」
カレが弱りきった様子でボクへ言ってくるけど、特に問題は感じないね?
むしろカレの真骨頂を身を持って体験することができて、ボクとしては嬉しい限りだ。
一通りカレから
なかなか魅惑の体験だった。
カレも熱が冷めるまでは、それはもう堂に入ったご主人様っぷりを発揮して、ボクに対して、たっぷり、ねっとり、じっくり、それはもうしつこく、メイドへの
うーん?
カレ的にはボクへ激しくしすぎたってところかな?
そんなこと気にしなくていいのにね?
ちなみにボクはまだメイド服のままだ。ちらちらと感じる視線からすると、若干カレの冷却は済んでいない気がする。
よしよし。せっかく盛り上がっていたんだから、メイド服を脱ぐなんてありえないだろう。
「別にいいじゃないか?
ご主人様……とっても板についていたよ?」
今のボクは人の悪い笑顔をしてしまっているかもしれない。
でも、カレのご主人様ムーブはボク的にすごく、すごくっ、すごーーーく!
興奮したよっ!
「あ、う……
お、オマエだってメイドが……」
「うん!
ボクのメイドっぷりには自信があるよ!」
「ぐっ!?
た、確かに文句のつけようもないメイドだったけど……」
「ふふ、キミ好みの従順で可愛らしいメイドだったろ?」
その上、ついついイジメたくなってしまうような雰囲気も持ったメイドさんだったはずだ。
「ぐぬぬ、否定できるところがない」
「キミのご主人様具合も素晴らしかった!
特に従順なメイドに対するマニアック極まるお仕置きの数々が……」
「そ、そこまでだ!」
カレが慌ててボクの言葉を遮ってきたんだけど、二人きりなんだし誰に聞かれるわけでもないし、いいじゃないか。
というか、いつも思うんだけど、ボク的には誰かに聞かせたいんだけど?
「ハロウィンも楽しみだね?」
「あ、あぁ」
「さっきも言ったけど、衣装によっては準備に時間が掛かるかもしれないから、早めにね?」
「わ、わかってる」
ふっふっふ、何か言い淀んでいるみたいだけど?
言わなくていいのかな?
ボクはいつものようにカレへと笑顔を向けて、カレの言葉を待つ。
リクエストしたいけど恥ずかしいってところだろう。
眉毛が上がったり下がったり、口がへの字になったりわなないたり、目もちょっと泳いでいる。
いろいろな表情が見れてボクにとっては、なかなか嬉しい時間だ。
カレの百面相は見ていて楽しい!
そんな感じの葛藤の末、カレは絞り出すように声を出した。
「その……メイド服、また着て欲しい。
今度は本格的な方で」
「キミのお願いなんだ。
もちろんOKだよ?」
ボクはカレの要望に即答した。
「今日は準備不足だったからね。
当日はもっとすごいぞ。
楽しみにすると良い!」
「お、おう!」
カレのことだ。今度はもっとフェチズムに満ち溢れた責め手を繰り出してくるに違いない!
本格的なメイド服ってのは、ヴィクトリアンメイドのことだろう。
露出はほぼないけど、上品な雰囲気はボクも好むところだ。
キャラ設定はクール系でいいかな?
感情をほとんど表に出さない鉄面皮って感じの。
軽いセクハラ程度は受け流して動じないんだけど。
それでもご主人様の責め手に屈して、とろりと溶け出す羞恥心とかすごくいいよね。
例えば、ペンライト片手にスカートの中に潜り込んだご主人様から実況されたり悪戯されたりとか。
ガーターベルトとストッキングを用意しておかねば!
「オマエもなんかリクエストしてくれよ。
オレばっかり一方的なのは性に合わない」
「む……」
まったく律儀だなぁ。
ボクは好きでやっているんだから、気にしなくていいのに。
「そうだね……」
カレにしてもらうコスプレか。
オオカミさんの被り物は用意するつもりだったけど。
うーん、ボクがメイド衣装を着るんだからそれに合わせる?
ご主人様のコスプレ? なんか曖昧だな。スーツ姿じゃ普通すぎるし。それはそれで見たくもあるけど。
別にこだわる必要もないか。
アニメキャラ? ゲームキャラ?
いまいちピンとこない。
カレを着飾るのはボクとしても趣味の一つにしたいくらいなんだけど。
そもそもハロウィンだからコスプレしようって話だったんだし。
ホラー系のコスプレをカレにもしてもらうとか?
あ、ミイラ男とかどうだろう?
包帯はボクが巻くんだ!
そう! 股間の
「他には……」
その時、ボクの脳内で全てが繋がった!
カレをかっこよく着飾りたい。
ボクのメイド服。
ご主人様ではないにしても、責め立てる役割。
そうだ!
執事服ってのがあるじゃないか。
タキシード、モーニングコート、テールコート、どれも捨てがたい。
これは当日までに決めておこう。
いっそ全部用意するか!?
着こなしたカレとか超見たい!
コールパンツはサスペンダーで吊るして。
アームバンドもありだね。
コートを着ても脱いでも楽しめるぞ!
ネクタイは……まぁ、慶事でも弔事でもないんだし、いろいろ準備しよう。
蝶ネクタイを直すカレの仕草とかたまらない!
片方の目にはモノクル。髪型オールバックだ!
白手袋をキュッと装着するところとかくらくらするよっ!
シチュエーションはもちろん『我儘なお嬢様と教育係の執事プレイ』だ!
我儘三昧の世間知らずなお嬢様の将来を心配した有能な執事が、己の執事としての矜持を賭けて股間の教育執事棒で立派な淑女になるように躾けるのだ!(矛盾)
両親の無関心から我儘を言うことでしか己の存在を示すことができないお嬢様は、周囲に当たり散らして腫れ物でも触るように扱われるんだけど、それが暴虐無人ぷりに拍車をかける。
教育係の執事(カレ)だけが、自分を叱ってくれて、それは真に自分のことを慮ってくれてのことであり、我儘ではあるけど聡明なお嬢様は頭では理解していても、態度には素直に出すことが出来ない。
大好きな執事(カレ)にも当然のように厳しく接してしまい、後悔する毎日なんだけど、全てを受け止めてくれる執事(カレ)を深く深く信頼していて、ある日の夜、最後の手段として覚悟を決めた執事(カレ)に執事教育棒(カレのアレ)で
「お、おい!
大丈夫か、オマエ??」
「ふぇ? え?
んぁ、ああ、問題ないよ」
どうやら素敵なカレを妄想しすぎてトリップしていたみたいだ。
容赦のない責め責めな執事キャラのカレとか!
おっと、涎が……
「リクエストは決まったから、当日までには準備しておくよ。
楽しみにしてくれ!
あぁ、安心していい。
キミを格好良く着飾るだけだよ?
別に全裸にしてから『バカには見えない服を着せたんだ!』とか、無茶は言わないから」
「おい、やめろ!」
それはそれでありだったかもしれないけど、コスプレを堪能して、コスチュームでいろいろアレした後に最終的には……ね?
カレは大きく息を吐いて安堵した。
「まぁ、家の中でならどんな格好でもしてやるよ。
オマエのことだから、『女装して!』くらい無茶を言ってくるかと思ったんだが……」
カレの言葉に、天から落ちた雷が直撃したかと思った!
そ……ッッ
その手があったかァ~~~~ッッッ
くそ! くそっ! どうしてボクはその発想ができなかったんだ!?
カレに女の子の格好をさせる?
見たい! 絶対に見たいっ!!
見たいよ~~!
カレのスカート姿が見たい!
ふりふりのフリルをいっぱいあしらったロリータファッションとかさせたいっ!
さっきボクが着ていたメイド服を着てもらいたいッ!!
リボンとかも付けたい。
なんならメイクも!
そしてボクのパンツを履かせたい!!
くっ、今からでも前言を撤回して……
「格好良く着飾るかぁ。
まぁ、オマエのセンスなら安心だな。
量販店の服でもオマエに任せるときっちり格好良く仕上げてくれるもんな」
か、カレからの熱い信頼を裏切るわけにはいかない!
今から「女装して?」とかめちゃくちゃ言い出しにくい。
言ったら言ったで、苦笑いしながら着てくれそうだけど……
な、なんとか自然に着てもらえる方法を考えなくては!
「と、当日を楽しみにしていてくれ」
まずは、カレ用の衣装を多数用意するんだ。
そして、着替える度に褒めちぎる!
まぁ、理由なんてなくても褒めるけどね。実際ボクにとってはこの上もなく格好良く見えるだろうし。
褒めすぎるとカレは照れてしまうかも知れないけど、きっと気分は良くなるはずだ。
何着も着替えていく内に、おそらく着替え自体に抵抗感は失せるはずだ。
その時に、その瞬間に、さりげなく女装用の衣装に着替えてもらえばいけるんじゃないか?
よし! この計画でいこう!!
予備計画として、カレの望む
「……なぁ?」
「ん? なんだい?」
気が付かなかったけど、カレがボクのことをじっと見つめていた。
な、なんかじーーーって見てくるんだけど、もしかして企みが顔に出ていたかな?
「そ、そんなにずっと見られたら、ボク、熱くなってしまうよ?
あ、もしかして中身を見たいのかな?
さっきまで散々見ていただろう?
見ていただけじゃなくて、それはもう口に出すのも憚られるようなことをいっぱいしてきたのに、まだ満足していないのかい?
まぁ、キミが望むのならやぶさかではないよ?
さぁ、ボクはまだメイドさんの格好をしているんだ!
キミはご主人様として……」
「オマエさ、オレに女装してほしいとか思ってない?」
「あ、う、そんなことは……」
図星を指されてボクは言葉に詰まった。
してほしい、して欲しいっ、して欲しいぃっ!
カレは視線を切ることなく、ボクを見続けている。
「うぅ……」
別におねだりしてしまってもいいんだけど、なんか言い出しにくい。
ボクがメイド服のまま、もじもじしていると――この仕草は可愛いのでは? カレがやれやれと言った感じでため息を吐いて、ボクへ告げた。
「お祭りみたいなもんだしな。
それくらいやってやるよ」
「えっ!?」
まじで? ほんとに?? カレが女装を!?
「い、いいのかいっ!?」
「あぁ、いいぞ。
オマエがやってほしいと思ってるんだから、それくらい付き合うし。
コスプレなんだからアリだろ?
あ、でも、家の中だけだぞ?
絶対、外には出ないからな!」
そ、それだって全然オッケーだ!
カレをボクの自由に、とっかえひっかえ着替えさせて、あんな服やこんな服まで着せちゃうことができるなんてっ!?
スク水とか着てもらおうかな?
「そこまではやらんぞ?」
「……ボクの心を読まないでくれよ」
カレはにやりと笑ってから、ボクを抱き寄せた。
うわ、なんか……なんか!
「オレの方が先にメイドをお願いしてるからな。
お返しだ」
「……うん」
あぁ、ボクもうカレのためなら、なんでも受け入れちゃうかも。
スクール水着にニーハイでもブルマに猫耳しっぽでも幼児服にランドセルでもなんでもこいだ!
ぼんやりとした頭のままカレを見つめ返した。
カレはボクを離そうとしない。
うん、これはきっと
さっきのではまだ足りなかったってことだろう。
ボクは熱に浮かされたまま、そっと目を閉じて、おとがいを反らして……
――きゅるるるる~~~……
し、しまった!
さっきは中途半端な時間から
そして、今は夕餉を食べ終わっていてもおかしくない時間帯だ。
「……ぅ」
「……ぷっ」
カレがボクの身体を解放して、笑いを堪えながら言った。
「オマエは腹の虫まで可愛いんだな」
「っ!
そ、そうだ!
ボクはありとあらゆるところが可愛いんだ!
全部キミのためなんだからなっ!!」
「はは、ありがとよ」
「~~~ッ!」
せっかくすごくいい雰囲気だったのに!
くっ、腹の虫くらい制御できるようになってやるっ!
「メシにするか」
「うん、シチューとグラタンだと時間かかっちゃうから、ささっと作れる物でいいかい?」
「あぁ、インスタントでもいいくらいだ」
さすがに続ける雰囲気ではなくなってしまった。
む、無念だ!
でも、空腹さえ満たせば!
カレも時間は惜しいみたいだし。
手早く食事を摂って仕切り直しだ!
ボクは軽くメイド服を整えて、ついでにヘッドドレスの位置も直してキッチンへと向かう。
あ、そうだ。
メイドなんだから、きちんとご主人様に挨拶しなきゃ。
「それでは、すぐに準備いたしますので、今しばらくお待ち下さい。
ご主人さま」
しおらしく挨拶してから、ボクは顔を上げた。
「…………」
カレはなぜかちょっと神妙な顔になって頷くと、ソファーに深く座り直した。
む、なんだ?
少しだけ疑問に思いながら、キッチンへ立つ。
「ま、いいか」
今は何よりも、素早く夕餉の準備を整えよう。
ちょっと思案して、おにぎりと卵焼きとソーセージに決定。
これなら冷めても美味しく食べられるし、今夜の夜食になるね。
冷凍保存している白米と、玉子と燻製ソーセージを冷蔵庫から取り出して、ボクは夕餉を作り始めた。
「〜〜♪」
ハミングなんかしているが、作業は最速で行っている。
その時のボクはちょっとだけ焦っていた。
いい雰囲気を壊してしまったし、空腹だったし、なによりもカレを待たせたくなかった。
いろんな意味で。
一戦……ではなくて複数戦こなした後だったし油断もあったのかもしれない。
ボクは背後から近づいてくる気配に、まったく気づけなかった!
「……わっ!?」
ぎゅっと背後から抱きつかれる。
「何、作ってるんだ?」
カレがボクの顔の横から覗き込むように、尋ねてきた。
「あ……おにぎりと玉子焼き。
キミの好きな甘いの」
「そっか」
ボクに抱きついたままカレは離れようとしない。
うなじの辺りにカレが顔を埋めてきた。
すーっとカレが息を吸い込んだのがわかった。
こ、これは……!?
「す、すぐにできるから。
もう少しだけ待っていてくれ」
想像の中のセリフはこんな感じだったと思う。
カレの拘束が少しだけ強くなった気がした。
「待てない」
き、きたっ!
「そ、そんなに時間かからないよ?
おにぎりだけでも……ふぁん!」
カレの手がボクの柔らかいところを鷲掴みにした。
さっきの残り火はまだ燻っていて、あっさりと再燃してしまう。
「あぁ、ごはんの準備……しないとぉ!」
夢想していた通りのことが起きてしまっている事実に、身体を火照らせながら、ボクは言葉だけの抵抗をしてみせる。
こんなの完全にカレを煽っていることにしかならない。
「待てないって言ったぞ?
ご主人様に逆らうのか?」
「あ……」
そうだ。
ボクは今、カレの――ご主人様のメイドなんだから、逆らっちゃダメだよね?
緊張していた身体を弛緩させて、ボクはカレへと身を預けた。
「言うことを聞けない、ダメなメイドにお仕置き……してください」
自分のセリフに、ボクはぞくりとした。
後ろから抱きしめられているからカレの表情は伺えないけど、雰囲気は痛いほど伝わってくる。
「ほら、そこに手を置いて。
このまま……いいか?」
「……はい」
細部は違っているけど、概ね妄想した通りだ!
三大欲求ってのはもしかしたら、交換ができるのかもしれない。
カレとボクは空腹も忘れて、ご主人様とメイドさんごっこに時間も忘れて没頭してしまった。
「さ、さすがに腹減った」
「ふふ、ボクもだよ。
あんまりよろしくないけど、冷蔵庫にゼリー飲料があったはずだ」
ボクの方はカレからの
「ひとまずはそれでもいいから飲みたい。
取ってくるわ」
「あ、ボクが行くよ」
「いいよ。
オマエもうヘロヘロだろうが」
「じゃあ、お言葉に甘えて。
マスカット味でよろしく」
「はいよ」
そう言うと、カレはボクの部屋を出て階下へ向かった。
今何時だろう?
スマホもどこかに置きっぱなしだ。
後から『なかよしマップ♡』にきちんと記録しておかないとね。
内容は『コスプレ、ご主人様とメイドプレイ』ってところかな?
それにしてもお腹が空いた。
空腹具合からすると、けっこう遅い時間っぽいけど。
部屋を見渡せば、脱ぎ散らかしたカレの服と、目も当てられない状態になってしまったボクのメイド服。
プレハロウィンでこのありさまなんだ。
去年までは、まるで興味のないイベントだったんだけど、これは本番のハロウィンが楽しみで仕方がないぞ!
しかし、これではクリーニングに出すこともできないね。
ボクは動かない身体に鞭打って、メイド服に手を伸ばす。
なんとか手繰り寄せて、胸に抱いた。
顔を埋めると、カレの匂いで鼻腔の奥まで満たされて、頭がくらくらした。
あぁ、これは中毒性でもあるんじゃないか?
栗の花の香りだね。栗は秋の味覚だからちょうどいい!
ずっとすんすんしてたい!
吸ってー、吐いてー、吸って―、吐いてー、吸って―、吸って―、吸って―……
「何やってんだオマエ?」
「キミの匂いを堪能しているんだ」
即答するボクに、カレが微妙な顔をしていた。
「ほれ」
「ありがとう」
渡されたゼリー飲料は、ボクの要望通りマスカット味だ。
カレのは……バナナ味か。
それ、白くてどろっとしてるから見た目はカレのアレっぽい……
そうだっ!
良いことを閃いたぞ。
カレ味のフレーバーを開発すればお手軽に食ザーごっこが楽しめるのでは!?
味の再現は難しいかもしれないけど、
ボクはゼリー飲料をちゅるちゅる啜りながら、同じくゼリー飲料を全力で吸っているカレを見て、思わずにんまりと笑顔になってしまった。
「なんかとんでもないこと考えてないか?」
「ふふ、ボクの心を読まないでくれよ」
おしまい