黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
きちんと課題は片付けたぞ!
「そして、図書室も制覇してしまったね?」
「あ、う、それは……」
「うんうん。
ボクを頼ってくれて嬉しいよ?」
学園からの帰り道、ほっぺたを艶々とさせた王子様は言葉の通り嬉しそうに頷いた。
結ぶのが面倒くさかったのか、指先にリボンタイを引っかけてくるくる回しながら歩く。
「そういえば、今日の夕餉はどうするんだい?
一人なんだったらボクが作りに行こうか?
ボクの家でもいいよ?」
「オレの家でもいいか?
ゲームもしたいし」
「承知したよ。
キミとしては制服エプロンを見たいかもしれないけど、さすがに身体がベタついてしまっていてね。
ほら、あと
着替えてからでもいいかい?
あぁ、でもこのぐちゅっとしてるのは、キミの匂いに包まれている感じがしてすごく良い!
なるべく長く感じていたいんだけど……
もどかしいね?」
「いらんこと言わなくていいから!
シャワー浴びて、着替えてからでいいぞ」
オレもひとっ風呂浴びておこうかな。
「む?
お湯が勿体ないから一緒にお風呂に入った方が……」
「あー、腹減ったなー!
早くメシを食わないと血糖値が下がりすぎて辛いな―。
温かい手料理を食べて幸せに浸りたいなー」
「お安い御用だよっ!
今日はキミの好きな生姜焼きにしようか?
時間もかからないしちょうどいいね?」
「おお!
オマエの作る料理はなんでも美味いからな!
楽しみだ」
「一緒にお風呂入ってしまったら、夕餉が遅くなってしまうからね。
今日は我慢しよう」
「そ、そうだな。
まずは腹ごしらえだ!」
「うんうん。
そんなことを話していたら、オレと王子様の家の前に到着した。
「シャワー浴びたらそちらへ向かうよ。
あぁ、そうだ。
最近覗きという癖があることを知ったんだけど……」
「オレにはないから!」
「まぁ、そうだよね?
キミだったら一緒に入ってまじまじと、穴の開くほどねっとりと、舐め回すようにじっくりと見れるしね?」
「いいから、早く行ってこい!
あー、腹減ったなー!」
「ふふ、わかったよ」
ヒラヒラと手を振って門扉をくぐる王子様。
「それじゃ、また後で」
「はいよ……って!?」
最後にオレへ向かって、ヒラリとスカートをはためかせ、パンツを披露してから家の中へと消えていった。
さっき散々見たのにドキリとしてしまった。
なんせチラ見えした王子様の内股にキラリと光る……
「……はぁ」
大きく息を吐いて、オレも自分の家へと帰宅することにした。
絶品の生姜焼きを平らげて、まったりとした時間が訪れた夕食後。
「さて、ボクは所用があって作業をするけど、キミはどうするんだい?
あ!
食後だし、処理して欲しかったら言ってくれないか?
手でも口でも胸でもキミの好きなところで、ささっと済ませてしまおう!
デザートだ」
「ま、間に合ってるから……
なにかやりたいことがあるなら集中してくれ。
洗い物はオレがやっておく」
「む、ボクは甲斐甲斐しいカノジョなんだ。
洗い物をして食後のコーヒーくらい淹れるよ?
そしてカレシの欲求不満も解消して……」
「いいから!
大丈夫だから!
やりたいことがあるんだろ?
そっちを優先してくれ」
「むぅ、さっきボクを頼ってほしいって言ったじゃないか。
でも、カレシにコーヒーを淹れてもらうのも悪くないね」
「はいはい。
先にオレの部屋いっててくれ」
「了解だよ!
えっちな本を探したりしないから安心してくれ」
「いいから、早く作業を始めてくれ!」
そもそもオマエに全て取り上げられて、グラビア雑誌どころかJPEG一枚残ってないわい!
王子様はにっこりと頷いて行ってしまった。
「さて……」
洗い物を片付けて、コーヒーを淹れよう。
王子様はカフェオレ。オレはブラックだ。
ついでに甘い物も用意するかな。
確か、わらび餅があったはずだ。
オレの部屋に行くと、王子様はノートPCとにらめっこしていた。
涼しくなってきたせいか王子様は長袖シャツなんだが。
タイトな生地のせいか、妙に色っぽい。
ついつい王子様の胸に視線が行ってしまうが、先程致してしまったせいか、なんとか我慢ができる。
オレはバレないように深呼吸しつつ、コーヒーと一緒にわらび餅を王子様の前に置いた。
「コーヒー置いておくぞ」
「ありがとう」
端的な返事が返ってきたところを見るに、集中モードに入っているな。
こうなると邪魔をするのは憚られるので、そっとしておこう。
「胸に視線を感じるね。
いたずらしたかったら、構わないよ。
無表情プレイだ」
「いいから集中しろ!」
それは条件反射みたいなものなんだ!
王子様の作業を眺めていても良かったが、やはり胸が気になってしまうのは避けられない。
オレはヘッドホンを装着すると、後ろ髪惹かれつつもゲームハードを起動した。
「……たよっ!」
ん? なんか聞こえたような??
気のせいかな?
「……きたよっ!」
ヘッドホンから脳を直接刺激する軽快な音楽。
ゲーム性と相まってテンションが上がる。
と、ゲーム音が唐突に遠くなって、耳の圧迫感がなくなった。
「うひっ!?」
冷たい空気が耳を撫でたかと思うと、すぐさま柔らかくて温かい感触に耳を挟まれた。
「はむはむ」
いつの間にか王子様がオレの背後に忍び寄っていた。
ゲームに熱中していたオレのヘッドホンを外し、王子様は有無を言わせずオレの耳を甘噛みしてきたのだ!
さらに耳の軟骨に歯を立てられる。
「ちょ、ちょ!」
耳穴の中に舌先がねじ込まれ、さらに反対側の耳たぶは王子様の指先で摘まれたり引っ張られたり。
「ふぉ!?」
しかも後ろから胸板に腕を回されているもんだから、身動きも取りづらい。
オレは王子様を振りほどくこともできず、しばしの間王子様からの耳責めを堪の……受け続けた。
「……ぷはっ」
「お、おま、おま……え!」
「ふふ、なんだい、顔を真っ赤にして?
可愛らしいね?」
オレは耳を押さえて後ずさる。
王子様は満足したのか、唇をぺろりと舐めて、やたら妖艶な笑みを浮かべた。
「い、いきなりなにすんだよ!」
気持ちよかっただろうが!!
「むぅ、キミがボクを無視するのがいけないんだろう?」
「ヘッドホンしてたんだから仕方ないだろ?
声かけろよ」
「かけたよ。
まったく、ヘッドホンなんかしてさ。
ボクが居るんだから、一人の世界になんて入らないでくれよ」
いや、オマエが集中してるからゲームしてたら喧しいと思って……
あと膨れっ面をしているが、オマエの方が可愛いからな!
まぁ、いい。
ゲームをプレイしたかったのも事実だが、王子様の作業とやらが片付くまでの暇つぶしでもあったのだ。
どうやらその作業も終わったらしい。
オレは改めて王子様に向き直った。
「で、どうしたんだ?」
「うん!
できたよ!!」
大きな胸を張って、堂々と宣言しているけど、一体何ができたんだ?
それよりも内側からの圧力で、長袖シャツのロゴが魚眼レンズで撮影したみたいに歪んでしまって、そっちの方が気になる。
「……どこを見ているんだい?」
「あ、あ、どこって……」
「まったく、さっきからキミはボクの胸ばかり見ているね?
生も見るかい?
剥きたてだよ?」
「あ、う、見た……」
オレは本音を言いかけて、なんとか言葉を飲み下した。
「んん! で、何ができたんだ?」
「ふふ、素直じゃないね?
まぁ、後から存分に見せてあげるよ?」
王子様は重たそうに己の胸を持ち上げて見せてから、ぱっと手を離した。
たゆん、ゆん、ゆん、ゆ……ゅ……
脳内麻薬が溢れて出て、一瞬の出来事がスローモーションに見える!
王子様の胸に視線どころか意識まで釘付けにされてしまった。
「…………で、何ができたんだ?」
とりあえず、オレの粗相に王子様は満足したのか、話を先に進める気になったようだ。
「うん!
夕方話していた件だ」
なんだっけ?
「キミがボク以外を頼ることが気に入らないって話だよ!」
「あぁ……」
そのことか。
「調べ物するときに検索できないとか、現実的じゃないぞ?」
「もちろん、判っている!
解決方法も思いついてるって言ったろ?
というわけで、キミ専用の検索アプリを自作したんだ」
「ほう……」
簡単に言ってるけど、この短時間で作ったのか? 恐ろしい作業スピードだ。
「さすがに検索エンジンを作ることはできないからね。
検索自体は某G◯◯gleのAPIを使っているよ」
「ふむ」
「キミがゲームに熱中している間に、キミのスマホにアプリはインストール済みだ!」
「何勝手に人のスマホをいじってるの!?」
「ふふ、指紋認証はともかく、パスコードがボクの生まれた時間なのが嬉しかったよ?」
四桁のちょうど良い数字が思い浮かばなかったんだよ。
オレの誕生日だと王子様と一緒になっちゃうし。
「使い方は基本的に簡単だ。
『Hey 王子様!』
をウェイクワードとして、スマホに話しかけてくれ!
あとは尋ねたいことを音声入力すれば答えが返ってくるよ!」
Hey 王子様って……
そこはオマエの名前で良くないか?
「音声認識は◯PenAI Whisper API。
会話制御はGPT系のLLM。
そして受け答えの音声合成はなんとボクの生声をサンプリングして作ったんだ!」
ということは、このスマホに問いかけると王子様の声で返事がくるってことか。
いろんな意味ですごいな。
AI王子様って感じか?
うむ、ここは某大怪獣映画にあやかってメカ王子様とするのはどうか。
「アプリ名は……そうだね。
『キミにだったらボクなんでも答えちゃうよ? 例えそれがえっちなことでも』
なんてどうかな?」
「なげーよっ!」
「じゃあ、『検索
それもどうかと思うが、まぁいい。
「さぁ!
早速使ってみてくれないか?」
「わ、わかった」
うきうきと目を輝かせて、俺に催促する王子様。
さて、何を尋ねてみようか?
「えっと……Hey 王子様!
明日の天気を教えてくれ」
≪明日は雲の多い日になりそうだね。
予想最高気温は摂氏19℃。
予想最低気温は摂氏12℃だよ。
念のため折り畳み傘を持っていくといい≫
「おお!」
スマホから流れてくる王子様の声。
肉声ほどではないが、なかなかの美声だ。
「うん、きちんと動作してそうだね」
「すごいな」
「ちなみにボイストレーニングをきっちりしているので聴こえやすさには自信がある!
肺活量と腹筋にも自信ありだ!」
「そ、そうだったのか」
確かに声も大きいし、その、なんだ……すごく煽られる声だし。
「たまに酷い声が出てしまうこともあるけど、それはキミの責め手が激しすぎる時だ!
大歓迎だけど、恥ずかしいね?
でも、キミが望むなら……」
「わ、わかったから!」
「お゛! ん゛おっ!!」
「再現しなくていいから!」
「あ、折りたたみ傘はボクが持っていくからキミは持たなくていいよ。
雨が降ったら相合い傘をしよう!」
「まぁ、いいけど」
「降水確率は低そうだから、傘はいらないかもね。
あえて傘を持たないことで、雨が降ってしまった場合に濡れ透けたボクを見るってのはどうかな?
どちらがいいだろうか?」
「相合い傘をしたいから傘を持っていこう」
そ、そんな簡単に誘惑には乗らないぞ!
あと秋の雨は冷たいから王子様を濡らしたくない。
「そうだね。
濡れ透けボクならいつでも見れるしね?
キミのワイシャツを着てお風呂場でシャワーをかけてくれれば……」
オレは先ほどからの激しめの挑発をスルーして、改めてスマホの画面を眺めた。
UI自体はシンプルだ。一応文字入力もできる。
「よくこの短時間で作ったな。
正直怖いくらいなんだが」
「いやいや、まだ驚いてもらっては困るよ?
これはキミのために作ったアプリだから、当然キミ専用にパーソナライズしてある!」
「へぇ」
確かに折りたたみ傘を持っていけって返答してたな。
「試しに今ボクが身につけている下着の色を訊いてみてくれ!」
もはや何も言うまい。
「Hey 王子様!
今日の下着の色を教えてくれ」
≪もう、えっちだなぁ、キミは!
さっき見たし、脱がしたじゃないか?≫
「答えないのかよ!?」
「とまぁ、こんな感じで
変な質問をするとヤバそうだな。気をつけよう。
「使い方はわかった。
便利そうだな」
「うん、これでまた一つ、キミの行動にボクを介在させることができるね?」
なんだろう?
オレは気が付かない間に、王子様からいろんなことに侵食を受けてないか?
そういえば、少し前までは朝飯といえばブロック携帯食ばっかり食べてたんだが、いつのまにか王子様の作ったバランスの取れた、『The 朝食』ってメニューを食べるようになったな。
昼飯も王子様お手製の弁当だし。
夜は……親がいれば王子様を招待してうちで食べるけど、それ以外は王子様の家で食べることが多い。
そういえば、最近は着る服も王子様に選ばれているような……
制服はともかく、休みの日は王子様のコーディネートに従ってしまっているぞ。
衣食住のうち、衣食を王子様にがっちり握られてしまっている気がしてならないんだが。
うん、深く考えないほうが良さそうだな。
「どうしたんだい?」
オレは王子様をまじまじと見つめてしまった。
王子様に特に変化はない。
いつも通り、機嫌良さそうに微笑を浮かべてオレを見つめ返してきた。
「いや、なんでもない。
アプリがすごいなと思ってさ」
「ふふ、もっと褒めてくれても構わないよ?」
王子様は目の前にいるのに、オレは背後からふわりと束縛――抱きついてくる王子様を幻視した。
~つづく~