黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
「やあ。
遊びにきたよ」
「おー」
放課後、家の前で一旦別れて着替えに行った王子様がオレの部屋へやってきた。
オレも部屋着に着替えて一息ついた所だったんだが、見計らったかのようなタイミングだ。
どっかで見ているのか?
そういえば、監視カメラはどうしたっけ?
「さあ、今日は何をしようか?
ボクはキミのどんなマニアックな要望にも応える準備があるよ?」
「そ、そんなことしないから!」
なんで端から、その……やる気満々なんだよ!?
嬉しいけどっ!
「えー?
でも、昨夜だって……」
「そ、それはいいから!」
くっ、王子様と盛り上がってしまうとどうしても……
王子様もノリノリで付き合ってくれるし、なんならオレを挑発して煽るまでやってくるし!
「あ!
だ、ダメだよそんなところ!?
そこは自分でも見たことない所だよぉ!
恥ずかしいからぁ!
許してぇ……」
「再現しなくていいから!」
「ふふ、羞恥に悶えるボクを眺めて悦に浸るとか、なかなかどうしてボク好みだよ?」
「浸ってないから!」
「そうだね。
悦には浸ってないけど、弱り果てたボクをさらに責め立てて、おねだりさせたよね?
嫌が……ってはいないけど、女の子にするにはあまりにも無体なことをされてしまって、ボクはもうめろめろだったよ?」
「あ、う……」
「具体的には、選択肢をボクに委ねた上に、選択した方をキミに見てもらって、さらにどんなことをして欲しいか、ボクの口から明確に宣言させるという……」
「そ、それは……」
「ふふ、さらに
「あ、あ……」
「素晴らしいね!
とろとろに溶かされてしまったボクは、もうキミの言うまま成すがままって感じだったよ?
事実、その後のボクはキミの言うことは全て受け入れてしまって、普段だったら恥ずかしくて逡巡してしまうようなことですら、それが当然のことのように実行したんだ!
そう!
嬉しそうに涙まで流して!
躊躇う心なんてもうほとんどなくなって、羞恥に震えながらもキミが満足するように見せつけることまでしてしまって、ボクの頭の中はぐちゃぐちゃだ。
そして、最後にはキミからの許可の言葉だけでイッ……」
「まて!
待ってくれ!
それ以上は!!」
慌てて静止するオレに、王子様は満足そうにニンマリと笑顔を浮かべた。
「さあ!
今日は何をしようか?」
「なにかご所望のことがあれば何なりとお申し付けください。
誠心誠意、尽くさせていただきます」
「そうかい?
だったら……」
というわけで、オレは王子様を懐に抱えて座ることになった。
「むふー!」
王子様はご満悦だ。
「こんなのでいいのか?」
どんな無茶な要求をされるかと思ったんだが、拍子抜けだな。
「ボクにとってはこの上ないご褒美だよ?
昨夜キミに責められた甲斐があったね。
いや、それはそれでご褒美なんだけど……」
ツッコミを入れると十倍になって返ってきそうだったのでスルーして、オレは王子様を後ろから軽く抱きしめた。
王子様の高めの体温のせいで、ちょうど良いヌクヌク感だ。
「ぬくぬく感?
昨夜散々っぱら出しただろう?」
「そこまで明確に心を読むのはおかしいだろう!?」
「キミに十桁の数字を思い浮かべてもらって、それを当てる自信がボクにはあるよ!」
王子様は不敵に笑うと言い切った。
ホントにやりかねないのが恐ろしい。
まぁ、いい。
やり込められた腹いせではないが、せめて今は王子様の柔らかさと温かさを堪能してやる!
「ふふ、今のキミはボク専用の座椅子なんだ。
ボクにいたずらするのは構わないけど、離したらダメだよ?」
ふむ、王子様専用椅子か。
マッサージ機能付きと言い張って、いろんなところを揉んでやろうか?
「キミと一緒に過ごすと、すぐにセッ……夜の大一番を始めてしまうからね。
たまにはこうして、いちゃいちゃするのも悪くないかな?
でも……自然と身体が準備を始めてしまってるんだけど、どうすればいいだろうか?」
「まぁ、まだメシも食ってないし、我慢しとけ」
「むぅ……」
王子様はむくれて見せるが、半分は冗談だろう。
もう半分はOKのサインなんだろうけど、王子様が本気のときはオレが逃げられないように迫ってくるからな。
オレとしてもイチャつくのに否やはないし、むしろ大歓迎だ。
王子様も身体の力を抜いて、オレへと体重を預けてくる。
なんというか、正しくカレシカノジョって感じだ。
「あ、そうだ。
その端末を取ってくれないか」
そう言うと、テーブルに置きっぱなしの某リンゴ端末を指差した。
「ほれ」
「ちょっと見て欲しいものがあったんだ」
オレから渡された端末を操作する王子様。
「なんだ?」
「うん!
『なかよしマップ♡』の進捗具合を共有しておこうと思って」
「そ、そうか」
「ほら、見てくれよ!
キミとボクの足跡、もうこんなにたくさん……
我ながら照れくさいね?」
王子様がはにかんだ笑顔をオレへと向けてきた。
ものすごく可愛い仕草なんだけど、笑顔の理由が……
「ふふ、見てくれよ。
学園でのハートマークもいっぱい増えてきてる!」
改めて見ると、ホントに増えている。
いや、増えすぎている!
節操がないのは自覚しているけど、さすがにこれは……
「屋上を皮切りに、夜の教室、図書室、保健室にお昼の中庭!
思い出しただけでも身体が熱くなっちゃうね?」
ど、同意を求められても困るぞ。
王子様に免罪符をあたえてしまうようなものだ。
そうなってしまえば、ストッパー役のオレがただでさえ機能不全になりかけているのだ。
最早二人してとどまる所がなくなってしまう!
「ほら、音楽室なんて防音だったから、ボク、キミに酷いことされてしまったよ?
あんな言葉をあんなに大きな声で……」
「そ、それは!?」
「ボクの最高到達点になる瞬間をキミへと宣言しなければならないなんて!
しかも、キミはキミで面白がってボクにどれだけ大きな声を出させることができるかチャレンジし始める始末!」
王子様がオレのアゴ先へネコのように顔を擦り付けてきた。
「ボクもう頭の中までぐちゃぐちゃで、キミの言う通りに、大きな声で従うことしかできなかったよ?」
揶揄うように王子様がオレの太ももを撫でてくる。
オレは何も言い返すことができずに、ただ固まっていた。
「多目的室なんて、キミは一体どこまで多目的に使うつもりなんだい?
ボクはびっくりだよ!
楽しかったね?」
「あ、お?」
何か言い訳する前に、畳み掛けられてしまった。
「視聴覚室でもキミの
まさかスマホのカメラをスクリーンに表示するなんていう悪魔の発想をするとは思いもしなかったね!
あの時は流石のボクも恥ずかしさのあまり感極まってしまったよ?
なんせこの学園の視聴覚室のスクリーンは映画館並だし」
「あ、あれは!?
流石にやりすぎた、すまん」
「いやいや!
何も謝る必要なんてないよ?
ボクもすごく盛り上がったし!
でもまさかキミとの、えっと……接続部分をあんなに大映しするだなんて!
ボク、恥ずかしくて心臓止まるかと思った」
王子様が両手でほっぺたを隠して、言葉通り恥じらった。
すごく演技くさいが、指摘したら藪蛇になりそうだ。
「これはボクの家にもホームシアターの設置を検討したくなってしまったね!」
「べ、別にいいんじゃないか?」
な、何に使うつもりだ!?
「この調子では学園の制覇もあっというまじゃないかー!
ふふ、ボク困っちゃうなー?
三年間かけるつもりだったのに、これは2周目に突入もやむなしかな?
でも、職員室はハードルが高そうだね?」
「職員室は流石にねぇよ!」
「そうかい?
じゃあ校長室で!」
「もっとないわ!?」
「大丈夫!
校長室なんてあんまり使われてないんだし、むしろキミとボクで有効活用してやろうじゃないか!
あの高級そうなソファーに足跡を残してやろうよ?」
無謀な提案にさすがに尻込みしてしまう。
まぁ、冗談だとは思うが……冗談だよな?
王子様はニコニコと笑いながらオレを見てくるが、その瞳は真剣そのものだ。
こ、これはやはりオレがちゃんとしないと不味い!
「お、落ち着いた場所の方がオレはいいと思うんだ。その……な?」
王子様を懐に抱いたまま、どうにか説得を試みるが、どうだ?
オレへと体重を預けて、なぜかオレの足の指を弄ってくる。
王子様のおなかに回した腕から、王子様の体温が伝わってきた。
相変わらず細いウエストだ。折れてしまいそうなほどって形容がしっくりくるくらいには細く引き締まっている。
「確かにそうだね?」
「お、おう!
オマエもそわそわしながらだと、嫌だろ?
やっぱりオレの部屋とかオマエの家とか……」
「でも!
キミが暴走するのは大抵は
それに入っちゃダメな場所の方が……
キミだって嫌いじゃないだろう?」
「そんなことは……」
正直、嫌いじゃない!
王子様は確信に満ちた表情をオレへと向けるが、さすがに簡単に同意するわけにはいかない。
ここで頷いたら、今からでも行こう!とか言い出しかねないぞ。
オレが言葉に詰まっていると、王子様は弄りまわしていたオレの足の指から手を離して言った。
「ふふ、冗談だよ?
キミを危ない目に合わせるわけにはいかないしね」
わ、わかってくれた……のか?
「それに、学園の中にはまだまだ
まずはそちらが先決だ!」
「いや、わざわざ学園内でしなくても……」
「体育倉庫なんて定番でいいんじゃないかな?
マットなんておあつらえ向きだよね?
応用編だと跳び箱にボクの上半身を乗せて……なんてのもありだ!」
オレは王子様の言った光景を想像してしまって、思わずごくりと喉を鳴らした。
「ふふ、急に人が来てしまって、跳び箱の陰に隠れるなんて定番だよね?
あとはそうだね……
体育倉庫に閉じ込められて、密室でキミとボクの二人きり……なんて素敵なシチュエーションはありかもしれない」
それ、定番でいうんなら、閉じ込められてトイレに行きたくなって……なんてことになっちゃうんだけど。
「まぁ、学園内でするとこもいっぱいあるってことさ!
次はどこにしようか迷ってしまうよ」
「あ、あぁ、そうだな?」
想像した結果、ドキドキしてしまったので楽しみなことは否定できない。
「さて、夕餉までにはまだ時間があるね。
ボクはちょっと仕上げたい作業があるんで、集中してしまうんだけど、このままの体勢でよろしく!」
「構わんけど……」
王子様と密着したままか。
温かいし柔らかいし良い匂いするし、ちょっとどころではなく頭が熱くなってたんどけど……
さっきから挑発してくるし!
平常心を保たねば。
「まぁ、一時間程度で終わると思うので、その間ゲームでもして、気を紛らわせてくれ」
「わ、わかった」
王子様が某人気携帯ゲーム機を手渡してきた。
これで遊んでろってことか。
まぁ、ちょうど有名シミュレーションRPGのリメイクを買ってたんだ。
腰を据えてプレイしよう。
王子様の端末を覗き込むと、凄まじい速さで作業が進んでいくのが見えた。
次々とノードを繋いで、何かのプログラムを作成している。
「……ふむ」
まぁ、いいか。
覗いているのもあまり行儀が良いもんじゃないだろう。
あと、背後から王子様を見下ろしているもんだから、谷間が……
オレは断腸の思いで谷間から目を逸らすと、ゲーム機を起動して大人しくゲームを始めた。
~つづく~