黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
「よし、できた!」
「うぉっ!?」
王子様の体温に、少しばかりムラ……集中しきれずにゲームをプレイしていると、突然王子様が声を張り上げた。
身体がビクッとなってしまったが、王子様はそんなことは気にもとめず嬉しそうにオレを見上げてくる。
「な、なにができたんだ?」
「うん、見てくれよ!」
そう言いながら、王子様はタブレット端末を差し出してきた。
画面いっぱいに広がる渦。
中心に向かって薄ピンクの渦がぐるぐると回りながら集まっているようにアニメーションしていた。
あ、なんか目が表示されて、クワッと瞼が開いた。
これはまさか……
「催眠アプリだ!」
「アホかーっ!!」
何を作っとるんだコイツは。
思わずツッコミを入れてしまったが、とりあえず実害のあるモノじゃなさそうだ。
アプリなんぞで催眠なんかにはかからない。
そもそも催眠術も眉唾だしなぁ、オレ的には。
「む、なんだよ。
せっかく作ったんだぞ」
王子様も本気じゃないだろうが、ちょっと不満そうに口を尖らせた。
「このアプリを起動してしまえば、たちどころに催眠にかかってアプリ使用者の言いなりになってしまうんだぞ!
ちなみに、このボタンをタップすると催眠開始で、こっちのボタンで催眠解除だ」
【開始】【解除】と分かりやすいように画面下にボタンが配置されている。
「ふっふっふ、さぁ!
この【開始】ボタンをタップして、ボクに催眠をかけてくれよ!
そして、キミの大好きなちょっとアブノーマルなプレイをボクに致すんだ!!」
「あ、アブノーマルじゃねーし!」
「えー?
でも、昨夜だって……」
「そ、それはいいから!」
本日2度目!?
「恥じらうボクを嘲笑うように、ボクの一番恥ずかしいところを責め立てたじゃないかぁ?
ボクはただキミへとしがみつくことでしか抵抗を示せず、身体の芯から溢れる熱に翻弄されたんだ!
爪でかりかりするのは反則だと思う!」
「それはその……」
「ふふ、なかなか刺激的だったよ?
キミの優しげな眼差しに見守られながら、あんなに恥ずかしいことをされているというのに、ボクは恍惚としてしまうんだ!」
「よ、よし!
さっそくアプリを使ってみようぜ!」
「しかもキミときたら、ボクが限界を迎えても止めてくれないし!
それどころか羞恥に震えるボクの中に指を……」
「おお!
このアプリすごいな、音声とも連動して催眠に導入されやすいようになってるんだな!」
「しかも2本!」
「あー、使い方がよくわからないなー!
早く使ってみたいから教えてほしいなーっ!」
「ふふ、しょうがないなぁ、さっき言っただろ?
使い方は簡単だよ。
この【開始】ボタンをタップして、画面を相手に見せればいいんだ。
3秒後に催眠スタートだよ」
どうにか王子様の追求を躱すことに成功した……たぶん。
言われた通り【開始】ボタンをタップすると怪しげな音波とともにピンク色の渦が激しく回転し始めた。
「……なるほど」
定番の催眠っぽいアニメーションといえばそうかもしれない。
すぐに【解除】ボタンをタップしてアプリを停止させる。
「とりあえず動作はちゃんとしているみたいだね。
キミのスマホにもインストールしておいたよ!」
「さいですか」
コイツはまた人のスマホへ勝手にインストールして……
まぁ、今更いいんだけど。
スマホを見てみれば、『なかよしマップ♡』の隣に新たなアイコンが鎮座していた。
瞼に縁取られた目の中にぐるぐるが描かれている。切れ長の目なんでなんとなく王子様っぽい。
「ふふふ、どっちから試す?
キミに催眠アプリを使ってもらってもよし!
ボクに催眠アプリを使ってもよし!」
どっちも同じじゃねぇか! どんだけ催眠されたいんだよっ!
「じゃあ、オレに仕掛けてくれ」
さすがに効果はないだろうし。
「……まぁ、構わないけど。
いいさ! ボク謹製の催眠アプリの威力、とくと味わうと良いっ!
ぽちっとな」
芝居がかった調子で言うと、王子様は【開始】ボタンをタップした。
自信満々な笑顔とともにタブレット端末がオレの眼前に向けられる。
謎の音波とピンク色の渦。
催眠ウェーブがオレの脳内へ染み込み、視界に映る桃色の渦から吸い込まれるような感覚が全身を包み、オレは何も考えられなくなってしまい、催眠状態に……
って、かかるわけないだろっ!!
「ふふ、キミはだんだんと頭がぼんやりとしてきて、何もかもが億劫になるんだ」
うっとりとした顔で、王子様がオレへと囁きかけてきた。
「さぁ、もう考えることが面倒くさくなってきただろう?」
よし、ここは乗ってやろうじゃないか。
「……ぁ、ぅ」
くっくっく、催眠にかかったふりをして王子様をからかってやろう。
「そう、キミはもう何もしなくていい。
ボクにすべてを委ねてくれ。
赤子のように、ゆりかごに揺られて、ただただ微睡みの中で、うすぼんやりとボクのことだけを思って……
ふふ、必要なことは全部ボクがしてあげるね?」
なんか、怖ーよっ!
王子様がとろけるような瞳を向けつつ、オレの顎を指先でなぞって、妙に色っぽい声で語りかけてきた。
「さて、そろそろかかったかな?」
「……」
と、とりあえず催眠にかかったふりは続行だ!
王子様がオレのほっぺたを突付いてきたが無反応。
くすぐられたりしたらやばかったが、オレは浅く呼吸しながら人形のように無表情を貫いた。
王子様は下から覗き込むように、オレの反応を伺っている。
「おーい?」
「……」
目の前で手を振られる。
「むむ」
「……」
耳たぶをもみもみされた。
「キスしちゃうぞ?」
「……」
素数を数えて一切の煩悩を抑え込むのだ! 48、59、69、072、081、92……
「……ちゅ」
「………………」
や、やばかったが表面的な変化は抑えられたはずだ、多分!
「も、もしかしてホントに催眠にかかっちゃったのか!?」
自分でもアプリの性能を疑ってんじゃねぇかっ!
「こんな急造のアプリで催眠にかかっちゃうなんて……ボク、すごく不安だよ?」
嬉しそうに言っても説得力がない!
王子様はほっぺたを赤くしながら、熱っぽくオレを見つめてくる。
ちょっとはやまったか?
「まずは右手を上げてみてくれないか?」
言われた通り右手を上げる。
「次は左手も上げて」
左手も上げる。
「ふむ。
両手を下ろしてくれ」
万歳状態だった両手を下ろして、元の体勢に戻る。上げっぱなしだったら辛かったかもしれない。
「ボクをぎゅっと抱きしめてくれ!」
王子様の望んだ通り、強めにぎゅっと抱きしめる。
「ふあぁ……」
恍惚とした表情を浮かべながら王子様は悩ましげなため息をついた。
「こ、こんなの!
ダメだ!
ボク、むくむくとイケナイことをしちゃいたい欲求が溢れてきてしまう!!」
なんだよ、イケナイことって!?
「よ、よし!
まずは手を緩めて今度は……
ボクの胸を触るんだ!
もちろん両手で!!」
……迷ったが、オレはかかったふりを続けて王子様の言葉に従った。
王子様の大きな胸に両手を添える。
揉みしだきたい欲求は、全力で必死に全身全霊をかけて抑える。
ただ手を置くだけなんて、くやしい!
だが相変わらず大きく、そして柔らかい!
しかも王子様、厚手のシャツなのを良いことに着けてきてないな!?
「むぅ、指示通りなんだけど……
これが普段のキミだったら、喜び勇んで涎を垂らしながらえっちな目つきで、そしてさらにえっちな手つきで揉みしだくというのに!!
これが催眠の弊害か」
さすがに涎は垂らしてねぇよ!
目つきはエロいかもしれんが……
「ふむ、次はそのまま揉んでみてくれないか?」
もみもみと機械的に触る。ぐっと堪えて、あくまでマシンのように!
いやらしさなど、微塵もこれっぽっちも寸毫ほどもなく!!
「うぅ、これはちょっと想定と違うぞ。
やっぱりキミのえっちな雰囲気に当てられながら、リズミカルかつ熱中して揉んで欲しいかなぁ。
いつものように、ねっとりとしていてそれでいてしつこく、さらには甘やかな痛みと優しい撫で方でボクを翻弄するように!
でも、これはこれで……」
好き放題言われているが、今は我慢だ!
王子様は機械的な触り方をしばらく堪能して、あれやこれやと批評していた。
~つづく~