黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
「次は常識改変いってみようかな?」
じょ、常識改変!?
いったい何をするつもりだ?
王子様はもう一度アプリを起動して、オレへと向けてきた。
「おはようの挨拶はキス!
あ!
もちろん恋人であるボクだけにだよ」
それくらいなら構わんな。
「もちろん、べろちゅーだ!
濃厚なやつを5分……やっぱり10分!」
べ、別に大丈夫だ!
「あとはそうだね……
登校前にボクの下着を確認すること!
これはカレシとして当然だろう」
な、なんか変な方向に行き始めたぞ!?
「登下校は手を繋いで……いや、腕を組んで登校すること!
なるべく親密にべったりと爛れに爛れて腐り落ちる寸前の熟した果実のように甘い雰囲気を出せるとなお良いね!」
難しすぎる!
「お昼ご飯はクラスメートの前で、ボクに食べさせて貰うのが当たり前のことなんだ!」
ハードルが上がった!?
「キミは箸を使うつもりなんてまったくなく、ボクが食べ物を差し出したら口を開けるんだ。
飲み物は……ふふ、これは口移ししかないね!」
そ、そろそろ限界か?
「放課後はかならず学園のどこかでボクと
それはまさに部活動の如し!
部員はキミとボクの二人だけ。
いいね?」
さすがに無表情を貫くのが難しくなってきたぞ。
「そして帰宅してからだ!
キミがボクの部屋に入るときは全裸で入室するのが礼儀作法だ!!
さらにただいまの代わりにそのままボクを押し倒して……」
「できるか、そんなことーっ!!」
とうとうツッコんでしまった。
全裸入室が当たり前ってさすがにキツすぎるわ!
「む、なんだよ。
やっぱり催眠にかかってないんじゃないか」
「当たり前だ。
アプリだけで催眠とか流石に無理があるわい!」
王子様はやれやれといった様子でため息をついた。
「まぁ、ボクもこんな簡易的なアプリで催眠がかけられるとも思ってないけどね。
本格的なモノを用意するとしたら、やはりもっと大掛かりにやらないと!
まずはリラックスした状態を作るためのリラクゼーション設備。
次に集中力を高めるために音声などによる誘導。
呼吸法なんかの指示でもいいかもしれない。
そして行動を誘導するための暗示。
これは自己暗示でもいいだろう。普段からキミは役柄にはまりやすいから簡単だ!
最後に自己暗示から催眠状態に入るためのトリガーワードだね!」
王子様はすらすらと言い連ねるが、言う通り大掛かりになる上に事前の仕込みも時間がかかりそうだ。
「トリガーワードだけだと、足りないかもしれないからこのあたりを催眠アプリとして作るのはありだね!
音声、視覚からの情報のほうがより強い暗示に誘導できるかも知れない」
パブロフの犬みたいなものか?
例えば王子様の部屋にきたら必ず行う行動を決めて、無意識の内にでも行ってしまうくらいまで何度も繰り返す。
その時に言葉とか音楽とか何かの絵柄とか行動に紐づけて、それをアプリで再生なり表示なりをすれば催眠にかかったように行動を誘導できる……かもしれない。
「……ちょっと難しくない?」
「そうだね。
ボクも簡単にできるとは思ってないよ。
実はノードを使ったビジュアルプログラミングを試してみたかったんだ。
簡易なアプリだけど短時間で作ることができたから、なかなか面白い」
「なるほど」
催眠アプリだったのはどうかと思うが、目的がビジュアルプログラミングのお試しだったんなら、納得だ。
何か作ってみた方が実践的だし、覚えも早いし、楽しいだろう。
「まてよ。
キミを全裸入室させることはできないとしても。
ボクの部屋にきたら、一気にむらむらしちゃうようには誘導できるんじゃないか?
例えば、聴き取ることはできない極低周波を流しておいて聴覚的に影響を与えて、さらにアロマなんかで嗅覚にアプローチして、最後に視覚的にカレをムラつかせることを繰り返す!
そうすれば、いずれボクの部屋に入っただけとか低周波を浴びただけとかアロマを嗅いだだけとか、そんなのでもキミはむらっとしてしまうんではなかろうか!?」
「やめてくれ」
あと、そんな面倒なことしなくてもオマエがちょっと薄着しだけでこっちはムラっとしちゃうんだよっ!
言わないけど。
「よし、それじゃ、次はボクに催眠アプリを使ってみてくれ!」
いや、もう効果がないってわかっただろう?
「いやいや、たまたまキミに効果がなかっただけかもしれない。
二人目の検証は必要だろう!」
「……まぁ、いいけど」
王子様が楽しそうにしているので、水を指すこともない。
本人も使われてみて効果がないと実感できれば諦めるだろ?
オレは自分のスマホの催眠アプリを起動した。
「じゃあ、いくぞ」
「うん!
初めてだから優しく……ね?」
「いらん挑発をするな!」
頬を赤らめながら言う王子様のしおらしい仕草に、演技と判っていつつもドキッとしてしまう。
オレは勢いに任せて【開始】ボタンをタップした。
スマホ画面を王子様の目の前にかざす。
謎の音波が流れ始めて、ピンクの渦がぐるぐる周る。
一連の催眠シーケンスが終わったタイミングでオレは王子様に言い放った。
「よし!
一人称を『わたし』に変えて自己紹介をしてもらうおうか?
まずは名前からだ!」
「……」
オレの命令に王子様は黙したまま、何度か瞬きをして首をかしげた。
「うん、やっぱりきかないね?」
そりゃ、そうだろうよ。
王子様は自分でも簡易版って言ってたくらいだしな。
「あと、せっかく催眠にかけるんだから、もっと破廉恥極まりない命令をしてほしいものだよ?
例えば、右手で輪っかを作って前後に動かしつつ舌を出させるとか!」
「するか! そんな命令」
催眠にかかってなくても、オマエならやっちゃいそうだと思ったんだよっ!
「まぁ、こんなところかな?
ビジュアルプログラミングの感じも掴めたし、アプリの動作自体は意図した通りだったし」
「へぇ、オレも触ってみようかな」
「良いと思うよ。
ツール自体は無料だし……って、あれ?」
「どうした?」
王子様が突然動きを止めて、不思議そうな顔をした。
虚空を見上げて、瞳の焦点がどこか遠くに合っているような。
それも一瞬の出来事で、すぐに王子様はオレへと向き直った。
そして、自分の身体を見下ろして、バツの悪そうな顔をオレへと向けてくる。
「いや、すまない。
ボクとしたことが、こんな無作法をしてしまうだなんて。
キミには申し訳ないことをした」
「なんのことだ?」
「いやいや、ボクがキミの部屋に居るというのに服なんて着てしまって。
恥ずかしいったらない!」
「はぁ?
ちょちょちょっ!
オマエいきなりなにしてんだ!?」
王子様はオレの目の前でいきなり服を脱ぎ始めたっ!
シャツを捲り上げると可愛らしいヘソが見えた。引き締まった腹筋に心拍数が跳ね上がる。
さらにシャツが捲られて、王子様のきれいな胸がまろび出た。
王子様の動作は自然で、なおかつ止める暇がないほど洗練されていて、まるで時間が圧縮されたようだ。
オレが止める間もなく、最後の一枚を――パンツを足から抜き去り空中へ放り投げる。
ゆっくりと空を舞い、オレの顔面へふわりと落ちてきた。
――あたたか~い
そして、一糸纏わぬ剥きたて王子様が現れた!
「しかもただいまの挨拶も忘れていただなんて。
さぁ、ボクを押し倒してくれ!」
パンツを顔に乗せたまま呆気にとられて硬直していたオレの手を取ると、これまた流麗な動きでそばのベッドに倒れ込みつつ、オレを引き寄せた。
流れるように自然な形で、オレは王子様を押し倒してしまった!
「あぁ、パンツが……じゃなくて!
な、なにを……んぅっ!?」
そのまま王子様にしがみつかれ、唇を塞がれる。
積極的によく動く王子様と、さっきから
5分……10分か? 時間が経つのも忘れて王子様を貪った。
「ぷは!
……ふふ、やっぱり挨拶は大事だね?」
「い、いきなりどういうつもりだ?」
「何を言っているんだい、キミは?
キミの部屋に入るときは全裸になって入室するのは常識だろう?
そして帰宅したら、ただいま代わりに押し倒してもらうのも常識だ!」
「オマエこそ何言って……」
あ、さっきの常識改変か!
「って!?
あれはオレへの催眠であって、オマエはかけた方だろうが!」
「んー?
催眠?
なんのことかな?
催眠アプリが失敗してしまったのは残念だったね?
でも、キミの部屋では全裸でいることとは関係ないじゃないか?」
あくまでしらばっくれるつもりだ、コイツ!
「催眠かかったふりしてんじゃねーよ!」
「うん。
催眠になんてかかってないよ?
さぁ、ただいまの続きをしよう!」
「いや、だからおかしいだろ!」
王子様がオレの腰を両足でがっちりホールドしてきた。
「むぅ!
ここまでお膳立てしたんだ。
興奮に我を忘れて、キミはただボクを貪り食えばいいじゃないか!
それとも……」
潤んだ瞳を上目遣いでオレへと向けながら、王子様は甘く縋るような声で言葉を落とした。
「……いやなのかい?」
まぁ、こんなことされてしまったら、オレももう止められそうにないけども。
そもそも王子様が遊びにきてからこっち、初手から挑発されてずっと我慢してきたのだ。
「嫌なわけないだろうが」
「もう素直じゃないなぁ。
あ、わかったぞ!
ボクを焦らして媚び媚びな状態にしてから、昨日の夜みたいにえっちなおねだりをさせる気だね?」
あんまり考えてなかったけど、それもいいなぁと思ってしまう程度にはオレの頭は茹だっていた。
「今のボクなら常識改変もできてしまうかもしれないよ?
ふふ、ボクはいったいどんな変た……常識からかけ離れた行為を当たり前だと思わされてしまうんだろう?」
「そ、そんなこと……」
「女の子がするにはあまりにも無茶なことを常識だと思わされてしまうのでは?
きっと情け容赦ない辱めをボクは受けてしまうんだ!
ふふ、楽しみだね?」
オレの脳内に溢れかえる妄想の数々。
飲ませる。かける。舐める。見せる。言葉にする。自ら啜る。匂いを嗅ぐ。塗ったり、出したり、眺めたりっ!
……全部普段からやってないか?
「さぁ、ボクの方はもう準備万端なんだ。
……もう待たせないでくれ」
どちらかというと、今日はオレの方が焦らされたんだけどね。
いいだろう!
王子様との催眠ごっこだ!!
期待に満ちた王子様の視線を受け止めて、オレはおもむろにスマホをかざした。
一応、本日の流れとして催眠アプリを起動して王子様へ向ける。
「よ、よし!
まずは……」
次の日になったらきっと激しく意趣返しされるんだろうなぁ、と思いつつも本日も己の暴走を止めることなどできなかった。
「なぁなぁ。
次はこの催眠をかけてくれないか?
カレシとカノジョはずっと
もちろん、家だけじゃなくて外でもだよ?」
「……オマエ、繋がったままって。
外でどうやってやるんだよ?」
「世の中には櫓立って手法があるという」
「あぁ、駅弁……って!
アホかー!」
おしまい