黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
カレをサニタリールームまで連れていき、シャンプードレッサーの前に座ってもらう。
さすがにサロンのようなシャンプーチェアまではないけど、そこそこ大きなドレッサーだからカレの髪を流すくらいなら十分だ。
「じゃあ、前屈みになって頭を差し出してくれ」
「おー」
「お湯かけるよー」
「おー」
湯の温度を手のひらで確かめてから、シャワーでカレの後頭部から湯を浴びせる。
髪が濡れると、カレのうなじが現れた。
とりあえず匂いを確認しておこう、くんくん!
「洗っていくね」
「おー」
シャンプーを手に取り、カレの髪の毛に馴染ませて、指先で頭皮をマッサージするように、柔らかく泡立てていく。
散髪でカレの髪の毛をゲットして。
さらにシャンプーまでできてしまうんだから。
このカレの髪の毛を洗ってあげる時間はなかなか至福だね。
ううむ。
やはり今後入浴はカレと一緒にすることも真剣に検討しなければ!
「お客様ー、痒いところはございませんか?」
「ないぞー。
って、オマエ毎回それ言うな?」
キミ専属の美容師なので当然なのだ。
「じゃあ、泡を流すよ」
十分にカレの頭皮を堪能したところで、改めてカレの頭に湯を浴びせた。
綺麗に泡が流れ去って、しっとりと濡れそぼったカレの後頭部が見える。
散髪した時か、一緒に入浴した時くらいしか見れないレアな光景に目を奪われたけど、カレをこのままにしておくわけにいかない。
タオルをカレの頭へと被せて、丁寧に水気を取る。
「はい、あとはドライヤーだね」
「それくらい自分でや……お願いしていいか?」
「もちろんだよ!」
大人しく椅子へ座り直したカレは背筋を伸ばす。
よし!
かっこよくヘアセットさせてもらおうかな。
ボクは両手にブラシとドライヤーを構えると、丁寧にヘアブローを始めた。
カレは物珍しげな視線でボクの作業を見守っていた。
「普通に乾かすだけでいいぞ。
めんどくさいだろ?」
「いいや、ぜんぜん!」
キミをボクの好きなようにアレンジできるんだぞ!
ご褒美以外の何物でもない。
むしろ、自分の髪のセットよりも気合が入っているね。
ドライヤーの温風を適度に当てながら、丁寧にブラシで梳かす。
普段の分け目よりも横にずらして髪の流れを作る。
ふむ、なかなかいい感じだ。
分け目の位置をずらしただけでも、だいぶん印象が変わるね。
だいたい乾いたところで、グリースを使ってちょっとウェットに仕上げつつ、動きのあるふわっとした感じを出して完了だ!
「おお!」
おしゃれにそれほど興味のないカレにして、感嘆の声を出させるほどの仕上がりになったぞ。
ふふ、我ながら上手くいった。
「うん、かっこいいよ!」
「そ、そうか?」
「あぁ、ボク以外の人間には見せたくないね!」
「……そ、そうか」
まいったぞ。こんなにかっこいいカレを世に放ってしまったら、よからぬ羽虫が集ってきてしまうかもしれない!
くっ! 困ったなぁ。ボクのカレシとして自慢したい気持ちもないではないんだけど、こればっかりは二者択一だぞ。
まぁ、いい。
カレ一人ではこの髪型のセットはできないだろうから、カレに委ねることにしよう。
「毎朝セットしてあげようか?」
「んー……」
思案顔になって首をかしげるカレ。
ふふ、なかなか可愛い仕草じゃないか?
ボクを誘惑しているのかな?
「それはやらなくていいわ。
オマエとデート行くときとかは頼むかも」
「うん!
承知したよ」
なかなか良い返答だ。カレも判っているね!
カレは左を向いたり右を向いたり、物珍しげに自分の髪型を確認していた。
ボクに抜かりはないぞ!
どの角度から見てもかっこよく見えるように調整済みだ。
普通の美容院ではこうはいかないぞ。カレの頭の形を熟知しているボクだからこそできる芸当だね。
「そういえば、オマエはいつも……というか子供の頃から同じ髪型だよな?」
「ん?
まぁ、ほとんど変えていないね。
王子様っぽい髪型ってのを意識していたからなんだけど。
ロングヘアでもよかったかもしれない」
「うーん」
カレは少し考え込んでから、鏡に映るボクの頭を見つめていた。
「伸ばすつもりはないのか?」
「キミが伸ばして欲しかったら伸ばすよ」
ボクの身体はすべてキミの好みにしたいからね。
王子様の役割なんてのはキミを手に入れてしまったのだから、捨ててしまっても構わない。
「オマエなら今のまま短くても、長くしてもどっちでも似合うな」
ロングヘアのボクを想像でもしているのか、カレは何やら嬉しげな表情を浮かべていた。
「ふふ、何を想像しているんだい?」
「まぁ、オレが想像できる範囲内でいろいろな髪型を」
うはっ!
カレの脳内映像にボクが表示されているかと思うと、身体が熱くなってしまうね!!
い、いったいどれほど破廉恥な妄想をされてしまっているんだろうかっ!?
すごくいいねっ!
どんと来い、だっ!
黒髪ロングカット王子様系幼馴染のカレへの好意は空よりも高く海よりも深く全銀河を覆い尽くすぞ!
カレが好むならショートでもロングでもどちらでも構わないんだけど。
ロングヘアだとどんなものがあるかな?
カレの好きな髪型は基本的に定番っぽいものだけど。
髪が長ければいろんな髪型が試せそうだ。
定番のロングストレート。
元気な感じが演出できるポニーテール。
真面目系の委員長風で三つ編みなんてどうだろう?
ハーフアップはバリエーションがあってアレンジできそうだ。
伸ばしてから敢えて短めに見せるシニョンなんかも良いかもしれない。
ゆるふわな巻き髪で大人っぽい印象をカレに見せるのもいいね!
あぁ、あとはちょっと子供っぽくなってしまうけどツインテールなんてのもあるか。
ツインテールかぁ……
ある日の放課後のことだ。
ツインテールが結べるくらいまで髪を伸ばしたボクと、普段通りのカレが学園の屋上で過ごしているんだ。
でも、その日はたまたまカレが
「はー、なんかすっきりしないな」
「ど、どうしたんだい?」
「あぁ、昨日少し足りなかっただろ?」
「足りない?」
「オマエへの
「あ、それは……」
「飲ませ足りなかったんだよなー」
「そ、そんな!
昨日の夜もあんなにいっぱい……」
「足りない分はきちんとしてやらないとな?」
「……ぁ、う。
で、でもここは学園だし」
「うるさい!
オレが
オマエは黙って口を開けてればいいんだよっ!」
「あ、乱暴にしないでぇ!」
「いいから、さっさと口開けろよ!」
「あ、うん……
わかったから、きちんとキミを気持ちよくするからぁ」
「最初から素直にしてればいいんだ!
まったく、オレが持ちやすいようにそんなハンドルみたいな髪型しやがって!!」
「ふぁっ!?
そんなバイクのハンドルみたいに持たないでくれぇ!」
なんてね! なんてねっ!!
こう考えるとロングヘアもなかなかメリットがあるかもしれない!!
毎日アレンジして違う髪型をカレに見せるとか、なかなか楽しそうだ。
と、ボクが麗しい想像に浸っていると、カレが提案してきた。
「ポニーテールとかどうだ?
伸ばすのに結構かかると思うけど」
お、定番できたね。
「こんな髪型とか……」
スマホで検索した画像をボクへと見せてきた。
アニメかゲームのキャラクターか。
ポニーテールを折り返して、後頭部で纏めている髪型だね。
まぁ、いいだろう。
なかなか可愛らしい。
正面からの絵面的には今のボクとそれほど大差ないかもしれない。
「なるほど。
覚えておくよ」
「お、おう」
キャラクターの画像だったから抑えられたけど、これがどこぞの馬の骨の写真だったら、思わずカレに襲いかかってしまったかもしれない!
唇を奪い、舌を吸って、耳を甘咬みし、首筋にキスマークをつけて、噛みついて歯型もつけて……
それはそれでありだったかな?
「まぁ、今から伸ばしても一年くらいはかかるかな?」
「あぁ。
でも、しばらくはその髪型でいいんじゃないか?」
「む?
そのこころは?」
「えっと、なんだ、その……」
カレが頬を掻きながら顔を反らした。
「なんだい?
気になるから教えてくれないか?」
「あー、うー、えー」
発声練習でもしているのかな?
「ふふ、さぁ、早く言ってくれよ?
どうしてボクは髪型を変えないほうがいいんだい?」
「……オマエ、わかってるだろ?」
「さて?
なんのことかな?」
「その、なんだ……」
「うん!」
「オマエに似合ってるし……」
「うんうん!」
カレが苦虫を噛み潰したような表情で、観念したように言った。
「王子様だったオマエを独占してるって感じがするからだよ!」
「ふはははは!
いいよ!
実に良い!!
キミはボクのカレシなんだから、大いにその気持ちを味わって欲しいねっ!」
あぁ、カレの独占欲のなんて心地良いことか!
我知らずおなかの奥が熱くなってしまう。
察するに、学園の王子様を我がモノにしたことへ、ほどよい優越感を感じてくれているってところかな?
そして、然る後に髪型をカレの好みに変えさせることで、さらに独占欲を加速させる感じ?
まったくもう!
キミが生まれた瞬間から、ボクはキミのモノって決まってるのにね!!
あぁ、でも、ボクを、学園の王子様を徹底的に完膚なきまでに一切の疑いなく考慮の余地すらなく
ふふ、まったく可愛らしいったらないね?
ただもうちょっと我欲を丸出しにして欲しいというか。
もっとボクにただならぬ行為をしてほしいというか。
例えばそう!
身体の目立つところにキスマークを付けるとか!!
カレの
ボクの身体中に油性マジックで自分の名前を書いたり、『オレ専用』とか書いちゃうとか!!!!!!
いくらでもやりようはあるだろうに。
「ふふ、キミが短くしていて欲しいっていうなら否やはないさ。
実際、ボクの髪質はちょっと癖っ毛だからね。
ストレートヘアにするには工夫がいるし、キミ好みのポニーテールだとちょっとボリュームが出過ぎちゃうかもしれない」
「そうなのか?
まぁ、実のところオマエならどんな髪型も似合いそうだから、なんでも良いって言えば良いんだが」
そういうのが一番困るんだけどね?
「でもいいのかい?」
「なにがだ?」
「あぁ、キミのコレクションの中に髪コ……」
「それはオレの性癖じゃないから!」
「あれは流石に髪が長めでないと難しいね?」
「だからいいって!」
「髪の毛にかけるっていうプレイが……」
「それもオレの癖じゃないって!」
「髪の毛にかかっちゃうと取るの大変だしね?」
「だから!」
ちょっとからかいすぎてしまったかな?
ボクはカレへと背後から抱きついた。
「ぉ……」
お詫びじゃないけど、しっかりと胸を押し付ける。
「じゃあ、せっかくセットしたんだし、さっそく……」
「あぁ、駅前に甘い物でも食べに行くか?
買い物とかあるなら付き合うぞ」
「それもいいんだけど……」
首筋に鼻先を擦り付けて、カレの匂いを堪能する。
シャンプーしたてで若干匂いが薄いけど、散髪も洗髪も整髪もすべてボクの行ったことなので満足だ!
「お、ふぉ……」
カレも察したのか、身体が硬直する。
「頭は洗ったばかりだけど、せっかくお風呂場が近くにあるんだ……」
計算通り!
っていうほど目論んでいたわけじゃないんだけど。
カレとボクの間の雰囲気は一気に
「て、天気いいぞ?
この時期にしては寒くないし……」
そうだね。
まだ陽は高いし、天気も良いけど、ボクとしてはカレと二人きりで居たいんだ。
ボクは何も言わず、カレをさっきよりも強く抱きしめる。
「まぁ、無理に外に出なくてもいいけど……」
ふふ、カレもその気になったようだね。
ボクを抱きつかれたまま、カレがゆっくりと立ち上がった。
そのまま振り返って、ボクを抱き返してくる。
カレの顔は、これから起こるであろう出来事を予想してちょっと赤くなっている。
ふふ、ボクも同じかもしれないね?
ボクが手ずから整えた髪型のせいか、カレが
やはりたまにはいいかもしれない。
真剣なカレがボクを見つめ返してきて、胸の高鳴りが留まるところを忘れてしまったようだ。
ゆっくりとカレの顔が近づいてきて……
「あ、お風呂場だったら髪の毛にかかってもすぐに洗い流せて安心だね?」
「もっと雰囲気を大事にしろよ!」
「うわー」
一気に、カレに押し倒されてしまった。
強引さが実にボク好みだね!
おしまい