黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
カレとボクが結ばれる、ほんの少し前の話。
なんとかカレとの仲を進展させたくて四苦八苦していた頃のことだ。
「ふむ、ラッキース◯ベか……」
世の中には素晴らしい発想をする者がいるのだ。
名称こそ、ここ最近考えられたようだけど、シチュエーションの数々は太古の昔から存在する。
すっかり日も暮れて、夜の帳が落ちたころ。ボクはぱたりとコミックスを閉じて関心した。
受験を無事終え、晴れて進学したカレとボクは疎遠になることもなく(ありえないけど)、相変わらず生まれたときからの幼馴染という、至高の関係を続けていた。
しかし、言い換えてしまえば関係性に変化がないとも言える。
桜は咲き誇り、まだ慣れていない制服に袖を通して、新たな環境に身を置いているんだ。
何か変化があってもおかしくない。
いや、むしろカレとボクの関係にこそ、新たに、激しく、著しく、変化があるべきなのだ。
具体的にはそろそろカレシカノジョになりたい!
恋人同士になっていちゃいちゃしたい!
今も十分親密な関係ではあるんだけど、カレもボクも身体的にはもう大人なんだ。
生まれる前からカレがボクと結ばれることは決定しているんだし、この世に生を受けて十五年も経っているんだから、もう凸と凹が合体してロになってしまってもいいだろう!
生徒が皆まだまだ浮足立っている若葉の緑が目に眩しい季節だ。
自分の意図したこととはいえ、ボクは学園の王子様などと周りから呼ばれてしまって、面倒くさい限りだけど、布石は打った!
カレへの包囲網も張れたし、あとはきっかけだけなんだ。
まぁ、そのきっかけ作りに難儀しているんだけどね。
カレを問答無用で押し倒してしまってもいい……とは思ったし、カレが受け入れてくれる確信はあるけど、できればカレの方から、ね?
ボクは力強く、強引に、激しく、猛々しく、嵐に翻弄される小舟のように、肉食獣に狩り獲られた小動物のように、奪われたいのだ!
あ、初々しさも大事だね!!
嬉し恥ずかしのちゅーから始めて、お互いの身体の成長度合いを確かめあって、十五年も一緒に過ごしてきたのに、カレもボクも触るのは初めての場所に触れ合って……
あぁ、あぁ! 楽しみすぎる!!
ボクの成長具合はすべてカレ好みだぞっ!
胸だって自然と大きくなってしまったし、腰は細く、お尻はきゅってなってるし!
……と、脱線してしまった。
それでカレを籠絡する参考にならないかと、カレが所持していた漫画から選んだんだけど、とても素晴らしい着想を得ることが出来た。
参考書代わりにした本の表紙には、可愛らしい女の子のキャラクターが描かれている。
髪の色は黒だったり茶色だったり金色だったり桃色だったり。
肌色成分が多い。
2次元とはいえ、ボク以外の女子が描写された漫画を読んでいることは業腹ではあるけど、今は置いておこう。
いくつか例を挙げてみよう。
物語のキャラクターが遅刻しそうな登校時に曲がり角を曲がったタイミングで誰かと接触する。
この場合、主人公が男であったならぶつかった相手はヒロインのライバルキャラで転校生だ。
出会い頭の接触なので、当然そのまま両名転倒してしまうんだけど、転んだ拍子に主人公は転校生の下着を覗いてしまうんだ。
より過激な展開の場合もある。
転校生の胸を鷲掴みにする。
股間に主人公の顔が納まる。
キスをしてしまうなんてのもある。
要するに、そうはならないだろう!って展開になってしまうのだ。
ふむ、カレとならどの展開もありだね!
でも出会い頭にぶつかるってシチュエーションがもうありえないか。
だって、ボクがいるのは常にカレの隣だからね。
では次だ。
こっちのシチュエーションの方がボク好みかな?
こんな感じ。
「おーす。
来たぞー」
そんな親しげな挨拶をしながらボクの部屋のドアを開けるカレ。
ノックをしないのは礼義としては間違っているかもしれないけど、カレとボクの仲ならそんなモノは不要だね。
「英語の課題でわからないところあってさ。
ちょっと教えて……って、おおお、オマエ!?」
「やぁ、いらっしゃい。
すまないね。
ちょうど着替えていたんだ」
「わ、わるい。
外で待ってるから!」
慌てて出ていこうとするカレ。
「ははは。
廊下は寒いだろう?
すぐに済むから部屋の中にいればいいじゃないか」
「あ、ああ……」
ボクが引き止めると、戸惑いながらもカレは素直に従った。
カレは必死に目を逸らそうとするんだけど、ボクの若草のような色香に目を奪われて動けずにいるんだ。
ボクはカレの視線に気が付かないフリをして、ゆっくりと見せつけるように着替えて、カレの情欲を煽る。
「やぁ、お待たせしたね。
で、英語の課題だっけ?」
「……っ」
カレの視線はどこか険しく、決意を滲ませるモノだった。
ボクは警戒心のカケラもなくカレへと近づいて、いつもの様に親しげに笑いかける。
距離感はカレの匂いが感じられるほどだ。
年頃の男女が一緒の部屋にいるんだ。
何が起きてもおかしくないよね!
カレはボクの手首を力強く掴むと、壁へと押し付けてくるんだ。
「ん。
どうしたんだい?」
「オマエ……
さすがに油断しすぎだろ」
「うん?
油断なんてしてないさ。
だって、ボクはキミを誘っているんだもの」
「だったらしょうがないな」
そのまま、カレとボクの影は一つに重なり、単なる幼馴染の関係から一歩どころかゴールまで前進してしまうんだ!
「素晴らしい!」
ボクは思わず叫んでしまった。
ラッキースケ◯を利用してカレを誘惑するっていう手段はアリだ。
読んでいたコミックスでは着替えを見られてしまったヒロインが、「いやーん! えっちーっ!」って言いながら主人公を引っ叩くんだけど、意中の人を殴る心理がボクには理解できない。
むしろそれを利用して関係を進めないでどうするんだ?
というか、好きな相手なら見せたいと思うんだけど……
見てもらいたいし、触ってもらいたいし、なんなら吸われたり、揉まれたり、舐められたりしたい!
むむ、やはり理解できない。
まぁ、いいか。
「さて……」
どうやってカレへとラッキー◯ケベを提供するか?
ボクの部屋に訪れてくれれば手っ取り早いんだけど、カレが思春期に入ってからは遠慮しているのか恥ずかしがっているのか、来てくれないんだよね。
代替案を考えなくては。
学園の更衣室はどうだろうか?
むむ、事故が怖いな。
カレにはボク以外の雌どもの穢らわしい肌など、万が一にも見せたくない。
これは却下だな。
保健室は?
場所は悪くないね。
でも、カレと一緒に保健室へ行く口実を作らないといけないな。
腹痛のフリをしてカレに保健室まで連れて行ってもらって、楽な格好になりたいと言ってカレに着替えさせてもらうとかどうかな?
うん、これはもうラッキース◯ベではないね。
あと、カレに嘘をつくのも嫌かな。
でもシチュエーション自体は悪くないから、このアイデアはストックしておこう。
「うーん……」
計画的にラッキースケ◯を起こすのはなかなか難しいね。
階段から一緒に転げ落ちて、気が付いたらボクのスカートの中にカレが顔を突っ込んでいた……なんて状況はそうそう生まれるものではない。
それに危険なことはしたくない!
安全かつ自然にカレをえっちな展開に巻き込みたいんだけど。
「やはり、どうにかしてカレをボクの部屋に呼び寄せるのが無難だね」
進学したんだし、一緒に勉強しようと呼びかければカレも来てくれるだろう。
カレはわりと心配性だし、入学早々勉学で躓くことを良しとはすまい。
「と、そろそろ行かなくては」
今日はこれから、カレと一緒に課題をする約束をしているのだ。
ボクは鏡の前で身なりを確認して、気合を入れる。
清潔感のある部屋着であり、気心の知れた隣に住んでいる幼馴染が、ふらりと部屋に遊びにいくのに相応しい恰好だろう。
ただしきちんと女子らしい服装でもある!
ふわふわ、もこもこで男子受けが良いことはリサーチ済みだ。
ちゃんと女の子として意識してもらって、カレをどきどきさせちゃうぞっ!
親友のような距離感のままではダメなのだっ!!
この恰好なら押し倒されても、脱がせやすくて、カレに手間をかけさせないし。
待てよ? ブラのホックを外すのに四苦八苦するカレを見るというのも……
おっと、悩んでいる暇はないね。
さっさとカレの元へと馳せ参じようじゃないか。
ボクは軽く髪型を整えて、カレの部屋へと向かった。
つづく