黒髪ショートカット王子様系幼馴染のオレへの執着が怖い! 作:クリームパイ太郎
「というわけで、今からキミに料理を手解きするよ!」
「あぁ、よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
溌剌と宣言する王子様にオレは頭を下げる。
挨拶は大事だからな。
王子様も同じようにお辞儀して、王子様の料理教室が始まった。
ことの発端はある日の昼休み。
いつものように、王子様から手作り弁当を食べさせてもらっていた時のことだ。
……最近、箸を渡されないことが多いんだよな。
「美味しいかい?」
トロリとした表情の王子様の、嬉しげな問いかけを聞きつつ、お手製のミートボールを味わう。
「あぁ、もちろん美味いぞ。
いつも通り不思議な味がするんだけど、そろそろ調味料を教えてくれない?」
「ふふ、そう簡単には教えられないかな?
大丈夫!
知らなくたってキミは生涯食べ続けることができるんだ。
安心してくれ」
「いや、そうじゃなくて……
オレも料理に使ってみたいというか」
「キミの体内に入るモノは全部ボクが把握しなければならないから、料理とかされると困っちゃうかな?」
王子様はにっこりと笑みを浮かべながらも、断固とした気配を放ってきた。
「あ、えっと……
その、なんだ?
オマエにオレが作ったモノを食べさせたいというか」
王子様の圧力に気押されたオレが、しどろもどろに言い訳を捻り出していると、唐突に王子様が反応した。
「そ、それはっ!?」
王子様が言葉に詰まったかと思ったら、徐々に頬を染めていく。
な、なんか王子様の琴線に触れるようなことを言った覚えはないんだけど、なんだ?
「だったら教えないわけにはいかないね!
ふふ、皆まで言わなくてもいいさ。
奥ゆかしいキミのことだ。
ボクの目の前で堂々と
こっそりと
そんなシチュエーションが良いってことだったんだね!
キミがしたいことは判っているよ?」
「あ、あぁ??
ありがとう」
オレのしたいこと?
料理を教えて欲しいってだけなんだが……
「うん!
早いほうが良いよね?
次の休み……いや、今日帰ったら早速教えさせてもらうよ!」
「お、おう。
それじゃ、よろしく頼む」
「もちろん!
よろしく頼まれたよ!!
あぁ、今からキミがボクのために作った料理を食べるのが楽しみだ!!」
「そ、そうか」
そして放課後、王子様に急かされるように帰宅して王子様の料理教室が始まったのだ。
ちなみに場所は王子様宅。
オレの家でやった方が良いかとも思ったのだが、我が家では肝心の食材が乏しい……らしい。
「キミの家の冷蔵庫には水と調味料くらいしか入ってないよ?
基本的には必要になったらボクが食材などを買い足しているね。
あぁ、気にしないでくれ。
費用はキミのお母様からいただいているし、キミの健康管理はボクの義務だし趣味みたいなモノさ!
それにボクの家ならいろんな食材を用意できるよ」
「さいですか」
「今となっては慣れたもので、ボクの食事管理によってキミの
「知らんわ!」
というわけで、王子様宅のキッチンならあらゆる道具も揃っていると豪語されたし、王子様の提案に乗らせてもらった。
「さて、教えるとは言ったけど、キミは覚えたい料理はあるのかい?
スキル的には……」
エプロンを後ろ手で結びながら質問してくる王子様。
「おう、麺を茹でる、米を握る……湯を注ぐ。
これくらいしかできない」
王子様ににっこりと笑顔を向けられてしまった。
部屋着にエプロン姿の王子様に、そこはかとないエロスを感じてしまうが、ぐっと堪える。
「キミが作ったモノなら、それが例えカップ麺に湯を注いだだけでも、ボクにとっては名店のラーメンよりも極上なんだ」
その王子様の心持ちが重すぎる!
「ふふ、キミが握ったおにぎりなんてまさに至高だよ?」
「お、おにぎりなんて誰が作っても同じだろ?」
「そんなことはないさ!
なんせキミ謹製のキミ味おにぎりだぞ!
キミにしか作れない唯一無二の一品だね」
「オレ味!?」
王子様の勢いは、今すぐにでも作って欲しそうな感じだが、生憎、肝心の米を準備していない。
今から炊飯しても準備が整うのは1時間後くらいだろう。
「さて、それじゃ始めようか。
作りたい物に何かリクエストはあるかい?」
「あー、特にないんだが、無難なところから始めたいかな」
作りやすくて美味しいモノがいい。
コロッケとか唐揚げとか食べたいけど、揚げ物はハードルが高い。
ハンバーグは……挽肉を丸めるだけでいいのか?
あ、カレーはどうだ?
美味いもの代表といえばカレーな気がする。
「女体盛りとかどうかな?
もちろん器はボクだ!」
「無難じゃねぇっ!」
そもそも女体盛りは料理じゃないだろうがっ!
「お箸でボクのイケナイところを摘んで、思わず喘いじゃうボクにキミは!
『おっと、間違えちまったぜ。でも美味そうだからこのまま食べちまうか、ふへへ』
とか、やるんだろう?」
「やらねぇよっ!
そもそも女体盛りじゃ料理スキルが上がらないだろうが」
「むぅ、まぁ、その通りだし仕方ないか」
なんで残念そうなんだよっ!
「それにボクが食べてほしいのはボクに乗った食材じゃなくて、ボク自身なんだ」
胸の前で手を組んで、うっとりと、しかし力強く宣言する王子様。
仕草自体は可愛いんだけどね。
言ってることが露骨過ぎる。
「ふふ、毎晩キミは美味しくいただいているじゃないか?
何か文句があるのかい?」
「……ありません」
事実なので受け入れるしかなかった。
「うーん、あとはそうだね……
ノーパンしゃぶしゃぶでも料理スキルは上がらないし。
今日の目的は料理を教えることだし。
あ、でも別にしゃぶしゃぶにこだわらなくても、パンツを履かずに料理を振る舞ってあげればいいんじゃないのか?
ここは間を取ってノーパンで料理を教える?
悪くないけど、スカートの中身を見せるシチュエーションを工夫しないといけないね。
どうしたものか?
とりあえずパンツを脱いでくるね!
いる?」
「脱がなくていいから!
い…………いらないから!」
普通に料理を教えるって選択肢はないのかよっ!?
「いや、えっちなことを絡めたほうがキミのやる気が上がるんじゃないかと思って」
「オレのやる気は漲っているから!」
だから真っ当に料理を教えてくれ。
「ふふ、キミのやる気は疑ってないよ。
じゃあ、とりあえずホントに簡単なモノからにしようか。
サンドイッチなんてどうだい?」
「おう!
それなら弁当にも応用できそうだ」
そういうので良いんだよ。
女体盛りとかノーパンしゃぶしゃぶとかいきなり変化球すぎるわい!
そもそも料理と言えないっ!
「慣れてきたら夕餉に出せるようなメニューも挑戦してみようか?
キミが大好きな照り焼きチキンとか……いや、ダメだ!」
「な、なんで?
できれば教えて欲しいんだが……」
ネットで調べてもいいんだけど、せっかくなら王子様に教わりたい。
「うん。
それはボクが作った照り焼きチキンをキミには食べてほしいからだよ?
キミの好物は全部ボクが作れるからそれでいいじゃないか?
キミが自分で作る理由はないよね?
なんせキミの胃袋に入るモノは全部ボクが手掛けたモノにしたいくらいなんだからね?
ホントだったらコンビニのホットスナックですら食べてほしくないんだよ?
でも、キミの料理を覚えたいっていう向上心は素晴らしいね?
それで料理を覚えたら何を食べるつもりだったんだい?」
「ん?
昼にも言ったがオマエに食べさせたいってのと、一緒にメシを作ったら楽しそうだろ?
オレもオマエの好物を作れるようになりたいし」
王子様が虚をつかれたように固まった。
そして、春先の雪のように表情が溶ける。
綻んだ笑顔はとても華やかで、不覚にもドキッとしてしまった。
「ふふ、それは嬉しい提案だね」
上機嫌にさらにご機嫌を重ねて王子様は、足取りも軽く調理を開始した。
「キミはタマゴのサンドイッチが好きだから、それからにしようか」
「あぁ、いいな、それ」
簡単そうだし。
「用意する食材は、タマゴ、パンだね。
調味料は塩、胡椒、マヨネーズだ」
「タマゴを茹でて、潰して、塩胡椒とマヨネーズを混ぜる?」
「そのとおり。
見た目から理解るくらい簡単で、さらに失敗もしにくくて美味しい」
ゆでタマゴくらいだったらオレも作るしな。
「で、ちょっと一工夫するなら、胡椒を多めにしたりマスタードや辛子を加える。
ピリ辛になってアクセントがだせるね」
「なるほど」
「タマゴを潰して混ぜるってだけじゃなくて、タマゴをスライスしてパンに並べて塩胡椒とマヨネーズをかけるのも、わりとありだったりする。
材料は同じなのにけっこう違った印象のサンドイッチになるよ」
「へー」
潰して混ぜるのが面倒だったら、それもアリだな。
改めてタマゴを眺めてしまった。
栄養価といい調理のし易さといい、優秀な食材だ。
目玉焼きをトーストに乗せて食べても美味いしな。
あ、タマゴ焼きを挟んでも美味そうだ。
「どうしたんだい、タマゴをじっと見つめて?
タマゴを貶めるわけじゃないけど、タマゴよりもボクの方を見てくれよ!」
王子様にシャツの袖を引っ張られてしまった。
まさか、タマゴにまで嫉妬をしているのか!?
「あ、もしかして……
いやらしいことを思いついたんだろ?
ふふ、キミの
「アホかー!?」
こっちは真面目に料理を習っているんだよっ!
思いつきもしなかったわ!!
「むぅ、興味あると思ったんだけど……」
……興味がないとは言っていない。
オレの表情から察した王子様ににんまりと笑われてしまった。
「あとはアレだね。
タマゴを使った有名なシチュエーションといえば。
卵黄を口移しで……」
「ネタが古すぎる!?」
王子様が好きそうなシチュエーションではあるけどもっ!
オレが唖然としていると、王子様がコホンと咳払いをして、居住まいを正した。
「あ、そうそう。
具材をパンに乗せる前にバターを塗った方がいいんだ。
パンに水分が染み込まなくなる。
なのでさっきは言い忘れたけどバターも用意しておこう」
そうだったのか。
王子様が作ってくれるサンドイッチには、必ずバターの風味がしていたのはそんな理由があったのか。
バター好きって訳ではなかったんだな。
長い付き合いだけど、バター好きなエピソードも覚えがなかったし不思議に思っていたのだ。
「バターは好きでも嫌いでもないよ。
美味しいとは思うけどね。
……あ!
キミの
「結局またそっちに行くのかよっ!?」
「バターが嫌だったら、はちみつとか練乳でもいいよ!」
「そうじゃない!」
「あ、練乳だとキミから出てくる
ブレンドだね?」
「ブレンド!?」
「嫌いじゃないだろ?」
「……」
「ふふ、目は口ほどに物を言うってのはホントなんだね?」
ぐぬぬ。ちょっと良いかなって考えただけなのに、一瞬で王子様に悟られてしまった。
「さて。
それじゃ、説明も済んだし。
早速作っていこうか」
「りょ、了解だ」
前置きに余計なことが多すぎだが、ようやく本題に進めた。
鍋の七分目程度まで水を注ぐ。
コンロに置いて点火。沸騰するのを待つ。
「じゃあ、湯が湧くまでにパンを切ろうか」
「わかった」
王子様が用意していたのは、みっしりと詰まったキメの細かい食パンだった。
切れてない食パンってあんまり見たことがない。
「このナイフで好きな厚さに切ってくれ」
「ギザギザだ」
「パン切りナイフだね」
波打った刃が、なんかかっこいい。
パンを切る用のナイフなんてあったんだな。
「普通のナイフや包丁だとパンが潰れたりボロボロになってしまうんだ。
刃全部を使って前後に動かして、ノコギリを使うように切ってくれ」
「こんな感じ?」
パンが潰れないような力加減にしつつ、パン切りナイフを前後に動かすと、面白いようにパンが切れていく。
「そうそう、そんな感じ」
オレの手際に王子様が嬉しそうに頷いた。
「いいよ。
上手だ。
うん、もっと強くしても大丈夫だよ。
あぁ、前に、後ろに……
ふふ、キミは昼も夜も前後に動かすのが上手だね?」
「言い方っ!」
切るのが上手でいいだろうが!?
あと夜ってなんだよっ!
「思わず昨夜のことを思い出してしまったよ」
システムキッチンに手を付いて、背筋をクイッと伸ばす王子様。
魅惑的な腰つきが視界に飛び込んできて、パンを切る手に力が籠ってしまう。
確かに!
昨日は後ろから……だったけどっ!
「こんな体勢だったかな?
涙ながらに懇願するボクを、焦らしに焦らした上に背後から小突き回してくれたよね?
逃げ場のないボクは無意識のうちに爪先立ちになってしまうし。
下からの突き上げの激しいことと言ったら……
恥ずかしいこともいっぱい言わされるし!
大歓迎だよっ!」
体い……体勢も今まさに王子様がとっている格好と同じだったけどっ!!
王子様の目つきが語っている。
このまま襲いかかってくれ……っと!
オレは滾る下半身と煮えたぎる脳みそを必死に落ち着かせながら、無心でパンを切り分けた。
「ふふ、目をつぶってナイフを使うのは危ないよ?」
誰のせいだよっ!?
「ほら、湯が湧いたよ。
タマゴを入れてくれ。
冷蔵庫から出してそのまま」
「冷たいままでいいのか?
割れないか?」
「大丈夫。
あと割れてもどうせ潰すし」
そりゃそうか。
オレは王子様の指示通り、沸騰した湯にタマゴを放り込んだ。
「タマゴは固茹で?」
「うん。
キミが半熟のほうが好きなのは知っているけど、サンドイッチ用だからね。
半熟タマゴが食べたかったら、7分程度で取り出してくれ」
まぁ、目的は料理を習うことなので、つまみ食いはやめておこう。
「タマゴを茹でている間にパンの耳を切ってしまおう。
今度は普通のナイフを使ったほうが切りやすいよ」
「了解だ」
ザクッとパンの耳を切り落とす。
「余った耳は後でラスクにしようか。
たっぷり砂糖をかけて。
キミ好みの濃い目のブラックコーヒーにあうお茶請けになるね」
わざわざオレの好みに合わせずとも良いのだが。
まぁ、王子様の好きなカフェオレにも合うだろう。
結構な枚数のパンを切り分け、耳を落としてサンドイッチ用のパンを作る。
ラスクもたくさん作れそうだ。
「具材がタマゴだけじゃ飽きそうじゃないか?」
「そうだね。
シーチキンにマヨネーズを和えた物を用意しよう。
ハムとチーズもあるよ。
あとはピーナッツバターとジャム。
お手軽だね?」
「十分だ」
そんな話をしていたらタマゴが茹で上がった。
氷を入れた冷水に移して熱を取る。
「さぁ、殻を剥いていこうか。
剥き終わったら、白身と黄身に分けてくれ」
「ん?
潰して混ぜるんだから分けなくてもいいんじゃないか?」
「面倒くさかったらそれでもいいけど。
白身と黄身は分けてから潰して混ぜたほうが美味しいよ」
「そうなのか」
今日は王子様が先生なのだから、指導には素直に従うのだ。
「女教師モノだね?
従順な生徒であるキミに、色気たっぷりの女教師のボクがえっちな手ほどきするってシチュエーションかな。
うーん。
どちらかというとボクとしては、キミがエロ教師役でボクが弱みを握られた女子生徒役って方が好みなんだけど……」
「白身はこっちの器で、黄身はこっちの器でいいか?」
「なんだよー。
無視するなよ―。
エロ教師役でにちゃぁって笑ってボクにいやらしいことしろよっ!」
「しねぇよ!」
なんで突然怒るんだよっ!?
「むぅ、昨日の夜だって散々……」
「そ、それはその、オマエがあまりにも……」
魅力的すぎてと言いかけてしまうが、流石に真っ昼間に告げるには恥ずかしい。
「ふふ、ありがとう」
いつものように内心を読み切られて、王子様から礼まで言われてしまった。
「あ、う……」
「さて、効率よくいこうか。
殻剥きはボクが続けるから、キミは白身を刻んで黄身を潰してくれ。
黄身はフォークで潰せばいいかな。
白身を刻む大きさはお好みで」
なんとも機嫌良さげな王子様。
まぁ、いい。後から雰囲気が良くなったらきちんと王子様を褒めよう。
そんなやり取りをしつつも、王子様が次々とタマゴを剥いていく
「ふむ」
王子様が剥いたタマゴを手に取り、つるりとした白身をまじまじと眺めてしまった。
艶々で白い。
昨夜の、王子様を背後から突き回したときの光景が脳裏をよぎる。
剥きタマゴのような……って比喩表現はまさにその通りだと思わされる。
薄暗い部屋に青白く浮かび上がる王子様の……
「そろそろマヨネーズを出しておこうかな」
タイミングよく冷蔵庫を開けるために、上体を曲げてこちらに尻を向けているのは狙っているとしか思えない。
部屋着のミニスカートに包まれてはいるが、丸くて白いことをオレは知っている。
あの1枚を捲ってしまえば……
「ん?
どうしたんだい?」
オレからの視線を敏感に感じ取ったのか、王子様がマヨネーズ片手に振り返った。
「な、なんでもないぞ。
黄身の潰し方はこんな感じでいいか?」
器の中身を王子様が確認する。
「いいんじゃないかな?
全てキミの思う様、好きなように料理すればいいんだよ?」
「そんなもんか」
「うん!
難しい料理じゃないし、神経質に料理しても楽しくないだろう?」
それはそのとおりだ。
食材を切るのも、調味料を混ぜるのも楽しい。
そもそも王子様と一緒に作業しているだけでも楽しいんだけどね。
ミスしそうなら王子様がフォローしてくれるだろうし。
失敗するのも難しい料理内容だしな。
「そう、キミは己の内から湧き出る欲望に忠実に従えばいいのさ!
料理の最中にも関わらず、ボクのお尻に欲情したんなら背後から襲いかかってもボクは全て受け入れるよ?
さぁ、がばーって来てくれ」
「い、いかないから!」
くっ、オレの視線だけで全て察してるんじゃないか。
「ふふ、じゃあ仕方ないね。
夜まで待つとするよ」
「そ、そうしてくれ」
「……夜は襲いかかってくれるんだね。
あー、今から楽しみだ!」
し、しまった!?
つい本音が……
「白身も黄身も全部準備が出来たね。
混ぜ合わせて塩胡椒で下味をつけよう」
王子様の下した指示通り、分けてあった白身と黄身を一つの器に移す。
基本的に王子様は先生で指示役だ。作業役は生徒のオレ。
塩胡椒を適量振り掛けて、ヘラで混ぜ合わせていく。
鮮やかな黄色と純白が混ざり、ねっとりとした感触がなかなか楽しい。
「はい、マヨネーズ」
そろそろいいかな、と思っていたらタイミングよく王子様がマヨネーズを差し出してきた。
「量はどれくらい?」
「好きなだけ出して!
ボク、キミが出したものは全て受け止めるよ!」
「言い方っ!」
適当でいいってことだな。
マヨネーズは多めの方が美味いに決まっている。
「うんうん。
キミはいつも多めに出してくれるからね。
ボクのおなかはいつもいっぱいさ!」
「今日もいっぱいにしてやるよ、サンドイッチでな」
「キミの手作りだからきっと極上だね!」
王子様の言葉をしれっと受け流して、材料を混ぜ合わせていると、オレの背後に王子様が近寄ってきた。
なんだ?
「はむっ!」
「うひぃ!?」
両手が塞がっている状況で、王子様から耳を甘咬みされた。
「ちょ!?
オマエ、直接は反則だぞ!」
「ふふふ、キミが取りあってくれないのが悪い。
ほら、手が止まっているよ。
あとヘラで切るように混ぜないと、せっかく大きめに刻んだ白身が細かくなってしまうよ。
こんな感じで混ぜるんだ」
背後に立った王子様が、オレの手に自分の手を重ねてきた。
ひんやりとした王子様の指先に思わず身体が硬くなる。
「こんな感じに、さく、さくって切るように。
ほら、さく、さく……」
王子様の掛け声に合わせて手を動かす。
オレが作業していたときと違って、白身は大粒のまま砕けず、なおかつ確実に具材が混ざっていく。
それよりも……
「あ、う、お……」
オレに触れた王子様が手を動かす度に、背中に2つの柔らかい感触が!?
しかもでかい!!
よく知ってるけど。
「さく、さく」
むにゅ、むにゅ。
「う、ぉ……」
「さく、さく」
むにゅ、むにゅ。
「お、ぅ……」
「はい、できたよ?」
「あ、あぁ」
背中の感触に酔いしれていたら、あっという間に出来上がってしまった。
「ふふ、さぁ今度は具材をパンに挟んでサンドイッチを完成させようか」
「そ、そうだな」
王子様に促されるまま、混ざったタマゴをパンに塗ってサンドイッチを完成させる。
「むぅ、ここまでやってまだ襲いかかってこないのかい?
我慢は身体によくないよ?」
せっかくオマエに料理を教わっているんだから、こっちは全力で我慢してるのっ!
王子様の手を煩わせているんだから申し訳ないだろう!?
「うーん、ボクとしてはキミにかける手間暇は惜しまないし、むしろご褒美なんだけどなぁ」
王子様への返事もできないほど熱くなってしまった下半身を、どうにかこうにか抑えるのに必死だ。
素数を数える余裕すらない。
せいぜい足し算くらいしかできないぞ。
1+1=田
「ふふ、しょうがないから次の手を考えることにするよ」
「か、勘弁してくれ」
ホントにいっぱいいっぱいなんで。
オレは機械になった心持ちで無心になってサンドイッチを作った。
タマゴを挟んでタマゴサンド。
ハムとチーズを挟んでハムサンド。
ツナマヨを挟んでツナサンド。
ピーナッツバターとジャムを挟んでPB&J。
「……はっ!?」
いつの間にか具材はなくなり、サンドイッチが完成していた。
三角形に切り分けられて、見栄えも申し分ない。
量もなかなかだ。
明日の朝飯の分もまかなえそうだ。
「で、オマエは何をしてるんだ?」
「うん、生クリームを作っているんだ」
王子様がハンドミキサー片手に、氷の入ったボウルの上にさらにボウルを乗せて生乳を注ぐところだった。
砂糖をかなり多めに投入して、ハンドミキサーで一気にかき混ぜる。
あ、わかった。
フルーツサンドを作るつもりだな?
ラスクだと油の準備も面倒だし、今日はサンドイッチづくしって感じかな?
デザートもばっちりってわけだ。
「あぁ、それもアリだね?
余ると思うから、後から缶詰の果物でぱぱっと作ることにするよ」
「ん?」
フルーツサンドは作るつもりがなかった?
オレが疑問に思っていると、ハンドミキサーのパワーであっという間に生クリームが出来上がった。
「よしっ!」
王子様は指先で生クリームを掬いとって、オレへと差し出してきた。
「はい、味見」
妖しげな雰囲気を纏わせる王子様の視線に、思わず素直に舐めてしまった。
滑らかな舌触りとほどよい甘さ。
オレが王子様の指を口に入れた瞬間、王子様の口元が悦びで歪む。
そのまま王子様も生クリームを指先で掬い取って、味を確かめた。
「ふふ、美味しいね?
キミの味がするから、なおさら甘く感じるよ?」
ペロリと舌舐めずりする王子様に、静まりかけた下半身が三度反応する。
「準備できたかな?」
「あぁ、サンドイッチは完成してるぞ」
王子様はエプロンを脱ぎ去り、部屋着姿になる。
そして何を思ったのか、部屋着のシャツまで脱いで、挑発的な表情でオレへと近寄ってきた。
今日の下着は薄いピンクか。
……じゃなくて!
「お、オマエ、なに、を……」
無言のまま王子様は蠱惑的な流し目をオレへと送り、背中に手を回すとブラジャーまで脱ぎ始めた。
「何だと思う?」
プチっとホックを外す音。
動けないでいるオレの顔へ、王子様がブラジャーを押し付けてきた。
見えそうな瞬間に視界が塞がれた。
まったく見えなかったじゃないか! ガッデムっ!
と思ったのも束の間、ブラジャーの良い匂いと温もりで頭がぼんやりしてしまった。
「はい、ブラジャーとっていいよ」
「ふぉ!?」
長い時間じゃなかったと思うが、完全にフリーズしていた。
慌てて王子様に被らされていたブラジャーを取る。
帽子のように大きいね!
「って、オマエ何……をっ!?」
「はい、召し上がれ」
王子様を見れば、たわわに実った麗しの果実に生クリームをたっぷり塗って、オレへと差し出してきた。
大事な先端部分が生クリームで隠れていて卑猥過ぎる。
「ボク特製、キミ専用サンドイッチだ!
美味しくいただいてくれっ!」
確かに美味そうだけど!
何にも挟まってないのにサンドとは!?
「おま、オマ、エ……」
「ふふふ、まずは生クリームを全て舐め取ってくれ。
その後に
「それはどっちかっていうとホットドッグだよっ!」
オレの中で何かがプツリと切れて、散々我慢していた努力も虚しく、王子様へと襲いかかってしまった。
「キミもなかなか上手いこと言うね?」
「うるさいわいっ!」
早速王子様の生クリームを一舐めしてやった。
クリームの中から大粒のさくらんぼ。
ふむ、これはフルーツサンドと言えなくもないか?
「うわー!
美味しく食べられてしまうー!」
王子様の嬉しそうな悲鳴を聞きつつ、お望み通り、王子様を美味しくいただいた。
「夕餉は豪華にした方がいいって思っていたんだけど、サンドイッチみたいに軽食にすると
「お前が作ってくれた食事は味わって食べたいんだけど……」
「今日の夕食はキミお手製だからね。
ボクは胃袋も子袋もキミで満たされて大満足だ!」
「言い方っ!!」
「ふふ、ボクとしてはキミが作ったモノだから漲っちゃうね?
しかもこれからは昼ごはんもキミの手作りのお弁当を食べられるんだろう?」
「たまにでいいか?」
「それはもちろん!
基本的にはボクが作るよ。
今から楽しみだなー。
キミが
「ん?
とりあえずは今日習ったサンドイッチのつもりなんだが」
「うんうん。
ボクは理解あるカノジョだからね!
キミのやりたいことはよ~~~くわかっているよ?
ボクの食べっぷりを間近で見てくれ!」
「あ、あぁ?
せっかく教えてもらったんだからな。
がんばるぞ」
おしまい