宇宙の情炎 作:プラズマ
アレキサンドリアの艦内は、ボスニアの静寂とは対照的な活気に満ちていた。低く響くエンジンの振動が通路に伝わり、金属壁を微かに震わせる。格納庫では整備員たちがモビルスーツの点検に追われ、金属がぶつかる甲高い音や工具の軋みが絶え間なく響き合い、オイルと焦げた鉄の匂いが空気を重くする。シャトルから降りたジェリドとライラは、穏やかな朝の余韻を胸に秘め、戦士としての顔に戻っていた。
ジェリドの黒いティターンズ制服からはなぜか柔らかいにおいがしており、ライラの連邦軍制服はしなやかな体にぴったりとフィットし、金髪が微かに揺れる。二人の足音が金属床に軽く反響し、MSの整備音が遠くから聞こえてくる中、彼らは作戦室へと向かっていた。
通路を進む二人の間に、昨夜の熱い触れ合いが静かな絆として漂う。ジェリドの肩にライラの爪痕が微かに疼き、彼女の首筋に残るキスの感触がライラの胸を温かくしていた。だが、その余韻を隠すように、二人は背筋を伸ばし、戦場での鋭さを取り戻していた。
作戦室の扉にたどり着く直前、ジェリドが一瞬足を止めた。扉の向こうから聞こえる低い笑い声に、懐かしい響きを感じたからだ。耳にその声が届いた瞬間、ジェリドはこの後何が起こるかを察し、入ることを一瞬ためらった。ライラが首をかしげ、ジェリドの横顔を覗き込む。
「どうした、ジェリド? 」
声には軽いからかいが混じり、ジェリドの緊張を解そうとする気遣いが滲む。彼女の金髪が朝の光に反射し、鋭い瞳が彼を捉える。ジェリドは小さく笑みを浮かべ、視線に応えた。
「いや…懐かしい声が聞こえた気がしてな。まぁ、入ればわかるさ」
ライラが「ふーん」と軽く鼻を鳴らし、ジェリドの背中を軽く叩いて促す。叩かれた感触に昨夜の彼女の手が一瞬重なり、ジェリドの胸が微かに熱くなる。二人は同時に扉に手をかけ、スライドする金属音とともに作戦室へと足を踏み入れた。扉が開く音が通路に反響し、冷たい空気が二人を迎え入れる。
薄暗い照明が二人の姿を照らし出し、広い円卓と壁に投影されたホロが目に飛び込んでくる。作戦室の空気は冷たく、消毒剤の匂いが微かに漂い、淡い光が部屋に不思議な静けさを与えている。中央に立つ背の高い男が、データパッドを手にホロを眺めている。黒いティターンズの制服に身を包み、短く刈った髪と鋭い目つきが特徴的なカクリコン・カクーラーだ。彼はジェリドの足音に気づき、顔を上げると同時に大きな笑みを浮かべた。
「おお、ジェリド! やっと会えたぜ、生きてて良かったな!」
カクリコンの声が作戦室に響き、大股で近づいてくる。データパッドを放り投げ、ジェリドに向かって両手を広げた。投げられたパッドが宙に浮き、机に軽く当たった音が一瞬響く。ジェリドも笑顔を隠しきれず、カクリコンとがっちり握手を交わした。手の感触に再会の重みが伝わり、胸に安堵が広がる。
「カクリコンか…2週間ぶりだな。あれ以来だよ。あの戦いから、よく生き残れたもんだ、お前も俺も」
声には懐かしさと少しの照れが混じり、カクリコンが肩を軽く叩く。叩かれた感触にグリーンノアの記憶が鮮やかに蘇る。
「まったくだ。あの時はエゥーゴに振り回されて、命からがらだったぜ。覚えてるか? グリーンノアでガンダムに追われた時、お前がハイザックで盾になってくれたよな。あの瞬間、もう死んだかと思ったんだから!」
カクリコンが弾けるように笑い、ジェリドの肩をさらに強く叩く。脳裏にガンダムがビームサーベルを振り上げる光景が浮かび、コックピットで響いた警告音と焼けた装甲の匂いが一瞬甦る。あの時、カクリコンのハイザックが被弾寸前で、ジェリドが咄嗟に突進して盾となり、辛うじて生き延びたのだ。
「なぁ、お前だってあの時、俺を援護してくれたろ。ビームが掠めた時のお前の叫び声、今でも耳に残ってるぜ」
ジェリドが笑いながら反撃し、カクリコンが「うるせえ!」と冗談っぽく拳を振り上げる。二人の間に親友らしい気安さが溢れ、作戦室の冷たい空気が一瞬和らいだ。再会は、死闘を共に乗り越えた絆を再確認する瞬間だった。
だが、カクリコンの視線がジェリドの隣に立つライラに移り、笑顔が一変する。ライラは腕を組んで二人のやり取りを静かに見つめていたが、カクリコンの目が止まると、少し眉を上げて応じる。制服の襟が微かに揺れ、金髪が朝の光を反射して輝く。カクリコンが一瞬目を丸くし、やがて口元にいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「待てよ…こいつは、ライラ・ミラ・ライラじゃないか? ルナツーのエース、噂に聞くあのライラ大尉か? 貴方の勇名はよく聞いてたけど、まさか実物に会えるとはな!」
声に感嘆が混じり、ライラが軽く鼻で笑って応じる。
「噂なら大したもんじゃないさ、カクリコン少尉。戦場で生き残ってるだけだよ。エースなんて、連邦のおだてに過ぎない」
声には自信と皮肉が混じり、カクリコンが笑みを深める。
「謙遜しないでくださいよ。ガルバルディでジオン残党を翻弄した話を聞いたときなんて、さすがだと思ったよ。俺も突っ込むけど、あなたみたいな戦い方はできねえな」
カクリコンが感嘆の声を上げつつ、ふとジェリドとライラを交互に見やり、何かに気づいたように目を細めた。視線が二人の距離感を捉え、ジェリドの微妙な表情に鋭く反応する。
「ん? 待てよ…ジェリド、お前、ライラと一緒に任務だったのか? しかも…なんか妙に仲良さそうだな。どういう関係だよ、こりゃ?」
カクリコンの声にからかいの色が濃くなり、ジェリドが一瞬目を逸らす。ライラとの夜——彼女の熱い肌と喘ぎが頭をよぎり、頬が微かに赤らんだ。
「なんだ、カクリコン。お前、俺の親友ならわかるだろ。ライラとは戦場で命預けてる相棒だよ。それ以上でも以下でもねえ」
慌てて弁解するが、声に微かな動揺が混じる。カクリコンが「ほぉー」と意味深に呟き、ライラに視線を移す。
「相棒ねえ…ライラさん、貴方はどう思う? こいつ、命知らずで突っ込んでった馬鹿だけど、相棒としては悪くなかったでしょう?」
カクリコンのからかいに、ライラが軽く肩をすくめ、ジェリドを横目で見ながら答える。
「まぁね。ジェリドは猪みたいに突っ込むけど、盾になってくれる時は頼りになるよ。30バンチでも…命懸けで守ってくれたし」
声に微かな柔らかさが混じり、ジェリドが「あ!」と声を上げてさらに赤らめる。ライラの言葉に昨夜の記憶が重なり、彼女の裸身と熱い吐息が脳裏を掠めた。
カクリコンがその様子を見て、とうとう我慢できずに腹を抱えて笑い出した。
「ははっ! なんだよ、ジェリド! お前、ライラに命懸けで守られたとか、顔赤くしてるとか…こりゃただの相棒じゃねえだろ! お前ら、怪しいな!」
肩をバンバン叩き、からかいの勢いを増す。ジェリドが苛立ったように手を振り払い、声を張り上げる。
「うるせえよ、カクリコン! お前だって俺に助けられたこと忘れたのか? あの時、お前のハイザックがやられそうだったのを俺が盾になって…大体、俺とライラは、まぁ、いい相棒ってだけだ!」
言い訳が空回りし、カクリコンがさらに笑いものにする。
「いい相棒ねえ…ライラ大尉? こんな猪野郎に惚れちまったのか? 驚きだぜ!」
ライラがカクリコンの言葉に鼻で笑い、ジェリドの肩に軽く手を置いて応えた。
「惚れるかどうかは置いといて、こいつは戦場じゃ使えるよ。それに…ジェリドが惚れるなら、私くらいじゃないと務まらないよ。普通の女じゃ、この猪は手に負えないからな」
ユーモアと微かな本音が混じり、カクリコンが「おお!」と声を上げて拍手する。ジェリドが「ライラ!」と慌てて抗議するが、内心では彼女の言葉に胸が熱くなり、昨夜の情熱が再び頭をよぎって顔がさらに赤らんだ。ライラがその様子を見て、口元に微かな笑みを浮かべ、カクリコンに視線を戻す。
「まぁ、カクリコン。お前がジェリドの親友なら、こいつの扱い方はわかってるだろ。私にはちょうどいい相棒だけどな」
カクリコンがその返しに感心したように頷き、再びジェリドをからかう。
「なぁ、ジェリド。お前、ライラとそんな仲なら教えてくれよ。親友だろ? 一緒に死にかけた仲なのに、隠すなんてひでえな! ライラみたいな女と相棒以上になってるとか、俺に自慢しろよ!」
肩をさらに叩き、笑い声を上げる。ジェリドが顔をしかめて反論する。
「隠してねえよ! お前が勝手に騒いでるだけだ! 大体、親友がこんな調子じゃ、俺が疲れるよ! グリーンノアの時だって、お前が援護してくれたから生き残れたのに、こんな扱いかよ!」
声に苛立ちと笑いが混じり、カクリコンが「悪かった悪かった」と手を上げて謝るふりをする。
ライラがそのやり取りを見て、珍しく小さく笑いながら口を挟む。
「カクリコン、お前、ジェリドをからかうのはいいけど、ほどほどにしとけよ。作戦会議始まったら、ジャマイカンに嫌味言われるのは私たちだけでいいからな。ジェリドの親友が泣き言言ったら、見てられねえよ」
言葉にカクリコンが「了解!」と軽く敬礼しつつ、笑いを抑える。だが、目にはまだからかいの光が残り、ジェリドをチラリと見てニヤリとする。
「なぁ、ライラさん、ジェリドの扱い上手いな。こいつが昔突っ込んだ時も、俺じゃ止められなかったぜ。やっぱりお前くらいじゃないと務まらねえか!」
三人の会話が弾む中、作戦室の扉が再び開き、他の士官たちがぞろぞろと入室し始めた。足音が金属床に響き合い、作戦室の空気が一気に引き締まる。月面の座標が投影され、淡い光が部屋を冷たく照らす。カクリコンがジェリドに近づき、小声で囁く。
「なぁ、ジェリド。ライラとのことは後で詳しく聞かせろよ。アーガマを追う前に、親友としてお前の幸せを確認しとかねえとな。、お前が無茶しないか心配だぜ」
ジェリドが「黙れ!」と小声で返すが、口元に微かな笑みが浮かぶ。ライラがその様子を見て、軽く首を振って微笑んだ。視線がジェリドに注がれ、昨夜の彼の熱い腕が一瞬脳裏を掠める。
やがて、ジャマイカンの重い足音が近づいてくる。ブーツが床を叩く音が作戦室に響き、士官たちが席に着き始めた。ジェリド、ライラ、カクリコンもそれぞれ円卓の席に腰を下ろす。カクリコンがジェリドの横に座り、ライラがその隣に陣取る。三人の軽い会話は終わりを迎え、月へ向かったアーガマをどう追い詰めるか、その作戦会議が始まる前の一瞬の静寂が訪れた。
アレキサンドリアの作戦室で、彼らの戦いが再び動き出す瞬間だった。
エロゲの親友枠カクリコン