宇宙の情炎 作:プラズマ
ジェリドとライラがカフェテリアで逢瀬を終え、それぞれの自室で休息を取っていた数刻後、事態は急激に動き出した。
艦内の静寂を切り裂く甲高いサイレンがけたたましく鳴り響き、ボスニアの通路に艦橋からの通信士の緊迫した声が轟いた。壁に埋め込まれたスピーカーから金属的な歪みが漏れ、低い唸りと共に拡声される。
「アーガマとモンブランを確認! 護衛部隊と共に大気圏近くに布陣している! 出撃態勢を急げ!」
暗礁空域を潜り抜け、行方をくらませていたエゥーゴの艦隊を、ティターンズが地球軌道上でようやく捕捉したのだ。ボスニアは一瞬にして戦闘準備の喧騒に呑まれた。整備員の叫び声が通路にこだまし、モビルスーツの起動音が艦体を震わせる。窓の外には地球の青い弧が近づき、その輝きが艦全体を緊張に震え上がらせていた。
ジェリドは自室のベッドに横たわり、訓練の疲れを癒していたが、サイレンに飛び起きた。体が反射的に跳ね上がり、ベッドのスプリングが軋む音を立てる。扉を蹴り開け、通路へ飛び出した彼の足音が金属床に響き渡る。
ライラも自室で休息中だったが、サイレンに瞬時に反応した。シャワー後の湿った金髪が首筋に張り付き、新しい制服の襟に微かな水滴が光る。彼女はドアを勢いよく開け、通路へと飛び出した。
二人が格納庫へ急ぐ中、通路の薄暗い照明が顔を冷たく照らす。無重力の通路を飛ぶように進むジェリドの後を、ライラが軽やかに続く。彼女の制服が微かに軋み、二人の間に戦場への緊張感と静かな信頼が漂う。整備員が工具を抱えて駆け抜け、疲れた声が遠くに響き、艦内の静寂は完全に消え去っていた。
格納庫に到着すると、整備員の喧騒が耳をつんざいた。ハイザックとガルバルディが射出準備を終え、スラスターが微かに唸りを上げ、熱気を帯びた空気が漂う。格納庫の照明が二機の装甲に反射し、ハイザックのモノアイが赤く輝き、まだ熱を持つスラスターが低く脈打つ。ガルバルディの赤い塗装が鋭く光を跳ね返し、整備員が最終調整に追われる中、金属とオイルの匂いが鼻腔を刺した。
ジェリドは素早くパイロットスーツを着込み、体に滑り込ませる。汗ばんだ肌に生地が張り付き、微かな軋みが響く。
「ティターンズの兄ちゃんよ、今度はうまくやりな」と整備員が軽口を叩く。
「言われなくともやってやるさ」とジェリドはあっさりいなした。訓練前なら激怒していた彼の落ち着きが、ライラの指導の成果を静かに示していた。
ハイザックのコックピットに飛び込むと、シートが湿り、狭い空間に荒い息遣いが反響する。ディスプレイが起動し、地球軌道上のアーガマとモンブランの位置が赤い点として浮かび上がる。スラスターの振動が背中に伝わり、汗が首筋を伝ってパイロットスーツに染み込む。
ライラもガルバルディの操縦席に滑り込み、素早くハーネスを締めた。湿った金髪がヘルメットの下で揺れ、鋭い瞳がディスプレイを射抜く。
「ジェリド、教えたことを活かすんだよ」
「言われなくともやるさ」
二人の声には挑発と絆が混じり合い、無線越しに火花を散らすようだった。
ボスニアの格納庫扉が重々しく開き、射出カウントダウンが始まる。整備員が端に退避し、スラスターの熱風が床を焦がす中、艦内の緊張が最高潮に達した。
「射出準備完了。3、2、1──発進!」
通信士の声が響き、ハイザックとガルバルディが一斉に射出される。スラスターの青白い焰が宙域を切り裂き、二機が地球軌道へと飛び出した。戦場が開かれた瞬間、宇宙の冷たい闇に焰の尾が弧を描き、星々がその光を静かに見つめていた。
アレキサンドリアの艦橋では、ジャマイカンが士官たちに指示を飛ばしていた。眼鏡の縁に熱がこもり、グリーンノアでの屈辱やアーガマに苦汁を飲まされ続けた怒りが感情を高ぶらせている。疲労で声が掠れつつも、彼は力強く叫んだ。
「まずはモンブランを叩け。アーガマより近いほうを先に落とせ!」
手がホログラムを操作し、地球軌道上のアーガマ艦隊の位置が冷たく点滅する。制服が汗で湿り、艦橋の照明が疲れた顔を照らし、決意が宿る瞳に火が灯る。ボスニアとアレキサンドリアを含むティターンズ艦隊がエンジンを全開にし、地球へと急加速した。艦体の振動が格納庫に伝わり、ジェリドのコックピットに微かな揺れが響く。ディスプレイに地球の青い点が近づき、モンブランのシルエットが徐々に膨張していった。
ティターンズの哨戒部隊がモンブランに迫り、ジェリドのハイザックとライラのガルバルディが先頭に突き進んだ。モンブランの護衛GM部隊がライフルを向け、火線を放つが、二人は余裕を持って散開し、さらにモンブランへ迫る。ハイザックのスラスターが咆哮を上げ、コックピットに振動が伝わる。熱が額にこもり、荒い息遣いがヘルメットに響く。
ディスプレイに映るGMは旧式で、動きが鈍く、ハイザック隊に比べて機動力と火力が劣っていた。ジェリドはその隙を見逃さず、感覚を頼りに動いた。ライラの無線が鋭く響き、微かなノイズと共に届く。
「私が先行する。ジェリド、敵の動きをよく見ろ。殺気を感じ取れ」
「わかってる。教えてもらったことだろ!」
ジェリドが応じ、操縦桿が手に食い込み、スラスターの噴射音が耳に轟く。GMの動きが遅い瞬間、彼は一瞬の隙を捉えた。
「ここだ!」
ビームライフルが火を噴き、オレンジ色の光がGMの胴体を貫く。爆炎が広がり、宇宙空間に金属片が舞い、無重力の中で静かに漂う。ライラのガルバルディも素早く動き、別のGMの頭部を正確に撃ち抜く。ヘッドが砕け散り、敵機が残骸と化す。この瞬間、ティターンズが序盤の優位を握った。
ジェリドが僚機と連携し、さらに1機を仕留めた。ビームがGMの脚を吹き飛ばし、爆発の衝撃がハイザックに微かな振動を伝える。
「ジェリド、援護しろ! モンブランに近づく!」
ライラのガルバルディが前進し、スラスターが青白い焰を噴く。彼女がモンブランの砲塔にビームを放つと、艦体に焦げ跡が刻まれ、金属が剥がれて宇宙に漂う。GM部隊が混乱する中、ティターンズの猛攻が続いた。
「よし、敵のMS部隊はだいたい排除したな。戦艦を落とすよ!」
ライラが叫ぶと、モンブランの対空砲撃をかいくぐり、エンジン部へ致命的なダメージを加えていった。ガルバルディが素早く動き、ビームが艦体を抉り、爆炎が宇宙空間に広がる。モンブランのエンジン部から火花が飛び散り、艦体が大きく揺れ、煙と炎が漏れ出すが、まだ完全に落ちてはいない。
「敵の火線が怖くないのか? まるで周りを見てねえよ」とジェリドが感嘆しながら呟いた。彼もハイザックのビームライフルでモンブランの側面を攻撃し、オレンジ色の光が装甲に焦げ跡を刻む。
アーガマからMS部隊が援護に駆けつけるが、ライラ隊とアレキサンドリアのハイザック隊に阻まれ、モンブランの救援にはたどり着けない。ジェリドのハイザックが側面にビームを命中させ、艦体がさらに揺れ、爆発が広がる。ライラのガルバルディがエンジン部に追加のダメージを与え、モンブランの艦体が傾き、炎と煙が噴き出す。対空砲が弱まり、モンブランは崩壊寸前まで追い詰められていた。
「ライラ、もう少しだ! モンブランを仕留めるぞ!」
ジェリドが叫ぶと、ライラが無線越しに返す。
「良いよ、お前。ただ、油断するんじゃないよ」
ティターンズ艦隊が地球軌道上で優勢を握りつつある中、モンブランのエンジン部が炎に包まれ、艦体が大きく揺れ、崩壊寸前となっていた。だが、ディスプレイの端に赤い機影がちらつき、ジェリドの胸に微かな不安が走る。ライラの声が無線越しに鋭く響いた。
「ジェリド、気配を感じろ。何か来るぞ」
その瞬間、反撃が始まる予兆が、戦場の空気を一変させようとしていた
ちょっとだけ強くなったジェリド。。。。
まあちょっとだけです