※この作品はR-18です。

宇宙の情炎   作:プラズマ

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わからずやの結果論

 アレキサンドリアの格納庫に帰還したジェリドとライラは、それぞれ傷だらけのモビルスーツから這い降りた。ジェリドのハイザックは至近弾を浴び、左脚部の装甲が溶けて黒く焦げ、スラスターから白い煙が細く漏れ続けていた。焦げた表面が剥がれ落ち、床に鈍い音を立てて響き、戦場の爪痕が機体に深く刻まれている。コックピットのハッチが軋みながら開き、彼が這い出すと、熱が額にこもり、荒い息遣いがパイロットスーツに響く。2体のガンダムに翻弄された衝撃が、まだ機体と彼の体に残響していた

 

 ライラのガルバルディも至近弾で右肩の装甲が溶け、ひび割れた表面から青白い火花が時折散る。モンブランを仕留めた一撃の後、ガンダムに追い詰められた記憶が機体に刻まれ、動きを鈍らせていた。彼女がコックピットから降り立つと、ブーツが床を叩き、硬質な音が格納庫に響く。格納庫は整備員の叫び声と溶接機の火花が飛び散る音で満たされ、焦げた金属とオイルの匂いが鼻腔を刺す。疲弊した空気が二人の周りを重く包み込んでいた。

 

 ジェリドがよろめきながら床に足をつけると、膝が一瞬震え、汗ばんだ手で額を乱暴に拭った。口の中に鉄の味が広がり、コックピットで鳴り響いた警告音とガンダムのビームがかすめた振動が体に刻み込まれている。脳裏に戦場の光景が焼き付く——ガンダムMk-IIのビームライフルが放った光がハイザックの脚をかすめ、装甲が赤熱して溶け出す瞬間。警告音が耳をつんざき、スラスターが過熱で軋む音が響き、機体が一瞬揺れた。唇が微かに震えていた。

 

 隣に降り立ったライラの息遣いも荒く、天井から吊るされた照明が二人に淡い影を投げかける。彼女の金髪がヘルメットの下で汗に濡れ、首筋に張り付いている。

 

 その時、ジャマイカンが重い足取りで近づいてきた。モンブランを仕留めた勝利の余韻は既に消え、撤退命令を出した屈辱が彼の顔に深い皺を刻んでいる。疲労と怒りで淀んだ瞳が曇り、首が不快そうに歪んでいた。彼はジェリドとライラに向かって、低く唸るような声で切り出した。言葉の端々に抑えきれぬ苛立ちが滲む。

 

「半分のモビルスーツを失うとは、ティターンズの名が泣くな。お前たちがモンブランを仕留めたのは評価するが、それで帳消しか?」

 ジェリドが唇を噛み、顔を上げようとするが、ジャマイカンの視線が鋭く突き刺さる。少佐の指が無意識に拳を握りしめる音が静かに響き、格納庫の喧騒に混じる。

 

「ライラ隊の方がマシな働きだった。戦闘隊長とは何だ、ジェリド? あのガンダムに翻弄された挙げ句、撤退だと?」

 その言葉にジェリドの胸が締め付けられ、汗が額から滴って床に小さな染みを刻む。彼が反論しようと口を開きかけた瞬間、ライラが一歩前に出て静かに割って入った。ブーツが床を叩き、微かな反響が格納庫に広がる。

 

「お言葉ですが」

 

 ジャマイカンが眉をひそめ、彼女を遮るように声を荒げた。苛立ちがさらに色濃くなる。

 

「ジェリドをかばうつもりか?」

 

「違います」

 

 ライラの声は冷静だが、内に秘めた確信が滲み出る。

 

「今回の敵が特別だと理解していただきたいのです。あの戦場で、私たちに撤退を強いた力は尋常ではありません」

 

 その瞬間、ライラの脳裏に戦場がフラッシュバックした。ガンダムMk-IIのビームライフルが至近弾を放ち、ガルバルディの右肩をかすめた瞬間が甦る。装甲が溶けてひび割れ、衝撃音がコックピットを震わせ、火花が散った感覚が体に蘇る。

 ジャマイカンが鼻で笑い、首を振った。

 

「特別だと? 何が特別だと言うんだ?」

 

 ライラが一瞬目を閉じ、戦場の記憶を反芻するように深く息を吸った。ガンダムMk-IIの異様な機動力、そしてカミーユの名が頭を掠めた瞬間が甦る。彼女の指が無意識に拳を握り、汗が指の間から滴る。再び目を開けた時、瞳には戦士としての鋭さが宿っていた。

 

「ホワイトベースは知りませんが、アーガマはまるでホワイトベースの再来のようです。あの艦とガンダムが放つ気配……私とジェリドが感じた何かは、敵のただの戦術を超えていました」

 ジャマイカンが怪訝な顔で彼女を睨む。眉が上がり、口元が歪んだ。

「何がそう感じさせる?」

 ライラの視線が遠くを見つめ、戦場での感覚が言葉に昇華される。肩が微かに震えていた。

「アーガマの懐は開いているように見えて、近づくと鉄壁。特にあのガンダムは、無手勝流に見えてぶつかるとその抵抗力は圧倒的。もう一つのガンダムが主導する動きも……こちらの隙を全て見透かしているようでした。私たちがモンブランを仕留めた瞬間さえ、奴らには計算済みだったのかもしれません」

 彼女の言葉に、ジェリドが小さく頷く。戦場での記憶が蘇り、ハイザックのコックピットで感じた振動、けたたましい警告音、焼けた装甲の匂いが体に甦る。左脚を破壊した一撃も、結局は敵の勢いを止められなかった屈辱が胸を締め付けた。

 

 その時、アレキサンドリアのクルーが艦橋からの報告を手に駆け込んできた。報告書を握る手が震え、声が上ずっている。

 

「少佐! 敵艦はサイド4の空域へ直進中です!」

 ジャマイカンが目を剥き、低く唸るように言った。声が格納庫の金属壁に反響し、整備員の手が一瞬止まる。

 

「何!? 魔の空域で我々を撒くつもりか」

 

 ライラが静かに、だが確信を持って呟いた。瞳に戦場で感じた得体の知れないものが映っている。

 

「カミーユ……ニュータイプか」

 

 ジャマイカンの顔が一瞬凍りつき、すぐに嘲笑が爆発した。笑い声が格納庫に響き、整備員が顔を上げる。

 

「馬鹿げたことを言うな。ニュータイプなどビデオ屋の作り話だ。そんな幻想に負けるほどティターンズは軟弱じゃない」

 

 彼はライラを一瞥し、ジェリドに冷たい視線を突き刺した。額に汗が光り、声に怒りが滲む。

 

「ティターンズの名を汚した責任は重いぞ、ジェリド。モンブランを仕留めただけでは済まん。次はお前が結果を出せ」

 

 ジャマイカンが踵を返し、格納庫を出ていく。ブーツの音が遠ざかり、整備員の作業音が再び響き始めた。

 

 

 残されたジェリドは拳を握り締め、歯を食いしばった。口に広がる鉄の味が敗北の苦さを増幅させる。ライラが彼の横に立ち、低く呟いた。声には静かな力が宿っている。

 

「敵を見誤るのは上層部も同じだ。ジェリド、お前はよくやった。あの戦場で生き残れたのは、お前が私を援護したからだ」

 

 ジェリドが彼女を見上げ、掠れた声で応えた。喉が乾き、言葉が途切れがちになる。

 

「ライラ……お前がいたから生き残れた。カミーユは俺がいつか倒す。だからこれからも頼む」

 

 ライラが小さく頷き、汗ばんだ肩に手を置いた。指が制服を擦り、微かな音が響く。二人の間に静かな信頼が流れ、戦場での敗北が新たな決意へと変わりつつあった。格納庫の喧騒が遠ざかり、ジェリドとライラの眼差しが交錯していた。

 

 

 




濡れ場描きたいのにジャマイカンが出てこないと話が進まん・・・・
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