勇者ルカがダンジョンにいるのは間違っているだろうか 作:柔らかいもち
「おはよう。よく眠れた?」
目が覚めた時、視界に入ったのは窓から差し込む朝日ではなくシミ一つない滑らかな肌だった。少し上からアストレア様の声が落ちてきた瞬間、
昨晩、アストレア様が穢れることも厭わず身を粉にして僕の情欲を静めてくれたというのに、女神の
女神を抱き枕にして眠った体はすこぶる元気だった。包容力に富んだ大きな双丘が形成する深い谷間に顔を埋没させるほど密着した女神の肢体から天上の温もり、至高の柔らかさ、ほんのり汗が入り混じった女性の香りを感じ取り、股間を膨れ上がらせてしまうほどに。
意識を失った後でアストレア様が清めて着替えさせてくれたであろうズボンの中で、ペニスは痛いほど張りつめていた。
「……とても元気になったみたいね」
「ごめんなさい、すぐに離れます――あひぃ!?」
お腹に押し当てられる節操のない僕のモノ。それに気が付きながら柔和な笑みを崩さないアストレア様の慈悲深さに感謝と罪悪感を抱きながら
たった一撫でで僕は情けない声を漏らしながら脱力してしまった。
「朝から
「はぅぅぅ……」
ズボンの中にアストレア様の手が入り込む。
硬くなった僕のペニスを女神の手は優しく握りしめる。しなやかな指によってぎゅっ、ぎゅっと緩い圧力を加えながら手を上下させた。
ぴくぴくと震え始めると竿を握るのではなく、亀頭に掌を被せてきた。柔らかい掌で敏感な場所を擦られている内に先端から透明な汁が滲み始め、アストレア様はそれを潤滑油代わりにするかの如く手に塗し、ぬめりを帯びた御手によってペニスが激しくこねくり回される。
「あぁ……出るぅ……」
搾るようにカリ首を強く握られながら鈴口を指で擦られたのがトドメとなった。
びゅるるるっ、と女神の手に扱かれながら精を吐き出す肉棒。アストレア様は僕の限界を見抜いていたかのように腰に回していたもう片方の手も使い、残り汁がないように扱きながら掌で全ての精液を受け止めていく。
「ふふっ……とってもドロドロで濃い匂い……」
ズボンから引き抜かれたアストレア様の両手は白濁液でドロドロだった。青臭い匂いを漂わせながら白い粘液が細い指の隙間で糸を引いている。
汚らしい僕の体液がシーツに落ちるよりも早く昨晩から脱ぎっぱなしだった自分の服でごしごしごしっ! とアストレア様の手を拭く。不敬とか考える余裕もなく掃除を終えると頭を下げ、急いで神室を飛び出したのだが、
「昨夜はお楽しみでございましたねぇ」
丁度部屋の前を通りがかった輝夜に捕まってしまった。僕にしなだれかかるように肩を組んできた彼女はすんすんと鼻を鳴らし、狐のように目を細めた。
「栗の花みたいな匂いがしますなぁ」
びくっと震えた僕が首を僅かに捻ると、ゲスい笑みを浮かべた女の顔があった。
「おやおやぁ? アストレア様の蜜壺に粗末なモノを招いてもらって極楽浄土に導いてもらっただけでなく、子を宿すための聖域に雄の種汁を散々注ぎ込んだというのにまだ満足していないようで……なんて欲深い。盛り狂った犬畜生でももっと分別があるのではないでしょうか」
「ぅ……ぅぅ……」
「そんなにシたいというなら……私が相手をして差し上げましょうか?」
「~~~~~~!?」
心を抉るような言葉攻めとふっと吹きかけられた耳への吐息に耐えられなくなった僕は逃げ出した。
「からかっちゃ駄目よ、輝夜。もしルカが本当にお願いしたらどうするの?」
「では奴に声を抑えるように言ってください。ドスケベエロ狐とクソ雑魚ムッツリ妖精がうるさくなりますので……。それとルカがおねだりをしてきたその時は――気絶するまで搾り取ってくれましょう」
♦♦♦
「……ここ、だよね?」
リオンさんに助けてもらった翌日。太陽が役目を終えるように西の水平線へ沈み、満月が宵闇の中で淡く輝くような夜のオラリオに
駆け出しの冒険者で新興派閥唯一の稼ぎ頭である僕が外食をするような余裕は本来ないのだが、これにはいくつか理由がある。
子供の頃からの夢である英雄になることに加え、憧れの女性に追いつく目標もできてしまった僕は一層気合を入れてダンジョンに挑むことを決意して就寝したのだが、目覚めた時に
二度寝の誘惑は神アイテムから劇薬アイテムに変貌した神様が圧倒的な質量を誇る双丘で殺しに来たことにより跳ねのけられたんだけど、体が資本である冒険者なのに朝ご飯を食べるのを忘れるという致命的なミスを犯してしまった。その時に偶然話す機会があったこの『豊饒の女主人』の店員さんに朝ご飯をいただき、そのお礼として晩ご飯をここで召し上がる約束をしたのである。
神様も誘ったけど不機嫌そうな顔でバイト先の打ち上げに行ってしまった。どうして?
「ベルさんっ」
「……ッ。やってきました、シルさん」
「はい、いらっしゃいませ――お客様一名入りまーす!」
躊躇いがちに店内を覗き込んでいた僕の隣にいつの間にか立っていた店員のシルさん。朝も割としたたかな方法で僕のお腹を満たしてくれた彼女は、あと少し声をかけられるのが遅かったら撤退しそうになっていた僕の逃げ道をふさぐかのように話しかけ、観念した僕がひきつった笑みを浮かべると澄んだ声を張り上げて来店を知らせる。
途端に向けられるウェイトレスからの視線。忙しいから一瞬で外されるけど、それでも入店に尻込みした原因である見目麗しい女性達に注目されたことで思わず逃げそうになってしまう。
……何故だろう。ここで帰ってもシルさんの善意を踏みにじった糞野郎になるだけのはずなのに、フライパンが剛速で飛来して僕の命が木っ端微塵になる予感がする。大人しく案内されたカウンター席でメニューを見る。
一番値段が安いパスタでも三○○ヴァリス。うーん、高い。でもパスタだけだと栄養バランスが偏るのでサラダも合わせて注文する。酒はどうするかと尋ねられて、明日もダンジョンに行くので遠慮しますと返事をした。答えはドンッと置かれた
聞いた意味は? あとこのお酒もお金を取られるんだろうな。ちょっと暗い視線をドワーフの女将さんに送るだけで済んでいるのは僕の懐が温かく、心に余裕があるからに他ならない。
――僕が外食をする余裕があった理由、その二。
半月前、【ヘスティア・ファミリア】の
人が全然寄り付かない袋小路にある教会に落とし物をするなんてまず有り得ない。天井の対部分が抜け落ちて、出入りするための扉は存在せず、屋内の床にも雑草が繁茂して廃墟同然であっても教会は教会だ。だからきっと多分誰かが善意で寄付してくれたに違いない――怪しいと止める暇もなく、金貨袋を回収した神様と一緒に中を見ると一枚のメモが入っており、こう書かれていた。
『もし神の娯楽や娼館通いに一ヴァリスでも使えば、胸と股間にぶら下がっている物をすりおろした肉が詰まった肉袋にする。そしてこれを手にした時点で貴様等に拒否権はない。有意義に使え』
……怖かった。ただの文字なのにこれでもかと本気であることが伝わる筆跡だった。その日の夜は不敬とか考えずに神様と一緒の布団に入り、抱き合ってガタガタと震えていた。
それでも防具や武器をギルドに借金して揃えるような零細派閥にとって『寄付』はありがたかった。あのお金がなければお肉や野菜なんてない空腹を誤魔化すだけの食事が続いて、体調を崩していたかもしれない。
お金はこういった食事や
「楽しんでますか、ベルさん?」
「……そうですね、料理はおいしいです」
悔しいけど値段以上においしい料理を楽しんでいた僕の下にやって来たシルさんにちょっとだけ皮肉を込めて返すと、彼女は誤魔化すように笑った。くそぅ、許せるくらい可愛いな、ちくしょう。
それから隣に椅子を持ってきたシルさんと色んなことを話した。僕は食事もしていたから聞き役になる方が多かったけど、シルさんはニコニコと微笑を絶やさなかった。人と話してる時に自分だけ食事をするのはあまりよくないと思うけど、残っているのに手を止めたらシルさんが食べさせてあげましょうかってからかってくるので許してほしい。
しばらくシルさんの話に耳を傾けながら舌鼓をうっている内に結構なボリュームのパスタとサラダは僕のお腹に入り切った。そこでシルさんは口を閉じて、次は僕の番と言うように頬杖を付いて見つめてくる。細められた薄鈍色の瞳にどぎまぎしながら話題を考えていると、
「ミア母さん、来たわよー!」
この酒場に負けず劣らず綺麗な女性の団体が入って来た。店員さんがシルさんのように来店を知らせるより早く、集団の先頭にいた赤い髪の人が声を張り上げる。
す、すごい。あんな目立つような真似、僕にはできない――そんな戦慄の眼差しを向けていた僕の耳に周囲の客の声が入ってくる。
『でけぇ声出しやがって、ガキかよ』
『顔はいいのにもったいねぇ……いや、他にも上玉がいるな』
『いい気分を邪魔してくれた詫びに酌でもしてもら――』
『馬鹿っ、エンブレムを見ろ!』
その声に導かれるように彼女達が身に着けている徽章に目を向けた。刻まれているのは正義の剣と翼のエンブレム。
『……【アストレア・ファミリア】』
『二十人足らずの
『じゃあ、あの女が【
心臓が飛び跳ねた。聞こえた派閥の名前は憧れる人が所属する【ファミリア】のもの。
何故かカウンターに突っ伏して【アストレア・ファミリア】の人達に目を向ける。不審な動きをする僕にシルさんが声をかけてくれるが、生憎反応する余裕がない。
種族はてんでバラバラの女性達に視線を走らせてあの人を探すが……いない。小柄なエルフや綺麗な金髪の
もしかしていじめではぶられて……いや、正義の派閥がそんなことするはずがない、失礼な! 多分『エルフの慣習』のせいで不特定多数がいる店には来ないとか――そんなことを考える僕を他所に、桃色の髪の
「おい、
……なんて?