※この作品はR-18です。

しがない一式神の日常〜桃色日和〜   作:ふなぐち又兵衛

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諸三次作品より、設定やヒロインの名前をお借りしつつ、初投稿です。


いつもの

いつも通り、鼻腔と耳朶を、優しく愛撫されるような目覚めだった。

昨夜──いや、もう日付が変わっていたか──眠りに落ちるまで、私の腕の中にいてくれた主は、いない。

代わりにあったのは、カーテンが薄く開かれて、春の朝日が忍び込んだ薄闇の寝室、

ふたりぶんのぬくもりが未だに残る、寝乱れた掛け布団とダブルベッド。

私の覚醒を促した、リズミカルな軽い切断音に打撃音と、

味噌とちりめんじゃこが、玉ねぎや油揚げとともに煮える、ホッとできる香りだけ。

だのに、腕の中どころか、視界内にさえ、主の姿がない不満に呻きながら、私はのそりと身を起こした。

薄くドアが開いたままの、生ぬるい寝室は、ひたすら寂しく、侘びしかった。

 

 

 

 

「おはようございます、あゆじ……」

「おはよしぐ、シャワー浴びといで」

「ふぁい……」

 

寝惚けまなこのまま、着替えをかかえた私を出迎えてくれたのは、

エプロンをかけた主のやわらかい笑顔と、楽しげに煮える味噌汁鍋であった。

まな板の上で刻まれた、青々としたネギの香りがかぐわしい。

 

居間兼キッチンの隣の、浴室前に設置された脱衣かごに着替えを置いて、

私は寝間着にしていた主の古いワイシャツを脱いで、洗濯機に投げ込み、裸身を晒す。

就寝時に主が編んでくださった一本三つ編みも解いて、着替えの一番上に髪留めのゴムを置いた。

身じろぎするたびに髪と乳房が揺れるのがいささか鬱陶しい、主の視線を釘付けにしていられていないのだから。

 

「あ゙ー…………あ、もったいない」

 

熱いシャワーを浴びて、ようやっと頭がハッキリしてきた。

それにともなって、私の芯から溢れる体液の感触も、また。

それは、主の愛情と私の欲望のカクテルの、なれの果てだ。

 

「どっちも欲ぼ…いや、しぐが僕に向けてくれる方こそ、愛情だと思うけどなあ……」

 

などと、主は苦笑いしておられたが。

 

それを聞いた私の反応? それは当然、主をベッドに押し倒して、

唇も、ぬくもりも、欲望の最後の一滴一粒までも、残らず貪る一択だった。

実に美味かった、愉しかった、気持ちよかった……何より、幸せだった。

身体を重ねるごとに、主の精もMAGも、快さと甘さを増していく気がする。

今からでもお情けをいただけないだろうか。

 

「……そうもいかんか」

 

主が味噌汁片手に私を待ってくださっているのだから、今は色気より食い気だろう。

鼻を鳴らして、私は急いで身を清めることにした……のだが、

なかなか内股をつたう雫が治まってくれなかったのは、ご愛嬌である。

 

 

 

 

いただきますのあいさつ。

醤油の香ばしさを帯びた半熟の目玉焼き、火が通ってうっすら脂がにじんだハム、

あたたかくほのかに甘い米の飯、それらをまとめて噛み砕き、嚥下する至福。

ちりめんじゃこの出汁に裏打ちされた、玉ねぎと油揚げのまろやかな風味に満ちた味噌汁、

あんなに辛かったはずなのに、味噌汁にたゆたう今は、こんなにも甘い青ネギ。

今朝も実に旨かった、ありがとうございます、主。

ごちそうさまでした。

 

「お粗末さまでした……ところでさ、しぐちゃん。

 ハムエッグに添えられたキャベツを、いの一番に全部食べちゃうのは、どうにかならない?」

 

ぐ……不味いとまでは言いませんが、生のキャベツめは、食べていて味気がないのです。

噛み潰しても、少しだけ甘いかな? 程度でしかなくて、

口内に唾液とともに溢れてくれる、旨味も、脂のかぐわしさもないのです。

私にはそれがつらいのです、申し訳ありません。

 

「…………わかる」

 

僕の血肉から出来てるだけあって、味覚まで僕とそっくりでやんの。

肉や卵は米といっしょに食べたいもんな、葉物野菜とじゃなくてさ。

でも、人前で食べる機会があったら、ばっかり食べは、やめようね。

僕も、バランスのいい食べ方に挑戦するから、いっしょに、直そう。

 

「はい」

 

私たちは食卓を挟んで苦笑いを交わすばかりだった。

お行儀の悪い子供舌主従と笑わば笑うがいい畜生め。

笑われても何も言い返せないのが情けない限りだが。

 

 

 

 

「……便利なものだ」

 

私に組み込まれた、【嫁入りセット】の汎用スキルカード一式が、である。

生まれて数日の私が、熟練の主婦のごとく、フライパンや食器を洗えているのだから。

食後の洗い物だけではない、少なくとも今日まで、浴室の清掃と、ベッドメイクと、

洗濯された衣類を干して乾かし、乾いたそれらを畳んで仕舞うのは、問題なくこなせた。

むろん、主との夜の営みも、だ。

 

「…………っと、いかんいかん」

 

暇さえあれば視姦してくる主がかわいいとか、

夜までお行儀良く待てる主がもどかしいとか、

たどたどしく舌を絡めてこられると愛(う)いとか、

私を裸にする手際がだいぶ良くなられたとか、

私の乳房にしゃぶりつく姿がいとおしいとか、

温かいものと劣情がダブルで湧いてくるとか、

ベッドに押し倒した時の驚いた目の丸さとか、

下を脱がせて凝視した瞬間の羞恥の表情とか、

ヘソを向いて屹立する半包茎の愛らしさとか、

それを口でひん剥いてさしあげた時の声とか、

口に含んだ際に感じ取れる石鹸の残り香とか、

口の中でねぶり転がすのに最適なサイズとか、

嫐(なぶ)られて奏でられる主の嬌声の心地良さとか、

ビクビク震えて放出される胤(たね)の熱と勢いとか、

口内に染み渡る生体マグネタイトの甘さとか、

舌の上に溜まったものを飲み下す喉越しとか、

放出してなお萎(しお)れない主の主のけなげさとか、

脱いだ私のショーツから伸びる透明な糸とか、

それに目が釘付けになる主が微笑ましいとか、

その隙を突き一気に咥え込んだ時の悲鳴とか、

ずぶ濡れの粘膜で噛み締めた硬さと熱さとか、

腰使いに再び奏でられる主の嬌声の快さとか、

背筋から頭蓋を経て全身を灼き払う法悦とか、

再度の放出に伴う私のチョロさおかしさとか、

お互いの絶頂が重なった事による満足感とか、

気だるさの中で交わされる口づけの幸せとか。

 

そういったものばかりが思い出されるからだ、こういう作業をしていると。

 

 

 

 

なお、これは掛け値無しの余談であるが。

半終末の頃だったろうか、先程の回想を、シキガミ用の惚気スレで語ったら、

 

──あんさんウチや!!

──あんさんウチや!!

──ウチもそんな有様やってん

──うっとこもそんな様やったんよ

 

と、どこぞのメスカクエンが大絶賛してくれたな。

ただ、日も高いうちから主を寝室に引きずり込んだり、

行為の間中、主に歯型や吸い痕をつけたりするのは、どうかと思うぞ?

私も日の出から日付が変わるまで、寝室で主を組み敷いたまま過ごすこともあるが。

 

その旨を掲示板に書き込んだら、

 

──ねえ、じう。さん、五十歩百歩って言葉知ってる?

──豆嫁もじう。も同じ穴のムジナじゃんね

──ショタコンがショタコンに自重しろって言うてますわ

──星光が来るとマスターにプレゼントするお菓子作り教室

──うみないびが来るとマスターへ送るラブレター(愛の言葉)の朗読会

──破裂☆が来るとマスターとの出張先の風景写真の展覧会

──Noireが来るとマスターのファッションショーの写真展

──じう。や豆嫁が来ると出来の悪いおねショタ官能小説の朗読会……

──本当かー? 本当に豆嫁もじう。もお姉さんできてるかー?>おねショタ

──どちらもショタパパにべったりのデカい子供では……?

──火嫁、お前の後輩どもだぞ、なんとかしろください

──ネット上とはいえ、満天下に皮付きポークビッツなのをバラされた、ふたりのマスターが不憫でな

──だから貴様らは駄剣とメスカクエンなのだあ!!>満天下に〜

 

などと、袋叩きにされてしまった、解せぬ。

その時の私は、包丁が錆びたような色の目になっていたと思う。

ただ、主を「父上」と呼んで甘えるのは、その、なんだ……燃えた。

「やっぱりデカい子供じゃないか!!」と言われるのが目に見えているので、口にはしないが。

 

それにしても、誰が少年愛者(ショタコン)だ、主は成人済みだぞ?

覚醒した際の悪影響で、いささか縮んでしまわれたそうだが。

今朝の私が寝間着代わりに羽織っていたワイシャツだって、

当時の主の体格にあわせたサイズであったわけだし。

この前、覚醒前に撮られた主の写真を見せていただいたが、

そこには、線の細い、淡い栗色の髪の美青年が微笑んでいた。

 

──まあ、今の主の方がいいな、私には。

 

ポークビッツ? 大変結構、私の最奥にはちゃんと届くしな。

口で愛でるにはあのくらいのサイズが丁度良いし、両取りだ。

まあ、胸で挟んでみた時は、お互い微妙な手応えに終わってしまったが。

胸で挟むなら、やはり顔の方が良い、主もそうおっしゃっておられた。

いや、挟むというか、主を包み込みたいのだ、私は。

だからこそ。

今の主でいてくださって良かったと、私は心からそう思っている。

 

 

 

 

ところ変わって。

宿舎の一室から、天井から壁、床にかけて岩肌が露出した、

人間が横に3人ばかりは並んで通れそうな広さの、洞窟のような薄暗い通路にて。

朝食を済ませた主と私は、ガイア連合製の装備に身を包んで、日課の異界潜りに挑んでいた。

 

私は、巫女装束の袖部分を、刀の下緒でたすき掛けに纏めた上で、

腰に無銘の刀をブチ込んで、あらわになった前腕部を、黒い手甲で固め。

主に例の破魔耐性つきの赤い組紐で、ポニーテールを結っていただき。

主は、レザーの防具一式で身を固めた上から、魔法に対する抵抗力を高めるポンチョを羽織り。

首からは呪殺耐性つきのアクセサリーを提げ、マチェットを握りしめておられた。

足回りは、お揃いのデザインの編み上げブーツであるのが、いささか面映ゆい。

 

とは言え、いずれも駆け出しか、それに毛が生えた程度の品である。

早くふたりとも呪殺と破魔を無効化できるようにしたいねと、主がおっしゃられたのには同意しかない。

 

まあ、最悪、呪殺に関しては、

無効化できる私が主を【かばう】ことでお守りすれば良いか、と思わなくもないのだが。

私たちが潜っている程度の浅い階層だと、ディブクだったり、

カタキラウワだったりが【ムド】を飛ばしてきくさる程度で、

連中に先んじて放つことができる、私の【マハラギ】で焼き尽くしてしまってもいいわけだしな。

 

しかしながら、主は私が【かばう】ことに対する罪悪感や忌避感があるようなのが困る。

私としては、主のお役に立てる、主が心配してくださる、

帰還後に主がいつも以上に慈しんでくださる、などと、得しか無いのだが……。

っと、こういうことを考えている時は、だいたい事故が起こるものだ、このように。

 

「メスだ! ガキだ!」

「ガキは食う! メスは犯る!」

「死ねやァああああ!!」

 

岩陰からオークが1……2、ゴブリンが1、インプが1。

まったく、【仲間を呼ぶ】んじゃあない。

 

「主!」

「まず飛び道具持ち(インプ)! 次バッファー(ゴブリン)!

 あとは耐えて流れで!!」

「承知!」

 

応えて私は駆け出した、主の【スクカジャ】を、ついで【タルカジャ】を一身に受けながら。

まずは加速した五感を、跳ね上がった筋力を以て、敵陣の間隙をすり抜けつつ、

【スクンダ】を唱えかけたインプの素っ首を、すれ違いざまに【グラム・カット】で刎ね飛ばす。

おまけに敵集団の左手後方から【マハラギ】を浴びせて、多少なりとも削り、怯ませることを狙う。

業火にたたらを踏んで振り向いた敵集団めがけて、主が連中の背後から、

【シバブー】を唱えて足止めをかけてくださったので、悠々と刀を鞘に納め、再度の突貫(吶喊)。

 

「じゃあぁああああっ!」

「ばあああああああ!!」

 

【シバブー】が緩んだか、近場にいた方のオークがマサカリをふりかざして迎え撃とうとして来るが、

 

「動くな」

 

主が【マハサイ】を撒いて牽制してくださり、私はオークの左脇腹を掻っ捌きつつ、主と合流することができた。

 

「糞が……」

「立て!」

「援護する!」

 

向こうも立て直しにかかったか、腹を裂かれたオークに、無事な方の個体が【ディア】をかけ、

【ディア】を唱えている方のオークには、ゴブリンが【タルカジャ】をかけやがった。

 

「しぐ、もっかいお願い、行って、ごめん」

「はい。 …………謝らないでください、主」

 

軽く笑いながら、主の命に従い、私は三度(みたび)矢となった。

今度こそ邪魔なゴブリン(バッファー)めの素っ首を刎ね飛ばしてやろう。

 

「させるか!」

 

腹の傷が癒えたオークが私の進路の邪魔をしてきやがった、しかも防御体勢(【まもる】カタチ)をとっていくさる。

だが、私はいつぞやの黒い魔女どののように、口角を冷たく引き裂いて。

 

「まとめて焼豚になってしまえ!」

 

駆け抜けながら【マハラギ】を3匹の悪魔に浴びせた。

そこに主の【サイオ】が重なり、ゴブリンが先んじてMAGに還ってゆく。

 

「畜生が!」

 

手駒がふたつ欠けたことに激昂したオークが、

炎に炙られながらも、私にマサカリを叩きつけようと突っ込んで来た。

さすがに【タルカジャ】つきの一撃は、食らったらひとたまりもあるまい……食らったら、だが。

私は無言でマサカリを避け、抜き打ちの【グラム・カット】で、体勢が崩れたオークに引導を渡した。

【まもる】を解除したもう1匹のオークをMAGに還したのは、

私のトドメの一太刀に間髪入れずに放たれた、主の【サイオ】だった。

 

 

 

 

「「あ゙ー……疲れたー……」」

 

毎度のことながら、口から魂が抜けそうだ。

人間である主はともかく、シキガミである私の魂はおそらく、

力も名も無くしたスライムが封じられた、コアになるのだろうが。

 

悪魔の群れをどうにか無傷で片づけた後のこと。

辺りに散った宝玉やら三節棍やらのドロップ品を、

無事回収することができたので、私たちは異界から撤収する(ずらかる)ことにした。

帰途において、「まだ行けるはもう危ない」だの、「帰ろう、帰ればまた来られるから」だの、

主が念仏を唱えるかのようにブツブツと呟いておられたのはその……いささか、怖かった。

その旨を主に伝えてみたら、

 

「僕はしぐが傷つく方が怖いよ。

 だから、こうして異界に潜ってるんだ、少しでも強くなっておくた、むぐ?」

 

などとさえずってくれたので、現世側にある異界の入口で、

私は、いとおしくもしゃらくさい、主の唇を奪った。

ご立派(けなげ)です、主。

水臭いよ、結友(ゆう)くん。

 

濡れた音とともに掛けられた、名残惜しげに光る糸の橋が、互いの唇をかろうじて繋いでいた。

唇を舐めて、私は吊り上がった目で弧を描き、鮮血色の瞳で、主の晴天色の瞳を覗き込む。

 

「主、私たちシキガミは、主の盾となって、傷つくのも仕事です。

 その仕事を奪うおつもりなのは、思うところもありますが、しぐれは嬉しく思います。

 ……つまり、その、なんと言いますか」

 

ここでツイと指を伸ばして、主の華奢なおとがいを持ち上げて、私は今一度唇をついばんだ。

 

「今夜は寝かせないからな、結友くん?」

「いきなりヅカっぽくなるなっちゅーに」

 

主の返答は、苦笑いとともに放たれた、デコピンであった。

どっとはらい。

 

 

 

 

・しぐれさん

HNはしぐれ→時雨→じう。

・結友くん

未だにHNを出せなくてすまない……

・星光、うみないび、Noire

それぞれ主人が凄腕のプログラマー(フリスビーニキ)だったり、沖縄の若き希望(琉球ニキ)だったり、宮城の豪傑ようじょ(幼女ネキ)だったり

彼女たちの主人である彼らと彼女がガイア連合に参加した順番はこれであってる、ハズ?

『うみないび』は、沖縄弁で『お姫様』みたいな意味になると聞いたので

・破裂☆

元からHN持ちだった、魚沼の守護神(田舎ニキ)のシキガミちゃん

出典元からして、ロボ&武器系シキガミスレと、嫁シキガミスレを掛け持ちしていそうだな、と

・豆嫁、火嫁

拙作より、ちろっと

・【嫁入りセット】

『【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録』より

 




日λ........さん、血涙鬼・彼岸さん、名無しのレイさん、タマヤ与太郎さん、
皆さんのシキガミちゃんをお借りしました、
そして破裂☆さん以外の、彼女たちのハンドルネームをでっち上げました、すみません。
正式なハンドルネームをお教えいただけましたら、そちらに差し替えさせていただきます。

だからわたしゃ荒事のシーンは書けないんだってば……丁々発止とかどう書けばいいんだろう。
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