ランキング覗いてみたら、日間ランキングで4位になってた……まだ4話なのに
初期構造は、もしも京を助けたのがユウだったら?的なストーリーを最初考えていたのですが……
それは、逃げかなっ……て
何より、セイバードラゴンさんからのリクエストなので
「大和、大好き。結婚して」
「お友達で」
朝の目覚め。重い瞼を開き、ぼやけた視界に映るのは見慣れた天井……ではなく、いつもの侵入者。
瞳孔のピントが合い、彼女の全身をはっきりと映し出す。いつからそうしていたのか、愛する人の寝顔を覗き込んで待ち構えていた少女は、頬を赤らめて朝一番の熱烈なプロポーズを口にした。
それをいつもの通り一蹴する。
女にとって、告白とは一世一代のもの。それなのに、断られた彼女は泣くでもなく怒るでもなく、ただクスリと微笑んで朝の挨拶をした。
フラれたことは大した問題ではない。こんなやり取り、もう何年も繰り返しているのだから。
出会い頭の告白など、もはや日常の一部。この二人にとって様式美に等しい。
重要なのは、この気持ちが今日も色褪せないということ。彼が好きだという恋心と、それが成就する“いつの日か”を願って、椎名京は今日も直江大和に恋をする。
そう、私は知っている。呼吸すらも苦痛な暗闇の中であっても、救いの手は差し伸べられることを。
私を救ってくれた人。
光を見せてくれた人。
何よりも大好きな人。
こうして言葉を交わし、触れ合えるだけで幸せを感じる。彼がいて、皆んながいて、私がいる。小さいながらも少女の世界は完結していた。
それだけでいい。それ以上は望まない。もし、この世界を脅かす異物が現れるのだとしたら、それはあってはならないモノだ。
だから……椎名京は、あの男が嫌いだった。
「っ……まだヤッてる」
いつものように大和を起こすと、部屋へ戻る。
女子部屋である二階。許可がなければ男子が立ち入ることは不可能な男子禁制の場に、朝っぱらから盛っている一組の男女がいた。ただでさえ暑い季節、絡み合う肌の摩擦のせいで部屋がもっと暑くなった気がするのは、おそらく気のせいではない。
せっかく愛する人の顔を見て良い気分だったのに……。無表情ながらも、整った顔立ちが不快な歪みを見せ始める。
昨日から徹夜で、お楽しみといったところだろうか。朝っぱらから元気なことある。
『ちゅ、ちゅぷ……んはぁ、ユウせんぱぃ❤️』
『一発だけって言ったクセに、結局夜通しになっちまったじゃねぇかよ……ったく、欲しがりが』
『ごめんなさい……ユウ先輩のが、あまりにも素敵で……こんなに、おっきくてぇ❤️』
壁一枚隔てた向こう側から聞こえてくるピロートーク。一人は風間ファミリーの新メンバー、後輩である黛由紀江だ。
もう一人もよく知っている。メンバーでこそないが、それに近しい腐れ縁。あの武神と互角に渡り合える剣士。そして何より、椎名京にとって最も邪魔な存在である。
水城ユウ———自分が加入する前から、風間ファミリーとはなにかと縁の深い関係に位置する人物であった。
かと言って、正式なメンバーという訳ではない。
リーダーの風間翔一からは、その強さとあり方から憧れを抱かれ、幾度も勧誘に誘ってはいるものの、いつも空振りに終わっている。
ぬらりくらりとかわし続けるクセに、腐れ縁故かどこかでばったり会ったり、時には百代が引きずって連れて来たりと、いつの間にか輪の中に入っていることが多かった。
……ああ、気に入らない。
正式なメンバーでないクセに、なんだかんだファミリーの輪の中に片足を突っ込んでいる中途半端な異物感。その曖昧な立ち位置は、居場所に依存している京の神経をイラつかせた。
他人なら他人、身内なら身内。ハッキリと線引きしている彼女にとって、水城ユウと言う男の存在は気持ち悪さすら感じさせる。
何より、愛する直江大和の悩みの種でもある。
それが最も癪に触る。愛を重んじる京にとって、許されざる大罪に他ならない。だから……椎名京はあの男が嫌いだった。
その嫌悪は日に日に増して行く。
『はぁんっ❤️もっろ、もっと突いてくださぁい❤️』
「……随分とお楽しみだね、まゆっち」
隣部屋の後輩の嬌声が響き渡る。男の息遣いもだ。
黛由紀江が水城ユウに惚れているのは知っていた。金曜集会で何度も先輩の話題に声を弾ませていた事で、皆んな何となく分かっていた。百代ほどオープンではないが、側から見ればあまりにもバレバレだ。
だがまさか、ここまで関係が進展していたなんて……。奥手と思いきや、意外な手の速さに辟易を禁じ得ない。
自分が敵と認識している男のモノを突っ込まれて、嬉しそうに喘いでいる仲間に苛立ちを覚えてしまう。
それだけではない……最近、皆んなの様子がおかしい。一子もクリスも、ある日を境に風間ファミリーの集まりが悪くなった。
雰囲気、というのだろうか。どこか大人びた印象を覚え、自分の知らないものになっていく彼女らの変化に、京は戸惑いを感じていた。
いくら聞いてもはぐらかされてばかりで、真実の口を開かない。そして、事あるごとに向けられる水城ユウに対する視線……。ガリッ……!爪を壁に突き立てた。
大和を悩ませるだけに飽きたらず、あの男はあたかも私の世界を土足で踏み荒らしていた。
許せない、許してなるものか……!奥歯を噛み締め、溢れる感情を押し殺す。
男衆は気づいていないが、京を除く女衆は皆ユウの毒牙にかかってしまっている。それを察しているのは、京だけだった。
この異常事態、風間ファミリー存亡の危機を軍師へ報告するべきなのだろうが……できないでいた。
直江大和はまだ、川神百代がフリーだと思っているからだ。日夜その頭脳を駆使して口説き落とす算段を立てている。
そんな大和にこのような残酷な真実を打ち明けようものなら、どんな顔をするか……。恋敵はいないに越したことはないが、それ以上に彼の悲しむ顔は見たくない。
やるしかない……私一人で、この危機を乗り切るしかない。私の居場所を取り戻すんだ!そう意気込む京の決意など露知らず、隣室の熱気は増していくばかり。
愛し合う男女の淫音。一糸纏わぬ姿で、肌を重ね合う様が容易に想像できる旋律。
雌肉を責め立てる打擲音が鳴り止まない。夜通しで散々ヤリまくったはずなのに、まだ続ける気なのかあの二人は……。
尋常ならざる性欲の強さは、常識の域を超えていた。それを受け止める由紀江も由紀江だ。
壁越しに聞こえる喘ぎ声、ほのかに香ってくる淫臭、雌の本能を刺激する伝播が、京の肩を大きく振るわせた。
「っ……早く終わってよ」
こんな朝っぱらから、何が嬉しくて他人の情事を聞かされなければならないのか。フツフツと苛立ちが積もると同時に、体の奥底にある熱いものを浮上させていった。
早く終われ、終われ……と、必死に祈りながら耳を塞いで目を瞑る。しかし一度意識してしまえば最後……室内に反響する艶かしい交尾音が現実へと引き戻す。
その証拠に、下腹部が熱を帯び始めていた。瞳には嫉妬の色が浮かぶ。
羨ましい……私だって大和と……。あの二人のセックスに、触発されていく。体は反応し、頭にはいやらしい妄想が浮かび上がる。
困惑に翻弄される中、一際大きな嬌声が鼓膜を揺らす。他者に聞かれるかもという懸念は皆無、完全に自分らの世界に没頭していた。
『あっ、も……もうダメぇ❤️』
『っ、俺もそろそろ……由紀江、中に出すぞ!』
『はぃい!出してくだしゃい!ユウ先輩の子種汁ぅ❤️私の子宮にいっぱい注いでくださぃぃぃい❤️』
アクメの咆哮が脳を貫く。京は悶える全身を抑えると、そのまま壁に背を預けてズルズルと座り込んだ。
心臓が早鐘を打ち、顔中に血液が集まってくるのを感じる。バクバクという音が耳の奥で響き渡り、うるさいくらいだった。
ああ、ダメだ……。こんな事が続いたら頭がおかしくなる。そう思い詰めて暫く経ってからだろうか、漸く隣室が静かになり始めたのだ。
やっと終わったらしい。安堵する京であったものの、膝は笑っていた。腰が砕け、言いようのない多幸感が胸中を満たす。
軽くだが、自分もイッてしまったようだ。
「……また、やっちゃった……」
両手で顔を覆い隠し、羞恥に悶える。
この歳にもなって、性欲をコントロールできないなんて。……そんな自分が情けなくて仕方がない。
これじゃあまるで、あの女と同じ……。しかも、よりにもよってこの余韻あの男によって齎されたものなんて……舌を噛んで死にたい気分だ。
ああ、ダメだ……。こんな事が続いたら頭がおかしくなる。煩悩を振り払い、立ち上がる。こんな誘惑に負けていては、愛という文字を背負う資格はない。
「大和……」
愛する人の名を口にし、京は部屋を後にした。
目指すはあの人のもと。この燻る劣情を冷ますには、彼の協力が必要不可欠だ。
そうすればまた、いつも通りの日常に戻れるはず……椎名京はそう信じていた。
「京?」
扉をノックすると、すぐさま反応が返ってきた。
侵入ではなく、今度は堂々と扉から。その部屋の主人の許可を取って入室する。
直江大和———彼の口から名を呼ばれ、その顔を目にした瞬間、胸は高鳴った。
うん、やっぱりこの恋心は本物だ。体温を上昇させていく鼓動が、彼に対する想いが揺るぎないという証明に他ならない。
ホッと安堵すると、心配そうに顔を覗き込んでくる大和。その優しさに思わず顔が綻んだ。ああ、やっぱり好き……大好き。彼の為なら何でもできる。なんだってできる。
「ねぇ大和」
「ん?」
「キスして?」
切ない気持ちを和らげたい一心で、京は大和に懇願した。
目を閉じ、構えてその時を待つ。触れるだけの軽いものでもいい、それで十分だった。
ただ、彼の体温を肌で感じたい。それすれば、穢らわしい邪念を振り払えると思ったから。
愛を再確認しようとするもしかし、返ってきたのは、その想いを引き裂く言葉だった。
「ダメだ京。俺は応えられない」
いつも通り拒絶の言葉。日常の一部であるはずのそれは、今日だけは京に衝撃を齎した。
ほんの少し、ほんのちょっと触れるだけでいいのに。どうして……と、そう問い質そうとするが言葉が続かない。
直江大和は椎名京の想いに応えない。知っているはずだ、向けられる恋心が嘘偽りのない本物であると。それなのに、なぜ?疑問が胸中を渦巻く。
「どうして?私はこんなに大和のこと、好きなのに」
「お友達で」
「どうして?」
「俺には、京の気持ちに応える権利なんてないんだよ。もっと自分を大切にしてくれ」
目線を合わそうともしない愛する人。その瞳はどこか悲しげに、京ではない遠い何処かを見ていた。
恋心は確かに本物だ、彼も重々承知している。その熱い想いを、自分は受け入れる資格などないと、そう言っているのだ。
「京、お前は過去に囚われてるんだ。確かに、俺はお前を虐めから救った。けど、俺も昔は虐める側に加担していた。そこで俺は思ったんだ……俺なんかが椎名京と付き合う資格なんて無いって……」
もし、大和以外の人間が助けたなら、京はその男に惚れていたことだろう。それはちゃんと恋をしていると言えるのだろうか、それは違うと大和は思っていた。
「お前にはちゃんとした恋をして欲しい、だから断り続けてるんだよ……」
「でも、大和!私は……!」
詰め寄ろうとするが、大和は拒むように一歩後退る。最愛の辛そうな顔を目の当たりにし、伸ばした腕は行き場を無くして落ちていく。
全てを諦観したような瞳が、胸の内の柔らかい部分を抉った。ああ、結局こうなってしまうんだと痛感する。こんなにも愛しているのに、あなたは……。
「お前はお前の恋をしろ。お友達で」
そんな残酷なこと、言わないで……。
今大和を感じないと、私……もう……。
刹那、頭によぎる情交のイメージ。声と音だけで、どれだけ激しい交わりかを鮮明に想像できる。
無意識に、内股を擦り合わせていた。意識してしまった体は欲情が灯り、パズルのピースを求め始める。
この疼き、ただの自慰行為では解消できない。凹凸がハマるかのように、完全な発散を欲していた。
歪んだ恋は、更なる歪さを得てしまう。大和がダメならと、京の体は矛先を別へと向けられたのだった。
さすがは難攻不落の椎名京
1話で収まりませんでした
そんな訳で、隣でイチャつかれてムラムラした京が大和に拒否られた、というものです
次回、本番です
好きなエピソードはどれですか?
-
小笠原千花
-
川神一子
-
クリスティアーネ・フリードリヒ
-
椎名京
-
風間ファミリー
-
榊原小雪
-
不死川心
-
忍足あずみ
-
武蔵坊弁慶
-
源義経
-
板垣姉妹
-
橘天衣
-
九鬼揚羽
-
九鬼紋白
-
黛沙也加
-
史文恭
-
林冲
-
猟犬部隊
-
最上旭